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第二十二話「精霊達の未来」
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ダンジョンの最深部には宝物庫があり、色とりどりの属性石が静かに光り輝いていた。雷属性の属性石が多く、手に持つと心地良い魔力が体に流れた。その他にもドラゴニュートが人間を殺めて集めた物だろうか、宝石やお金が詰まった宝箱が置かれていた。目ぼしい物を全て回収すると、俺達はダンジョンを後にし、ハーフェンの町に向かった……。
ハーフェンに戻ると、冒険者ギルドでダンジョンの攻略と魔物の殲滅を報告し、報酬を受け取った。それから死霊の精霊・エルザが仲間になった事を報告すると、グライナーさんは自分の事の様に喜んだ。
「ファッシュ様! 今日は宴にしましょう! どんな冒険者でも仲間にする事が出来なかった死霊の精霊をパーティーに加えたのですから」
「そうですね。それでは今日も宿で宴を開きましょうか。その前に、実は精霊達が暮らすための家を探しているのですが、何か手頃な土地はありませんか?」
俺はグライナーさんに精霊達を保護するための屋敷を探している事を伝えた。グライナーさんはギルドの職員を集め、声を潜めて話し合うと、カウンターから鍵を取り出して俺に差し出した。
「この鍵は冒険者ギルドが所有する屋敷の鍵です。かつてハーフェンには多くの貴族が暮らしていたのですが、ある貴族が自宅で闇属性の魔物を召喚して仕舞い、その貴族はたちまち命を落としました。魔物は直ぐに討伐されましたが、町では呪われた館と呼ばれ、誰も近づく事はありません。今では多くの怨霊が棲家にしている館なのですが……きっと死霊の精霊なら怨霊を追い払う事も出来るでしょう」
「屋敷を頂けるんですか?」
「はい。屋敷に巣食う怨霊を追い払って下さるなら、屋敷をお譲りします。土地の価値も無く、まともな人間なら誰も近づこうとはしませんし……」
「それは都合が良いですね。きっとエルザが何とかしてくれるでしょう」
俺がそう言うと、エルザは嬉しそうに微笑み、俺の手を握った。そんなエルザをフィリアは寂しそうに見つめている。俺とエルザの肌が触れる度に、フィリアは怪訝そうな表情を浮かべる。フィリアは俺に好意を抱いてくれているのだろうか。
「それでは、これから俺とエルザは屋敷を見に行く事にしますね」
「分かりました。くれぐれもお気をつけて。ドラゴンの討伐者なら問題ないとは思いますが……」
グライナーさんと別れた俺達は、市場で戦利品を売り捌き、昼食を摂ってから屋敷に向かう事にした。アレックスとフィリアは宿で待機し、俺とエルザ、ユニコーンで屋敷に向かう。
ユニコーンにエルザを乗せ、エルザを抱きしめる要領で手綱を握る。エルザは俺の体に寄りかかり、気持ち良さそうに目を瞑っている。死霊の精霊・エルザの容姿を知る人間が、エルザの加護を得ようと近づいて来たが、俺の顔を見るや否や、恐れおののいて逃げ出した。
町では既に俺の面が割れており、ドラゴンやゴブリンロードを討伐した事実を知る人も多い。町を歩いているだけで住人から果物やパンを頂く事もある。エルザは俺と一緒に居れば、この町では無理やり加護を奪われる事はないだろう。しかし、エルザはこれまで、自分に襲い掛かる人間を殺めているからか、彼女の悪評を知る人も居る様だ。
精霊達の汚名をすすぐために、ハーフェンを脅かす悪質な魔物を狩り、地域を守り続ける必要がある。そうすれば、彼女達が正しい心を持つ精霊だという事を理解して貰えるだろう。手っ取り早く精霊達の好感度を上げるには、より強く、悪質な魔物を倒せば良い。ダンジョンの攻略も終わった所だし、次は更に強い魔物討伐のクエストを受けよう。
