彼女持ちの俺、オジサンと女装デートで純愛堕ち恋人えっち

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◇駅ビル「虹ホロ」

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「で?何見たいんだよ?」
「ん……時計。ちょっと前に出たヤツ、見てみたくて」
「へぇ」
 
 そうやって、今度俺がオジサンを連れてきたのは駅ビル。
 ジェラート屋から移動するってなったときもやっぱりオジサンは俺に行き先を任せたから、いろんな店が入ってて時間を潰せて、外よりは人の目も多くない、ココを選んだ。まぁ、時計を見たかったのもホントだけど。ココは何度も来てるから、フロアのつくりも大体はわかってる。だから、とすぐにエスカレーターへ乗れば、俺の真後ろの段にオジサンは乗って、そのまま俺と──手を、繋いできた。
 
「ッ!」
 
 するりと、ビックリするくらい自然に握られる手に、俺は飛び上がりそうになる。慌ててオジサンを見下ろすけど、オジサンはまったく動じてる様子がない。
 
「あ?なんだよ?」
「って、手……ッ!♡」
「手がどうしたよ?デートなんだから手くらい繋ぐだろ?」
「っ、ぁ……ッ♡」
 
 そしてまったく動じる様子のないまま、オジサンは俺と手の指を絡めるようなカタチにしてくる。俗に言う……恋人つなぎ、のカタチに。
 ぁ♡ぃ、いっつもオジサンにエッチなことされてる太いゆびっ♡おまんこ手マンでいじめられてるゴツゴツのゆびっ♡ふつうに、つながっちゃってるっ♡手♡手ぇ♡つなぐとかっ♡なんで、いまっ♡そんなコト……ッ♡♡♡
 う♡オジサンの手、あっついッ♡しめってて、おっきいッ♡ぎゅううう♡ってされてッ♡俺の手、カンゼンにつかまえられちゃってるッ♡外歩いてるとき♡腰ずうっと抱かれてたみたいにっ♡これっ♡オジサンっ♡ぜっち離してくれないッ♡ほ♡ほんとの恋人みたいならぶらぶ手繋ぎっ♡ずっと、されちゃう……ッ♡♡♡
 
「ココ入ってる間は手ェ離さねぇからな♡振りほどくなよ?♡」
「ッ……♡」
 
 ほ、ほらっ♡ほらぁ♡オジサンっ、離してくれる気、ないっ♡きゅ♡きゅ♡って♡確かめるみたいにチカラ、こめられちゃってる……っ♡
 俺、カノジョじゃないのに……ッ♡
 俺たち恋人じゃ、ないのに……ッ♡
 デートだからって、こんな……ッ♡
 
「……、」
 
 俺は繋がった手を見下げて、そしてオジサンを、そっと見上げる。俺の視界に映るオジサンはさっきの強気なコトバと違ってなんだかすごく嬉しそうに微笑んでいて、それを見た俺は、いつものオジサンとのギャップに、なにも言えなくなってしまう。
 な、なんで……ッ♡
 なんで、だよぉ……ッ♡
 なんでオジサン、俺と手ぇ、繋いだだけで……ッ♡
 そんなに、嬉しそうな顔、してるんだよぉ……ッ♡♡♡

 



 
 ・・・



 
 
「こ、こっち……♡」
「おう。ここか?」
「う、うん……っ♡」
 
 オジサンが手を繋いできたせいでやたら恥ずかしくなったキモチで、俺たちは上のフロアにある時計屋へたどり着いた。ココは店員が基本放置してくれるから気に入ってる店だけど、それでも繋いだ手を見られたくなくて、そこを隠すようにショーケースを探す。すると人気商品のせいか、いちばん目立つ場所の真ん中に、「お目当て」は置かれていた。
 スポーツタイプのシンプルな形を中心に出してるブランドの新作。白地の全体に文字盤だけ虹っぽいホロが掛かってる今回のデザインは、どんなカッコにも合いそうな好みのヤツだった。だから一回自分の目で実物を確認して、腕にはめてみて、どんな感じか確かめたかったんだ。
 あ、でも、ウィメンズサイズ売り切れてる……残ってるのメンズとレディースだけだ……。それならガマン、するしかないかな……。こんなオンナノコのカッコじゃメンズ用試着したいとか言えないし……ッ♡オジサンに手も、繋がれちゃったままだしっ……♡
 
「──あの」
「はい、なんでしょう?」
 
 俺が諦めムードで時計をジッと眺めてると、不意にオジサンが奥にいた店員に声をかける。どうしたんだろ?と思って視線を上げると、オジサンはメンズ用の時計を、まっすぐに指差していた。
 
