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第二章「王都イスターツ編」
第四十三話「討伐クエスト」
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ギルドの奥には木製の美しいカウンターがあり、床は大理石製。天井付近にはいくつもの魔石が浮いており、色とりどりの魔石が幻想的に空間を照らしている。白を基調とした空間には木製の椅子やテーブルが並んでおり、ここで冒険者達が交流をしたり、仕事までの時間を潰したりする光景が目に浮かぶ。
ギルドの壁には巨大なクエストボードが掛かっている。クエストの内容が書かれた羊皮紙がいくつもボードに貼られており、冒険者にクエストを受けて貰う環境が整っている事に驚いた。
冒険者はクエストボードからクエストの内容が書かれた羊皮紙を取り、ギルドカードと共にカウンターに提示する。受付が問題なくクエストを達成出来るか確認し、クエストの達成が困難な場合には他のクエストを提案するか、仲間の募集を勧める。
仲間はギルド内で募集する事が出来る。クエストボードの隅には仲間募集の欄があり、ここに希望する仲間の条件を書いた羊皮紙を貼ると希望者が集まる仕組みになっている。
「素晴らしいギルドですね。すぐにでも活動したいです!」
「うむ。ギルドマスター、ユリウス・シュタイン! このギルドを王都で、いやファルケンハイン王国で最高のギルドに育ててくれ! 私は君の活躍に期待しているぞ! 勿論、私だけではなく、国民も皆ユリウス君の活躍に期待しているだろう。さぁ、ギルドマスターとしてメンバーの登録を始めるが良い! 我が娘の登録を私に見せてくれ」
カウンターに入ると、ヴィクトリアがギルドカードをカウンターに置いた。ヴィクトリアの後ろにはボリス、レーネ、イリス、ララ、その他大勢の仲間達や冒険者達が控えている。
「冒険者ギルド・ファルケンハインにようこそ! ギルドマスターのユリウス・シュタインです。本日は冒険者登録をご希望ですか?」
「はい、私はファルケンハイン王国第一王女、ヴィクトリア・フォン・ファルケンハインです。登録をお願いします」
「それではギルドカードを確認します」
既に他のギルドで登録の経験がある場合は、以前のギルドカードをそのまま使用出来る。カウンターの上にある小さな石板にギルドカードを乗せ、ギルドマスターの権限でヴィクトリアのギルド加入を承認する。
カードの裏面に所属ギルドの名前が追加されると、俺はヴィクトリアにカードを返した。
「それでは冒険者様の活躍を期待しております!」
「ええ、ありがとう」
ヴィクトリアの登録が済むと、冒険者達が一斉に拍手を送り、国王陛下も第一王女の冒険者活動再開を心から喜んだ。
俺はギルドの加入条件を設ける事にした。全ての加入者を受け入れるよりも、一定の実力を持っており、王都の防衛に貢献出来る人物を精選する事にしたのだ。「冒険者ギルド・ファルケンハイン所属」という肩書が欲しいために、一度も剣を持った事もない人達が大勢押し寄せたからだ。
所属人数が増えるのは良い事だが、国王陛下が認めたギルドのメンバーが魔物討伐に失敗したり、クエストの最中で命を落としては困るので、俺は加入条件をレベル30以上と決めた。これでもかなり条件は甘い。
ボリスとララが登録すると、レベッカも加入を決めた。彼女は入学試験当日に有名ギルドから勧誘を受けて暫く活動をしていたが、俺達と共に活動する事を決めたのだ。
レーネをはじめとする十五人の獣人の加入を承認し、俺は主要メンバー全員をカウンターに入れ、ギルド加入者の精選を始めた。
俺とボリス、レベッカ、レーネ、イリスの五人がカウンターに立ち、獣人達は加入申請を待つ市民達を誘導し、ヴィクトリアとララはそんな俺達の様子を楽しそうに見つめている。流石に王女であるヴィクトリアに受付業務をさせる訳にもいかないし、未成年のララをカウンターに立たせたくないので、二人には登録終了まで待って貰う事にした。
国王陛下は市民達の様子を暫く満足げに見てから、最後に俺のウィンクを送ってくれると、颯爽とギルドを後にした。ララとヴィクトリアは二人でクエストボードを見つめ、Bランクのクエストが書かれた羊皮紙を手に取った。