暫く町を進むと、肌に刺すような強い闇の魔力を感じた。この先に怨霊が巣食う屋敷があるのだろう。エルザはモーニングスターを握り締め、楽しそうに微笑んだ。彼女にとって怨霊や闇属性の魔物は仲間の様なものだ。自分よりも魔力が劣る魔物が彼女を襲う事は無い。それに、俺自身も死霊の精霊の加護で、自分よりも魔力が低い闇属性の魔物を意のままに操る事が出来る。
聖属性の使い手である俺が、まさか闇属性の加護を授かる事になるとは思わなかったが、使える力は何でも使うつもりだ。これも冒険者として一流になるため、フィリアや精霊達が快適に暮らせる環境を作るためだ。
「あれが問題の屋敷ね」
「随分濃い闇の魔力が流れているんだね。定期的に浄霊をしているらしいけど」
「きっとこの場の魔力が怨霊達を惹き寄せるのでしょう。すぐに片付けて私とユリウスの新居にしましょうか。これからこの屋敷で私に仕えながら生きるのよ」
「いや……エルザに仕える気はないんだけど……」
ユニコーンからエルザを降ろすと、ユニコーンは屋敷からゆっくりと離れ、心配そうな表情で俺を見つめた。屋敷の周辺には民家は一切無く、廃墟が幾つか建っているが、どれも人の姿は無い。美しいハーフェンの町に、この様な地域があるとは思わなかった。
屋敷は木造の二階建てで、屋敷を囲う様に金属製のフェンスが建っている。正門から敷地内に入ると、強い闇の魔力が流れてきた。まるで侵入を拒むようだ。聖属性の魔力の球、ホーリーの魔法を作り出して宙に浮かべると、屋敷に蔓延する闇の魔力が薄れた。
「まずは屋敷に入りましょうか。怨霊を味方に付けるわ」
エルザと共に屋敷に入ると、冒険者の亡霊だろうか、半透明のゴーストの様な魔物が襲い掛かってきた。エルザがモーニングスターに闇の魔力を込めると、ゴーストはエルザには敵わないと悟ったのか、武器を捨てて跪いた。
「貴方、この屋敷に住む怨霊を全て連れてきなさい」
エルザがゴーストに命令をすると、ゴーストは宙を舞い、屋敷に巣食う怨霊を連れてきた。半透明の黒い魔力の塊の様な怨霊が三十体。エルザの姿を見るや否や、怨霊達は跪き、頭を垂れた。
「今から貴方達を私の配下に入れてあげる。リビングアーマーとして蘇るか、この場から消えるか、好きな方を選びなさい」
エルザは怨霊達と対話し、意思を確認した。エルザの説明によると、ここに居る怨霊達は不当に殺害された人間だったり、志半ばに命を落とした冒険者の怨霊なのだとか。もう一度家族に会えたらすぐに成仏しても良いという者も多いのだとか。
「それじゃ貴方達の家族に会わせてあげるわ。私が貴方達の言葉を家族に伝えて上げる」
エルザの提案により、二十三体の亡霊はハーフェンに残した家族に会う事を望んだ。残る七体の亡霊は、リビングアーマーとして第二の人生を歩む事を選択した。
それから俺とエルザは、怨霊達を連れてハーフェンの町を駆けずり回った。怨霊と共に遺族の元に行くと、家の者は怪訝そうな表情を浮かべたが、俺が名を名乗ると、ドラゴンの討伐者、ゴブリンロードを倒した者だと、快く受け入れてくれた。
エルザは怨霊の言葉を遺族に伝え始めると、遺族はエルザを通じて怨霊と対話を始めた。最初は自分の家族だと言う事を疑う人も多かったが、家族しか知らないエピソードをエルザが話すと、すぐにエルザの言葉を信じ始めた。
俺とエルザはゆっくりと時間を掛けてハーフェンを回り、遺族に怨霊の言葉を伝えて回った。気づけば夕方になっており、全ての怨霊が消え去ると、エルザは満足気な笑みを浮かべて俺に抱きついた。
「今日は随分働いたわ。私達も宴に参加しましょうか」
「エルザ。俺は君の事を誇りに思うよ。家族を残して死んだ人間の魂を、あの世へ送り届けてくれたんだから。それに、みんな最期は嬉しそうに消えていったね」
「きっと満足したのよ。不当に殺された人間は、家族に『愛してる』の一言も言えずに死んだのだから。死して尚、家族の事を想い続け、届かぬ思いが彼等を怨霊に変えてしまったのでしょう」
