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20巻
20-3
†
「妙に騒がしいと思えば、何やってんだ、お前は」
何度子供たちを肩に乗せたか、シンが数えるのをやめたあたりで、そんな声が聞こえた。
声がしたほうを振り返ると、呆れ顔をした男が立っていた。
かつてラシアの浄化習得のためにシンとともに亡霊平原へ赴いた冒険者、ヴィルヘルム・エイビスだ。その隣には、ミルトが立っている。
彼女については子供たちと遊んでいる途中で「もうすぐベイルリヒトに着く」と連絡がきていたので驚かないが、ヴィルヘルムと一緒なのは少し意外だった。
「何をしているかと言えば、見ての通りだ」
シンは軽く腕と肩を上げてみせる。その動きが面白かったのか、肩に乗っていた子供たちがもう一回と催促してくる。
「そっちはどうなんだ、ヴィルヘルム? 俺はスカルフェイスの相手をしに行ってると思っていたんだが」
ミルトにも挨拶をしつつ、メッセージを送ろうと思っていたと話す。
「間違っちゃいねぇな。担当地区と期間が決まってるんだが、少し前に終わって交代になったんだ。で、こいつとはついさっき入口で会った」
ミルトを親指で指しながらヴィルヘルムは言った。
選定者や高ランクの冒険者は担当地区の人数が少なく、それでいて広めに設定されるらしい。必要以上にスカルフェイスを間引いて逆に一気に湧いたりしたら困るので、討伐数の目安も決まっているようだ。
「敷地に入ろうとしたらバッタリって感じでさ」
「あの時の続きでもしに来たかと思ったが、お前が来てるって言うんでな」
かつて教会の聖女が連れ去られた事件で、ヴィルヘルムは瘴魔によって一時的に操られてしまい、その時にミルトと戦っている。小柄で可愛らしい容姿に反して、ミルトの戦闘力はモンスター討伐を専門にする冒険者と比較しても圧倒的だ。決着がつかなかったので、再戦するなら次の機会にという話をしていたらしい。
ちなみに、今のミルトはシンと合流する前と同じ『和道闘衣』を身につけている。『流艶華装』はいろいろな意味で目立つので、ミルトに頼まれてシンが新たに作製したのだ。
「考えなかったわけじゃないけど、それは僕個人の楽しみでしかないしね。今はやめておくよ」
「おい、セリフと行動があってないぞ」
ミルトは笑みを浮かべながらシンの腰に抱き着いていた。両腕は子供たちを支えるために使用中なので、とりあえず空いているところにくっついたようだ。子どもたちがいるため、シンもかわすにかわせなかった。
「手が空いている時ならいつでもいいぜ。しかし、お前は少し警戒心が足りねぇな」
「え?」
疑問符を浮かべるシンから視線を外し、ヴィルヘルムは広場を見る。直後、シンの背筋に冷やりとしたものが走った。
「違うぞ。これは警戒する相手じゃないってことを示すためであって、役得とか考えてないからな」
まるで誰かに言い訳するように、シンは即座にミルトから離れようと動く。ミルトも同じものを感じたのか、抵抗なく離れた。
すると、不思議なことに冷やりとした感覚が消える。
じっと見つめてくるヴィルヘルムの視線が「命知らずにもほどがあるだろ」と告げていた。シュニーがどういう反応をするか、彼は予想できていたようだ。
「そ、それよりもだ。現場の状況を聞いても大丈夫か?」
この話題は続けてはいけないという直感のもと、シンはメッセージで聞く予定だったことを尋ねる。
「構わねぇよ。口止めされてるわけじゃねぇからな」
ヴィルヘルムはあくまで自分が知り得たことだけと前置きして、話し始めた。
彼の担当地区は上位個体が他の地区より多い場所らしく、クイーン級やキング級も出現したという。ただ、強さや装備は一般に知られているもので、以前シュニーが戦ったような特殊な武具を装備している個体は発見されていない。
加えて、上位個体でありながら動きは鈍く、戦い方次第では一般人の冒険者でも時間稼ぎくらいはできる強さらしい。
「頑丈さや一発の強さは変わらねぇが、動きはとろい。回避に専念すればそう簡単にやられることはねぇな。他の地区の冒険者や他国から出張ってきた騎士にも大きな被害は出てねぇって話だ。数が少ねぇっつっても普通はもっと被害が出るからな。それが少ないのは悪い話じゃねぇんだが」