「マスター、このクエストに挑戦したいのだけど」
ヴィクトリアが初めて俺をマスターと呼び、記念すべき初クエストはヴィクトリアとララに任せる事にした。クエスト内容はBランク、風属性、グリフォンの討伐。レーネとイリスも二人と共にグリフォン討伐に挑戦したいと言ったので、俺はヴィクトリアをリーダーとした四人のパーティーでグリフォンに挑戦する事を認めた。
Cランクの四人がBランクの討伐クエストを五回こなせばBランクに上がる事が出来る。四人は一緒にランクを上げる事を決めたのだ。俺とボリスは静かに見つめ合うと、俺達も二人でAランクの討伐クエストに挑戦する事を決めた。
四月七日の魔法学校入学までの間で、ヴィクトリア率いるパーティーはBランクを目指し、俺とボリスは二人でAランクを目指す。ギルドの受付は獣人のリーダーであるアレックスさんに任せる事にした。
彼はCランクの称号を持つ戦士で、レベルは55。優れた戦士でありながら、受付をするには十分すぎる程の実力者である。アレックスさんを正式にギルドの職員として雇用し、彼がクエストと冒険者の受付を担当する事になった。
それから五時間ほど加入希望者を精選すると、俺達は百二十名の新規加入者を得た。加入条件であるレベル30を満たしていても、体内に悪質な闇属性を秘める者は加入を拒否した。
また、ギルドの石板は登録者の過去の討伐履歴や、クエスト成功率も表示出来るので、途中でクエストを投げ出した者や、ギルドに所属していても活動をしていない者は加入を断った。石板の情報は全てのギルドで共有されており、加入希望者が魔力を注ぐだけで、ギルドの職員は様々な情報を知る事が出来る。
全ての生物が体内に秘める魔力は、一人として同じ波長のものはない。石板は生物が秘める魔力の波長を瞬時に読み取り、世界各地の石板に共有する。石板同士が念話に近い魔法を使用し、遠く離れた石板とも情報を共有し合っているのだ。
この石板の情報は衛兵も確認する事が出来る。都市に立ち入る者の素性を調べる際に使用する事もあるのだ。より多くのクエストをこなし、地域を守り続けた者は様々な場所で優遇され、恩恵を得る。
冒険者登録を続けた俺達はすっかり疲れ果てた。登録だけで随分時間を使ってしまった。ヴィクトリアのパーティーは明日からグリフォン討伐の旅に出るらしい。王都イスターツから馬車で三日程移動した山でグリフォンの生息が確認され、グリフォンが行商人などを襲撃しているのだとか。
ファルケンハイン王国内で国民を襲う魔物が出現すれば、国王陛下から騎士の称号を授かった者が現場に急行して事件を解決するか、各ギルドにクエストの案件を回して解決を図る。国防と冒険者ギルドは切っても切れない関係なのだ。
衛兵は基本的に都市を守り、冒険者は所属するギルドの近隣地域を防衛する。王都イスターツの冒険者なら、王都周辺の魔物を討伐して地域の安全を確保するのだ。勿論、王国内の辺境の地域等で、一般の冒険者では太刀打ちできない魔物が現れた場合には、王都から高ランクの冒険者が派遣されたり、騎士が派遣されたりする。
国王陛下から騎士の称号を得た、冒険者として最高の実力を持つ者は王国防衛のために国王陛下から直々に討伐を依頼される。エレオノーレ様もかつて迷宮都市ベーレントの付近で生息が確認されたレッドドラゴンを討伐した事がある。
エレオノーレ様もまた国王陛下から騎士の称号を授かった、最高の実力を持つ冒険者なのだ。
「皆さん、今日はご苦労様でした。これにて受付業務を終了します」
仕事の終了を仲間達に告げると、仲間達はやっと仕事から開放されたと歓喜の声を上げた。獣人達は久しぶりに再会したイリスと語り合い、ヴィクトリアは明日からのグリフォン討伐について仲間と相談している様だ。
俺はボリスと共にクエストボードの前に立つと、Aランクのクエストを探した。クエストボードの高い位置に古ぼけた羊皮紙が貼ってある事に気が付いた。きっと今まで様々なギルドを転々とし、誰も挑戦しなかった難易度の高いクエストなのだろう。
「Aランク、水属性、リヴァイアサンの討伐。一体につき三百万ゴールド」
