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第一章「迷宮都市フェーベル編」
第十一話「精霊と人間の絆」
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迷いの森の深部にある遺跡に到着した。これから三週間過ごす俺の新居である。野営の経験はあるが、長期間森で過ごすのは初めてだ。新たな生活とエミリアとの出会いを素直に喜びたいが、俺達を狙う精霊狩りの事を考えると気分が重くなる。
「エミリア、実はシュルツ村から俺を尾行している奴らが居るんだ」
「わかっていますよ、レオンさん。安心して下さい、レオンさんに手を出そうとしたら氷漬けにしますから。私とレオンさんの新生活の邪魔なんてさせません」
「ありがとう。だけど、精霊狩りは俺が退治するよ。加護を授けてくれた精霊を守るのは人間の役目だからさ」
「何を言っているんですか? 私とレオンさんは二人で一つ。精霊と人間はお互いの命が尽きるまで共に生きる。協力して精霊狩りを退治すればいいんですよ」
流石にエミリアは命を狙われる事に慣れているのか、怯える様子もない。こんなに幼いのに襲われる事に慣れているのだ。平和な村で安全な暮らしを送ってきた俺とは育ち方が違う。
それから俺達は荷物を遺跡に運び入れた。エミリアが暮らしている建物は遺跡の最深部にある背の高い石造りの建物だ。かつては催事などが行われていたであろう広い空間には荷物等はなく、着替えの服がいくつかあるだけだが、長年同じ服を着ているのか、随分と痛んでいる。
「この服はお気に入りなんですが、そろそろ買い替える必要がありそうですね……」
エミリアがワンピースを手に取ると、俺は父が衣類を用意してくれていた事を思い出した。俺の服だけではなく、女物の服もあった筈だ。
俺はエミリアのための服を遺跡に運び入れると、彼女は目に涙を浮かべながら新しい服を抱きしめた。なんと愛らしいのだろうか。エミリアと居るだけで心が穏やかになる。何とも言えない幸福を覚えるのだ。
やはり人間は精霊なしでは生きられない生き物なのだ。精霊もまた人間の魔力を糧に生きる。人間と精霊は一心同体。人間は精霊が成長するための魔力を提供し、精霊は人間に魔物と対抗する力を授ける。
すぐにでも魔法の練習を始めたいが、まずはエミリアのために夕食を作ろう。父が大量の食料を用意してくれたので、俺は調理道具と食料を遺跡に運び入れた。壁画にも人間と精霊が共に料理を作り、共に酒を飲みながら語り合う場面がある。
「私、契約者さんと料理を作るのが夢だったんです! いつかレオンさんと知り合えたら、この遺跡で一緒に料理を作って、夜遅くまで語り合ってみたいなって思っていたんです。私の夢が遂に叶うんですね……」
「喜んで貰えて嬉しいよ。俺も精霊と食事をするのが夢だった。というより、精霊の居る生活が夢だったんだ。俺だけシュルツ村で微精霊の加護を持っていなかったから、精霊が居る生活に憧れていたんだよ」
「やはり私達の出会いは偶然ではなかったんですね……。レオンさんと出会えて、私は本当に幸せです」
些細な事にも感動し、すぐに涙を流すエミリアに俺は恋心を抱いた。人間と精霊が結婚するという事はよくあるらしい。精霊の加護を持つ者は少ないが、精霊と出会えた強運の持ち主の大半は精霊と結婚する。
精霊と人間の間に生まれる子供は通常の人間よりも遥かに高い魔法能力を持つ。精霊とも人間とも異なる存在だが、限りなく人間に近い性質を持っている。体内に精霊石を持たないので、やはり人間に分類されるのだろう。勿論、魔力も時間の経過と共に回復する。
「一緒に晩御飯を作ろうか」