「そこが逆に不気味か」
「そういうこった。俺にとっちゃ、案山子と同じだぜ」
耐久値もあるので一般の冒険者では倒しきるのは難しいが、それなりの攻撃力があれば倒せない相手ではない。
攻撃力も速度もはるかに上回るヴィルヘルムにとっては、ただの的と同じようだ。
シンの肩に乗っていた子供や周りで順番待ちをしていた子供たちは、ヴィルヘルムの話を聞いて興奮したり、安心したりしている。
冒険者界隈では恐れられるこの男も、孤児院の子供たちにとってはヒーローなのだ。
「あとは、あれだ。あー……お前らはちょっと向こうで遊んでろ」
『えー!!』
子供には聞かせないほうがいい話題なのだろう。そう察したシンは、不満の声を上げる子供たちを下ろし、またあとでやるからと約束してミルトを指さした。
「ほら、話が終わるまでこっちのお姉さんが遊んでくれるぞ」
「え?」
突然話を振られて、ミルトが驚く。
「うーん。なら、追いかけっこでもしようか。僕を捕まえられたら、ご褒美にお菓子をあげよう」
そう言ってミルトがゆっくり走りだすと、子供たちは一斉に追いかけ始めた。
ミルトは小柄で威圧感もなく、シンとも知り合いで、おまけにお菓子をくれる。ここまでそろえば、子供たちのためらいを取り払うには十分だったようだ。
「任せた」と音声チャット――【心話】とも呼ばれる――で送り、シンはヴィルヘルムとともに広場の隅に移動した。
「で、何かやばい話でもあるのか?」
「隠さなきゃならねぇ話ってわけでもないが、一応な。前にお前が倒したっつう、ロード級だったか。ああいうのを見た奴はいないみたいだってのを伝えとこうと思ってよ。あんなもんがまた出たらシャレにならねぇからな。あとはそうだな……今んとこ、この状況を説明できそうなものも、解決できそうなものもないってことくらいか」
キング級やクイーン級の話を聞かせたのは、子供たちを安心させるためだったようだ。冒険者稼業は一歩間違えば命を失う。ヴィルヘルムを心配している子もいるのだろう。
追加情報のロード級は、シンもまだ一度しか見たことはない。あの時に回収したアイテムは、まだアイテムボックスの中だ。
「中心部には行ってないんだよな?」
「俺ならある程度は進んで帰ってこられるが、不用意に刺激すんなってお達しだからな。まあ、どうせお前が行くんだろうし、なんとかなんだろ」
ヴィルヘルムの口ぶりは、もう事態が解決したような軽さだ。
「俺たちの調べていることが関係しているとは限らないだろうに」
「もしそうでも、わざわざ教会のごたごたに首突っ込むようなお人よしが、この状況を放っておくとは思えねぇな」
短い付き合いだが、性格は把握しているようだ。冥王の件がなくとも、この状況を知れば解決に協力しただろうことは、シン自身否定できない。
「降参だ。俺たちは亡霊平原にあるダンジョンに用があるんだ。ヴィルヘルムは何か知ってるか?」
「ダンジョンか。それが存在するってのは聞いたことがあるが、言われてみれば潜ったって話は聞かねぇな」
未知のダンジョンでは、今まで見つかったことがないようなアイテムや武具が手に入る場合もあるため、そうしたものを専門に探す者もいる。
ただ、亡霊平原は中心部に入るだけでも制限があり、さらにその中に入り口があるという保証はない。ギルドでも資料がほとんどないのだ。
バルクスも言っていたが、そこに入れるだけの資格を持つ冒険者が、高レベルモンスターを倒しながらあるかもわからないダンジョンの入り口を探して回るというのは現実的ではない。よほどの報酬を積まれなければ受けないだろう。
亡霊平原は、中心部以外はさほど危険ではないので、ギルドも国もより緊急性の高いほうへ冒険者や兵士を回したいだろう。
「あの状況から考えりゃ、ダンジョンの中はアンデッドだらけだろ。その手のダンジョンは素材にしろアイテムにしろ、旨味が少ねぇからな。未発見のダンジョンで稼いでる連中も、わざわざ手を出そうとは思わねぇんだろ。見つけたところで探索できる奴なんてほとんどいねぇし、報奨金も出ねぇんじゃねぇのか?」
