偽調教師と狼王子

ミ度

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第三章

3-1.朝の散歩※

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 屋敷の外は爽やかな空気で満ちていた。早朝の日差しが周囲を明るく照らしている。

「少し肌寒いが、いい天気でよかった。ほら、おいで。ヴィル」

 調教師はリードを軽く引っ張った。リードはヴィルフレートに着けた首輪と繋がっている。首輪の色は、彼の瞳と同じ紺碧色を選んだ。

「……っ」

 ヴィルフレートが、躊躇いながら庭に踏み出した。全裸で、四つん這いの格好で……。
 今日から調教メニューに取り入れた「朝の散歩」だ。全裸のヴィルフレートを連れて屋敷の外を一周する。
 まるで飼い犬のように扱われている現状に、ヴィルフレートの白い肌は羞恥と屈辱で淡桃に染まっている。それでも彼は文句を言わずに四つん這いのまま歩いていた。銀色の尻尾が散歩に合わせてふわふわと揺れる。
 調教師が首からぶら下げる鏡のネックレスが、彼の姿を記録している。

(ごめん、ヴィル……)

 ハルキは何度目かもすでにわからない謝罪の言葉を心の中で呟いた。
 生まれが高貴な者にほど、本来の身分を貶めるような調教方法を実践する──記憶の中のクロ・エジェの調教方針だ。キミはすでに誰かに傅かれる貴人ではなく、誰かに媚びを売らねば生きていけない奴隷なのだと、魂に刻みつけるために。
 もうすぐ屋敷を一周するという頃、調教師はふいに立ち止まる。彼らの前には一本の木が聳えている。

「ヴィル。家に入る前に、そこの木に用を足すんだ」
「……?」

 ヴィルフレートが戸惑った表情を浮かべたので、調教師はやわらかく微笑みながら言葉を補足した。

「獣がおしっこするところは見たことある? 後ろ足を片方上げて、大きく股を開いて放尿するんだ」
「……ッ!」

 命令の内容を理解したヴィルフレートの美貌が急速に強張った。
 彼は俯き、両方の拳を強く握りしめた。

「それは……それは、できない……」

 振り絞るような声だった。
 だが、誇り高い彼が拒否するのを調教師は読んでいた。だから、すでに次の言葉は用意している。

「やれやれ……。陳腐な台詞だけど、実際、キミにはこれが一番効くからしょうがない……『シルヴィアがどうなってもいいのかな』?」

 クロ・エジェはシルヴィアを解放し、彼女は反乱軍のもとへ帰還している。しかし、彼女の体内にはクロ・エジェが飲み物に仕込んだ魔蟲の卵がある。クロ・エジェが命令する、あるいは彼に何らかの危害があった場合、魔蟲の卵は瞬時に孵化し、彼女のはらわたを食い破る──と、ハルキは帝国側に伝えている。
 もちろん、実際はシルヴィアの体内にそんなおぞましい卵は存在していない。

「……わ、わかった」

 ハルキが狂気の調教師を演じるように、ヴィルフレートは哀れな王子を演じなければならない。
 ヴィルフレートが片足を大きく上げる。ほどなくして、彼の性器からショロショロと小水が溢れた。弧を描く小水は木を濡らし、地面を濡らし、早朝の冷気の中でほんのりと白い湯気を立たせる。ヴィルフレートは顔を伏せたまま。その表情の大部分は長い髪によって隠されていたが、きつく食いしばった口元だけがちらりと見えた。地面についた両腕と片足がぶるぶると震えている。

「……っ」

 ハルキは思わず生唾を飲み込んだ。
 彼にこんなことをさせて申し訳ないはずなのに。
 屈辱を堪えながら放尿する彼の姿に、欲情している──。
 痛ましいのに、同時にぞっとするほど美しい。

「……すっきりしたかい? それじゃあ、中に戻ろう」

 外れかけた仮面を被りなおして、調教師はリードを引っ張った。


※※※


 調教部屋のベッド脇に置かれたワゴンの上には、多種多様な張り型が並べられていた。
 ベッドの上には、革の拘束具で両手両足の手首をそれぞれ繋がれたヴィルフレートが仰向けに横たわっている。
 調教師の目の前に突き出すように晒されている肛門には、張り型の先端が押しつけられていた。

「んっ…んっ…んぅ……っ」

 張り型のぷっくり膨らんだ先端が、肛環をクプクプほじくる。用意した張り型はすべてクロ・エジェ特製で、本物の肉棒のような質感・温度を再現している。今、ヴィルフレートにあてがっているのは狼獣人の張り型だ。太く長い砲身を誇り、根元には亀頭球と呼ばれる瘤がある。