「僕達には丁度良い敵だな。幸い、僕は水属性の魔物に対して有効な雷属性の使い手だ。ユリウス、僕達がリヴァイアサンを狩ろう!」
「どうやら湖の近くにあった農村がリヴァイアサンの魔法によって水没したらしいよ。農村一つを潰した魔物の討伐か。面白そうだね」
「ああ、入学前に僕達の強さを再び証明しよう」
リヴァイアサン一体討伐につき三百ゴールド。王都イスターツの周辺では三体のリヴァイアサンの生息が確認されている。合計で三回、リヴァイアサンの討伐が出来るのだ。BランクからAランクに上がるには、Aランクの討伐クエストを三回こなさなければならない。
リヴァイアサンを三度倒し、Aランクの称号を得てみせる。ヴィクトリア達Cランクの女性陣は、Bランクの俺とボリスの力を借りてクエストを達成するよりは、同じCランク同士で高みを目指したいらしい。
俺も実力が最も近いボリスとなら、ヴィクトリアの心配をせずに存分に暴れられるので都合が良い。勿論、ヴィクトリア達がグリフォンとの戦いに敗北しないかも心配だが、ララが居れば問題ないだろう。Sランクのフェンリルの血を引くララが居れば大抵の魔物は退けられる。
実際、ララはBランクのレッドドラゴンを軽々と仕留めている。彼女の実力は既にBランク、すなわちギルドマスタークラスである事は間違いないのだ。
受付業務を終えると、以前レッドドラゴンの素材から武具の制作を依頼した鍛冶職人が現れた。レッドドラゴンの素材を買い取って貰い、ミスリルと素材を組み合わせた武具の制作を依頼していたのだ。
「シュタイン様! ギルド設立おめでとうございます! こちらが注文の品です!」
四十代程の職人がマジックバックを開くと、ジークフリートのための巨大なバトルアクスを取り出した。ギルドの隅で退屈そうにしていたジークフリートが武器を見て目を輝かせた。
「俺がこの武器を使っても良いのか!?」
「ああ、ジークフリートのために作って貰ったんだよ」
「うむ、良い武器だ。これなら俺の力にも耐えられるだろう」
ジークフリートが青白く輝く両刃の斧を握ると、刃に強烈な炎が発生した。火属性の魔物であるレッドドラゴンの素材を用いて制作した武器は、同属性である火属性のミノタウロスと相性が良いのだ。
バトルアクスが彼の魔力を引き出す様に強烈な魔力を放つと、ギルド内の温度が一気に上がった。ララは暑がりだからか、室内に冷気を発生させて温度を下げた。
それから職人はフランツのロングソード、エドガーのハルバード、ロビンのラウンドシールドとメイスを取り出した。三体のパラディンは俺に対して跪き、俺はパラディン達に新たな武器を授けた。
ミスリル製の武器を手に入れたパラディン達は三人で見つめ合って喜び、新装備の性能を試すために、ジークフリートに勝負を挑んだ。
三人は聖属性のエンチャント、すなわちエンチャント・ホーリーを武器に掛け、ジークフリートに攻撃を仕掛けたが、ジークフリートも新たな武器に興奮し、パラディン達の攻撃をいとも簡単に受け止めた。
Cランクのパラディンが三体で挑んでもBランクのミノタウロスには敵わなかった。しかし、仲間がますます強くなる事は良い事だ。ジークフリートの実力はボリスよりも上だが、俺よりは僅かに劣っている。
ジークフリートのレベルは70、ボリスのレベルは最近62まで上がった。魔力の強さも大きく差があるし、ジークフリートの方が遥かに筋肉が大きいから、ボリスではジークフリートの攻撃を受けられないのだ。
「ユリウス! リヴァイアサンとの戦い、俺も参加させて貰うからな!」
「ああ、ジークフリートは俺の召喚獣なんだから、一緒にクエストに挑戦出来るね」
「うむ。楽しみで仕方がない。Aランクの魔物討伐! Bランクの俺の力が通用するのか試したい! 属性的には俺の方が不利だが、この鍛え上げた筋肉でリヴァイアサンを仕留めてみせる!」
ジークフリートが上腕二頭筋を肥大させると、俺はかつて火のダンジョンでブラッドクロスを無効化された事を思い出した。ジークフリートはCランク・デュラハンの固有魔法であるブラッドクロスを胸筋で受け止めたのだ。
俺の方が遥かに魔力が高いにもかかわらず、ジークフリートは最高の肉体で攻撃魔法をかき消した。彼ならもしかすると水属性のリヴァイアサンを相手にしても互角に戦えるかもしれない。