亡霊平原のダンジョンが軽視されていた最後にして最大の理由。それは、実入りが少ないということだった。
アンデッドモンスターの素材は使い道が限られるので、需要が少ないのだ。
ゲームでもアンデッド系モンスターの出るダンジョンはアイテムがしょぼいというパターンが多かったのだが、それは今も変わらないらしい。
ゲーム時は呪われた装備や使用用途の限られたアイテムなどが多くドロップしていた。ただ、確率は低いが1級回復薬や1級魔術薬、さらに極まれに万能回復薬が手に入ることがあった。なので、まったく人気がなかったわけではない。
それに、初期のうちは作るのが大変な蘇生薬が手に入ることもあったので、シンも何度かそれ目当てに潜ったことがあった。
その辺りの事情を加味すれば、多少は潜る者がいてもおかしくないのだが。
ゲーム時のことを思い出して、シンがなんとなく疑問を口にする。
「なあ、ヴィルヘルム。今は、蘇生薬を作れる奴はいないのか?」
「……ああ?」
その質問に、特別な意図があったわけではなかった。
しかし、それを聞いたヴィルヘルムは雰囲気を一変させ、まるで戦闘時のような重圧をシンに向けた。
「……気に障ったなら謝る。本当に、ちょっと気になっただけなんだ」
「気になっただぁ? ……あー、いや、そうか。そういえば、お前はあの種族だったな」
シンの態度とセリフに一人納得して、ヴィルヘルムは物々しい雰囲気を霧散させる。
「シュニーさんから聞いてないのか?」
「シュニー、さん?」
ヴィルヘルムがさん付けしていることに違和感を覚え、シンが眉をひそめる。
「あん? 呼び方に文句でもあんのか?」
「いや、冒険者だと呼び捨ても多いし、ライザーくらいの呼び方なのかと思ってた」
サポートキャラの名の後ろ側――ライザーやトルメイア、エトラックといった部分は、この世界では家名に相当する。
一般人は名前しかないことも珍しくないこの世界では、貴族でもなければ基本は名前呼びだ。ただ、シュニーのような有名人は、家名があればそれで呼ばれることが多い。
前回行動を共にした時は名前を呼ぶ機会がなかったのでわからなかったが、シンはてっきり呼び捨てだと思っていた。
「名前の呼び捨てはお前か他のさぽーときゃら? とかいうのにしか許してないって話だからな。多少縁のある冒険者は、大抵さん付けだ。他はまあ、人によるってとこか。それでも呼び捨てにする奴はそうはいねぇな。ライザーのほうでもだ」
ヴィルヘルムによると、たまに調子に乗った冒険者が馴れ馴れしくして叩き潰されることがあるらしい。冒険者はどうしても強い=偉いという考えが根強く、選定者の中にはそれが理由で先達の指示やアドバイスを聞かない者もいるという。
「つうか、そんな話はどうでもいいんだよ。それよりさっきの話だ。ブツの名前は出すなよ」
「そんなにやばいのか?」
ゲームならある意味あって当たり前ともいえるアイテムの一つ。もちろん、実在すれば大変なことになるのは間違いない。ただ、この世界はゲームである【THE
NEW GATE】の影響を丸々受けていると言っても過言ではない。ならば、存在してもおかしくないはずだった。
「精神に作用する魔術以上にな。持っているのがわかれば、命を狙われてもおかしくは……いや、確実に狙われるな」
どうやらこの世界にも蘇生薬は存在するらしい。
ゲームから転生したと思われるプレイヤーならば、持っていて当たり前ともいえるアイテム。効果が本物ならば、さぞすさまじい値で取引されているのだろうとシンは思ったものの、ヴィルヘルムの口ぶりでは、そんな生易しいものではないようだ。
「ダンジョンで手に入ることもあるって話だが、少しでも情報が漏れれば、持ち主は次の日には死体になってる――なんて話もあるくらいだ。お前は持ってるどころか作れそうだからな。俺たちにとっちゃおとぎ話みたいなもんだが、お前はそうじゃない。ったく、何でこの話をしてねぇんだよ」
「そうだな。信じられないかもしれないけど、昔のプレイヤーは不死だったんだよ。蘇生薬も体力切れで戦えない状態から復活させる薬って位置づけだった。だから、だと思う」