「これ、サンプルありますか?嵌めてみたいんですけど」
「あっ、はい!メンズ用で宜しいでしょうか?」
「ええ、大丈夫です」
 
 流れるようなやり取り。丁寧で穏やかな口調は、普段のオジサンのスケベで強引な印象とは違って、かなり驚く。俺がオジサンを見つめても、全然こっちに目線を合わせてくれない。するとすぐに、店員が時計を持って戻ってくる。
 
「お待たせ致しました。こちらでデザインとサイズはお間違いないでしょうか?ご希望でしたらお着け致しますが……」
「ああ、それは自分で着けるので、大丈夫です」
「わかりました。ご試着が終わったらこちらまで返却をお願いしますね」
「はい」
 
 オジサンが時計を受け取ると、店員はすぐに奥へ引っ込んだ。手にした時計を少しだけ眺めてから、オジサンは台座ごとその時計を、俺へ差し出してくる。
 
「ほら、着けろよ」
「えっ」
「これ目当てだったんだろ?着けてみろって」
「……。」
 
 当たり前、ってカンジで差し出される時計に俺がぽかん、とオジサンを見つめれば、あきれたようにオジサンはため息をつく。
 
「何マヌケ面してんだよ?可愛い顔が台無しだろうが……ったく、左手でいいんだよな?」
「あ、ッ」
 
 ショーケースの上へ時計を置くと、オジサンはあんなに離さない、って言った手を自分からあっけなくほどいて、台座から時計を抜いた。そして俺の左手を取ると、持っていた時計をびっくりするほどスムーズに、手首へと留めてしまう。俺の左手首に結ばれた時計はメンズ用だけど小ぶりで、わりと細い俺の手首にもちょうどいいサイズだった。文字盤のホロが、照明に光ってキラキラきれいに輝いてる。
 
「ん、似合うな」
「に……似合う?」
「ああ、今のカッコでも充分な。いつものオトコのカッコならもっと良いと思うぜ」
「そ、そっか……、ぁ」
 
 時計を一緒に覗き込んで、さらっと普通に褒めてくるオジサンに口ごもれば、オジサンはすぐに俺の手首から時計を外す。また元の台座に収まる時計。それを持って、オジサンはもう一度、店員を呼ぶ。
 
「あの、すみません」
「はい。どうでしたか?」
「ええ、丁度良かったです。これと同じものをひとつ、頂けるかな」
「っ!?」
「ありがとうございます。今新しいものをご用意いたしますので、こちらへどうぞ」
「はい」
「っ……!?」
 
 そのまますぐにレジへ向かうオジサンをさっきより呆然と、俺は見つめる。な、なんで。頂くって、買うってこと?な、なんで?だって、アレ、はめたの俺だし、俺が、見たかった、ほしかった、時計……。わけもわからず目を白黒させていると、小さい手提げ袋を持ってレジから帰ってきたオジサンが、俺の胸へずいっと、その袋を押しつける。
 
「ほらよ。プレゼントだ」
「っ。」
 
 偽おっぱいの前で止まる袋。
 お目当ての時計。
 俺が、ほしかった、モノ。
 
「な、なんでっ」
 
 どうしてそれがオジサンから俺へ渡されるのかわからなくて、そのまんまの疑問に口を開けば、やっぱりオジサンは眉を寄せる。
 
「あ?惚れた相手にプレゼントしたいって思って、ナニが悪いんだよ」
「っ!?な……ッ!?ほ、惚れ、ッ……!?」
「……当然だろ。好きでもないヤツを恋人にする趣味、俺にはねぇからな」
「っ、ッ──!♡♡♡」
 
 ぉ、お、オジサン……っ!♡
 なに……ッ、ナニ、言ってんの!?♡
 すきって♡恋人、って……ッ!♡
 こ、こんなトコでっ♡いきなりっ♡ナニ言ってんの……ッ!?♡
 い、いきなりそんなコト言われてもっ♡
 そんなコト、言われてもッ♡
 惚れてる、って♡
 すき、って♡
 恋人、ってッ♡
 なにそれっ♡♡♡
 そ、そんなの……っ。
 告白、じゃん……ッ!♡
 
