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第二章「魔石編」
第四十九話「三人の絆」
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「ラインハルト。あなたは知らないと思うけど、クリステルは旅の間、ラインハルトに守られているだけは嫌だと何度も言っていたのよ。強い力を持つ人間に助けられるだけの人間にはなりたくないって」
「そうだったのか……だけど、流石に今回は敵が多すぎたみたいだね」
「そうね。クリステルはよくやったわ。一人でオークの群れを倒しきったのだから」
フローラは優しい笑みを浮かべ、クリステルの頭を撫でている。強い人間に守られるだけの人間にはなりたくない、というクリステルの気持ちは十分に理解出来る。だが、俺はクリステルを守る冒険者としてファルケンハインに来ているのだ。次期国王になる人物を危険に晒す訳にはいかない。
俺はクリステルに対して、今回のダンジョン攻略の際に、町の冒険者を雇ってみてはどうかと提案した事がある。丁度馬車でアイゼンシュタインからファルケンハインを目指していた時の事だ。彼女はなかなか他人の力を信用出来ないらしく、俺とフローラが居れば十分だと言った。
俺はそんな彼女の強気な姿勢が好きだ。俺は幼い頃から大陸を支配するために、第六代魔王から戦い方の指導を受けてきた。救済の賢者、ジル・ガウスからこの世界を頼むと託されたのだ。俺が負ける訳にはいかない。
それに、祖先の魔王達が犯した罪を償うためにも、俺の力でダンジョンに巣食う悪質な魔物を狩る。一体でも多くの魔物を狩り、戦う力を持たない人間を守れば、祖先が犯してきた罪を償えるのではないかと思っている。
エレオノーレさんは、そんな生き方は止めなさいと言ってくれたが、俺はどうも自分の考えを変える気にはなれない。せっかく冒険者として生きているのだ。多くの魔物を狩り、他人を守るために力を使おう。それが騎士の称号を持つ俺の生き方だ。
「フローラ。次の層からは俺も戦闘に参加するよ」
「分かったわ。だけど、あまり無理はしないでね。情けない話だけど、ラインハルトが万全の状態じゃなければ、幻獣のレッドドラゴンは倒せないと思うの。私も必死に魔法を学んできたけど、まだまだラインハルトの足元にも及ばない……」
「そんな事はないよ。フローラは素晴らしい力を持っている。他人を癒す事が出来るのだからね。それに、いつも俺を助けてくれているじゃないか。クリステルだって、フローラの回復魔法の効果を信じて敵の攻撃を受けたんじゃないかな」
「だけど、私はもっと強くなりたい……ラインハルトを支えられる女に、民を守れる王女になりたい!」
「俺は今でもフローラを頼りにしているよ。君が居なかったら、俺はここまで強くなれなかった。賢者の試練だって、フローラが居なければ乗り越えられなかったと思う。毎日フローラの事を想って、死ぬ気で己を追い込めたのは、フローラが俺の心に居てくれたからだよ……」
「ラインハルト……」
フローラが俺の頬の口づけをすると、俺の体には神聖な魔力が流れた。やはり美しい魔力を持っているな。今すぐにでもレッドストーンを使用し、フローラの目を治してあげたい。フローラと共に、この世界を見て回りたい。
十七歳まで城で幽閉されるように生きてきたフローラとは、境遇が非常に良く似ている。俺も魔王の加護を受けるまでは、朽ち果てた魔王城で父と二人で生きていた。レッドストーンを手に入れ、フローラの目を癒やし、彼女と共にこの世界を旅して回るのだ。
クリステルが心地良さそうに目を覚ますと、俺は彼女の頭を撫でた。目を薄っすらと開け、幸せそうに微笑むと、彼女は俺の手を握った。
「一人で頑張らなくてもいいんだよ。クリステル、俺達が居る。俺達はクリステルの味方だよ。俺達の力を借りていると思わなくてもいいんだ。俺達はクリステルの事が好きなんだからね」
「ラインハルト……?」
「クリステル。俺達がクリステルを必ず次期国王にする。この勝負に勝たせてみせる。だから、これ以上無理はしないでくれよ」
「ありがとう……ラインハルト。ローゼマリーに勇者と大魔術師を取られ、人望の無い私の元には、高レベルの冒険者すら集まらなかった。幼い頃からローゼマリーの方が市民からも愛されていて、私は要らない存在なんじゃないかって、いつも思っていたの。だけど、ラインハルトとフローラが私を認めてくれているから、私は強く生きられる……!」
「クリステル。私達はあなたの味方よ。馬車での移動の最中も、目も見えない私に森の様子を何度も伝えてくれて、不安に押しつぶされそうな私を支えてくれた……だから私もクリステルを支えたいの……」
「フローラ……」
クリステルが大粒の涙を流すと、俺とフローラはクリステルを抱きしめた。暫く彼女が泣き止むまで抱きしめていると、クリステルは俺とフローラの頬に口づけをした。
「クリステル! オークとの戦い、見事だったよ。四階層からは俺も戦いに参加しよう」
