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第一章「迷宮都市フェーベル編」
第七話「決闘」
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村に入る前にエミリアと共に昼食を食べた。小さなパンと乾燥肉を二人で分けて食べると、エミリアは随分美味しそうに食事をした。人間の食べ物を食べたくてもシュルツ村に戻る事は出来ないから、食事は我慢していたのだとか。勿論、エミリアに栄養は必要ないが、たまには美味しい食べ物も必要だろう。
「それじゃすぐに戻ってくるからね」
「はい、ここでお待ちしています」
「何だか別れるのが寂しいけど、一時間以内に戻るから!」
「そうですね、私もレオンさんとずっと一緒に居たいです。家を出て私と暮らすのですから、しっかり準備をしてきて下さいね」
エミリアが俺を見送ってくれると、俺はすぐに村に入った。いったいグレートゴブリンの魔石がいくらになるのか、楽しみで仕方がない。まずは家に戻り、両親に魔石を見せてエミリアとの出会いを話そう。
村に入ると一番出会いたくない男と遭遇した。アレックス・グリム。金髪を靡かせ、銀の美しい杖を持ち、我が物顔で村を歩いている。喋らなければ男の俺が見ても格好良く、尊敬出来る人間なのだが、性格が圧倒的に悪い。
「これはこれは! 無属性のシュタイナーは今日もゴブリン狩りか? 微精霊の加護すら持たないお前はゴブリン程度の魔物しか狩れないんだろう? 俺は今日、森で魔獣のブラックウルフを仕留めた。これがその魔石だ。お前が一生かかっても倒せない魔物だぞ」
ブラックウルフはシュルツ村の近辺に生息する魔獣クラスの魔物の中でも最も強く、ブラックウルフに殺される村人も多い。火属性の魔物で、ファイアボールの魔法を自在に操る。森でブラックウルフと遭遇して生き延びられる者は少なく、エミリアでも戦闘を避ける程の相手だ。
勿論、エミリアは既に契約者を得て、魔力を存分に使えるから、対等以上に渡り合えるだろう。今までのエミリアは魔力を温存してきたが、これからはいくらでも魔力を使えるのだ。俺とエミリアが協力すれば、短時間で大量の魔物を狩り、一気にお金を稼ぐ事も出来る筈だ。
「俺の魔石に見とれて言葉も出ないのか? まぁ無理もないだろう。お前には一生倒す事も出来ないブラックウルフを俺は魔法一発で仕留めたのだからな! まぁ、せいぜいゴブリンに殺されない様に気をつけるんだな」
「確かにお前は凄いよ。俺とお前では生まれ持った物が違う」
「やっと理解したのか。お前は一生俺を超える事は出来ない。お前は魔法が使えないんだからな。落ちこぼれはゴブリンでも買って小銭でも稼いでいるが良い。どうせお前は一生加護を授かれない出来損ないのシュタイナーなんだからな」
「それはどうかな」
俺はグリムに右手を向けると、氷の塊を作り上げた。幼い頃からさんざん馬鹿にされてきた。何度も魔法を見せつけられ、罵声を浴びせられた。そんな生活も遂に終わるのだ。
「どうしてお前が氷を作り出せるんだ! こんな事は間違っている……! 無属性のシュタイナーのくせに!」
「間違いじゃないんだよ、グリム。俺は加護を得たんだ」
「お前に加護を授ける物好きの微精霊なんて居ない! どんなマジックアイテムを使ったんだ!? 氷を作り出せるマジックアイテムでも身に付けているんだろう?」
「そんな物はない。これは俺自身が作り上げた魔法だ。それに、俺は精霊の加護を受けた。微精霊の加護ではない」
「嘘をつくな! お前ごときに加護を授ける精霊は居ない!」
グリムが怒り狂って両手を俺に向けると、右手からは炎が、左手からは土の塊が発生した。左右の手から異なる属性を発生させられるグリムは間違いなく天才なのだ。俺とグリムでは生まれ持った物が違う。だが、俺はこれから訓練を積み、グリムを超える魔術師になる。
