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第二章「魔法都市編」
第五十四話「魔法都市ヘルゲン」
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ラルフやレッサーミノタウロスの戦士達と再会した俺達は、すぐに訓練を始めた。俺とバシリウス様、ナイト、ヴェロニカ対ラルフ、シャルロッテ、エリカ、ローラ、その他大勢の戦士達というかなり無茶がある模擬戦を何度も行い、パーティー間の連携を意識して戦い続けた。俺達のパーティーにヴェロニカが入っていると戦力が偏るが、彼女は基本的に防御魔法しか使用しない事になっている。
流石に巨体のレッサーミノタウロス達と剣を交えるのは恐ろしく、戦士達の攻撃だけを意識すればシャルロッテのウォーターボールやウィンドショットが容赦なく襲い掛かってきた。
訓練で使用する武器は全て木製だが、それでも攻撃が体に直撃すれば悶絶して暫く身動きすら取れなくなる。一度エリカの棍棒を腹部に直撃したが、俺の体は一瞬で森の中に飛ばされ、金属製のメイルが大きく変形した事があった。エリカやラルフは手加減を知らないのか、殺す勢いで攻撃を仕掛けてくる。
やはり二人は姉妹だから連携も見事で、俺がラルフの攻撃を受ければエリカがすぐにラルフを援護するために雷撃を放ち、エリカの攻撃に気を取られていると、ローラのソーンバインドが足に絡みつく。それからシャルロッテのウィンドショットが腹部を捉え、激痛の余り地面に倒れるというのがお決まりのパターンだ。
ヴェロニカは俺が攻撃を受ける度に攻撃魔法で反撃をしようとするが、ヴェロニカが模擬戦で攻撃魔法を使用すれば、訓練にならないのだ。レベル的にはバシリウス様の方が高いが、彼女は闇属性以外の全ての属性を使用出来るので、状況に応じて強烈な攻撃魔法を連続で放ち、相手が防御する暇も与えず、ラルフのパーティーに完全勝利した事があった。
ヴェロニカの攻撃魔法の連撃を見た戦士達は、すっかりヴェロニカを気に入り、寝食を忘れてヴェロニカから魔法を教わる様になった。やはりヴェロニカは誰からも愛される存在なのだろう。仲間達ともすっかり打ち解け、森で一人寂しく暮らすアラクネとも交流があるのだとか。
召喚の契約を結んでいる俺自身よりもヴェロニカの方がアラクネと仲が良いのは不思議な気分だが、それでもアラクネが徐々に人間に心を開き始めている事は良い事だと思う。元々名前を持っていなかったアラクネに対し、ヴェロニカは友好の証としてベアトリクスという名前を授けた。ちなみに俺はアポロニウスとの模擬戦に勝った時、ナイトの名前をギレーヌと名付ける事にした。
模擬戦を開始してから暫くして、ベアトリクスも訓練に参加したいと言ったので、俺達のパーティーに加入し、ラルフ達のパーティーとの訓練を始めた。やはりベアトリクスのトライデントの攻撃は鋭く、巨体のレッサーミノタウロスをも一撃で遥か彼方まで吹き飛ばす事が出来る。
ベアトリクスは徐々に仲間達とも会話を交わす様になり、一緒に過ごす時間も増えた。ローラはベアトリクスが安全に暮らせる様にと、体の大きい彼女がゆとりを持って暮らせる程の巨大な屋敷を建てた。石で出来ている空間は彼女が暮らしていたダンジョンを彷彿させるが、それでも木の板を嵌めた窓がいくつもあるので、雰囲気は非常に明るい。
俺とローラは森に生るシュルスクの果実を取り、マナポーションの量産を始めた。ヘルゲンの道具屋に戻った時に大量のマナポーションがあれば、すぐに道具屋の経営を再会出来るからだ。ちなみにヴェロニカは抜群の商才を発揮して、道具屋の商品を全て売り捌いたのだとか。また一から商品を陳列しなければならないが、ヴェロニカがヘルゲンで道具屋の宣伝をしてくれたお陰で、貴族達もカーティスの道具屋を利用する様になったのだとか。