「はい! 私、料理って初めてなので、どうしたら良いか分かりません……。レオンさん、私に一から料理を教えて下さい。レオンさんの食事は私が用意するんです!」
「ああ、良いよ。と言っても、俺が知ってる料理なんて殆どないけどね」
「それでも良いんです。レオンさんが好んで食べる物を作れる様になりたいんです」
エミリアが俺を見上げて微笑むと、彼女の美貌に思わず胸が高鳴った。遺跡の天井付近には火の魔力を秘める魔石が浮かんでおり、魔石が放つ明かりが室内を照らしている。こんなに幻想的な空間は初めてだ。
魔石が暗闇を晴らして壁画を照らし、人間と精霊の暮らしを描いた壁画が美しく浮かび上がっている。人間と共に魔物を狩る精霊の姿や、人間と寝食を共にする精霊の姿。どの精霊も今のエミリアの様に楽しそうで、喜びに満ちた生活を送っていた事が理解出来る。
毎日この壁画を見ながら暮らしていたら、人間と食事をする事に夢を抱く気持ちも分かる気がする。エミリアはたった一人で生きていた。俺よりも遥かに魔法能力が高く、孤独に耐えられる精神力を持っている。まさに理想的な女性。俺が欲しかったのはエミリアの様な精霊だったのだ。
「あの、レオンさん……。そんなに見つめられては困ります……」
「ごめん。精霊が居る生活が嬉しくて。三年間も毎日の様に森で微精霊を探していたから、遂に加護を授かれたんだって、嬉しくてたまらないんだよ」
「私も同じ気持ちです。ずっとレオンさんに憧れていました。何度微精霊に断られても、めげる事も無く、森で奮闘するレオンさんの姿は素敵でした。きっと私の事も大切にしてくれる、精霊を守る力がある人だって思っていたんです。私の想像通り、レオンさんは本当に優しくて、逞しい人でした……」
「俺はまだ弱いけど、エミリアを守る気持ちなら誰にも負けないよ。加護を授けてくれたエミリアは命に代えても守る」
「やっぱりレオンさんは正しい心の持ち主でした。旅の途中に出会った精霊は全て人間に殺されたんです。痛めつけてから精霊石を抜かれ、命を落としました。力と富を求める者が精霊石を体内に取り込み、魔族と化して人間を襲う。人間を守るために生まれた精霊の力を悪用する魔族が随分多いんです……」
魔族と化してまで更なる力を求める人間がこの世界には随分多いのだろう。人間を殺めて大陸を支配しようとする輩も居る。悪質な犯罪者からエミリアを守るには力が必要なのだ。
父から教わった剣技と氷の加護を使って精霊魔術師になる。精霊の加護を持つ者は王都ローゼンハインで精霊魔術師として登録が出来るのだ。精霊を持つ者だけが所属するギルドも存在するらしい。王都での生活を始める前に、まずは徹底的に魔法の訓練を積もう……。
「エミリア、実はシュルツ村から俺を尾行している奴らが居るんだ」
「わかっていますよ、レオンさん。安心して下さい、レオンさんに手を出そうとしたら氷漬けにしますから。私とレオンさんの新生活の邪魔なんてさせません」
「ありがとう。だけど、精霊狩りは俺が退治するよ。加護を授けてくれた精霊を守るのは人間の役目だからさ」
「何を言っているんですか? 私とレオンさんは二人で一つ。精霊と人間はお互いの命が尽きるまで共に生きる。協力して精霊狩りを退治すればいいんですよ」
流石にエミリアは命を狙われる事に慣れているのか、怯える様子もない。こんなに幼いのに襲われる事に慣れているのだ。平和な村で安全な暮らしを送ってきた俺とは育ち方が違う。
それから俺達は荷物を遺跡に運び入れた。エミリアが暮らしている建物は遺跡の最深部にある背の高い石造りの建物だ。かつては催事などが行われていたであろう広い空間には荷物等はなく、着替えの服がいくつかあるだけだが、長年同じ服を着ているのか、随分と痛んでいる。
「この服はお気に入りなんですが、そろそろ買い替える必要がありそうですね……」