「ふふ、穴が濡れてきた。同族の性器で犯されることに興奮してるんだね」

 後孔から白く薄濁った粘性の液体がとろとろ溢れてきて、張り型の先端をねっとり濡らす。
 高級娼婦や貴人を主人とする性奴隷に施されることの多い魔術だ。後孔を浄化し、性的に興奮すれば膣のように濡れる。男根の挿入を助け、不要な流血と病を防ぐ。

「んっぉ……ふっ、ふぅ…ふぅー……っ♡」

 ぐぷぷぷぷ…と張り型を亀頭球の手前まで埋める。

「じゃあ動かすよ。『彼』をイカせられるように、頑張って後ろを締めるんだ」

 そう耳元で囁いて、調教師は張り型を抜き差しさせた。出し入れさせるたび、赤黒い砲身に白濁した粘液がまとわりつく。ぐちょぐちょ、ぬちょぬちょ。粘っこい水音とヴィルフレートの甘いうめきが調教師の耳をくすぐる。

「ヴィル、気持ちいいかい?」
「くっ…ぉ…ンッ……き、きもち…いい……♡」
「うんうん、その調子だよ。素直なヴィル、とってもかわいい。どこが、どう気持ちいいか、言ってごらん」
「おっ、ぉ…♡ お、く…奥、まで、太いの…当たって……♡ 擦れて…気もちいい…っ♡」

 ヴィルフレートが「気持ちいい」と素直に口にするのは、拒むことでもたらされる脳を焼くような淫虐な責めを回避するためだ。しかし、快感を受容することで、彼の身体はいっそう淫らに燃え上がる。

「ぁっあっ…♡ 奥…っ♡ きて、イクっ…♡ イク…ッ♡」

 ぶしゅっと、結合部の隙間から飛沫があがった。噴き出された汁が張り型を持つ調教師の腕を濡らした。

「ヴィルは奥がすっかり弱くなっちゃったね。こんなにお尻が弱くちゃ、ファウナピアの王様になんかなれないよ」
「そ、んな、こと…くうぅ…っ♡ イッて、るっ♡ イッてるのに…♡」
「だから? 『彼』はまだイッてないよ? ヴィルは性奴隷なんだから、自分ばかりイッてないで、お尻の穴でご主人様をイカせなくちゃだめじゃないか。ほら、お尻の穴、ぎゅ~っ締めてごらん?」
「はぁうっ♡ 締めるっ♡ うしろっ♡ 締めるから…♡ 奥…っ♡ 奥をっ♡ そんなふうにっ、突かないでくれ……っ♡」

 ヴィルフレートが顔を真っ赤にしながら頭を横に振る。溢れた言葉は拒絶ではなく懇願。
 そんな淫らで哀れな姿に、ハルキは再び喉を鳴らしてしまう。

「……キミのおねだりはとてもかわいいけど、『彼』が奥を突きたがってる」

 自分自身の昏い興奮に蓋をして、調教師は張り型の抽挿を速めた。

「くはぁ♡ あくっ♡ くぅん…っ♡ っク♡ イク♡ イクぅ…っ♡♡」

 蜜を煮詰めたような声を絞り出しながら、ヴィルフレートは全身を震わせた。
 彼の絶頂に合わせて、調教師が亀頭球を捩じ込んだ。

「かっ……!?♡ はっ…♡ ~~ッ♡♡」

 紺碧色の双眸が見開かれる。
 最大限拡げられた肛環は、しかし切れることなく亀頭球を包み込んだ。
 ハルキの手に張り型の生々しい脈動が伝わってくる。クロ・エジェ特製の張り型は、一定の刺激を与えると本物の性器ように射精するのだ。今、ヴィルフレートは張り型の疑似精液を奥に注がれている。

「よく頑張ったね、ヴィル」
「…ぁ…は、ぁ…は…♡ な、中……あつい…♡」
「中出しされて、中が熱いだけ?」

 調教師はヴィルフレートの乳首を摘んで引っ張った。

「はぁうっ♡ な…中っ……熱くて、気持ちいい……っ♡」
「そうだね。中出し気持ちいいね」
「あっ、ぁあ……きもち…気持ちいいのが…終わらないぃ……♡」

 ヴィルフレートの性器からもとぷとぷと白濁が止めどなく溢れ出ている。
 調教師は張り型からそっと手を離す。亀頭球が栓となっているので、このまま放っておいても自然と抜け落ちることはまずない。

「狼獣人の射精時間はおよそ30分。この張り型も同じくらい射精し続けるんだ。ボクは少し席を外すけど、ヴィルは中出しの快感を味わっていて」

 ヴィルフレートの前髪を搔きあげ、恋人のように額へキスを落とし。調教師はその場を離れた。

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