グリムが右手に灯した炎を俺に向けて飛ばすと、俺は瞬時に氷の塊を飛ばした。空中で炎と氷が激突し、二つの魔法が消滅した。俺の魔法がグリムの魔法をかき消したのだ。
「アースジャベリン!」
グリムが魔法を唱えると、土の塊が槍に変わり、高速で俺に向かって飛んできた。流石に全力のグリムの魔法を落とす事は出来ない。十四年間、グリムが鍛え続けたきた魔法なのだ。一発目の炎は小手調べだったが、今回の魔法は本気なのだろう。
百五十センチを超える巨大な土の槍が俺の心臓に向かって飛ぶと、突如俺の目の前に氷の盾が現れた。村の外からエミリアが援護してくれているのだろう。防御魔法を得た俺は、再び右手を突き出して氷を作り上げた。
「アイスショット!」
氷の塊を連発して飛ばすと、流石のグリムも愕然とした表情を浮かべた。それから俺とグリムは徹底的に打ち合い、グリムの土の槍が何度も俺を襲ったが、エミリアの鉄壁の防御魔法に守られて、俺の体には傷一つ付かず、グリムの腹部にアイスショットを叩き込む事に成功したのだ。
遂にグリムに攻撃を当てられた。最高の気分だ。俺を馬鹿にするのが生き甲斐の様な忌々しい隣人を倒したのだ。
「そんな……、馬鹿な! 無属性のシュタイナーが俺に攻撃を当てるなんて……!」
「グリム、これからは俺を見下すのはやめろ。俺は精霊魔術師を目指す」
「お前なんかが精霊魔術師……? ふざけるなよ……! 俺は王都ローゼンハインで最強の魔術師になる! せいぜい精霊狩りに殺されない様に気をつける事だな」
グリムは捨て台詞を吐くと、明らかに動揺しながら慌てて逃げ出した。気が付くと俺の回りには村人達が集まっており、大勢の前でグリムは無様に敗退したのだ。やっとグリムに勝てた。エミリアと協力して勝利を収めたのだ。やはり俺とエミリアは相性が良い。だが、剣があればもっと有利に戦えただろう。
エミリアの氷の盾が消滅すると、俺は遠くに居る彼女に感謝の気持ちを抱いた。どこに居ても俺を守ってくれようとする。エミリアは俺の事を随分前から知っていたのだ。これからは俺がエミリアを守る。エミリアを守れる強い魔術師になるために訓練を始めよう。
グリムとの勝負を終えて家に戻ると、両親も窓から俺達の戦いを見ていたのか、涙を流しながら俺を抱き締めてくれた……。
「それじゃすぐに戻ってくるからね」
「はい、ここでお待ちしています」
「何だか別れるのが寂しいけど、一時間以内に戻るから!」
「そうですね、私もレオンさんとずっと一緒に居たいです。家を出て私と暮らすのですから、しっかり準備をしてきて下さいね」
エミリアが俺を見送ってくれると、俺はすぐに村に入った。いったいグレートゴブリンの魔石がいくらになるのか、楽しみで仕方がない。まずは家に戻り、両親に魔石を見せてエミリアとの出会いを話そう。
村に入ると一番出会いたくない男と遭遇した。アレックス・グリム。金髪を靡かせ、銀の美しい杖を持ち、我が物顔で村を歩いている。喋らなければ男の俺が見ても格好良く、尊敬出来る人間なのだが、性格が圧倒的に悪い。
「これはこれは! 無属性のシュタイナーは今日もゴブリン狩りか? 微精霊の加護すら持たないお前はゴブリン程度の魔物しか狩れないんだろう? 俺は今日、森で魔獣のブラックウルフを仕留めた。これがその魔石だ。お前が一生かかっても倒せない魔物だぞ」
ブラックウルフはシュルツ村の近辺に生息する魔獣クラスの魔物の中でも最も強く、ブラックウルフに殺される村人も多い。火属性の魔物で、ファイアボールの魔法を自在に操る。森でブラックウルフと遭遇して生き延びられる者は少なく、エミリアでも戦闘を避ける程の相手だ。
勿論、エミリアは既に契約者を得て、魔力を存分に使えるから、対等以上に渡り合えるだろう。今までのエミリアは魔力を温存してきたが、これからはいくらでも魔力を使えるのだ。俺とエミリアが協力すれば、短時間で大量の魔物を狩り、一気にお金を稼ぐ事も出来る筈だ。