「……!♡」
 
 俺のことカノジョにしたいって言ったのはッ♡そんなバカみたいなこと言ったのはッ♡もっと俺のことっ、オモチャにしたいからだと思ってたのにッ♡もっと俺のことっ♡エッチにいじわるできるっ♡便利な相手にしたいからだと、思ってたのにっ♡
 で、でもっ♡す♡すき、って♡そんなのッ♡
 そんなコト言ったらッ♡
 ほんとのっ、「カノジョ」じゃんッ♡
 惚れてるからプレゼントしたいってッ♡
 すきだからカノジョにしたいってッ♡
 そんなの……ッ♡
 ガチのっ♡
 ちゃんと「付き合いたい」ってッ♡
 告白、じゃん……っ!♡♡♡
 
「とにかく受け取れよ。俺がやりたくてやってんだ。使わないんだったら売るなりなんなりしていいからよ」
「ッ、ぅ゛、っ……♡」
 
 あまりにも不意打ちすぎるオジサンの発言に、俺はなにも言えずに袋を受け取るしかない。こんなの受け取っちゃったら、カノジョだって認めるだけかもしれないけど。オジサンの言葉を、受け入れるだけかもしれないけど。
 でも。でも。
 あんなことストレートに言われて、受け取らないなんてできなかった。だってオジサンは、いつもみたいにふざけてるワケじゃなく。俺に、イジワルをしようとしてるワケでもなく。ほんとの、本気の、そういう、「他意」のない、「好意」で、俺へそうしてるって……伝わって、きちゃったから。
 
「っ……、」
 
 だから。
 だから……ッ♡
 
「ッ──♡♡♡」
 
 俺、このプレゼント、素直に「うれしい」って思うの。
 ガマン、できなかった……ッ♡♡♡
 
「……よし、じゃあ行くぞ。他に見たい所あるか?」
 
 袋を受け取った俺をひどくやさしそうに、そしてうれしそうに見つめて、オジサンは店から出て振り返る。
 おっきな背中に。
 まっさらな両手。
 
「ぁ……ッ」
 
 それを見て、俺は、ほんとに、ほんとうに自然に、「そう」していた。そうしたい、と思って、だから迷うことなく一歩を踏み出して、「そう」してしまった。オジサンがさっきまで繋いでた手を自分から握って。自分から指を絡めて。そうして自分から──恋人つなぎのカタチに、してしまった。きゅっとそのまま左手を握り込めば、オジサンが、驚いたように俺を見る。
 
「っ。お前……」
 
 っばか。
 なんで驚いてんのっ♡なんでそんな顔、してんのッ♡はじめに、オジサンが、そうしてきたのにっ♡俺がテンパってても気にしないで、オジサンが勝手にっ♡恋人つなぎしてきたのにっ♡
 
「ぉ、オジサンが、自分で手離さないって言ったんじゃん……っ♡なのに、離して……ッ♡うそつき……ッ♡」
 
 だから。
 だから、って、うつむいたまま消え入りそうな声で呟けば、くすっと笑いをこぼして、オジサンも応えるようにきゅっと右手に力を籠めてくる。
 
「ん……そうだったな♡ごめんな?♡」
「ぁ、ぅ♡」
 
 声を聴くだけで喜んでるってわかる声色にやっぱり全身がきゅう♡っとなるのを感じる。また耳元に、ふっと息を吹きかけられる。
 
「……どうだ?♡そろそろ貢ぎグセある、オジサンのカノジョになりたくなったか?♡」
「ッ♡」
 
 また。またカノジョの、催促。
 み、貢ぎグセ、って♡
 ……なんで、そんな言い方すんのッ♡
 いまのプレゼントは絶対、そんなんじゃないのにッ♡オジサンがつまんない下心ナシで贈ってくれたって、俺だってわかってるのにッ♡なんで、そんな言い方するのッ♡俺っ♡そんなバカじゃないもんっ♡ニブく、ないもんっ♡俺がいまドキドキしてるのっ♡きゅんきゅんしてるのッ♡手、自分からつないじゃったのッ♡オジサンが俺のほしいものプレゼントしてくれたからじゃなくてっ♡真剣にっ♡「好き」とかっ♡言ってきた、せいだもん……っ♡
 ばか♡ばかっ♡オジサンの、ばかぁ……っ♡♡♡
 俺はオジサンの問いかけにやっぱりうつむいたまま、ぎゅううう♡って、もう絶対離さないって伝えるみたいに、オジサンの、手を握る。
 ばか。ばか。オジサンがそんなズルいコト言うなら、俺だって、ズルく、するもん。オジサンに応えて、あげない、もん……ッ♡
 
「──な♡ならない……っ♡♡♡」
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