「今回の出来事でエルザの知名度は一気に上がっただろうな。町の人達はみんなエルザに感謝していたしね」
「少しでも誰かの役に立てたなら嬉しいわ。これも私とユリウスの屋敷を手に入れるため」
「ああ。ありがとう、エルザ」
俺はエルザを強く抱きしめると、彼女は心地良さそうに目を瞑った。宿に戻って宴に参加しよう。今日は屋敷を手に入れた記念すべき日だ。それから俺達は仲間が待つ宿に戻った。
宿の一階では既に盛大な宴が行われており、ギルベルトさんやグライナーさんの姿もあった。アレックスは大量の料理を頬張りながら、美味しそうにエールを飲んでいる。俺とエルザが戻ると、フィリアが駆けつけてきた。
「遅かったわね……ちょっとエルザ、ユリウスから離れなさい。近すぎるわ」
「私のユリウスなんだからどうして離れる必要があるの? さぁユリウス、私のために美味しい肉料理と葡萄酒を用意しなさい」
やはりエルザとフィリアは良く似ている。エルザの態度は初めて会った時のフィリアにそっくりだ。俺はフィリアとエルザを連れて仲間の元に戻った。ギルベルトさんがすぐに葡萄酒と料理を注文してくれ、俺達の宴が始まった。
アレックスが乾杯の音頭を取ると、俺は葡萄酒の飲みながら仲間達に屋敷での出来事やエルザの活躍を伝えた。グライナーさんはエルザの頭を撫でながら、エルザの行いを賞賛した。
「なぁ、俺も戦士になるまで屋敷で暮らして良いんだろう?」
「随分水臭いじゃないか。アレックスは俺の従魔でもあるんだし、好きなだけ屋敷に居てくれよ。勿論、ミノタウロス族の戦士になった後も、屋敷で暮らしてくれても構わない」
「その言葉が聞けて満足だ」
アレックスは満足そうに笑みを浮かべると、大量の肉料理を皿に盛り、俺に差し出した。ゆっくりと料理を食べながら、仲間達と語り、葡萄酒を味わう。それから三時間程宴を楽しむと、俺はフィリアとエルザを連れて部屋に戻った。エルザがどうしても俺と一緒に居たいと言って聞かなかったので、俺とフィリアの部屋に泊まる事になったのだ。
「ユリウス。お風呂に入りましょうか。背中を流して頂戴」
「なんだって? そんな……恥ずかしくて一緒に入れる訳ないじゃないか……」
「貴方は私の契約者なんだから私の命令に従うの!」
エルザの言葉を聞いたフィリアは、「エルザと一緒に風呂に入ったら、宿ごとファイアストームで燃やす」と脅した。顔を赤らめながら、エルザの尻を蹴って浴室に押し込むと、フィリアは満足気に微笑んだ。エルザと俺の関係に嫉妬しているのだろうか。
「ユリウス。随分エルザと親しいみたいだけど、浮気者は嫌いよ。ユリウスは私の契約者なんだから……」
フィリアは静かにすすり泣くと、俺は彼女の小さな体を抱きしめた。俺が好きなのはフィリアだ。エルザもまた美しいが、俺は初めてフィリアを見た瞬間から惚れていた。フィリアは俺の胸に顔を埋めると、エルザは浴室の扉を開き、隙間から寂しそうに俺達を見つめていた。
「エルザ。私と一緒にお風呂に入りましょうか。精霊同士仲良くしましょう」
「貴方も私に仕えたいの? それじゃ背中を流して頂戴」
「馬鹿ね。精霊に仕える精霊なんて居る訳ないじゃない。だけど、背中くらい私が流してあげるわ」
フィリアはエルザと共に風呂に入ると、俺は酒場からエール酒とスノウウルフの唐揚げを持ってきて、一人で飲み直した。ついに精霊の居場所を手に入れた。これからは冒険者としてこの地で名を上げれば良い。俺は一流の冒険者になるためにこの町に来た。いつか最高の冒険者になったら、両親に報告しに帰ろう。
暫く待つと、フィリアとエルザが浴室から出てきた。体にタオルを巻いており、俺はエルザの豊かな胸に釘付けになった。フィリアはそんな俺を鋭い視線で睨みつけている。
「全く……ユリウスは本当にいやらしいんだから。女なら誰でもいいのかしら……」