ラルフ達との訓練を開始してから二週間が経過した時、俺はレベル40。ナイトはレベル35まで上昇した。これでバシリウス様が提示した模擬戦参加のための条件を満たしたという訳だ。レベルも大幅に上昇し、俺達はパーティーとしての戦い方を学ぶ事が出来たので、模擬戦が開始される六月一日にヘルゲンに到着する様に移動を始めた。
ベアトリクスやラルフ達と別れ、ガーゴイルの羽衣によって変化したバシリウス様に運ばれて、俺達は高速で移動を続けた。地上を歩かなくても良いというのは非常に楽で、バシリウス様は敵と遭遇してもランスで敵を仕留めて仕舞うので、基本的の俺達が旅の間にモンスターと交戦する事はない。
森で何度も野営をし、仲間達との絆を深めながら移動を続けた俺達は、六月一日の早朝、遂に魔法都市ヘルゲンに到着した。今日のアポロニウスとの戦いのために、俺とナイトは死ぬ気で鍛えてきたのだ。何が何でも負けるわけにはいかない。
模擬戦は十五時からだから、時間にはまだまだ余裕がある。巨体のバシリウス様は町に入る事が出来ないので、闘技場で召喚し、模擬戦が終了したらガーゴイルの羽衣を使ってラルフ達の元に戻って貰う事になった。アポロニウスも突然幻獣クラスのモンスターが現れた方が驚くだろう。勝負の直前にバシリウス様を召喚し、相手のパーティーを動揺させる作戦をとる事にした。
「僕達、ついにアポロニウス様と剣を交えるんですね」
「ああ。ナイトも俺も強くなった。俺達なら必ず勝てるよ!」
「はい! 僕はお兄ちゃんと一緒に冒険者として暮らしたいので、絶対に勝ってみせます!」
「二人共やる気は十分という訳だな。模擬戦が始まるまで私の屋敷で休憩するが良い。アンネもきっと会いたがっているだろう」
「それじゃお言葉に甘えて、模擬戦開始までヴェロニカの屋敷にお邪魔する事にするよ」
「うむ。久しぶりに屋敷でメイド達が作る料理を頂こうではないか」
俺達はヴェロニカと共に屋敷に向かうと、まだ朝の六時だというのにも拘らず、執事達はヴェロニカの帰りを待つ様に、屋敷の前で右往左往していた。余程ヴェロニカが心配だったのだろう。ヴェロニカの姿を見つけたアンネさんは、目に涙を浮かべながらヴェロニカに抱きつくと、ヴェロニカは女神の様な笑みを浮かべてアンネさんの頭を撫でた。
「ヴェロニカお嬢様。お久しぶりです」
「ああ。久しぶりだな、アンネ。私が恋しかったのか?」
「はい。お嬢様が居ない生活がこれ程まで退屈だったとは思いませんでした。私はヴェロニカお嬢様が居なければ生きていけないみたいです」
「全く、アンネは甘えん坊なんだから……」
それから二人は暫く熱い抱擁を交わすと、アンネさんがゆっくりと俺の元に歩いてきた。それから腰に差している剣を引き抜くと、俺はアンネさんの動きに反応するように瞬時に二本の剣を抜き、エンチャントを掛けた。
アンネさんは柔和な笑みを浮かべると、レイピアを鞘に戻した。俺の反応速度を計ったのだろう。事実、俺以外の仲間は誰一人として武器を構えなかった。ナイトは柄を握り締めたが、アンネさんの抜刀があまりにも早かったので反応出来なかったのだ。
「ギルベルト様。随分成長されたのですね。今日の模擬戦、楽しみにしております。必ず勝利を収めて下さいね」
「お任せ下さい。ナイトのためにも、応援してくれている皆さんのためにも必ずアポロニウスを倒します」
「自信に満ち溢れた表情、澄んだ魔力。体調も良さそうですし、あとは試合に臨むだけですね」
「はい。準備は万端です。ナイトもバシリウス様も最高の状態で模擬戦に挑む事が出来ます」
「今日の模擬戦はフロイデンベルグ家と交流のある貴族達も大勢観戦に来ます。ギルベルト様が冒険者として一気に名を上げる機会でもありますから、是非豪快な、見る者に喜びを与える様な勝ち方をして下さい。それが今後の仕事にも繋がりますから」
「お任せ下さい。完全勝利してみせます」