鍛冶職人が帰ると、俺達もすぐに解散し、クエスト挑戦のための計画を立て始めた。
ギルドの壁には巨大なクエストボードが掛かっている。クエストの内容が書かれた羊皮紙がいくつもボードに貼られており、冒険者にクエストを受けて貰う環境が整っている事に驚いた。
冒険者はクエストボードからクエストの内容が書かれた羊皮紙を取り、ギルドカードと共にカウンターに提示する。受付が問題なくクエストを達成出来るか確認し、クエストの達成が困難な場合には他のクエストを提案するか、仲間の募集を勧める。
仲間はギルド内で募集する事が出来る。クエストボードの隅には仲間募集の欄があり、ここに希望する仲間の条件を書いた羊皮紙を貼ると希望者が集まる仕組みになっている。
「素晴らしいギルドですね。すぐにでも活動したいです!」
「うむ。ギルドマスター、ユリウス・シュタイン! このギルドを王都で、いやファルケンハイン王国で最高のギルドに育ててくれ! 私は君の活躍に期待しているぞ! 勿論、私だけではなく、国民も皆ユリウス君の活躍に期待しているだろう。さぁ、ギルドマスターとしてメンバーの登録を始めるが良い! 我が娘の登録を私に見せてくれ」
カウンターに入ると、ヴィクトリアがギルドカードをカウンターに置いた。ヴィクトリアの後ろにはボリス、レーネ、イリス、ララ、その他大勢の仲間達や冒険者達が控えている。
「冒険者ギルド・ファルケンハインにようこそ! ギルドマスターのユリウス・シュタインです。本日は冒険者登録をご希望ですか?」
「はい、私はファルケンハイン王国第一王女、ヴィクトリア・フォン・ファルケンハインです。登録をお願いします」
「それではギルドカードを確認します」
既に他のギルドで登録の経験がある場合は、以前のギルドカードをそのまま使用出来る。カウンターの上にある小さな石板にギルドカードを乗せ、ギルドマスターの権限でヴィクトリアのギルド加入を承認する。
カードの裏面に所属ギルドの名前が追加されると、俺はヴィクトリアにカードを返した。
「それでは冒険者様の活躍を期待しております!」
「ええ、ありがとう」
ヴィクトリアの登録が済むと、冒険者達が一斉に拍手を送り、国王陛下も第一王女の冒険者活動再開を心から喜んだ。
俺はギルドの加入条件を設ける事にした。全ての加入者を受け入れるよりも、一定の実力を持っており、王都の防衛に貢献出来る人物を精選する事にしたのだ。「冒険者ギルド・ファルケンハイン所属」という肩書が欲しいために、一度も剣を持った事もない人達が大勢押し寄せたからだ。
所属人数が増えるのは良い事だが、国王陛下が認めたギルドのメンバーが魔物討伐に失敗したり、クエストの最中で命を落としては困るので、俺は加入条件をレベル30以上と決めた。これでもかなり条件は甘い。
ボリスとララが登録すると、レベッカも加入を決めた。彼女は入学試験当日に有名ギルドから勧誘を受けて暫く活動をしていたが、俺達と共に活動する事を決めたのだ。
レーネをはじめとする十五人の獣人の加入を承認し、俺は主要メンバー全員をカウンターに入れ、ギルド加入者の精選を始めた。
俺とボリス、レベッカ、レーネ、イリスの五人がカウンターに立ち、獣人達は加入申請を待つ市民達を誘導し、ヴィクトリアとララはそんな俺達の様子を楽しそうに見つめている。流石に王女であるヴィクトリアに受付業務をさせる訳にもいかないし、未成年のララをカウンターに立たせたくないので、二人には登録終了まで待って貰う事にした。
国王陛下は市民達の様子を暫く満足げに見てから、最後に俺のウィンクを送ってくれると、颯爽とギルドを後にした。ララとヴィクトリアは二人でクエストボードを見つめ、Bランクのクエストが書かれた羊皮紙を手に取った。
「マスター、このクエストに挑戦したいのだけど」
ヴィクトリアが初めて俺をマスターと呼び、記念すべき初クエストはヴィクトリアとララに任せる事にした。クエスト内容はBランク、風属性、グリフォンの討伐。レーネとイリスも二人と共にグリフォン討伐に挑戦したいと言ったので、俺はヴィクトリアをリーダーとした四人のパーティーでグリフォンに挑戦する事を認めた。
