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入店
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カラン、と鈴のついたドアを開ける。
純喫茶風の店構えは、一見じゃ誰もそういう店だなんて思わないだろう。
でも、ここは男専用の出会い系カフェ、『喫茶ハチメ』。
通称、『ハメカフェ』。
男相手にエッチなコトがしたい奴らが集まる、欲望がムンムンに渦巻く場所だ。
「おはよーございまーす」
「あっ、目白くんおはよぉ♡補充のチェックと外の掃除おねがぁ~い」
ドアを開けると、ふわふわ茶髪の「アイ」が顔を合わせるなり仕事を押しつけてくる。かわいい顔してこいつは人使いが荒い。オマケに年上。人は見かけによらない、その1。
「はいはい、了解。あっヒロさん、おはようございます」
「おはよう、目白くん♡今日もよろしくねっ♡」
カウンターの中ではヒロさんがテキパキと動いている。おっとりして天然な性格のわりに、ヒロさんはめちゃくちゃ仕事ができる。人は見かけによらない、その2。店にはその3その4も居るけど……今日はシフトじゃないからそこは割愛。
裏へ行って、ロッカーに荷物を入れてエプロンを身に着ける。えっと、補充のチェックと外の掃除だっけ。そうだ、今日は上野くん来るかな。来るならヤりたいけど、どうだろ。
連絡先を交換した上野くんとのセフレのような友達のようなゆるくて心地いい関係は、今もまったり継続中だ。ここで会ったら話をしたりエッチをしたり、居なかったら他の相手とエッチなことをしたり。お互い、好きに過ごしている。
だからまぁ、来なかったら他に相手を探してもいいかもしれない。最近キツめの尿道責め、興味あるし……♡(あ、俺はあれからバッチリバイ堕ちしてネコ堕ちした。人生、転ぶ方に転んだって感じだけどわりと楽しい)
「補充は、だいじょぶ……」
裏の倉庫とついでに冷蔵庫も見て、チェック表に記入する。OK……っと。
ホウキを持って表へ戻ると、すっかり準備を終えたヒロさんが俺を見るなり小さなカップを差し出してくる。
「目白くん、これ、試作のエスプレッソ♡飲んでみてくれるかなぁ?♡」
「あ、ありがとーございますっ」
「うぇ~、エスプレッソって苦いんだよねぇ?アイにはムリぃ~」
「そんなアイちゃんには練乳ミルク♡」
「わぁッ♡ひろっち、だいすきぃ~♡」
吐き気がしそうなくらい甘々な会話を横目に、エスプレッソを飲む。ビリっと舌に残る苦味は、まだ少しだけ残ってた眠気を一発で醒ましてくれるみたいだ。ヒロさんのおかげで俺はコーヒーを美味しいと思うようになった。棚からぼた餅だ。感謝してる。
「うん、美味しいです。量もちょうどいいかな」
「そぉ?よかったぁ♡じゃあこれでオーナーに相談してみようかな♡」
「じゃ、俺、外掃いてきますねー」
「はぁい♡よろしくねぇ~♡」
カップをヒロさんに託して、ホウキを片手に外へ出る。
まだジメッとしてるけど、夏はすぐそこって感じの日差しに俺は目を細める。今日は暑くなりそうだ。忙しくなるかな。どうだろう。もうすぐ夏休みだし、いろいろ予定も立てたいな。まぁ、まずは今日一日を乗り切るところから──。
「おはよう。お店、もうやってる?」
「ぁ……」
掛かった声に顔を上げると、そこにはすらりとした長身のサラリーマンが立っている。爽やかで落ち着いた雰囲気と、店と俺とを見比べて、鋭く品定めをするような視線。それは「店員」も完全に範疇に入れてるって感じの代物だ。
「っ……♡」
そそられた。
俺の嗅覚はもう十分ここで通用するようになっていて、この臭いは、俺も大好きな部類だって自分でもわかっている。だから俺はその視線をすくい取るように、ためらいもなく媚びた瞳を送る。俺もちゃんと、「指名対象」ですよって教えるように。
「はい♡あと5分で開店です♡」
「そっか。じゃあ……君を、指名してもいい?♡」
「ッ──♡」
そっと屈まれて耳元で囁かれる声に、俺はゾクッとカラダを震わせる。
ああ、やっぱり……ッ♡
この人ならきっと、今日俺の望むプレイを、好きなだけしてくれるに違いない。こんな朝からたくさんたくさんいじめられて、ドロドロにさせられちゃう。その期待に、胸が高鳴るのは当然だ。上野くんはあんなこと言ってたけど、こんなお誘いが来るからこの仕事はクセになる。だから俺は、このバイトが大好きだ。
俺はサラリーマンさんの問いかけに、ゆっくりと、こくんと頷く。
晴天。
10時すこし前。
ここは男専用の出会い系カフェ、『喫茶ハチメ』。
通称、『ハメカフェ』。
男相手にエッチなコトがしたい奴らが集まる、欲望がムンムンに渦巻く場所。
そして俺がいま働いている──どんな男も大胆にさせる、魔法みたいに、不思議な場所だ。
