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31話《『記憶者』様のお出ましです(`・ω・´)ゞ》

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「ったく、マジ失礼な来訪者サマ。助けに来てやったんだからまずは感謝でしょ?感謝。ハイ言って!言うッ!」
「アッ。ハイッ。ありがとごじます!!!!!!」

 まさに失礼極まりない指差しをビシッと俺へ行うノームに俺は文句も言わず、素直に殊勝におとなしく慎ましく、この上なく謙虚に感謝を告げる。つまりは可及的速やかなジャパニーズ土下座だ。テンパっててうっかり忘れていたが、そういや居ました土の賢者!居てくれて良かった、ノームっ!!

「……しかし、どうしてここが?」
「ウンディーネに会ったの。なんか自分の代わりに助けに行ってやってくれって言われてさ。アイツが頼み事するなんてよっぽどだと思ったから、わざわざオレが駆けつけてやったわけ。ハイ、褒める褒める!」
「ヨッ!ノーム屋ッ!日本一ッ!エターニアイチッ!ヨッ!」
「ヨッ。ヨッ。」

 ノームを昔ながらの粋なやり方で褒める俺と、俺の真似をしてヨッヨッ鳴くエーテルーフ。その反応に心底不満げにノームは眉を寄せる。

「つか、おたくらはなにやってんの?今世界大変なことになってんだよ?つか、そもそもアンタ誰?」
「む。ボクか?ボクはエーテルーフ。このエーテルの正式な守護者だぞっ」
「エーテルーフぅ……?ぁ……──ッ!アンタが、例の……っ、『記憶者』ッ!?」
「え!?記憶者ッ!?──ここに来てッ!?」

 もう誰もが完全に忘れていただろう謎設定、『記憶者』──。
 ここに来てまさかその単語が出てくるとは思っていなかった。しかもその正体が……エーテルーフだってェ!?

「の、の、ノームゥ!な、な、なしてそんなことをご存知!?」
「オレの術!アンタは大地のチカラを流用するだけだけど、オレは大地の記憶を断片的に知ることが出来るんだよっ!そこでオレは……「エーテルーフ」の断片を見たんだ。世界の全て、果てはその外側まで知る、全知の『記憶者』。エーテルーフと呼ばれたその白き叡智は、突然この世界から忽然と姿を消した……って」
「な、な、な。なにそれ。エーテルーフ……ソレナニ?」

 ノームの真のチカラも驚きだが、なんじゃその、やけに神格化した神話じみた内容は!?どこがどう回り回ってそんな言い伝えみたいなことになってんだ……!?

「……もしかしたら、ボクがトリップする前の景色を見たのかもしれないな」
「なっ。──トリップ前!」
「嗚呼。ボクのトリップはりょうがここへトリップして来るよりも大分早かった。ボクのトリップによってキミのトリップが起こり、ゲーム内でのキミのデータが作成されるまでにも時間が取られたからな。つまり、相互トリップと言ってもかなりタイムラグがあったことになる。その期間が、現在のエターニアの「歴史」と混じり合ったのだとしたら……」
「エッエッ。なんじゃ、つまりはじめのプレイしてたデータの途切れたトコが、そのままエターニアの過去やら歴史やらに繋がっちまったってこと!?」
「うむ。その仮説で考えるなら、なにもかもを知り、そしてこの世界から突然消えたボクが旅に出ていたことによって『来訪者』として扱われ、その中でも特異な『記憶者』と言われたのも理解出来る」
「いや……そんな仮説は、どうでもいいってッ!」
「うお!」

 俺らが白熱した議論を繰り広げる中、我慢できなくなったように間へ割り込んでくるノーム。そして俺には目もくれず、エーテルーフの肩をガシリと掴む。その様子はいつものウエメセ余裕ぶってる感がまるでなく、必死で夢中といった感じだ。

「オレはアンタにずっと会いたかったんだ……!エーテルの本来の守護者、この世界で唯一、エーテルの全て、元素の全てを引き出せる、万能の存在ッ!」
「うおうおうお」
「ずっとアンタが鍵だって思ってたんだ……!万能の均衡器と言われるエーテルなのに、オレ達だけじゃ最大性能を引き出せない……絶対これは、別の誰かのために造られた道具なんだって!」
「うおうおうおうお」
「アンタが居れば、属性なんて気にせず元素を自由に扱える!失われた「転移」の術だって、復活出来るかもしれない!」
「うおうおうおうおうお……むっ!!そうか──転移ッ!!!」
「え!?今度はナニ!?転移!?」

