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13巻
13-1
しおりを挟む地下の隠しダンジョンにおいて、邪神アデュトロポスとの戦いに勝利したシン。無事にシュニーを救出したものの、ダンジョンに仕掛けられていた転移の魔術陣が発動する。
2人は仲間とはぐれ、見知らぬ場所へ強制転移させられてしまった――。
シンが最初に感じたのは、腕の中の柔らかな感触だった。
次に誰かの息遣いと体温を感じ、少し遅れてよい匂いが鼻をくすぐる。
「離れ離れには、されなかったみたいだな」
周囲に敵性反応がないことを確かめてから、シンは抱きしめたままのシュニーに言った。ここで腕の中にシュニーがいなかったら、気が気ではなかっただろう。
「はい……ここは、洞窟の中、でしょうか?」
「そうみたいだな。軽く調べただけでも、下にも上にも道があるのは間違いない。近くにはいないが、何かが動いている反応もある」
【魔力波探知】で洞窟の構造を調べたシンは、まとまって動くいくつかの反応を察知した。少ないグループはひとつ、多いグループは6つの反応が塊になっている。
「モンスターでしょうか?」
「ここがまた別のダンジョンだって言うなら、冒険者の可能性もあるな。6人がパーティの最大人数だし」
ゴブリンやコボルトのように群れを作るモンスターもいるので、断言はできなかった。
意識を回復したばかりなので、念のためシュニーに『万能回復薬』を飲ませて休ませる。
その間、シンは周囲の警戒だ。
「もう大丈夫なのか? 体調が悪いとか、ないか?」
「大丈夫ですよ。封じられていただけなので、ダメージも負っていません。心配しすぎですよ?」
「仕方ないだろ? もう以前の関係とは違うんだから」
「ぁ……はい、そう、ですね」
シンの告白を思い出したらしく、シュニーの語尾が小さくなる。頬には赤みが差していた。
「……すみません。あと5分だけ、落ち着く時間をください」
「了解だ」
両手で顔を隠すシュニーを愛おしく思いながら、シンは周囲の警戒に戻る。
何事もなく5分が過ぎると、シュニーが立ち上がった。
「お待たせしました。もう大丈夫です」
「みたいだな。そういえば、その言葉遣いも、もっと砕けていいんだぞ?」
「いえ、これは癖のようなものですから」
基本的に誰にでもこの口調なので、遠慮があるわけではない、とシュニーは言った。
「でも、そうですね。たまには、もっと気安い言葉遣いでもいいかもしれませんね」
「まあ、ゆっくりでいいさ。とりあえず、そろそろ現状把握といこう」
シンとシュニーは意識を切り替える。
装備やステータスにはこれといった変調はない。飛ばされた術式がただの転移なら、とくに問題はないはずだった。
『シン、どこにいる?』
「ん?」
とりあえず皆に連絡を、とシンが思っていると、頭の中にユズハの声が響いた。
『洞窟っぽいところに飛ばされた。邪神は倒したし、シュニーも元に戻った。そっちはどうだ?』
『ティエラとカゲロウ、あとシュバイドが一緒』
『深海古城』の一件で成長したからか、ティエラのことも呼び捨てになっている。
そんなユズハによると、どこかの森に飛ばされたらしい。隠しダンジョンの戦闘では皆無傷だったので、危険はないとのことだった。
『そうか。無事でよかった。自分たちのいる場所がわかったら、あらためて連絡を取り合おう。シュバイドも心話はできるし、ユズハはこっちに来るか?』
『今はいい。シンとシュニー、しばらく2人きりでいるといい。ユズハ、空気の読める狐』
一瞬、シンの脳裏にユズハのドヤ顔が浮かんだ。
本人(狐?)がいいと言うならいいかと、ユズハの召喚はなしになった。
「心話ですか?」
「ああ、シュバイドとティエラ、ユズハにカゲロウが一緒みたいだ。フィルマとセティにも連絡を取ってみる」
シュニーにユズハとの会話内容を伝えて、シンはフィルマに心話でコールを送る。数秒して、フィルマの声が聞こえた。