エミリアがワンピースを手に取ると、俺は父が衣類を用意してくれていた事を思い出した。俺の服だけではなく、女物の服もあった筈だ。
俺はエミリアのための服を遺跡に運び入れると、彼女は目に涙を浮かべながら新しい服を抱きしめた。なんと愛らしいのだろうか。エミリアと居るだけで心が穏やかになる。何とも言えない幸福を覚えるのだ。
やはり人間は精霊なしでは生きられない生き物なのだ。精霊もまた人間の魔力を糧に生きる。人間と精霊は一心同体。人間は精霊が成長するための魔力を提供し、精霊は人間に魔物と対抗する力を授ける。
すぐにでも魔法の練習を始めたいが、まずはエミリアのために夕食を作ろう。父が大量の食料を用意してくれたので、俺は調理道具と食料を遺跡に運び入れた。壁画にも人間と精霊が共に料理を作り、共に酒を飲みながら語り合う場面がある。
「私、契約者さんと料理を作るのが夢だったんです! いつかレオンさんと知り合えたら、この遺跡で一緒に料理を作って、夜遅くまで語り合ってみたいなって思っていたんです。私の夢が遂に叶うんですね……」
「喜んで貰えて嬉しいよ。俺も精霊と食事をするのが夢だった。というより、精霊の居る生活が夢だったんだ。俺だけシュルツ村で微精霊の加護を持っていなかったから、精霊が居る生活に憧れていたんだよ」
「やはり私達の出会いは偶然ではなかったんですね……。レオンさんと出会えて、私は本当に幸せです」
些細な事にも感動し、すぐに涙を流すエミリアに俺は恋心を抱いた。人間と精霊が結婚するという事はよくあるらしい。精霊の加護を持つ者は少ないが、精霊と出会えた強運の持ち主の大半は精霊と結婚する。
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「一緒に晩御飯を作ろうか」
「はい! 私、料理って初めてなので、どうしたら良いか分かりません……。レオンさん、私に一から料理を教えて下さい。レオンさんの食事は私が用意するんです!」
「ああ、良いよ。と言っても、俺が知ってる料理なんて殆どないけどね」
「それでも良いんです。レオンさんが好んで食べる物を作れる様になりたいんです」
エミリアが俺を見上げて微笑むと、彼女の美貌に思わず胸が高鳴った。遺跡の天井付近には火の魔力を秘める魔石が浮かんでおり、魔石が放つ明かりが室内を照らしている。こんなに幻想的な空間は初めてだ。
魔石が暗闇を晴らして壁画を照らし、人間と精霊の暮らしを描いた壁画が美しく浮かび上がっている。人間と共に魔物を狩る精霊の姿や、人間と寝食を共にする精霊の姿。どの精霊も今のエミリアの様に楽しそうで、喜びに満ちた生活を送っていた事が理解出来る。
毎日この壁画を見ながら暮らしていたら、人間と食事をする事に夢を抱く気持ちも分かる気がする。エミリアはたった一人で生きていた。俺よりも遥かに魔法能力が高く、孤独に耐えられる精神力を持っている。まさに理想的な女性。俺が欲しかったのはエミリアの様な精霊だったのだ。
「あの、レオンさん……。そんなに見つめられては困ります……」
「ごめん。精霊が居る生活が嬉しくて。三年間も毎日の様に森で微精霊を探していたから、遂に加護を授かれたんだって、嬉しくてたまらないんだよ」
「私も同じ気持ちです。ずっとレオンさんに憧れていました。何度微精霊に断られても、めげる事も無く、森で奮闘するレオンさんの姿は素敵でした。きっと私の事も大切にしてくれる、精霊を守る力がある人だって思っていたんです。私の想像通り、レオンさんは本当に優しくて、逞しい人でした……」
「俺はまだ弱いけど、エミリアを守る気持ちなら誰にも負けないよ。加護を授けてくれたエミリアは命に代えても守る」
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