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第二章「魔法都市編」
第五十三話「戦士達と冒険者」
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シャルロッテはモフモフした白い尻尾を振りながら、楽しそうに俺を見上げている。エリカは俺を抱き上げると、何だか俺は恥ずかしくなってしまった。エリカはいつの間に装備を慎重したのか、金属製の巨大な棍棒を持っている。
「この棍棒ね、ヘルゲンの武器屋で作って貰ったの。ギルベルトも持ってみる?」
「随分立派な棍棒だね」
長さ百五十センチ程の、あまりにも大きすぎる棍棒を握ると、俺の腕力ではピクリとも動かなかった。怪力のエリカだからこそ、巨大な棍棒を扱う事が出来るのだろう。棍棒には無数のスパイクが付いており、エリカが棍棒を地面に振り下ろすと、辺りには雷の魔力が発生して地面に巨大なくぼみを作った。一体どれだけの重量なのだろうか。
やはり俺とナイトがダンジョンに潜っていた間にも、仲間達は訓練を積んでいたのだな。シャルロッテの体から感じる魔力は以前にも増して強くなっている。彼女は俺が贈ったムーンロッドを握りながら、可愛らしい笑みを浮かべて俺を見上げている。ローラも美しいがシャルロッテもまた可愛らしい。
久しぶりに会うアンネさんは燕尾服で森に来たのか、この場には最も似合わない格好をしている。左手にはレイピアを持っており、俺と目が合うと優しい笑みを浮かべて手を差し出した。彼女の手を握ると、ヴェロニカが不満気に俺を見上げた。
「お久しぶりです。ギルベルト様。随分逞しくなりましたね」
「お久しぶりです、アンネさん。ダンジョンでの生活が俺を鍛えてくれたんですよ」
「二週間前とは大違いです。きっと過酷な戦いに身を置いていたのでしょう。それに、頭の上に乗っているモンスターはフェニックスではありませんか?」
「間違いない。ギルベルトは聖獣のフェニックスを仲間にしたのだ。久しぶりだな。ギルベルト……」
ヴェロニカは頬を赤らめながら俺を見つめると、俺の服の裾を掴んだ。それからフェニックスを見つめると、フェニックスはヴェロニカの頭の上に飛び移った。アンネさんがフェニックスに対して失礼ですと咎めると、フェニックスは目に涙を溜めて俺を見つめた。
「こらこら。フェニックス相手に何を言うのだ」
「失礼しました」
ヴェロニカはそんなフェニックスを抱き上げると、満面の笑みを浮かべてフェニックスを見つめた。それからフェニックスは安堵の表情でヴェロニカの胸に顔を埋めた。
「まさか聖獣クラスのモンスターを手懐けるとは。これも魔石ガチャから得たマジックアイテムの力なのか?」
「そうだよ。守護神像っていうマジックアイテムの効果によってフェニックスが現れたんだ」
フェニックスは用が済んだと判断したのか、俺に一礼してから飛び上がると、金色の魔力を散らしながら姿を消した。これからも毎日守護神像に供物を捧げなければならないな。俺が負傷した際には戦場に姿を現してくれるのだから、ローラがもう一人居る様なものだ。
「ヴェロニカ、早速で悪いんだけど、俺は再びフロイデンベルグ公爵様の領地に行かなければならないんだ。それからパーティーで訓練を行い、六月一日にヘルゲンに戻ろうと思う」
「何か用事でもあるのか? 久しぶりに再会出来たのだから、暫くヘルゲンに居れば良いだろうが」
「実は……」
俺はダンジョン内でアラクネと遭遇し、召喚の契約を結んだ事を仲間に話した。バシリウス様は新たな仲間の加入を喜んだが、アラクネとはまだ意思疎通が出来ていない。アラクネがダンジョン内で契約を選択したのは、俺に殺されたくないから。恐怖によるものだろう。
バシリウス様の様に望んで俺の召喚獣になってくれた訳ではない。ダンジョンの中で暮らすなら俺の召喚獣になり、外の世界で暮らす方が良いと判断したためだ。俺はアラクネとの約束を果たすために、レッサーミノタウロス達が暮らす土地に赴き、そこでアラクネを召喚するつもりだ。そうすればアラクネはダンジョン内からフロイデンベルグ様の領地まで一気に移動出来るからな。