『はいはい。シンから連絡が来るってことは、邪神は倒せたのかしら?』
『ああ、シュニーも無事だ。一緒にいる。そっちはセティと一緒か?』
『ええ、よくわかったわね。私とセティは、どこかの海岸に飛ばされたわ』
目印になるようなものは見えないので、どこに飛ばされたかはわからないとフィルマは言った。
シンはシュバイドたちの無事を伝えてから、場所がわかったら連絡するように告げ、一旦心話を切る。そして、黙って待っていたシュニーにパーティメンバーの状況を伝えた。
「皆無事でしたか。安心しました」
「簡単にやられるようなやつらじゃないからな……さて、これからどうするか」
シンたちならば自力で転移することも可能だが、邪神によって転移させられた場所というのも気になった。なので、合流は少し待って各自調査することを、シンはフィルマやユズハにあらためて提案し、了承された。それぞれ一緒にいるメンバーにも伝えてもらう。
「じゃあ、俺たちもここがどこか確かめるとするか」
「はい。まずは上、ですね」
周りは土と岩で出来た洞窟。常識的に考えて、出口があるとすれば上だろう。
「――お、モンスター反応」
【魔力波探知】で洞窟を可能な限り精査して進んでいたシンたちの前方に、モンスターの反応があった。数は1体だ。
「ホブゴブリンですね。棲み着いているのでしょうか?」
「ここがダンジョンって線もあるな。そういえば、こっちの世界って外からダンジョンにモンスターが入ってくることってあるのか?」
ゲーム時代にはイベントの一環で、ダンジョンからモンスターが溢れ出てくることがあった。一方、モンスターがダンジョンに入っていく、という現象はなかったのだ。
「ありますよ。たまたまダンジョンが誕生したばかりのところに強いモンスターがいて、ダンジョンボスに成り代わっていることもありました」
「モンスターって、ダンジョンを乗っ取れるのかよ」
突発的に発生するダンジョンはボスもランダムなので、可能らしい。どういう原理なのかはシュニーも知らないようだ。
「ホブのレベルは51か。とくに変ってわけでもないな」
何の気負いもなく、シンはホブゴブリンに正面から近づいていく。足音を隠すこともしなかったので、すぐにホブゴブリンも気づいた。
「akdoubnoaeaura;lsa!」
理解できない言葉を叫びながら、ホブゴブリンはまっすぐに突っ込んできた。両手で振り上げた鉄の長剣がわずかに光っている。スキルだろう。
「……普通だな。スキルもただの【スラッシュ】だし、やっぱり特別なダンジョンってわけじゃないのか?」
振り下ろされた剣を片手で掴み、がら空きになった腹にシンの拳がめり込む。
シンは軽く当てたつもりだったが、拳が当たったホブゴブリンは吹き飛び、わずかにうめいた後に命の灯火が消えた。
「あれ? この消え方って……」
消滅していくホブゴブリンを見て、シンの脳裏に閃くものがあった。
この世界では、ダンジョン内で倒されたモンスターは一定時間で消滅する。しかし今相手にしたホブゴブリンは、HPが尽きるのと同時に体が煙となった。
これはゲーム時にシンも世話になった、あるダンジョンの仕様だった。
「ここは、トレーニング・ダンジョンかもしれない」
「あの、初心者でも安全というダンジョンですか?」
「ああ、あの特徴的な消え方は、トレーニング・ダンジョンのモンスターに特有だったはずだ。新しいスキルを試すのにずいぶん入り浸ったから、見間違いってことはないと思う」
トレーニング・ダンジョンはVRでアバターを動かすのに慣れていないプレイヤーや、新しいスキルを試したいプレイヤー用に設置されたダンジョンだ。
モンスターの強さは通常と変わらないが、受けるダメージが少なく、経験値も少ないという仕様だった。死んでも復活できる代わりにトラップなども設置されており、危険なくダンジョンアタックの訓練ができると、いつもそれなりに賑わっていた。
「そうなると、ここはエルクントかもしれませんね」
「エルクント?」