短い付き合いなりに、シンもヴィルヘルムという男の性格はわかっているつもりだ。だからこそ、推測も含めて話をした。
意図的なキャラクターのデリートや運営によるアカウント削除といった特殊なものを除けば、プレイヤーは――正確にはアバターは、死なない。システム上は死亡として表記されるが、戦闘不能状態というだけであり、こちらの世界で言うところの死とは別物だ。
シンはゲーム開始初期では基本的に倒せるモンスターしか相手にしていなかったし、半ばを過ぎると圧倒的ステータスによって死ぬことはなくなった。まったく死ななかったというわけではないが、シンは慎重に戦うほうだったので、シュニーたちを連れていくような状況では死んだことはないはずだ。
そして、ゲーム時代のプレイヤーは本当の意味で死ぬことはなく、モンスターに倒されても復活する存在。シュニーにとって、シンがいなくなるというのは文字通りこの世界から転移、もしくはそれに準ずる方法で消えてしまうことであって、死亡するとは思っていないのだろう。
シンだって、できればパーティの誰も蘇生が必要になるようなことをさせたくはない。
「不死、だと……? それはつまり、お前も?」
説明を聞いたヴィルヘルムは、「冗談だろ?」と言いたげな表情で聞いてくる。しかし、シンは真剣な表情を崩さない。
この世界の人間からすれば荒唐無稽にもほどがある話だが、ヴィルヘルムはシンがハイヒューマンだと知っている。
かつての時代を生きた存在が真面目に言っているのだ。それを頭ごなしに否定するほど、彼は頭の固い人間ではなかった。
「いや、多分もう違う。『栄華の落日』ってあっただろ、あれで俺たちの不死性ってやつもなくなったんだと思う」
実際にこの世界で死んだことがあるわけではないが、直感的な何かが、死に戻りはできないとシンに確信させる。
「でも、言われてみればおかしな話なんだよ。シュニーが話さなかったのは、それっぽい理由を考えられなくもない。でも、俺まで少しも考えなかったのは、ちょっと変だ」
使うような事態になっていないというのはある。
しかし、どういう扱いなのか、効果があるのか試しておかねばならないアイテムなのも間違いない。
他の誰かに聞くことだってできたはずだ。
死者の蘇生、それは現実世界でも考えられ、そして不可能と結論付けられたもの。それができるのは、空想の中だけ。だが、この世界なら、それは実現可能な技術なのかもしれないのだ。
「……旧世代の枷ってやつかもな」
しばし黙っていたヴィルヘルムが、ぽつりと言った。言葉の響きがどうにもマイナスイメージを掻き立てる。
「それはなんなんだ?」
「今の奴なら疑問に思うことも、昔から生きてる奴は考えもしない。そんな感じの意味だったはずだ。これはやっとくべきだろ、これは確かめとくべきだろ。そういうのをしない、考えない。今回のお前みたいにな」
物理的なものではなく、新世代と旧世代の思考の違い程度の扱いだ、とヴィルヘルムは続けた。
「全員がそうってわけでもないって話だが、さぽーときゃらって言われてる奴らは、その傾向が強いらしい。あとは、げえむ時代ってのを知ってる奴ほどそうだとか、俺にこれを教えた奴は言ってたな」
シンたちの中で新世代はティエラだけだ。おそらく、ティエラは蘇生薬や蘇生魔術が実在するとは考えていないか、その言葉そのものを知らないのだろう。存在すると考えていないがゆえに、シンたちに聞くことはない。
そして、シンたちは旧世代の枷のせいで現物も手段もあるのに考えもしない。だから、誰も気づかずここまで来た。そういうことなのだろうとヴィルヘルムは言う。
「ヴィルヘルムは実在するって知ってたのか?」
「昔、それ関係でいろいろあってな。ま、知ってるだけで、それ以上の知識なんてほとんどねぇよ。それに、知ってたからどうってわけでもねぇ。死者の蘇生は大なり小なり考えたことのある奴はいるだろ。俺だってそうだ。冒険者は、死が身近にあるからな」
死んだ者を蘇らせたい。病で、事故で、襲撃で、大切な人を失った人ほど頭をよぎる。
恋人を、家族を、友人を、なくした誰かを取り戻したい。もう一度会いたい、話をしたい。