レッサーミノタウロス達とアラクネが仲良く暮らしていけるかは分からないが、きっとレッサーミノタウロス達は歓迎してくれる筈だ。
「それなら私も行こう! 久しぶりに再会出来たのだ。私も六月一日までギルベルトと共に居る!」
「ヴェロニカお嬢様。ギルドの仕事はどうするのですか?」
「ああ。ギルドか。アンネに任せるぞ。好きにして構わない」
「やっぱりヴェロニカお嬢様はギルベルト様と一緒に居たいんですね」
「何を言っておる! 私はただ、一緒に居た方がギルベルトを鍛えられると思っただけだぞ! 大魔術師を目指す私が訓練に付き合えば、より効率的にパーティーの戦力を上げる事が出来る!」
「またまた、そんな事を言って。本当にヴェロニカお嬢様は可愛いんですね。素直にギルベルト様と居たいとお伝えすれば良いのに……」
「もう! アンネったら本当にしつこいんだから! 言えば良いのだろう? 私はギルベルトと一緒に居たいのだ! さぁ気が済んだなら早くヘルゲンに戻るのだ」
「分かりました。不在の間は私がギルドの仕事をこなします。それでは皆様。ヴェロニカお嬢様を宜しく頼みます」
「もう……! 私は子供ではないのに!」
ヴェロニカは小さな手でアンネさんの背中を押し、彼女を廃村から出すと、俺達は早速レッサーミノタウロス達が暮らす土地を目指して移動を始める事にした。俺はバシリウス様にガーゴイルの羽衣を渡し、彼に巨大なガーゴイルに変化して貰ってから俺達を運んで貰う事にした。
仲間達と再開してから三日後、高速で空を移動し続けた俺達は、遂にフロイデンベルグ公爵様の領地に到着した。古ぼけた屋敷の扉を開けると、ラルフを始めとする戦士達が駆け付けてきた。俺は久しぶりに会うラルフや戦士達と抱擁を交わしてから、アラクネを一体仲間に入れて欲しいと頼むと、彼等は二つ返事で了承した。
それからアラクネを森の中で召喚すると、彼女はトライデントを抱き締めながら困惑した表情で新たな土地を見つめた。明るい場所で見てみるとアラクネも随分美しく、長く伸びた黒い髪を靡かせながら、陽の光を全身に浴びて喜びを露わにした。
彼女は元々ダンジョンの外で暮らしていたらしく、五年前からダンジョンで生活を始めたのだとか。アラクネを討伐しようとする人間があまりにも多かったため、手頃なダンジョンに逃げ込んだのがダンジョン生活を始める切っ掛けになったらしい。
それからダンジョン内で人間やモンスターを捕食しているうちに体が成長し、ダンジョンから出られなくなったのだとか。人間を喰らっていた過去を持つモンスターを召喚獣にするのは何とも気味が悪いが、アラクネが人間を捕食していたのは、ダンジョン内に食物が無かったからなのだとか。
アラクネは既に人間を襲うつもりはなく、俺の召喚獣としてこれからは力を貸してくれうると誓った。それから彼女はとトライデントを持つと、ゆっくりと森の奥に姿を消した……。
「アラクネか。ギルベルトは更に力を付けだんだな」
「仲間を守るためだよ」
「俺もギルベルトには負けていられないな! 暫くは俺達と共に居られるのだろう?」
巨体のラルフは楽しそうに笑いながら俺の方を叩くと、まるで棍棒で殴られているかの様な衝撃を感じた。彼は軽く叩いているのだろうが、人間の俺からすれば生命の危険を感じる程の衝撃だ。やはりラルフは強いのだな。
「勿論。暫くこの場所で訓練をさせて貰うよ」
「うむ。ローラも会えて嬉しいぞ。それに、また新しい仲間が増えたんだな」
「この子はファントムナイトのナイト。俺とバシリウス様、それからナイトの三人で来月の一日に模擬戦を行うんだ」
「まさか、バシリウス様が模擬戦に出場するのか? それで、相手は?」
「三人組のファントムナイトだよ。どうやら百戦錬磨の強者らしくて、残る時間全て訓練に費やしても勝てるか分からない相手らしい」
「それは鍛え甲斐があるという訳だ」
「前向きに考えればそうなるね」
俺はラルフにナイトとの出会いや道具屋の経営を始めた事、ダンジョンでの生活や模擬戦について話した。彼はナイトをアポロニウスから引き離したのは正しい判断だと言ってくれた。