「国を越えて生徒を集め、学問の研究や普及に力を入れている国です。確か、大陸中央よりやや北西に位置していたはずです。トレーニング・ダンジョンが確認された唯一の国なので、ここがエルクントである可能性は高いと思います。もちろん、未確認のトレーニング・ダンジョンということもあるでしょうけれど」
「なるほど。まだそういう情報には疎いところがあるから、助かる」
教えてくれたシュニーに礼をして、シンは前を向いた。
「……そういえば、全開にしたままだったな」
数歩進んで、シンはホブゴブリンの胴体が吹き飛んだことを思い出す。邪神と戦った際にすべての【制限】を外していたので、手加減したつもりでも過剰な威力が出ていた。
力の制御には慣れてきたが、予期せぬ事態が起こるとマズイので、シンはステータスに【制限】をかけることにした。
「ここに飛ばされたのに、何か意味があるのでしょうか?」
「さっぱりだな。俺の聞いた限りじゃ隠しダンジョンから飛ばされる場所はランダムって話だし、偶然だと思うけど」
邪神の意図など、シンにはさっぱりわからない。変に深読みしても真実などわからないのだから、考えるだけ無駄だと意識を切り替える。
「まあ、とりあえず危険な場所じゃないし、脱出に制限もないはずだ。気楽にいこう」
出てくるモンスターやトラップから、シンたちのいる場所はトレーニング・ダンジョンの浅い層だと考えられた。
ダンジョンのお約束のひとつとして、階層の浅いうちはさほど強いモンスターが出てこない。
適正レベル100のダンジョンと200のダンジョンとでは、浅い層でも出てくるモンスターは当然違うし、仮に種類が同じでもレベルが違う。だが、レベル2桁程度の相手しか出ない層で、シンたちが慌てるような事態が起きるとは思えなかった。
「一応警戒はしつつ、まずは脱出だな。最短ルートで進もう」
【魔力波探知】で出口らしき場所までの道はわかっている。
断言できないのは、【魔力波探知】が地下から地上へ向けての地形調査にあまり向いていないからだ。【魔力波探知】は、地上から地下、または地上のみ、地下のみを調べることに向いている。
とはいえ、仮に道が行き止まりでも、マッピングが自動でされているので来た道がわからなくなるということはなかった。
「――この先で、誰かが戦ってるな」
障害らしい障害もなく歩いていたシンたちの進行方向に、いくつもの反応がある。マーカーの動きを見るに、3人がモンスターに囲まれているようだ。
おそらく、モンスターハウスに相当するトラップを発動させてしまったか、トレインが起こってしまったのだろう。
モンスターハウスとは、ダンジョン内の小部屋の中にプレイヤーがいるときに、出口がすべて封鎖され、大量のモンスターが湧くトラップだ。プレイヤーの技量次第では経験値稼ぎになるが、大抵は数に押しつぶされてしまう。
トレインとは、プレイヤーがモンスターから逃げるうちに、別のモンスターをも次々と引き寄せてしまい、結果的に大量のモンスターに追われることだ。逃げ切れないと、同じく押しつぶされることになる。
マーカーの動きだけでは戦況が判断しづらいが、あまりいい状況ではないように思えた。
「前衛が頑張ってヘイトを稼いでる感じだ。つってもあれじゃ、前衛も後衛もないか……一応、対応はできてるっぽいな。冒険者だったら横入りはトラブルの元だし、まずは気づかれないように確認するぞ」
「そうですね。危険な状態なら助けに入りますか?」
「危なければ助ける。ただ、きな臭い状況だったらその限りではないって感じだ」
冷たいようだが、最悪見捨てるという選択肢も存在した。
トレインをわざと引き起こし、狙った相手になすり付け、殺す。いわゆるMPK――モンスター・プレイヤー・キルと呼ばれる手法があるからだ。
この世界は王族だの貴族だの、特権階級内でのお家騒動に事欠かない。そういったトラブルにはシンはできるだけ関わりたくなかった。