俺はアンネさんと握手を交わすと、彼女は優しい笑みを浮かべて俺を見つめた。やはりアンネさんもヴェロニカに負けず劣らず美しい女性なのだな。一緒に居るだけで活力が湧き、気分が高まる様だ。
それから屋敷に入ると、客室で体を洗ってからメイド達が用意してくれた料理に舌鼓を打ち、俺とナイトは模擬戦までの間に中庭で最後の調整をする事にした。
流石に巨体のレッサーミノタウロス達と剣を交えるのは恐ろしく、戦士達の攻撃だけを意識すればシャルロッテのウォーターボールやウィンドショットが容赦なく襲い掛かってきた。
訓練で使用する武器は全て木製だが、それでも攻撃が体に直撃すれば悶絶して暫く身動きすら取れなくなる。一度エリカの棍棒を腹部に直撃したが、俺の体は一瞬で森の中に飛ばされ、金属製のメイルが大きく変形した事があった。エリカやラルフは手加減を知らないのか、殺す勢いで攻撃を仕掛けてくる。
やはり二人は姉妹だから連携も見事で、俺がラルフの攻撃を受ければエリカがすぐにラルフを援護するために雷撃を放ち、エリカの攻撃に気を取られていると、ローラのソーンバインドが足に絡みつく。それからシャルロッテのウィンドショットが腹部を捉え、激痛の余り地面に倒れるというのがお決まりのパターンだ。
ヴェロニカは俺が攻撃を受ける度に攻撃魔法で反撃をしようとするが、ヴェロニカが模擬戦で攻撃魔法を使用すれば、訓練にならないのだ。レベル的にはバシリウス様の方が高いが、彼女は闇属性以外の全ての属性を使用出来るので、状況に応じて強烈な攻撃魔法を連続で放ち、相手が防御する暇も与えず、ラルフのパーティーに完全勝利した事があった。
ヴェロニカの攻撃魔法の連撃を見た戦士達は、すっかりヴェロニカを気に入り、寝食を忘れてヴェロニカから魔法を教わる様になった。やはりヴェロニカは誰からも愛される存在なのだろう。仲間達ともすっかり打ち解け、森で一人寂しく暮らすアラクネとも交流があるのだとか。
召喚の契約を結んでいる俺自身よりもヴェロニカの方がアラクネと仲が良いのは不思議な気分だが、それでもアラクネが徐々に人間に心を開き始めている事は良い事だと思う。元々名前を持っていなかったアラクネに対し、ヴェロニカは友好の証としてベアトリクスという名前を授けた。ちなみに俺はアポロニウスとの模擬戦に勝った時、ナイトの名前をギレーヌと名付ける事にした。
模擬戦を開始してから暫くして、ベアトリクスも訓練に参加したいと言ったので、俺達のパーティーに加入し、ラルフ達のパーティーとの訓練を始めた。やはりベアトリクスのトライデントの攻撃は鋭く、巨体のレッサーミノタウロスをも一撃で遥か彼方まで吹き飛ばす事が出来る。
ベアトリクスは徐々に仲間達とも会話を交わす様になり、一緒に過ごす時間も増えた。ローラはベアトリクスが安全に暮らせる様にと、体の大きい彼女がゆとりを持って暮らせる程の巨大な屋敷を建てた。石で出来ている空間は彼女が暮らしていたダンジョンを彷彿させるが、それでも木の板を嵌めた窓がいくつもあるので、雰囲気は非常に明るい。
俺とローラは森に生るシュルスクの果実を取り、マナポーションの量産を始めた。ヘルゲンの道具屋に戻った時に大量のマナポーションがあれば、すぐに道具屋の経営を再会出来るからだ。ちなみにヴェロニカは抜群の商才を発揮して、道具屋の商品を全て売り捌いたのだとか。また一から商品を陳列しなければならないが、ヴェロニカがヘルゲンで道具屋の宣伝をしてくれたお陰で、貴族達もカーティスの道具屋を利用する様になったのだとか。
ラルフ達との訓練を開始してから二週間が経過した時、俺はレベル40。ナイトはレベル35まで上昇した。これでバシリウス様が提示した模擬戦参加のための条件を満たしたという訳だ。レベルも大幅に上昇し、俺達はパーティーとしての戦い方を学ぶ事が出来たので、模擬戦が開始される六月一日にヘルゲンに到着する様に移動を始めた。