Cランクの四人がBランクの討伐クエストを五回こなせばBランクに上がる事が出来る。四人は一緒にランクを上げる事を決めたのだ。俺とボリスは静かに見つめ合うと、俺達も二人でAランクの討伐クエストに挑戦する事を決めた。
四月七日の魔法学校入学までの間で、ヴィクトリア率いるパーティーはBランクを目指し、俺とボリスは二人でAランクを目指す。ギルドの受付は獣人のリーダーであるアレックスさんに任せる事にした。
彼はCランクの称号を持つ戦士で、レベルは55。優れた戦士でありながら、受付をするには十分すぎる程の実力者である。アレックスさんを正式にギルドの職員として雇用し、彼がクエストと冒険者の受付を担当する事になった。
それから五時間ほど加入希望者を精選すると、俺達は百二十名の新規加入者を得た。加入条件であるレベル30を満たしていても、体内に悪質な闇属性を秘める者は加入を拒否した。
また、ギルドの石板は登録者の過去の討伐履歴や、クエスト成功率も表示出来るので、途中でクエストを投げ出した者や、ギルドに所属していても活動をしていない者は加入を断った。石板の情報は全てのギルドで共有されており、加入希望者が魔力を注ぐだけで、ギルドの職員は様々な情報を知る事が出来る。
全ての生物が体内に秘める魔力は、一人として同じ波長のものはない。石板は生物が秘める魔力の波長を瞬時に読み取り、世界各地の石板に共有する。石板同士が念話に近い魔法を使用し、遠く離れた石板とも情報を共有し合っているのだ。
この石板の情報は衛兵も確認する事が出来る。都市に立ち入る者の素性を調べる際に使用する事もあるのだ。より多くのクエストをこなし、地域を守り続けた者は様々な場所で優遇され、恩恵を得る。
冒険者登録を続けた俺達はすっかり疲れ果てた。登録だけで随分時間を使ってしまった。ヴィクトリアのパーティーは明日からグリフォン討伐の旅に出るらしい。王都イスターツから馬車で三日程移動した山でグリフォンの生息が確認され、グリフォンが行商人などを襲撃しているのだとか。
ファルケンハイン王国内で国民を襲う魔物が出現すれば、国王陛下から騎士の称号を授かった者が現場に急行して事件を解決するか、各ギルドにクエストの案件を回して解決を図る。国防と冒険者ギルドは切っても切れない関係なのだ。
衛兵は基本的に都市を守り、冒険者は所属するギルドの近隣地域を防衛する。王都イスターツの冒険者なら、王都周辺の魔物を討伐して地域の安全を確保するのだ。勿論、王国内の辺境の地域等で、一般の冒険者では太刀打ちできない魔物が現れた場合には、王都から高ランクの冒険者が派遣されたり、騎士が派遣されたりする。
国王陛下から騎士の称号を得た、冒険者として最高の実力を持つ者は王国防衛のために国王陛下から直々に討伐を依頼される。エレオノーレ様もかつて迷宮都市ベーレントの付近で生息が確認されたレッドドラゴンを討伐した事がある。
エレオノーレ様もまた国王陛下から騎士の称号を授かった、最高の実力を持つ冒険者なのだ。
「皆さん、今日はご苦労様でした。これにて受付業務を終了します」
仕事の終了を仲間達に告げると、仲間達はやっと仕事から開放されたと歓喜の声を上げた。獣人達は久しぶりに再会したイリスと語り合い、ヴィクトリアは明日からのグリフォン討伐について仲間と相談している様だ。
俺はボリスと共にクエストボードの前に立つと、Aランクのクエストを探した。クエストボードの高い位置に古ぼけた羊皮紙が貼ってある事に気が付いた。きっと今まで様々なギルドを転々とし、誰も挑戦しなかった難易度の高いクエストなのだろう。
「Aランク、水属性、リヴァイアサンの討伐。一体につき三百万ゴールド」
「僕達には丁度良い敵だな。幸い、僕は水属性の魔物に対して有効な雷属性の使い手だ。ユリウス、僕達がリヴァイアサンを狩ろう!」
「どうやら湖の近くにあった農村がリヴァイアサンの魔法によって水没したらしいよ。農村一つを潰した魔物の討伐か。面白そうだね」
「ああ、入学前に僕達の強さを再び証明しよう」