「はい……喜んで♡ハメカフェへのご来店、誠にありがとうございます♡」
純喫茶風の店構えは、一見じゃ誰もそういう店だなんて思わないだろう。
でも、ここは男専用の出会い系カフェ、『喫茶ハチメ』。
通称、『ハメカフェ』。
男相手にエッチなコトがしたい奴らが集まる、欲望がムンムンに渦巻く場所だ。
「おはよーございまーす」
「あっ、目白くんおはよぉ♡補充のチェックと外の掃除おねがぁ~い」
ドアを開けると、ふわふわ茶髪の「アイ」が顔を合わせるなり仕事を押しつけてくる。かわいい顔してこいつは人使いが荒い。オマケに年上。人は見かけによらない、その1。
「はいはい、了解。あっヒロさん、おはようございます」
「おはよう、目白くん♡今日もよろしくねっ♡」
カウンターの中ではヒロさんがテキパキと動いている。おっとりして天然な性格のわりに、ヒロさんはめちゃくちゃ仕事ができる。人は見かけによらない、その2。店にはその3その4も居るけど……今日はシフトじゃないからそこは割愛。
裏へ行って、ロッカーに荷物を入れてエプロンを身に着ける。えっと、補充のチェックと外の掃除だっけ。そうだ、今日は上野くん来るかな。来るならヤりたいけど、どうだろ。
連絡先を交換した上野くんとのセフレのような友達のようなゆるくて心地いい関係は、今もまったり継続中だ。ここで会ったら話をしたりエッチをしたり、居なかったら他の相手とエッチなことをしたり。お互い、好きに過ごしている。
だからまぁ、来なかったら他に相手を探してもいいかもしれない。最近キツめの尿道責め、興味あるし……♡(あ、俺はあれからバッチリバイ堕ちしてネコ堕ちした。人生、転ぶ方に転んだって感じだけどわりと楽しい)
「補充は、だいじょぶ……」
裏の倉庫とついでに冷蔵庫も見て、チェック表に記入する。OK……っと。
ホウキを持って表へ戻ると、すっかり準備を終えたヒロさんが俺を見るなり小さなカップを差し出してくる。
「目白くん、これ、試作のエスプレッソ♡飲んでみてくれるかなぁ?♡」
「あ、ありがとーございますっ」
「うぇ~、エスプレッソって苦いんだよねぇ?アイにはムリぃ~」
「そんなアイちゃんには練乳ミルク♡」
「わぁッ♡ひろっち、だいすきぃ~♡」
吐き気がしそうなくらい甘々な会話を横目に、エスプレッソを飲む。ビリっと舌に残る苦味は、まだ少しだけ残ってた眠気を一発で醒ましてくれるみたいだ。ヒロさんのおかげで俺はコーヒーを美味しいと思うようになった。棚からぼた餅だ。感謝してる。
「うん、美味しいです。量もちょうどいいかな」
「そぉ?よかったぁ♡じゃあこれでオーナーに相談してみようかな♡」
「じゃ、俺、外掃いてきますねー」
「はぁい♡よろしくねぇ~♡」
カップをヒロさんに託して、ホウキを片手に外へ出る。
まだジメッとしてるけど、夏はすぐそこって感じの日差しに俺は目を細める。今日は暑くなりそうだ。忙しくなるかな。どうだろう。もうすぐ夏休みだし、いろいろ予定も立てたいな。まぁ、まずは今日一日を乗り切るところから──。
「おはよう。お店、もうやってる?」
「ぁ……」
掛かった声に顔を上げると、そこにはすらりとした長身のサラリーマンが立っている。爽やかで落ち着いた雰囲気と、店と俺とを見比べて、鋭く品定めをするような視線。それは「店員」も完全に範疇に入れてるって感じの代物だ。
「っ……♡」
そそられた。
俺の嗅覚はもう十分ここで通用するようになっていて、この臭いは、俺も大好きな部類だって自分でもわかっている。だから俺はその視線をすくい取るように、ためらいもなく媚びた瞳を送る。俺もちゃんと、「指名対象」ですよって教えるように。
「はい♡あと5分で開店です♡」
「そっか。じゃあ……君を、指名してもいい?♡」
「ッ──♡」
そっと屈まれて耳元で囁かれる声に、俺はゾクッとカラダを震わせる。
ああ、やっぱり……ッ♡
この人ならきっと、今日俺の望むプレイを、好きなだけしてくれるに違いない。こんな朝からたくさんたくさんいじめられて、ドロドロにさせられちゃう。その期待に、胸が高鳴るのは当然だ。上野くんはあんなこと言ってたけど、こんなお誘いが来るからこの仕事はクセになる。だから俺は、このバイトが大好きだ。
俺はサラリーマンさんの問いかけに、ゆっくりと、こくんと頷く。
晴天。
10時すこし前。
ここは男専用の出会い系カフェ、『喫茶ハチメ』。
通称、『ハメカフェ』。
男相手にエッチなコトがしたい奴らが集まる、欲望がムンムンに渦巻く場所。
そして俺がいま働いている──どんな男も大胆にさせる、魔法みたいに、不思議な場所だ。
「はい……喜んで♡ハメカフェへのご来店、誠にありがとうございます♡」
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