偽調教師と狼王子

ミ度

文字の大きさ
11 / 12
第二章

2-4.奉仕の言葉※

しおりを挟む
 調教師の前で裸で立たされるのは二度目だ。一度目のときよりも気持ちが落ち着かない。
 値踏みするような真紅の瞳を見ていると、ヴィルフレートは昨夜の自身の痴態を嫌でも思い出した。
 それでも調教師から目を逸らさなかったのは、今の彼にできる唯一の抵抗だったからだ。

「まるでこれから死地に向かう戦士のような顔だね」

 ベッドに座る調教師が微笑する。余裕たっぷりの顔に腹が立つ。

「そんなに身構えなくても、しばらくは昨日と同じくらいの軽めの調教で行く予定だよ。まずは気持ちいいことへの忌避感をなくしていこう」

 ヴィルフレートは息を呑んだ。
 ──昨日のあれが「軽め」?
 男根で肛門を明け方まで犯され続けた……あれで「軽め」だと?

「さあ、おいで」

 両腕を広げた調教師のもとへ渋々歩いていく。

「……ン……」

 ベッドに横になると、流れるように唇を奪われた。くちゅ、ちゅぷと水音が立ち、口の中がすぐにふたり分の唾液でいっぱいになる。

「う……く、ぅ……」

 他人の唾液なんて飲みたくないのに、吐き出したくても調教師の唇が邪魔をする。ヴィルフレートは仕方なく唾液を嚥下した。唾液を飲み込むたびに、まるでそれを褒めるように調教師の手が頭を撫でてくる。嬉しいはずがないのに、何故だかふにゃりと身体から力が抜けてしまう。

「ヴィルの胸はふわふわで揉み応えがあるね」

 柔らかな筋肉が乗った胸を調教師の手が揉みしだく。その手つきが優しいせいか、不快感よりもむず痒いような奇妙な感覚が先行する。

「気持ちよくなりながら、奉仕の言葉も少しずつ憶えていこうか。エッチな言葉でご主人の耳を楽しませてあげるんだ」

 そんなこと絶対にしたくない──その意思表示として調教師を睨みあげた。
 しかし、とうの調教師はどこ吹く風。

「まずは、気持ちいいなら『気持ちいい』と言って、気をやるときには『イク』と言えるようになろう。ほら、ヴィル……胸を触られるのは気持ちいい?」
「……」
「黙っているということは、まだ気持ちよくないんだね。それなら、刺激を強くしよう」

 調教師の指先が胸の飾りを弾いた。弾かれるたびにピリピリとした快感の微信号が身体を駆けていく。

(この程度なら堪えられる)

 「気持ちいい」など絶対に言わない。「イク」などもっての外。なぜ気をやるときの言葉が「イク」なのかはよく知らないが、快楽を認める台詞であることに変わりはない。「気持ちいい」という言葉も、「イク」という言葉も、口にしてしまえばこの屈辱的な行為で快感を得ていると認めることを意味する。そんな恥知らずなことはできない。

「はッ…ぁ……ふ、ぅ……」

 唇を吸われながら、胸の尖りを指先でくりくりと転がされる。刺激の強さに比例して快感も強くなる。

「ヴィル、気持ちいい?」
「……っ」
「ふふ、素直じゃないね。性奴隷は素直な方が可愛がってもらえるよ」

 ヴィルフレートの性器はキスと胸の刺激で甘勃ちしていた。爪先で胸の尖りをカリカリ引っかかれると腰が勝手に揺れてしまう。

「は、ぅ……ゃ、め……っ」
「性奴隷がご主人様相手に『やめろ』なんて拒絶したらダメだよ」

 キスの合間に調教師はそう窘めて、ヴィルフレートの乳首をギュッとねじった。

「ひぃんッ!」

 強い刺激に情けない声が洩れた。

「……おやおや、おしおきのつもりだったけど、ヴィルは少し乱暴な方が好きなのかな」

 ヴィルフレートの性器はそそり勃ち、透明な蜜を垂らしていた。身体の浅ましい反応にヴィルフレートはショックを受ける。

「ヴィル……『気持ちいい』って認めたら、乳首を優しく触ってイカせてあげる。『気持ちいい』って認めなかったら、さっきみたいに乳首をいじめてイカせてあげる」

 理不尽な二択を突きつけられたヴィルフレートは、答える代わりに唇を引き結んで調教師を睨みつけた。
 調教師は目を細め、ヴィルフレートの膨らみきった乳首に舌を這わせた。