ベアトリクスやラルフ達と別れ、ガーゴイルの羽衣によって変化したバシリウス様に運ばれて、俺達は高速で移動を続けた。地上を歩かなくても良いというのは非常に楽で、バシリウス様は敵と遭遇してもランスで敵を仕留めて仕舞うので、基本的の俺達が旅の間にモンスターと交戦する事はない。
森で何度も野営をし、仲間達との絆を深めながら移動を続けた俺達は、六月一日の早朝、遂に魔法都市ヘルゲンに到着した。今日のアポロニウスとの戦いのために、俺とナイトは死ぬ気で鍛えてきたのだ。何が何でも負けるわけにはいかない。
模擬戦は十五時からだから、時間にはまだまだ余裕がある。巨体のバシリウス様は町に入る事が出来ないので、闘技場で召喚し、模擬戦が終了したらガーゴイルの羽衣を使ってラルフ達の元に戻って貰う事になった。アポロニウスも突然幻獣クラスのモンスターが現れた方が驚くだろう。勝負の直前にバシリウス様を召喚し、相手のパーティーを動揺させる作戦をとる事にした。
「僕達、ついにアポロニウス様と剣を交えるんですね」
「ああ。ナイトも俺も強くなった。俺達なら必ず勝てるよ!」
「はい! 僕はお兄ちゃんと一緒に冒険者として暮らしたいので、絶対に勝ってみせます!」
「二人共やる気は十分という訳だな。模擬戦が始まるまで私の屋敷で休憩するが良い。アンネもきっと会いたがっているだろう」
「それじゃお言葉に甘えて、模擬戦開始までヴェロニカの屋敷にお邪魔する事にするよ」
「うむ。久しぶりに屋敷でメイド達が作る料理を頂こうではないか」
俺達はヴェロニカと共に屋敷に向かうと、まだ朝の六時だというのにも拘らず、執事達はヴェロニカの帰りを待つ様に、屋敷の前で右往左往していた。余程ヴェロニカが心配だったのだろう。ヴェロニカの姿を見つけたアンネさんは、目に涙を浮かべながらヴェロニカに抱きつくと、ヴェロニカは女神の様な笑みを浮かべてアンネさんの頭を撫でた。
「ヴェロニカお嬢様。お久しぶりです」
「ああ。久しぶりだな、アンネ。私が恋しかったのか?」
「はい。お嬢様が居ない生活がこれ程まで退屈だったとは思いませんでした。私はヴェロニカお嬢様が居なければ生きていけないみたいです」
「全く、アンネは甘えん坊なんだから……」
それから二人は暫く熱い抱擁を交わすと、アンネさんがゆっくりと俺の元に歩いてきた。それから腰に差している剣を引き抜くと、俺はアンネさんの動きに反応するように瞬時に二本の剣を抜き、エンチャントを掛けた。
アンネさんは柔和な笑みを浮かべると、レイピアを鞘に戻した。俺の反応速度を計ったのだろう。事実、俺以外の仲間は誰一人として武器を構えなかった。ナイトは柄を握り締めたが、アンネさんの抜刀があまりにも早かったので反応出来なかったのだ。
「ギルベルト様。随分成長されたのですね。今日の模擬戦、楽しみにしております。必ず勝利を収めて下さいね」
「お任せ下さい。ナイトのためにも、応援してくれている皆さんのためにも必ずアポロニウスを倒します」
「自信に満ち溢れた表情、澄んだ魔力。体調も良さそうですし、あとは試合に臨むだけですね」
「はい。準備は万端です。ナイトもバシリウス様も最高の状態で模擬戦に挑む事が出来ます」
「今日の模擬戦はフロイデンベルグ家と交流のある貴族達も大勢観戦に来ます。ギルベルト様が冒険者として一気に名を上げる機会でもありますから、是非豪快な、見る者に喜びを与える様な勝ち方をして下さい。それが今後の仕事にも繋がりますから」
「お任せ下さい。完全勝利してみせます」
俺はアンネさんと握手を交わすと、彼女は優しい笑みを浮かべて俺を見つめた。やはりアンネさんもヴェロニカに負けず劣らず美しい女性なのだな。一緒に居るだけで活力が湧き、気分が高まる様だ。
それから屋敷に入ると、客室で体を洗ってからメイド達が用意してくれた料理に舌鼓を打ち、俺とナイトは模擬戦までの間に中庭で最後の調整をする事にした。
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