レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第二章「魔石編」

第二十八話「騎士の務め」

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 暗殺者襲撃事件から三ヶ月が経過した。冒険者ギルド・レッドストーンは、レッドドラゴンに関する情報を集めながら細々と活動をしている。ブラッドソードを壊滅させ、アンドレア王妃毒殺事件の真犯人を追い詰めたギルドとしても、レッドストーンの名は瞬く間にアイゼンシュタインに轟いた。

 レッドドラゴンに関する有力な情報も無く、来る日も来る日も低レベルの魔物を討伐して暮らしている。暗殺者襲撃事件の翌日、国がブラッドソードに懸けていた懸賞金の五十万ゴールドを頂いたが、特にお金の使い道もなく、今日もギルドで朝を迎えた。

 フローラと交際を始めてから、俺はフローラの家で居候を始めた。ギルドの二階にある居住スペースが俺の新居になったのだ。体の大きなタウロスは召喚石の中で眠り、ヴォルフはレッドストーンの裏手にある馬小屋で寝泊まりをしている。ダリルとロビン、それから俺の三人は、フローラから小さな部屋を頂いて、そこで新たな生活を始めた。

 朝の四時に起きて、ヴォルフと共にアイゼンシュタインからほど近い森に入る。それから森に巣食う低級な魔物を狩り、タウロスを召喚して戦闘の訓練を行う。四時間ほど体を動かし続け、三人で森の中で朝食を摂ってからギルドに戻る。これが俺達の新たな日課だ。

 毎日体を鍛え、タウロスと訓練を行っているからか、この三ヶ月間で俺のレベルは25も上昇し、現在ではレベル75になった。強化石を入手すればヴォルフとタウロスに使用し、レッドドラゴンとの戦闘に備えながら鍛錬を続けている。これだけ鍛え込んでも、第六代魔王、ヴォルフガング・イェーガーの強さには到底及ばない。

 俺は最近、ヴォルフの背中に乗ったまま魔物を狩れる様になった。どんな魔物もヴォルフの移動速度に追いつける事はなく、距離を取れれば、遠距離魔法を使って一方的に攻撃を仕掛けられる。空を飛ぶ魔物相手には、高速で動くヴォルフの背中からソニックブローで敵を捉える事は難しい。しかし、地上を歩く魔物は大抵ソニックブローだけで仕留める事が出来る。

 高速で空を飛び、炎を吐いて人間を襲うレッドドラゴンを想定して、俺達三人は毎日の様に激しい訓練を積んでいる。森での朝食を終えると、俺はいつも通りタウロスを召喚石に戻し、ヴォルフに乗ってアイゼンシュタインを目指して進み始めた。

 ヴォルフの背中は乗り心地も良く、馬よりも遥かに早い速度で走る事が出来る。美しい白い毛に朝日が当たり、キラキラと光を反射させながら、毛の奥で巨大な筋肉が規則正しく動く。冷たい冬の風が俺の頬を撫で、心地良い朝日を浴びながら森を進む。ブラッドソードを討伐してから、訓練とクエストをこなすばかりで、人生に刺激がない。ブラッドソードの様な陰湿な敵との戦いはもうこりごりだが、明確な敵が居た時は人生に張りがあった。

 いつ暗殺者に町を襲撃されるか分からなかったから、毎日寝る時間を削って夜警をしていた。極限まで体を鍛え、剣の腕を磨き、暗殺者との戦闘を想定しながら訓練をしていた。そんな緊張感に溢れる生活は、ストレスも溜まり、ゆっくり眠る事すら出来なかったが、程よい緊張感があった。何より、圧倒的な悪を前にした時の興奮があった。

 平和な時には刺激がある人生を望むが、実際に敵が現れれば、こんな生活を早く終わらせたいと思う。そろそろ新しい敵に挑みたいところだが、レッドドラゴンの生息地すら分からず、目撃情報もない。城にも頻繁に顔を出し、城の兵士に剣術の稽古をつけたり、衛兵と共にアイゼンシュタインを襲う魔物との戦闘を行う事もある。

 第一王女のエレオノーレさんがマスターを務める冒険者ギルド・ダーインスレイヴとも交流をし、レッドドラゴンに関する情報を集めて貰っているが、未だにレッドドラゴンに関する情報はない。愛するフローラの目を治すためには、何としてもレッドドラゴンを見つけ出さなくてはならない。アイゼンシュタインを出て、辺境の地まで自分の足で旅をし、レッドドラゴンを探すべきだろうか。