「ンぅッ…!? ふぅっ……ッ!」

 乳首を舐めていたかと思えば、口に含まれ強く吸われる。
 もう片方の乳首は、指できつく摘ままれ引っ張られた。

「あ、ぅっ、いや、だ……あ゛ひッ!」

 拒絶の言葉を咎めるように、調教師が乳首へ白い歯を突き立てた。
 ヴィルフレートの脳裡に火花が散り、腰がびくびく仰け反った。

「ぁ……ぁぁ……はっ……ぁ……」
「……今日はヴィルが『気持ちいい』と『イク』が言えるようになるまでイカせ続けてあげよう。あまり我慢しすぎると狂ってしまうから、そうなる前に素直になってくれると嬉しいな」

 達して放心状態のヴィルフレートを見下ろしながら、調教師はにっこり笑った。


※※※


 調教部屋に精の臭いが充満していた。青臭さに鼻が馬鹿になりそうだった。

「ん…ぉ……ぐっ……う゛ぅぅ……っ!」

 ヴィルフレートは数十回目の絶頂を迎えた。
 射精はしていない。調教師のペニスを銜えた後孔だけで達したのだ。

「──本当に狂うつもりかい?」

 調教師が腰を打ちつけながら言った。半ば感心するように。半ば呆れたように。ヴィルフレートの肉厚な胸をパン生地のように捏ねながら、ペニスを抜き差しする。何度も擦り拡げられた後孔は、すっかりペニスの形に馴染んでいた。

「キミが壊れてしまったら、シルヴィアはどうなる? 臣下たちはどうなる? ファウナピアの民たちはどうなる?」
「はぅっ…だ……っ! っ…ぐぅ……っ」

 「黙れ」と言いかけて、踏みとどまった。反抗的な言葉を口にすれば、穴奥を貫かれて深すぎる絶頂を味わわされるから。

「う……くう、う、ぅ……っ!」

 この状況が「詰んでいる」のは、誰よりヴィルフレート自身が一番わかっていた。体力勝負に持ち込んで、調教師が根負けするのを待とうとしたのがそもそもの敗因。つい先日男を知ったばかりの彼が、閨で調教師に敵うわけがなかったのだ。
 敗者に残された選択肢はふたつだけ。
 言うか、狂うか。 
 
 ──言いたくない。
 ──認めたくない。
 ──だが……。
 ──私は、まだ、狂うわけにはいかない。

「っ……ぃ……いい……きもち、いい……っぃあ、あっ……!? あああああぁぁっ……~~~~~~ッ!」

 気持ちがいいと口にした瞬間──快感を認めた瞬間、身体の奥で何かが弾けた。
 ヴィルフレートは甲高い声をあげながら、深い深い絶頂を迎える。このとき、彼の口から迸った声は、まごうことなき嬌声だった。

「ふふふ、気持ちいいだろう? ヴィル……次は『イク』って言ってごらん? もっと、気持ちよくなれるから」

 調教師はヴィルフレートの乳首をあやすように捏ねまわしながら、ビクビク痙攣する内壁を雄肉で擦りあげた。

「あっ、あ゛ーっ、あっ、あっ、あっ、ィ……い、く……イク……イク…イク…イッ…クぅぅぅぅ……ッ♡」

 形のいい顎を反らして。シーツを引き千切らんばかりに握りしめて。
 ヴィルフレートは長い長い肛悦に身悶えた。
 我慢しながら果てるよりも、「イク」と言いながら果てる方がずっと気持ちよかった。
 こんな快感は知らない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

処理中です...