リヴァイアサン一体討伐につき三百ゴールド。王都イスターツの周辺では三体のリヴァイアサンの生息が確認されている。合計で三回、リヴァイアサンの討伐が出来るのだ。BランクからAランクに上がるには、Aランクの討伐クエストを三回こなさなければならない。
リヴァイアサンを三度倒し、Aランクの称号を得てみせる。ヴィクトリア達Cランクの女性陣は、Bランクの俺とボリスの力を借りてクエストを達成するよりは、同じCランク同士で高みを目指したいらしい。
俺も実力が最も近いボリスとなら、ヴィクトリアの心配をせずに存分に暴れられるので都合が良い。勿論、ヴィクトリア達がグリフォンとの戦いに敗北しないかも心配だが、ララが居れば問題ないだろう。Sランクのフェンリルの血を引くララが居れば大抵の魔物は退けられる。
実際、ララはBランクのレッドドラゴンを軽々と仕留めている。彼女の実力は既にBランク、すなわちギルドマスタークラスである事は間違いないのだ。
受付業務を終えると、以前レッドドラゴンの素材から武具の制作を依頼した鍛冶職人が現れた。レッドドラゴンの素材を買い取って貰い、ミスリルと素材を組み合わせた武具の制作を依頼していたのだ。
「シュタイン様! ギルド設立おめでとうございます! こちらが注文の品です!」
四十代程の職人がマジックバックを開くと、ジークフリートのための巨大なバトルアクスを取り出した。ギルドの隅で退屈そうにしていたジークフリートが武器を見て目を輝かせた。
「俺がこの武器を使っても良いのか!?」
「ああ、ジークフリートのために作って貰ったんだよ」
「うむ、良い武器だ。これなら俺の力にも耐えられるだろう」
ジークフリートが青白く輝く両刃の斧を握ると、刃に強烈な炎が発生した。火属性の魔物であるレッドドラゴンの素材を用いて制作した武器は、同属性である火属性のミノタウロスと相性が良いのだ。
バトルアクスが彼の魔力を引き出す様に強烈な魔力を放つと、ギルド内の温度が一気に上がった。ララは暑がりだからか、室内に冷気を発生させて温度を下げた。
それから職人はフランツのロングソード、エドガーのハルバード、ロビンのラウンドシールドとメイスを取り出した。三体のパラディンは俺に対して跪き、俺はパラディン達に新たな武器を授けた。
ミスリル製の武器を手に入れたパラディン達は三人で見つめ合って喜び、新装備の性能を試すために、ジークフリートに勝負を挑んだ。
三人は聖属性のエンチャント、すなわちエンチャント・ホーリーを武器に掛け、ジークフリートに攻撃を仕掛けたが、ジークフリートも新たな武器に興奮し、パラディン達の攻撃をいとも簡単に受け止めた。
Cランクのパラディンが三体で挑んでもBランクのミノタウロスには敵わなかった。しかし、仲間がますます強くなる事は良い事だ。ジークフリートの実力はボリスよりも上だが、俺よりは僅かに劣っている。
ジークフリートのレベルは70、ボリスのレベルは最近62まで上がった。魔力の強さも大きく差があるし、ジークフリートの方が遥かに筋肉が大きいから、ボリスではジークフリートの攻撃を受けられないのだ。
「ユリウス! リヴァイアサンとの戦い、俺も参加させて貰うからな!」
「ああ、ジークフリートは俺の召喚獣なんだから、一緒にクエストに挑戦出来るね」
「うむ。楽しみで仕方がない。Aランクの魔物討伐! Bランクの俺の力が通用するのか試したい! 属性的には俺の方が不利だが、この鍛え上げた筋肉でリヴァイアサンを仕留めてみせる!」
ジークフリートが上腕二頭筋を肥大させると、俺はかつて火のダンジョンでブラッドクロスを無効化された事を思い出した。ジークフリートはCランク・デュラハンの固有魔法であるブラッドクロスを胸筋で受け止めたのだ。
俺の方が遥かに魔力が高いにもかかわらず、ジークフリートは最高の肉体で攻撃魔法をかき消した。彼ならもしかすると水属性のリヴァイアサンを相手にしても互角に戦えるかもしれない。
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荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
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