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42話《想いの結晶》
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「──!」
ボクが籠めたチカラと願いが、柔和して反発する。
それは彼女の応えだったのかもしれない。彼女の、この世界とボクに対する感情のゆらぎだったのかもしれない。溢れる光。弾ける光。暖かく湿った温度がボクを包む。しゃんちゃん越しでしか知らない彼女が、確かにそこに居るように感じる。
言葉はない。姿もない。
しかし光は徐々に収束し、それまでとは異なるカタチとなって、ボクの手の中へと収まる。
それはひとつではない、いつつの水晶。
それぞれの元素をたたえた、ボクら全員で抱く器。
「──エッ!なんか数増えたけど!?」
「……うむ。ボクが願うカタチへと、変質させたのだ」
「エーテルーフ様の願う形、ですか?」
「そうだ。このエターニアは賢者があってこそ。ならばボクだけがすべてを包括する器を所持しているより、このほうが適切だ」
そう……エーテルはあくまでもボクだけの秘器。だが既にエーテルそのものは彼らの元素に馴染んだ物質になり、それ故にこんな状況を呼び起こした。ならばその状態を壊すことなく、ボクが寄り添う形にしたかった。ボクの不在の間、このエーテルによってエターニアを護ってくれたのは紛れもなく彼らなのだから。
そう考えると、これはボクからの贈り物になるのだろうか?
ボクは持っている水晶をそれぞれに渡す。サラマンダーは渡された赤い水晶を光に翳し、目を細める。
「それで四大元素に適合する器、か。これを俺達がそれぞれ所持するわけか?」
「その通り。ボクの水晶はキミたちの水晶を収める器だ。これは五人が集まって使用することで、初めて意味を持つ。ボクが、そうしたカタチにしたかったんだ。だからこうしてエーテルを分解し……新しいカタチへ、再構築した」
ここにはそもそも祭壇の封印が存在しない。つまりこの新たな水晶が、ボクにとっての『無垢の水晶』になるのだろう。
サラマンダーと同じように、シルフが水晶を手の平で転がす。そしてボクを見て、優しく微笑む。
「そう。つまりエーテルーフは、これからも私達と仲良くしてくれるわけね?」
「むっ?」
「だね。こんなメンドーな形にするってことはそうなんじゃない?コレ、交流を前提にした形だし」
「むむっ。そうだな!確かにそうだ!盲点だったぞっ」
ノームの発言は最もだ。確かに使用で全員が集まらなければならないのなら、賢者達と絶えず関わりを持つ必要があるだろう。驚くボクに、ウンディーネが更に驚く。
「えっ。そこまでは考えていなかったんですか?」
「うむっ。とにかくボク達賢者全員に相応しいカタチにすることだけを考えていた。これはボクなりの開発者への祈りだったからな」
「そうだったのですね。つまりこれが形になったということは、開発者……創造主様にエーテルーフ様の祈りが届いた、ということなのでしょうか?」
「そうだな……」
この形が叶った。それはつまり、何かしらが成就したということになるのだろう。
例えそれが錯覚だとしても。ボクの中だけの、都合のいい解釈だったとしても。ボクはそれを信じていたい。彼女にボクの祈りが、その一端だけでも、一欠片でも届いたのだと、そう思っていたい。
この、賢者達個々の在り方が顕現したカタチは。
彼女が……ボクの祈りを……赦してくれた、証明なのだと。
「──うむ。そうであると、ボクも、思いたい」
故に、ボクも固く頷く。
そうだな。そうであればいい。
そうであると……願い続けたい。
「そうに決まってんだろう!ちゃんとコレが形として在るんだからな!」
「わっ!ら、乱暴だなッ、サラマンダー!」
「あら、サラマンダーはいつもこうよ?好きな相手には強引な色男よね、ウンディーネ♡」
「し、シルフっ!だから私に振らないでください……!」
「ウンディーネはさ、ちょっと煽り耐性無さすぎ。いいカモすぎない?」
「いやノーム。お前が言えるタマじゃねぇだろ」
「どういう意味ィ!?」
「ハハッ……賑やかだな」
「そうよ~。私達ってね、とっても煩いの!」
「むっ。むぎゅ~~~~~~」
「いいな!よしよし!皆抱きつけ!!」
ボクより小さな身体に抱き締められれば、それが呼び水になったようにぎゅうぎゅうと全員から抱き締められる。うれしそうなシルフ。豪快に笑うサラマンダー。あきれたノーム。困っているウンディーネ。
その姿に。
その光景に。
ボクが「キャラクター」としていつか辿り着いたかもしれない景色に。
やはりボクは、泣きそうになって。
「……うむ。──うむ!」
そんな自分自身の感情を認めるように、ボクは笑った。
ボクに新しい感情を与えてくれた彼らに、報いるように笑った。
ボクを友人と認めてくれた彼らを。
ボクに新たな居場所を認めてくれた彼らを。
ボクも、大切な友人だと──そう、間違いなく、伝えるために。
ボクが籠めたチカラと願いが、柔和して反発する。
それは彼女の応えだったのかもしれない。彼女の、この世界とボクに対する感情のゆらぎだったのかもしれない。溢れる光。弾ける光。暖かく湿った温度がボクを包む。しゃんちゃん越しでしか知らない彼女が、確かにそこに居るように感じる。
言葉はない。姿もない。
しかし光は徐々に収束し、それまでとは異なるカタチとなって、ボクの手の中へと収まる。
それはひとつではない、いつつの水晶。
それぞれの元素をたたえた、ボクら全員で抱く器。
「──エッ!なんか数増えたけど!?」
「……うむ。ボクが願うカタチへと、変質させたのだ」
「エーテルーフ様の願う形、ですか?」
「そうだ。このエターニアは賢者があってこそ。ならばボクだけがすべてを包括する器を所持しているより、このほうが適切だ」
そう……エーテルはあくまでもボクだけの秘器。だが既にエーテルそのものは彼らの元素に馴染んだ物質になり、それ故にこんな状況を呼び起こした。ならばその状態を壊すことなく、ボクが寄り添う形にしたかった。ボクの不在の間、このエーテルによってエターニアを護ってくれたのは紛れもなく彼らなのだから。
そう考えると、これはボクからの贈り物になるのだろうか?