「本当? 浅い層で魔力と体力を使ってしまったら、ローゼマリー達を追い抜けなくなるんじゃないの……?」
「大丈夫だよ。なんとかしてみせる。これ以上二人に頼るのも何だか悪い気がするからね。それに、俺の予想よりもダンジョン内の魔物が少なかったから、四階層からは俺も戦うよ」
「予想より少なかったですって? 私はオークの集団を見た時、逃げ出したくなったわ……敵があまりにも多かったから」
「オークが約六十体。ローゼマリー王女のパーティーが先にダンジョンに潜っていなかったら、更に多くの魔物と戦う事になっていただろうね。これは案外早く第二王女のパーティーに追いつけるかもしれないよ」
問題は、ローゼマリー第二王女のパーティーに追い付いてからだ。追い抜かす事が非常に難しい。魔物は下層に進むに従って強くなる傾向があるみたいだ。高レベルの冒険者と勇者、大魔術師を従えて、狩る必要のない魔物を放置しながら下層を目指す先発のパーティーを、たった三人で追い抜かさなければならないのだ。
それに、ローゼマリー王女のパーティーのメンバーが俺達の狩りを妨害してくる可能性もある。魔物を全て狩らずに下層に降りているのも、自分達の次にダンジョンに潜るパーティーの歩みを遅らせるためなのではないだろうか。もしそうならば、下層に進むにつれ、放置されたままの高レベルの魔物と何度も剣を交える事になるだろう。
「考えていても仕方がない。すぐに四階層に降りよう」
「そうね。ついにラインハルトが戦い始めるのだから、どんな魔物が居ても安心ね」
「買いかぶり過ぎだよ、クリステル。ここは古い時代のダンジョンだから、現代には生息が確認されていない魔物も巣食っているかもしれない。初見の魔物を相手にして、果たして俺の力がどこまで通用するだろうか……」
「大丈夫よ。私はラインハルトの強さを信じている。それに、フローラだってサンダーボルトを覚えたのだから!」
「確かにね。フローラ、頼りにしているよ。俺は傷を受けてもそのまま魔物を狩り続けるから、フローラは回復に専念しつつも、攻撃魔法で支援してくれるかな」
「任せて頂戴」
四階層に降りる前に水分を補給し、武器と防具の点検をしてから、俺は入念にストレッチをした。ついに俺の出番という訳か。どんな魔物が待ち構えているのかも分からない、いにえしえの勇者が封印した強力な魔物が巣食うダンジョンで、俺は第二王女のパーティーを追い抜き、レッドドラゴンを討伐しなければならない。まずはローゼマリー王女に追いつくために、十二階層までは体力と魔力を気にせずに、徹底的に魔物を狩りながら進もう。
魔剣を握り締めて四階層に続く階段を降りると、そこには凄惨な光景が広がっていた……。
「そうだったのか……だけど、流石に今回は敵が多すぎたみたいだね」
「そうね。クリステルはよくやったわ。一人でオークの群れを倒しきったのだから」
フローラは優しい笑みを浮かべ、クリステルの頭を撫でている。強い人間に守られるだけの人間にはなりたくない、というクリステルの気持ちは十分に理解出来る。だが、俺はクリステルを守る冒険者としてファルケンハインに来ているのだ。次期国王になる人物を危険に晒す訳にはいかない。
俺はクリステルに対して、今回のダンジョン攻略の際に、町の冒険者を雇ってみてはどうかと提案した事がある。丁度馬車でアイゼンシュタインからファルケンハインを目指していた時の事だ。彼女はなかなか他人の力を信用出来ないらしく、俺とフローラが居れば十分だと言った。
俺はそんな彼女の強気な姿勢が好きだ。俺は幼い頃から大陸を支配するために、第六代魔王から戦い方の指導を受けてきた。救済の賢者、ジル・ガウスからこの世界を頼むと託されたのだ。俺が負ける訳にはいかない。
それに、祖先の魔王達が犯した罪を償うためにも、俺の力でダンジョンに巣食う悪質な魔物を狩る。一体でも多くの魔物を狩り、戦う力を持たない人間を守れば、祖先が犯してきた罪を償えるのではないかと思っている。
エレオノーレさんは、そんな生き方は止めなさいと言ってくれたが、俺はどうも自分の考えを変える気にはなれない。せっかく冒険者として生きているのだ。多くの魔物を狩り、他人を守るために力を使おう。それが騎士の称号を持つ俺の生き方だ。
「フローラ。次の層からは俺も戦闘に参加するよ」
「分かったわ。だけど、あまり無理はしないでね。情けない話だけど、ラインハルトが万全の状態じゃなければ、幻獣のレッドドラゴンは倒せないと思うの。私も必死に魔法を学んできたけど、まだまだラインハルトの足元にも及ばない……」
「そんな事はないよ。フローラは素晴らしい力を持っている。他人を癒す事が出来るのだからね。それに、いつも俺を助けてくれているじゃないか。クリステルだって、フローラの回復魔法の効果を信じて敵の攻撃を受けたんじゃないかな」
「だけど、私はもっと強くなりたい……ラインハルトを支えられる女に、民を守れる王女になりたい!」