なので、もしモンスターの陰に隠れて暗殺の機会を狙っているような連中がいた場合、手は出さずに離れるつもりだ。
もしここが本当にトレーニング・ダンジョンなら、ダンジョン内でHPがゼロになっても、死は回避できる可能性も高かった。
「やばいな」
【隠蔽】スキルで姿を消しつつ進んでいたシンの目に、モンスターと冒険者らしき人との攻防が映った。相手はゴブリンの上位種であるレッド・キャップだ。
2メルに届こうかという巨体に、斑に赤く染まったボロボロの帽子。手に持っている斧は刃こぼれがひどく、血が付着している。
分類はゴブリンだが並のオーガより強い。平均レベルは200で、シンの視線の先にいる個体は222と少し高めだった。
「『栄華の落日』以来、久しぶりに見ますが、戦い方は変わっていないようですね」
獲物をなぶる習性がレッド・キャップにはある。トラウマ製造機として、プレイヤー間ではある程度強くなるまでは近づくなと言われていたモンスターだ。
壁を登って開けた視界の先、レッド・キャップの群れと相対していたのは、まだ幼い少年少女たちだった。
装備はそこそこ整っているが、一般人だとしたら勝率はゼロに等しいだろう。とうの昔に数の暴力の前に押しつぶされている。
しかし、目の前の3人は違った。
迫るレッド・キャップに槍を持った少年が突っ込み、数体をまとめて吹き飛ばす。空いたスペースに手甲を装備した少女が降り立ち、さらにその傷口を広げる。攻撃を終えた少女がすぐにその場を飛びのき、そこへ杖を持った少年が魔術を撃ち込んでいく。
シンが見つけた時こそ3人は囲まれていたが、今では洞窟の壁を背に戦い、攻撃される方向を限定しながら移動していた。
「戦い方は悪くない……周囲に人の反応なし。まあ、いいだろう。シュニーは槍を持ったやつを回復してやってくれ。かなり消耗が激しい。俺はレッド・キャップを掃除する」
「承知しました」
タンクとして敵の注目を集め続けていたのだろう。HPが3分の1を切りかけている少年をシュニーに任せ、シンはレッド・キャップに向けて地を蹴る。
視線の先では、手甲の少女がレッド・キャップに捕まり、ボロボロの斧を振り下ろされそうになっていた。脱出しようと足掻いているが、複数のレッド・キャップに押さえつけられている。
それでも何体かのレッド・キャップを殴り飛ばしているあたり、一般人ではなさそうだ。おそらく、万全の状態ならここまで追い込まれることもなかっただろう。
「グロいのはお断りだ」
シンは大剣『禍紅羅』を具現化し、少女に殺到するレッド・キャップの群れに突っ込んだ。
少女を吹き飛ばさないように加減しながら『禍紅羅』を振り回す。
通路は右も左もレッド・キャップで埋まっている。一度の攻撃で、10を超えるレッド・キャップが吹き飛んだ。
「……え?」
自分を押さえ込んでいたレッド・キャップが宙を舞ったのを見て、少女が呆けた声を出す。レッド・キャップの群れが赤い濁流なら、シンは黒い颶風だ。
バラバラになって宙へと舞い散っていくレッド・キャップは、風に翻弄される木っ端だった。
「俺は敵じゃないから、攻撃するなよ?」
身を起こした少女にそう告げて、シンは『禍紅羅』を握る手に力を込める。
一閃。二閃。三閃。
通路に溢れていたレッド・キャップは、瞬く間に数を減らしていく。
ちらりとシュニーのほうへ視線を向ければ、少年たちを守りながら、舞うようにレッド・キャップを切り裂く姿が見えた。
シンのように風と衝撃で吹き飛ばすのではなく、凍らせて動きを制限し、少年たちに近づけることなく殲滅していく。
武器はシンの『禍紅羅』と同じく、いつもの得物よりもグレードを落とした氷属性の短刀『氷華』だ。
短刀の軌跡に沿って氷の花が宙に舞う。煌く光をまとってレッド・キャップを屠るシュニーは、戦っているとは思えないほど幻想的で美しい。
「これでラスト!」
最後に残ったレッド・キャップとの距離を詰め、シンは『禍紅羅』を一閃する。
手斧で防御の姿勢をとったレッド・キャップだったが、重量級武器である『禍紅羅』を前にしては無意味でしかない。