 その肩を掴んだまま、興奮によってガタガタガタガタとエーテルーフを揺さぶり続けるノーム。そしてガタガタガタガタとノームに揺さぶられるがままのエーテルーフ……。しかしその発言を聞いた瞬間、カッとその目が見開かれる。突然の覚醒にノームもビクリと身を引くが、飢餓中なウツボのごとく、ノームの腕をエーテルーフは激しく引っ掴んだ。

「ノームっ!テレポート──転移はエーテルの抱く能力のひとつだ!今はボクがエーテルを扱えないせいで、恐らく封印されている扱いになっているに違いない!」
「っ……!やっぱアンタの能力なのか……!」
「あ~!転移ってテレポのこと!?」

 転移──それは、トゥルーエンドルートに入りエーテルーフと行動を共にするようになってから初めて使えるテレポート機能。回数は限られてるが、行動回数を消費せずに任意の場所へ移動することができるシステムだ。
 トゥルーエンドルートはエーテルーフと周った場所や人物によってEDが変わる仕様。より多くの人物や施設を尋ねることで正規EDにたどり着けるから、このテレポ能力が欠かせない。
 終盤にしか使えない能力だし、エーテルーフが居ないからすっかりアタマからすっ飛んでたが──こいつが居りゃ使えるのか……テレポォ!!!!

「頼む、ボクにチカラを分けてくれ。現在エーテルは四賢者の影響で変質し、ボクの管理下へ戻らない状況になっている」
「マジ!?確かにエーテルは影響を受けやすい物質だけど……そこまで!?何?やっぱリョウじゃ役に立ってないワケっ?」
「うぉいうぉいうぉい!オレのチカラのせいじゃないわい!エーテルが変質してるせいじゃわい!」
「キミのチカラが必要だ……ノーム」
「……」

 まっすぐノームを見つめるエーテルーフ。その瞳を見返して、可笑しげにノームは肩を揺らす。

「まさかあの『記憶者』から頼み事されちゃうとはね。アハハッ……やっぱ賢者、クッソ楽しいじゃん!」
「オッ!協力──してくれんのかッ!?」
「元々オレが賢者になったのは『記憶者』──エーテルーフに会う手段を見つけるためだった。こんなの、願ってもない機会ってこと!」
「おぉ……ッ!恩に着るぞ、ノームっ!」

 快い返事に、エーテルーフはきらきらと顔を輝かせる。ここに来て前向きな協力者……ありがたい限りだなッ!これでエーテルも、どーにかなるかッ!?

「で?オレはどうすりゃいいの?」
「こちらへ来て共にエーテルへチカラを籠めてくれ」
「はいはい──うわッ、アンタが持ってるだけで質量とんでもな……ああ……オーケー、判った。オレが出来るだけアンタの望むようにチカラの動きを合わせるから、アンタは逐一的確な指示して。頼むね」
「うむ、了解だッ!とりあえずなんかイイ感じにテキトーにやってくれッ!」
「うん……。感覚系天才肌、一回滅んでくれる?」
「あ、俺!俺はっ!?なんかやること!できることっ!ありますかーっ!」

 文系天才肌と理系天才のイチャイチャを眺めつつ、ハイハイハイ!と俺も手を挙げる。白黒凸凹ケンカップル(だが尊敬はある)のやり取りをボーッと眺めるのも乙な話ではあるが、俺だけ手を拱いているわけにはいかない。役に立たねばッ!

「ああ、じゃあ来訪者サマはコッチ、オレのサポ!『祝福』のチカラ、注いで。とりあえずなんかイイ感じにテキトーにね!」
「ってェ!!!お前も理系天才肌じゃねーかぁぁぁぁぁ!!!!」


【EX‥TIPS】
・『記憶者』は開発者がボツにした設定のひとつ。元々はもうひとりの隠しキャラ用の設定だったが、制作とシナリオの都合で隠しキャラが一人になった。今回のバグにおいては「隠しキャラ」という括りにより設定がエーテルーフくんに集約された形。
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