フィリアはゆっくり近づいてくると、俺の頬に口づけをした。それからフィリアはエルザを見つめると、自分がユリウスの契約者だと言わんばかりの勝ち誇った表情を浮かべた。エルザは目に涙を浮かべると、タオル姿のまま俺に抱きついた。彼女の豊かで弾力のある胸が俺の顔に当たる。
エルザは俺の頬に何度も接吻をすると、フィリアが俺の頬を強く叩いた。それから俺達は部屋で二次会を始め、夜遅くまで語り合った……。
ハーフェンに戻ると、冒険者ギルドでダンジョンの攻略と魔物の殲滅を報告し、報酬を受け取った。それから死霊の精霊・エルザが仲間になった事を報告すると、グライナーさんは自分の事の様に喜んだ。
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「そうですね。それでは今日も宿で宴を開きましょうか。その前に、実は精霊達が暮らすための家を探しているのですが、何か手頃な土地はありませんか?」
俺はグライナーさんに精霊達を保護するための屋敷を探している事を伝えた。グライナーさんはギルドの職員を集め、声を潜めて話し合うと、カウンターから鍵を取り出して俺に差し出した。
「この鍵は冒険者ギルドが所有する屋敷の鍵です。かつてハーフェンには多くの貴族が暮らしていたのですが、ある貴族が自宅で闇属性の魔物を召喚して仕舞い、その貴族はたちまち命を落としました。魔物は直ぐに討伐されましたが、町では呪われた館と呼ばれ、誰も近づく事はありません。今では多くの怨霊が棲家にしている館なのですが……きっと死霊の精霊なら怨霊を追い払う事も出来るでしょう」
「屋敷を頂けるんですか?」
「はい。屋敷に巣食う怨霊を追い払って下さるなら、屋敷をお譲りします。土地の価値も無く、まともな人間なら誰も近づこうとはしませんし……」
「それは都合が良いですね。きっとエルザが何とかしてくれるでしょう」
俺がそう言うと、エルザは嬉しそうに微笑み、俺の手を握った。そんなエルザをフィリアは寂しそうに見つめている。俺とエルザの肌が触れる度に、フィリアは怪訝そうな表情を浮かべる。フィリアは俺に好意を抱いてくれているのだろうか。
「それでは、これから俺とエルザは屋敷を見に行く事にしますね」
「分かりました。くれぐれもお気をつけて。ドラゴンの討伐者なら問題ないとは思いますが……」
グライナーさんと別れた俺達は、市場で戦利品を売り捌き、昼食を摂ってから屋敷に向かう事にした。アレックスとフィリアは宿で待機し、俺とエルザ、ユニコーンで屋敷に向かう。
ユニコーンにエルザを乗せ、エルザを抱きしめる要領で手綱を握る。エルザは俺の体に寄りかかり、気持ち良さそうに目を瞑っている。死霊の精霊・エルザの容姿を知る人間が、エルザの加護を得ようと近づいて来たが、俺の顔を見るや否や、恐れおののいて逃げ出した。
町では既に俺の面が割れており、ドラゴンやゴブリンロードを討伐した事実を知る人も多い。町を歩いているだけで住人から果物やパンを頂く事もある。エルザは俺と一緒に居れば、この町では無理やり加護を奪われる事はないだろう。しかし、エルザはこれまで、自分に襲い掛かる人間を殺めているからか、彼女の悪評を知る人も居る様だ。
精霊達の汚名をすすぐために、ハーフェンを脅かす悪質な魔物を狩り、地域を守り続ける必要がある。そうすれば、彼女達が正しい心を持つ精霊だという事を理解して貰えるだろう。手っ取り早く精霊達の好感度を上げるには、より強く、悪質な魔物を倒せば良い。ダンジョンの攻略も終わった所だし、次は更に強い魔物討伐のクエストを受けよう。
暫く町を進むと、肌に刺すような強い闇の魔力を感じた。この先に怨霊が巣食う屋敷があるのだろう。エルザはモーニングスターを握り締め、楽しそうに微笑んだ。彼女にとって怨霊や闇属性の魔物は仲間の様なものだ。自分よりも魔力が劣る魔物が彼女を襲う事は無い。それに、俺自身も死霊の精霊の加護で、自分よりも魔力が低い闇属性の魔物を意のままに操る事が出来る。