刃がないにもかかわらず、シンの腕力で振られた『禍紅羅』は手斧を叩き折り、豆腐でも切るようにレッド・キャップの胴を通り抜けた。
斜めに斬線が引かれ、それに沿って上部がずるりと滑る。内臓がぶちまけられるより先に、レッド・キャップの体は消滅した。
「うっし、戦闘終了」
「あ、あの!」
「ん?」
周辺にモンスターの反応がないことを確認したシンが宣言すると、躊躇いがちな声がかかる。
シンが振り向くと、レッド・キャップに群がられていた少女が立っていた。装備は所々破けているが、ダメージは少ないようだ。HPも8割残っている。
赤い髪はセミロングよりやや短めで、額には鉢巻。上は胴着風の防具で下はスパッツ。武器は手甲と脚甲だろう。ジョブは『拳闘士』のようだ。
頭部の両脇から後ろに突き出た赤い水晶のような角と、尾てい骨あたりから伸びている赤い鱗の尻尾から、少女がドラグニルだということがすぐにわかった。
「危ないところを助けてくれて、ありがとうございます!」
「いや、こっちも事情があったから、気にしないでくれ」
勢いよく頭を下げた少女に、シンは『禍紅羅』をカードに戻しながら言う。
自分たちが抵抗するだけで手いっぱいだった相手を瞬殺したからか、少女の橙色の目がきらきら輝いていた。
「おい、ミュウ。助けてもらったからって、不用心すぎるぞ!」
シンが事情を話そうと口を開きかけた時、シュニーに治療されていた少年が身構えて叫んだ。
濃い青の髪と赤い瞳。金属製の鎧とカイトシールド、手には鉄製の槍を持っている。ただしカイトシールドも鎧も、あちこちがへこんでボロボロだった。槍も穂先が欠けている。
シンを見た時に不自然に目が光ったので、魔眼系のスキルを使ったのだろう。種族はミュウと呼ばれた少女と同じくドラグニルのようだ。
大声を出し、自分に注目させてからスキルを使うというのはなかなかいい判断だったが、シンとシュニーの抵抗力の前では効果を発揮することはない。地力の差がありすぎるのだ。
「レクスもだ。こいつら教員章をつけてない。学院の教師じゃないぞ!」
ミュウや、レクスというらしいもう1人の少年とは違い、この青髪の少年はシンたちに対して無警戒でいることはしなかった。
助けられたとはいえ、シンたちが学院の所属でないとすぐに看破し、警戒するのは悪い判断ではない。
そして彼の言い分から、ここが学院の所有であることがわかった。
「命の恩人に、拳は向けられない!」
「胸張ってんじゃねぇよ! そいつらが味方って保証はないんだぞ!」
「2人とも熱くなりすぎだよ。落ち着いて」
シンたちそっちのけで言い争いを始めた2人を、レクスが諌めた。彼は魔導士なのだろう。褐色のローブにねじれた木の杖を持っている。耳が長いので種族はエルフだ。
「この人たちからは悪意を感じないよ。それに、抵抗したところで僕たちに勝ち目はない。というか、10メルも逃げられないよ。ギアンもあの人の戦いを見ていただろう? それに、こちらの女性も尋常じゃない使い手だ」
レクスは青髪の少年――ギアンとは違うタイプだが、同様に冷静に状況を見ていた。そんなレクスの言葉に、ミュウが腰に手を当てて自信満々の笑顔で応じる。
「そうだぞ! 手伝おうと思ったけど、手の出しようがなかったからな!」
なぜミュウがこんなに嬉しそうなのかはさっぱりわからないが、レクスが抵抗するなと言った理由は簡単だ。
シンもシュニーも、単独でモンスターを殲滅できる実力を持つことが示された。それも、息を乱す程度の消耗もなしにだ。彼らとは明らかに実力が違う。
「とりあえず、君たちに危害を加える気はない。事情を説明するから、話を聞いてくれないか?」
シンが『禍紅羅』をカード化して懐に収めると、ギアンもしぶしぶといった様子で近づいてきた。思い切り不満げな表情を浮かべている。
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