「俺の魔石に見とれて言葉も出ないのか? まぁ無理もないだろう。お前には一生倒す事も出来ないブラックウルフを俺は魔法一発で仕留めたのだからな! まぁ、せいぜいゴブリンに殺されない様に気をつけるんだな」
「確かにお前は凄いよ。俺とお前では生まれ持った物が違う」
「やっと理解したのか。お前は一生俺を超える事は出来ない。お前は魔法が使えないんだからな。落ちこぼれはゴブリンでも買って小銭でも稼いでいるが良い。どうせお前は一生加護を授かれない出来損ないのシュタイナーなんだからな」
「それはどうかな」
俺はグリムに右手を向けると、氷の塊を作り上げた。幼い頃からさんざん馬鹿にされてきた。何度も魔法を見せつけられ、罵声を浴びせられた。そんな生活も遂に終わるのだ。
「どうしてお前が氷を作り出せるんだ! こんな事は間違っている……! 無属性のシュタイナーのくせに!」
「間違いじゃないんだよ、グリム。俺は加護を得たんだ」
「お前に加護を授ける物好きの微精霊なんて居ない! どんなマジックアイテムを使ったんだ!? 氷を作り出せるマジックアイテムでも身に付けているんだろう?」
「そんな物はない。これは俺自身が作り上げた魔法だ。それに、俺は精霊の加護を受けた。微精霊の加護ではない」
「嘘をつくな! お前ごときに加護を授ける精霊は居ない!」
グリムが怒り狂って両手を俺に向けると、右手からは炎が、左手からは土の塊が発生した。左右の手から異なる属性を発生させられるグリムは間違いなく天才なのだ。俺とグリムでは生まれ持った物が違う。だが、俺はこれから訓練を積み、グリムを超える魔術師になる。
グリムが右手に灯した炎を俺に向けて飛ばすと、俺は瞬時に氷の塊を飛ばした。空中で炎と氷が激突し、二つの魔法が消滅した。俺の魔法がグリムの魔法をかき消したのだ。
「アースジャベリン!」
グリムが魔法を唱えると、土の塊が槍に変わり、高速で俺に向かって飛んできた。流石に全力のグリムの魔法を落とす事は出来ない。十四年間、グリムが鍛え続けたきた魔法なのだ。一発目の炎は小手調べだったが、今回の魔法は本気なのだろう。
百五十センチを超える巨大な土の槍が俺の心臓に向かって飛ぶと、突如俺の目の前に氷の盾が現れた。村の外からエミリアが援護してくれているのだろう。防御魔法を得た俺は、再び右手を突き出して氷を作り上げた。
「アイスショット!」
氷の塊を連発して飛ばすと、流石のグリムも愕然とした表情を浮かべた。それから俺とグリムは徹底的に打ち合い、グリムの土の槍が何度も俺を襲ったが、エミリアの鉄壁の防御魔法に守られて、俺の体には傷一つ付かず、グリムの腹部にアイスショットを叩き込む事に成功したのだ。
遂にグリムに攻撃を当てられた。最高の気分だ。俺を馬鹿にするのが生き甲斐の様な忌々しい隣人を倒したのだ。
「そんな……、馬鹿な! 無属性のシュタイナーが俺に攻撃を当てるなんて……!」
「グリム、これからは俺を見下すのはやめろ。俺は精霊魔術師を目指す」
「お前なんかが精霊魔術師……? ふざけるなよ……! 俺は王都ローゼンハインで最強の魔術師になる! せいぜい精霊狩りに殺されない様に気をつける事だな」
グリムは捨て台詞を吐くと、明らかに動揺しながら慌てて逃げ出した。気が付くと俺の回りには村人達が集まっており、大勢の前でグリムは無様に敗退したのだ。やっとグリムに勝てた。エミリアと協力して勝利を収めたのだ。やはり俺とエミリアは相性が良い。だが、剣があればもっと有利に戦えただろう。
エミリアの氷の盾が消滅すると、俺は遠くに居る彼女に感謝の気持ちを抱いた。どこに居ても俺を守ってくれようとする。エミリアは俺の事を随分前から知っていたのだ。これからは俺がエミリアを守る。エミリアを守れる強い魔術師になるために訓練を始めよう。
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