「俺は今でもフローラを頼りにしているよ。君が居なかったら、俺はここまで強くなれなかった。賢者の試練だって、フローラが居なければ乗り越えられなかったと思う。毎日フローラの事を想って、死ぬ気で己を追い込めたのは、フローラが俺の心に居てくれたからだよ……」
「ラインハルト……」
フローラが俺の頬の口づけをすると、俺の体には神聖な魔力が流れた。やはり美しい魔力を持っているな。今すぐにでもレッドストーンを使用し、フローラの目を治してあげたい。フローラと共に、この世界を見て回りたい。
十七歳まで城で幽閉されるように生きてきたフローラとは、境遇が非常に良く似ている。俺も魔王の加護を受けるまでは、朽ち果てた魔王城で父と二人で生きていた。レッドストーンを手に入れ、フローラの目を癒やし、彼女と共にこの世界を旅して回るのだ。
クリステルが心地良さそうに目を覚ますと、俺は彼女の頭を撫でた。目を薄っすらと開け、幸せそうに微笑むと、彼女は俺の手を握った。
「一人で頑張らなくてもいいんだよ。クリステル、俺達が居る。俺達はクリステルの味方だよ。俺達の力を借りていると思わなくてもいいんだ。俺達はクリステルの事が好きなんだからね」
「ラインハルト……?」
「クリステル。俺達がクリステルを必ず次期国王にする。この勝負に勝たせてみせる。だから、これ以上無理はしないでくれよ」
「ありがとう……ラインハルト。ローゼマリーに勇者と大魔術師を取られ、人望の無い私の元には、高レベルの冒険者すら集まらなかった。幼い頃からローゼマリーの方が市民からも愛されていて、私は要らない存在なんじゃないかって、いつも思っていたの。だけど、ラインハルトとフローラが私を認めてくれているから、私は強く生きられる……!」
「クリステル。私達はあなたの味方よ。馬車での移動の最中も、目も見えない私に森の様子を何度も伝えてくれて、不安に押しつぶされそうな私を支えてくれた……だから私もクリステルを支えたいの……」
「フローラ……」
クリステルが大粒の涙を流すと、俺とフローラはクリステルを抱きしめた。暫く彼女が泣き止むまで抱きしめていると、クリステルは俺とフローラの頬に口づけをした。
「クリステル! オークとの戦い、見事だったよ。四階層からは俺も戦いに参加しよう」
「本当? 浅い層で魔力と体力を使ってしまったら、ローゼマリー達を追い抜けなくなるんじゃないの……?」
「大丈夫だよ。なんとかしてみせる。これ以上二人に頼るのも何だか悪い気がするからね。それに、俺の予想よりもダンジョン内の魔物が少なかったから、四階層からは俺も戦うよ」
「予想より少なかったですって? 私はオークの集団を見た時、逃げ出したくなったわ……敵があまりにも多かったから」
「オークが約六十体。ローゼマリー王女のパーティーが先にダンジョンに潜っていなかったら、更に多くの魔物と戦う事になっていただろうね。これは案外早く第二王女のパーティーに追いつけるかもしれないよ」
問題は、ローゼマリー第二王女のパーティーに追い付いてからだ。追い抜かす事が非常に難しい。魔物は下層に進むに従って強くなる傾向があるみたいだ。高レベルの冒険者と勇者、大魔術師を従えて、狩る必要のない魔物を放置しながら下層を目指す先発のパーティーを、たった三人で追い抜かさなければならないのだ。
それに、ローゼマリー王女のパーティーのメンバーが俺達の狩りを妨害してくる可能性もある。魔物を全て狩らずに下層に降りているのも、自分達の次にダンジョンに潜るパーティーの歩みを遅らせるためなのではないだろうか。もしそうならば、下層に進むにつれ、放置されたままの高レベルの魔物と何度も剣を交える事になるだろう。
「考えていても仕方がない。すぐに四階層に降りよう」
「そうね。ついにラインハルトが戦い始めるのだから、どんな魔物が居ても安心ね」
「買いかぶり過ぎだよ、クリステル。ここは古い時代のダンジョンだから、現代には生息が確認されていない魔物も巣食っているかもしれない。初見の魔物を相手にして、果たして俺の力がどこまで通用するだろうか……」
「大丈夫よ。私はラインハルトの強さを信じている。それに、フローラだってサンダーボルトを覚えたのだから!」
「確かにね。フローラ、頼りにしているよ。俺は傷を受けてもそのまま魔物を狩り続けるから、フローラは回復に専念しつつも、攻撃魔法で支援してくれるかな」
「任せて頂戴」
四階層に降りる前に水分を補給し、武器と防具の点検をしてから、俺は入念にストレッチをした。ついに俺の出番という訳か。どんな魔物が待ち構えているのかも分からない、いにえしえの勇者が封印した強力な魔物が巣食うダンジョンで、俺は第二王女のパーティーを追い抜き、レッドドラゴンを討伐しなければならない。まずはローゼマリー王女に追いつくために、十二階層までは体力と魔力を気にせずに、徹底的に魔物を狩りながら進もう。
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