 考え事をしていると、すぐにアイゼンシュタインに到着した。正門を守る衛兵長が深々と俺に頭を下げると、俺は魔物の討伐数を伝え、周囲の状況を報告した。俺が朝の狩りで高レベルな魔物や、魔物の集団を発見すれば、すぐに衛兵長に報告し、討伐隊を組んで魔物を狩りに行く事にしている。

 王国を守る騎士として、俺は自分に出来る事をしようと思い、自主的に衛兵に情報提供をしている。特に給料が発生する訳でもないが、陛下は俺を信頼して騎士の称号を授けて下さったのだ。陛下の信頼に答えるためにも、俺自身が町を出て魔物を狩り、アイゼンシュタインの民に平和をもたらさなければならない。

「騎士様! 今日も魔物の討伐をして下さり、ありがとうございます! 騎士様が町の周囲に巣食う魔物を討伐して下さるので、衛兵達は仕事が減ったと大喜びですよ」
「これも騎士の勤めですからね。魔物がアイゼンシュタインの民を襲うなら、私は全力で魔物を駆逐するだけです」
「若い衛兵もイェーガー様を見習って欲しいものですな。魔物との戦闘を恐れ、任務をサボる者も居るのですよ。その割に訓練の時間には無駄話をするばかりで、真面目に剣の稽古もしない。最近の若い衛兵はどうも危機感が無くて困ります」
「それもアイゼンシュタインが平和な証拠なのかもしれませんね。衛兵の方の手に負えない魔物が現れたら、いつでも私を呼んで下さい。レッドストーンかアイゼンシュタイン城で待機していますから」
「はい! それでは騎士様。良い一日を」

 ビスマルク衛兵長の後任の衛兵長、マルクス・ドール衛兵長は優しい笑みを浮かべて俺を見送ってくれた。彼はビスマルク衛兵長が亡くなるまでは、中央区の警備を担当していた熟練の剣士だ。

 ヴォルフを連れて商業区に入り、町中で異変がないか確認して回る。俺がヴォルフと共に町を歩く事は、町を防衛する騎士と幻魔獣が存在するという事を市民に知って貰うためでもある。市民の中には兵士や衛兵の警備能力を疑う者も多い。暗殺者の侵入を防ぐ事が出来なかった衛兵に対して、事件以降、市民からの嫌がらせも多くあった。

 町の防衛力は十分に高いという事を、アイゼンシュタインの騎士である俺が証明したいという気持ちもある。レッドドラゴンを討伐出来れば、冒険者ギルド・レッドストーンの知名度も更に上がり、幻獣を討伐出来る騎士が王国を守っていると、市民に安心して貰う事も出来る。それに、俺はフローラの目を治し、彼女にこの世界を自分の目で見て貰いたいと思っている。

「騎士様! 今日もフェンリル様と魔物討伐かい?」
「はい! 今日はゴブリンが町の付近に何体か居ましたが、他に魔物は居ませんでした」
「そうかい。いつもありがとう! これはサービスだよ」

 以前、ヴォルフにブラックライカンの肉を与えた時に憤慨した露天商だ。彼とはすっかり仲良くなり、毎日立ち話をして、ダリウスやロビンのための肉を買ってギルドに戻るのが日課だ。五ヶ月ほど夜警をしていたからか、商業区で商業を営む商人のほとんどが顔見知りだ。町を歩いているだけで大量の野菜や肉を貰えるので、殆ど自分のお金で買い物をする必要がない。いつもタダで商品を貰い続けるのは気が引けるので、値段が高くて買い手が付かない商品や、売れ残っている商品を購入するのである。

 魔物討伐で入手した魔法石や召喚石を売るだけで、十分なお金を稼げるので、余ったお金で新米の衛兵を飲みに誘ったり、城の兵士を食事に誘い、町の防衛に携わる者同士の交流の場を設けている。最初は親しい衛兵が数人集まるだけだったが、今では非番の衛兵や兵士がこぞって集まり、店を貸し切りにして宴を開く事も多い。大体二週間に一度のペースで宴を開く事にしている。

 商業区を回って冒険者区に入る。魔術師ギルド・ユグドラシルに立ち寄り、ギルドマスターのフリートさんと情報交換をしてからレッドストーンに戻る。すると、冒険者ギルド・レッドストーンの前には若い女性が立っていた……。
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