聖属性の使い手である俺が、まさか闇属性の加護を授かる事になるとは思わなかったが、使える力は何でも使うつもりだ。これも冒険者として一流になるため、フィリアや精霊達が快適に暮らせる環境を作るためだ。
「あれが問題の屋敷ね」
「随分濃い闇の魔力が流れているんだね。定期的に浄霊をしているらしいけど」
「きっとこの場の魔力が怨霊達を惹き寄せるのでしょう。すぐに片付けて私とユリウスの新居にしましょうか。これからこの屋敷で私に仕えながら生きるのよ」
「いや……エルザに仕える気はないんだけど……」
ユニコーンからエルザを降ろすと、ユニコーンは屋敷からゆっくりと離れ、心配そうな表情で俺を見つめた。屋敷の周辺には民家は一切無く、廃墟が幾つか建っているが、どれも人の姿は無い。美しいハーフェンの町に、この様な地域があるとは思わなかった。
屋敷は木造の二階建てで、屋敷を囲う様に金属製のフェンスが建っている。正門から敷地内に入ると、強い闇の魔力が流れてきた。まるで侵入を拒むようだ。聖属性の魔力の球、ホーリーの魔法を作り出して宙に浮かべると、屋敷に蔓延する闇の魔力が薄れた。
「まずは屋敷に入りましょうか。怨霊を味方に付けるわ」
エルザと共に屋敷に入ると、冒険者の亡霊だろうか、半透明のゴーストの様な魔物が襲い掛かってきた。エルザがモーニングスターに闇の魔力を込めると、ゴーストはエルザには敵わないと悟ったのか、武器を捨てて跪いた。
「貴方、この屋敷に住む怨霊を全て連れてきなさい」
エルザがゴーストに命令をすると、ゴーストは宙を舞い、屋敷に巣食う怨霊を連れてきた。半透明の黒い魔力の塊の様な怨霊が三十体。エルザの姿を見るや否や、怨霊達は跪き、頭を垂れた。
「今から貴方達を私の配下に入れてあげる。リビングアーマーとして蘇るか、この場から消えるか、好きな方を選びなさい」
エルザは怨霊達と対話し、意思を確認した。エルザの説明によると、ここに居る怨霊達は不当に殺害された人間だったり、志半ばに命を落とした冒険者の怨霊なのだとか。もう一度家族に会えたらすぐに成仏しても良いという者も多いのだとか。
「それじゃ貴方達の家族に会わせてあげるわ。私が貴方達の言葉を家族に伝えて上げる」
エルザの提案により、二十三体の亡霊はハーフェンに残した家族に会う事を望んだ。残る七体の亡霊は、リビングアーマーとして第二の人生を歩む事を選択した。
それから俺とエルザは、怨霊達を連れてハーフェンの町を駆けずり回った。怨霊と共に遺族の元に行くと、家の者は怪訝そうな表情を浮かべたが、俺が名を名乗ると、ドラゴンの討伐者、ゴブリンロードを倒した者だと、快く受け入れてくれた。
エルザは怨霊の言葉を遺族に伝え始めると、遺族はエルザを通じて怨霊と対話を始めた。最初は自分の家族だと言う事を疑う人も多かったが、家族しか知らないエピソードをエルザが話すと、すぐにエルザの言葉を信じ始めた。
俺とエルザはゆっくりと時間を掛けてハーフェンを回り、遺族に怨霊の言葉を伝えて回った。気づけば夕方になっており、全ての怨霊が消え去ると、エルザは満足気な笑みを浮かべて俺に抱きついた。
「今日は随分働いたわ。私達も宴に参加しましょうか」
「エルザ。俺は君の事を誇りに思うよ。家族を残して死んだ人間の魂を、あの世へ送り届けてくれたんだから。それに、みんな最期は嬉しそうに消えていったね」
「きっと満足したのよ。不当に殺された人間は、家族に『愛してる』の一言も言えずに死んだのだから。死して尚、家族の事を想い続け、届かぬ思いが彼等を怨霊に変えてしまったのでしょう」
「今回の出来事でエルザの知名度は一気に上がっただろうな。町の人達はみんなエルザに感謝していたしね」
「少しでも誰かの役に立てたなら嬉しいわ。これも私とユリウスの屋敷を手に入れるため」
「ああ。ありがとう、エルザ」
俺はエルザを強く抱きしめると、彼女は心地良さそうに目を瞑った。宿に戻って宴に参加しよう。今日は屋敷を手に入れた記念すべき日だ。それから俺達は仲間が待つ宿に戻った。