ボクは持っている水晶をそれぞれに渡す。サラマンダーは渡された赤い水晶を光に翳し、目を細める。
「それで四大元素に適合する器、か。これを俺達がそれぞれ所持するわけか?」
「その通り。ボクの水晶はキミたちの水晶を収める器だ。これは五人が集まって使用することで、初めて意味を持つ。ボクが、そうしたカタチにしたかったんだ。だからこうしてエーテルを分解し……新しいカタチへ、再構築した」
ここにはそもそも祭壇の封印が存在しない。つまりこの新たな水晶が、ボクにとっての『無垢の水晶』になるのだろう。
サラマンダーと同じように、シルフが水晶を手の平で転がす。そしてボクを見て、優しく微笑む。
「そう。つまりエーテルーフは、これからも私達と仲良くしてくれるわけね?」
「むっ?」
「だね。こんなメンドーな形にするってことはそうなんじゃない?コレ、交流を前提にした形だし」
「むむっ。そうだな!確かにそうだ!盲点だったぞっ」
ノームの発言は最もだ。確かに使用で全員が集まらなければならないのなら、賢者達と絶えず関わりを持つ必要があるだろう。驚くボクに、ウンディーネが更に驚く。
「えっ。そこまでは考えていなかったんですか?」
「うむっ。とにかくボク達賢者全員に相応しいカタチにすることだけを考えていた。これはボクなりの開発者への祈りだったからな」
「そうだったのですね。つまりこれが形になったということは、開発者……創造主様にエーテルーフ様の祈りが届いた、ということなのでしょうか?」
「そうだな……」
この形が叶った。それはつまり、何かしらが成就したということになるのだろう。
例えそれが錯覚だとしても。ボクの中だけの、都合のいい解釈だったとしても。ボクはそれを信じていたい。彼女にボクの祈りが、その一端だけでも、一欠片でも届いたのだと、そう思っていたい。
この、賢者達個々の在り方が顕現したカタチは。
彼女が……ボクの祈りを……赦してくれた、証明なのだと。
「──うむ。そうであると、ボクも、思いたい」
故に、ボクも固く頷く。
そうだな。そうであればいい。
そうであると……願い続けたい。
「そうに決まってんだろう!ちゃんとコレが形として在るんだからな!」
「わっ!ら、乱暴だなッ、サラマンダー!」
「あら、サラマンダーはいつもこうよ?好きな相手には強引な色男よね、ウンディーネ♡」
「し、シルフっ!だから私に振らないでください……!」
「ウンディーネはさ、ちょっと煽り耐性無さすぎ。いいカモすぎない?」
「いやノーム。お前が言えるタマじゃねぇだろ」
「どういう意味ィ!?」
「ハハッ……賑やかだな」
「そうよ~。私達ってね、とっても煩いの!」
「むっ。むぎゅ~~~~~~」
「いいな!よしよし!皆抱きつけ!!」
ボクより小さな身体に抱き締められれば、それが呼び水になったようにぎゅうぎゅうと全員から抱き締められる。うれしそうなシルフ。豪快に笑うサラマンダー。あきれたノーム。困っているウンディーネ。
その姿に。
その光景に。
ボクが「キャラクター」としていつか辿り着いたかもしれない景色に。
やはりボクは、泣きそうになって。
「……うむ。──うむ!」
そんな自分自身の感情を認めるように、ボクは笑った。
ボクに新しい感情を与えてくれた彼らに、報いるように笑った。
ボクを友人と認めてくれた彼らを。
ボクに新たな居場所を認めてくれた彼らを。
ボクも、大切な友人だと──そう、間違いなく、伝えるために。
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