「そういう事なら俺も協力しよう。俺達はギルベルトとローラに命を救われたのだからな。出来る事があったらなんでも言ってくれ」
「ありがとう。それじゃ俺達と戦闘訓練をしてくれるかな」
「任せておけ」
こうしてレッサーミノタウロス達と再会した俺達は、戦士達を剣を交えて訓練を行う事にした……。
「この棍棒ね、ヘルゲンの武器屋で作って貰ったの。ギルベルトも持ってみる?」
「随分立派な棍棒だね」
長さ百五十センチ程の、あまりにも大きすぎる棍棒を握ると、俺の腕力ではピクリとも動かなかった。怪力のエリカだからこそ、巨大な棍棒を扱う事が出来るのだろう。棍棒には無数のスパイクが付いており、エリカが棍棒を地面に振り下ろすと、辺りには雷の魔力が発生して地面に巨大なくぼみを作った。一体どれだけの重量なのだろうか。
やはり俺とナイトがダンジョンに潜っていた間にも、仲間達は訓練を積んでいたのだな。シャルロッテの体から感じる魔力は以前にも増して強くなっている。彼女は俺が贈ったムーンロッドを握りながら、可愛らしい笑みを浮かべて俺を見上げている。ローラも美しいがシャルロッテもまた可愛らしい。
久しぶりに会うアンネさんは燕尾服で森に来たのか、この場には最も似合わない格好をしている。左手にはレイピアを持っており、俺と目が合うと優しい笑みを浮かべて手を差し出した。彼女の手を握ると、ヴェロニカが不満気に俺を見上げた。
「お久しぶりです。ギルベルト様。随分逞しくなりましたね」
「お久しぶりです、アンネさん。ダンジョンでの生活が俺を鍛えてくれたんですよ」
「二週間前とは大違いです。きっと過酷な戦いに身を置いていたのでしょう。それに、頭の上に乗っているモンスターはフェニックスではありませんか?」
「間違いない。ギルベルトは聖獣のフェニックスを仲間にしたのだ。久しぶりだな。ギルベルト……」
ヴェロニカは頬を赤らめながら俺を見つめると、俺の服の裾を掴んだ。それからフェニックスを見つめると、フェニックスはヴェロニカの頭の上に飛び移った。アンネさんがフェニックスに対して失礼ですと咎めると、フェニックスは目に涙を溜めて俺を見つめた。
「こらこら。フェニックス相手に何を言うのだ」
「失礼しました」
ヴェロニカはそんなフェニックスを抱き上げると、満面の笑みを浮かべてフェニックスを見つめた。それからフェニックスは安堵の表情でヴェロニカの胸に顔を埋めた。
「まさか聖獣クラスのモンスターを手懐けるとは。これも魔石ガチャから得たマジックアイテムの力なのか?」
「そうだよ。守護神像っていうマジックアイテムの効果によってフェニックスが現れたんだ」
フェニックスは用が済んだと判断したのか、俺に一礼してから飛び上がると、金色の魔力を散らしながら姿を消した。これからも毎日守護神像に供物を捧げなければならないな。俺が負傷した際には戦場に姿を現してくれるのだから、ローラがもう一人居る様なものだ。
「ヴェロニカ、早速で悪いんだけど、俺は再びフロイデンベルグ公爵様の領地に行かなければならないんだ。それからパーティーで訓練を行い、六月一日にヘルゲンに戻ろうと思う」
「何か用事でもあるのか? 久しぶりに再会出来たのだから、暫くヘルゲンに居れば良いだろうが」
「実は……」
俺はダンジョン内でアラクネと遭遇し、召喚の契約を結んだ事を仲間に話した。バシリウス様は新たな仲間の加入を喜んだが、アラクネとはまだ意思疎通が出来ていない。アラクネがダンジョン内で契約を選択したのは、俺に殺されたくないから。恐怖によるものだろう。
バシリウス様の様に望んで俺の召喚獣になってくれた訳ではない。ダンジョンの中で暮らすなら俺の召喚獣になり、外の世界で暮らす方が良いと判断したためだ。俺はアラクネとの約束を果たすために、レッサーミノタウロス達が暮らす土地に赴き、そこでアラクネを召喚するつもりだ。そうすればアラクネはダンジョン内からフロイデンベルグ様の領地まで一気に移動出来るからな。
レッサーミノタウロス達とアラクネが仲良く暮らしていけるかは分からないが、きっとレッサーミノタウロス達は歓迎してくれる筈だ。
「それなら私も行こう! 久しぶりに再会出来たのだ。私も六月一日までギルベルトと共に居る!」