宿の一階では既に盛大な宴が行われており、ギルベルトさんやグライナーさんの姿もあった。アレックスは大量の料理を頬張りながら、美味しそうにエールを飲んでいる。俺とエルザが戻ると、フィリアが駆けつけてきた。
「遅かったわね……ちょっとエルザ、ユリウスから離れなさい。近すぎるわ」
「私のユリウスなんだからどうして離れる必要があるの? さぁユリウス、私のために美味しい肉料理と葡萄酒を用意しなさい」
やはりエルザとフィリアは良く似ている。エルザの態度は初めて会った時のフィリアにそっくりだ。俺はフィリアとエルザを連れて仲間の元に戻った。ギルベルトさんがすぐに葡萄酒と料理を注文してくれ、俺達の宴が始まった。
アレックスが乾杯の音頭を取ると、俺は葡萄酒の飲みながら仲間達に屋敷での出来事やエルザの活躍を伝えた。グライナーさんはエルザの頭を撫でながら、エルザの行いを賞賛した。
「なぁ、俺も戦士になるまで屋敷で暮らして良いんだろう?」
「随分水臭いじゃないか。アレックスは俺の従魔でもあるんだし、好きなだけ屋敷に居てくれよ。勿論、ミノタウロス族の戦士になった後も、屋敷で暮らしてくれても構わない」
「その言葉が聞けて満足だ」
アレックスは満足そうに笑みを浮かべると、大量の肉料理を皿に盛り、俺に差し出した。ゆっくりと料理を食べながら、仲間達と語り、葡萄酒を味わう。それから三時間程宴を楽しむと、俺はフィリアとエルザを連れて部屋に戻った。エルザがどうしても俺と一緒に居たいと言って聞かなかったので、俺とフィリアの部屋に泊まる事になったのだ。
「ユリウス。お風呂に入りましょうか。背中を流して頂戴」
「なんだって? そんな……恥ずかしくて一緒に入れる訳ないじゃないか……」
「貴方は私の契約者なんだから私の命令に従うの!」
エルザの言葉を聞いたフィリアは、「エルザと一緒に風呂に入ったら、宿ごとファイアストームで燃やす」と脅した。顔を赤らめながら、エルザの尻を蹴って浴室に押し込むと、フィリアは満足気に微笑んだ。エルザと俺の関係に嫉妬しているのだろうか。
「ユリウス。随分エルザと親しいみたいだけど、浮気者は嫌いよ。ユリウスは私の契約者なんだから……」
フィリアは静かにすすり泣くと、俺は彼女の小さな体を抱きしめた。俺が好きなのはフィリアだ。エルザもまた美しいが、俺は初めてフィリアを見た瞬間から惚れていた。フィリアは俺の胸に顔を埋めると、エルザは浴室の扉を開き、隙間から寂しそうに俺達を見つめていた。
「エルザ。私と一緒にお風呂に入りましょうか。精霊同士仲良くしましょう」
「貴方も私に仕えたいの? それじゃ背中を流して頂戴」
「馬鹿ね。精霊に仕える精霊なんて居る訳ないじゃない。だけど、背中くらい私が流してあげるわ」
フィリアはエルザと共に風呂に入ると、俺は酒場からエール酒とスノウウルフの唐揚げを持ってきて、一人で飲み直した。ついに精霊の居場所を手に入れた。これからは冒険者としてこの地で名を上げれば良い。俺は一流の冒険者になるためにこの町に来た。いつか最高の冒険者になったら、両親に報告しに帰ろう。
暫く待つと、フィリアとエルザが浴室から出てきた。体にタオルを巻いており、俺はエルザの豊かな胸に釘付けになった。フィリアはそんな俺を鋭い視線で睨みつけている。
「全く……ユリウスは本当にいやらしいんだから。女なら誰でもいいのかしら……」
フィリアはゆっくり近づいてくると、俺の頬に口づけをした。それからフィリアはエルザを見つめると、自分がユリウスの契約者だと言わんばかりの勝ち誇った表情を浮かべた。エルザは目に涙を浮かべると、タオル姿のまま俺に抱きついた。彼女の豊かで弾力のある胸が俺の顔に当たる。
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