「ヴェロニカお嬢様。ギルドの仕事はどうするのですか?」
「ああ。ギルドか。アンネに任せるぞ。好きにして構わない」
「やっぱりヴェロニカお嬢様はギルベルト様と一緒に居たいんですね」
「何を言っておる! 私はただ、一緒に居た方がギルベルトを鍛えられると思っただけだぞ! 大魔術師を目指す私が訓練に付き合えば、より効率的にパーティーの戦力を上げる事が出来る!」
「またまた、そんな事を言って。本当にヴェロニカお嬢様は可愛いんですね。素直にギルベルト様と居たいとお伝えすれば良いのに……」
「もう! アンネったら本当にしつこいんだから! 言えば良いのだろう? 私はギルベルトと一緒に居たいのだ! さぁ気が済んだなら早くヘルゲンに戻るのだ」
「分かりました。不在の間は私がギルドの仕事をこなします。それでは皆様。ヴェロニカお嬢様を宜しく頼みます」
「もう……! 私は子供ではないのに!」
ヴェロニカは小さな手でアンネさんの背中を押し、彼女を廃村から出すと、俺達は早速レッサーミノタウロス達が暮らす土地を目指して移動を始める事にした。俺はバシリウス様にガーゴイルの羽衣を渡し、彼に巨大なガーゴイルに変化して貰ってから俺達を運んで貰う事にした。
仲間達と再開してから三日後、高速で空を移動し続けた俺達は、遂にフロイデンベルグ公爵様の領地に到着した。古ぼけた屋敷の扉を開けると、ラルフを始めとする戦士達が駆け付けてきた。俺は久しぶりに会うラルフや戦士達と抱擁を交わしてから、アラクネを一体仲間に入れて欲しいと頼むと、彼等は二つ返事で了承した。
それからアラクネを森の中で召喚すると、彼女はトライデントを抱き締めながら困惑した表情で新たな土地を見つめた。明るい場所で見てみるとアラクネも随分美しく、長く伸びた黒い髪を靡かせながら、陽の光を全身に浴びて喜びを露わにした。
彼女は元々ダンジョンの外で暮らしていたらしく、五年前からダンジョンで生活を始めたのだとか。アラクネを討伐しようとする人間があまりにも多かったため、手頃なダンジョンに逃げ込んだのがダンジョン生活を始める切っ掛けになったらしい。
それからダンジョン内で人間やモンスターを捕食しているうちに体が成長し、ダンジョンから出られなくなったのだとか。人間を喰らっていた過去を持つモンスターを召喚獣にするのは何とも気味が悪いが、アラクネが人間を捕食していたのは、ダンジョン内に食物が無かったからなのだとか。
アラクネは既に人間を襲うつもりはなく、俺の召喚獣としてこれからは力を貸してくれうると誓った。それから彼女はとトライデントを持つと、ゆっくりと森の奥に姿を消した……。
「アラクネか。ギルベルトは更に力を付けだんだな」
「仲間を守るためだよ」
「俺もギルベルトには負けていられないな! 暫くは俺達と共に居られるのだろう?」
巨体のラルフは楽しそうに笑いながら俺の方を叩くと、まるで棍棒で殴られているかの様な衝撃を感じた。彼は軽く叩いているのだろうが、人間の俺からすれば生命の危険を感じる程の衝撃だ。やはりラルフは強いのだな。
「勿論。暫くこの場所で訓練をさせて貰うよ」
「うむ。ローラも会えて嬉しいぞ。それに、また新しい仲間が増えたんだな」
「この子はファントムナイトのナイト。俺とバシリウス様、それからナイトの三人で来月の一日に模擬戦を行うんだ」
「まさか、バシリウス様が模擬戦に出場するのか? それで、相手は?」
「三人組のファントムナイトだよ。どうやら百戦錬磨の強者らしくて、残る時間全て訓練に費やしても勝てるか分からない相手らしい」
「それは鍛え甲斐があるという訳だ」
「前向きに考えればそうなるね」
俺はラルフにナイトとの出会いや道具屋の経営を始めた事、ダンジョンでの生活や模擬戦について話した。彼はナイトをアポロニウスから引き離したのは正しい判断だと言ってくれた。
「そういう事なら俺も協力しよう。俺達はギルベルトとローラに命を救われたのだからな。出来る事があったらなんでも言ってくれ」
「ありがとう。それじゃ俺達と戦闘訓練をしてくれるかな」
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