時に精神を病むほどに、近しい人の死は辛く、苦しい。
ゆえに、夢物語だとしても考えてしまう。死人を蘇らせる方法はないのかと。
「効果があってほしいような、ほしくないような」
現状ではあるほうが問題だが、本当に効果があるのなら万が一の保険になる。
シンはアイテムボックスからカード化した状態で蘇生薬を取り出した。
HPや状態異常を回復する万能回復薬は金色。それに対し、命を蘇らせる蘇生薬は銀色だ。本体は液体で、それ自体がわずかに発光している。
飲むかかけるかすると、効果を発揮して、プレイヤーをHP1割の状態で復活させる効果があった。
「おいそれまさか」
「カード状態ならわからないだろ?」
「それでもしまえ!」
どこから情報が漏れるかわからないと言うヴィルヘルムに、シンは素直に従った。確かに軽率だったなと反省する。
「やっぱりお前、旧世代だわ。ヒヤッとするどころじゃねぇ」
「すまん……」
ゲームの知識はこれまでシンを助けてくれた。しかし、それをしっかり扱えるかは自分次第だ。
「ところで、それで本当に復活した奴はいるのか? 『栄華の落日』前から生きている長命種なら、それなりに持っていそうだけど」
「さてな。効果があったって話も聞いたことはあるが、物も現場も見たわけじゃねぇしな」
間違いなく死んでいた奴に再会したなんてこともないようだ。
プレイヤーなら持っていてもおかしくない。
シンはヴィルヘルムと話す傍ら、ひびねこたち元プレイヤーの知り合いやベレットたちサポートキャラにメッセージを送った。
ミルトとはチャットを繋いで会話する。
『蘇生薬かー。そういえば、使ったことないなぁ』
こちらに来てから死にそうな人を助けるような場面に出くわしていていないらしく、効果は知らないと返事が来る。
ミルトは基本単独行動なので、仲間に使う機会はない。人相手でも本気の殺し合いの後に蘇生させようなどとは考えない。ゆえに、効果も知らない。
『蘇生薬がどうかしたの?』
『こっちじゃ持っているだけで命を狙われるレベルの代物らしくてな。不用意に名前も言うなって注意された』
『生産職の元プレイヤーなら、作れそうなものじゃない?』
『持っているだけで命を狙われるんだぞ? できても言えないだろ』
もしくは、できるがそのことを考えていないか。
『詳しいことはまたあとで話す』
『はーい』
ミルトとのチャットを切り、ヴィルヘルムとの話に戻る。
「アイテムがだめなら、魔術はどうだ? 神術の中には同じ効果を持ったものがあるぞ」
「そっちは完全に失われていて、もう使い手はいないって話だ。ま、貴重なスキルはたいていそうだ。隠してる奴もいるだろうな」
お前らは間違いなく知ってるだろうがな。ヴィルヘルムはそう続けた。
神術系スキル【リヴァイヴ】――蘇生系の魔術やアイテムの名称はゲームによって様々だが、【THE NEW GATE】ではこの名で呼ばれていた。詠唱時間がある分アイテムより効果が高く、最大でHPが2割回復した状態で復活する。
シンはスキルを発動しないように注意しながら、発動前の状態に持っていこうとした。無詠唱を習得しているので、そこまでは一瞬だ。
「妙に騒がしいと思えば、何やってんだ、お前は」
何度子供たちを肩に乗せたか、シンが数えるのをやめたあたりで、そんな声が聞こえた。
声がしたほうを振り返ると、呆れ顔をした男が立っていた。
かつてラシアの浄化習得のためにシンとともに亡霊平原へ赴いた冒険者、ヴィルヘルム・エイビスだ。その隣には、ミルトが立っている。
彼女については子供たちと遊んでいる途中で「もうすぐベイルリヒトに着く」と連絡がきていたので驚かないが、ヴィルヘルムと一緒なのは少し意外だった。
「何をしているかと言えば、見ての通りだ」
シンは軽く腕と肩を上げてみせる。その動きが面白かったのか、肩に乗っていた子供たちがもう一回と催促してくる。
「そっちはどうなんだ、ヴィルヘルム? 俺はスカルフェイスの相手をしに行ってると思っていたんだが」
ミルトにも挨拶をしつつ、メッセージを送ろうと思っていたと話す。
「間違っちゃいねぇな。担当地区と期間が決まってるんだが、少し前に終わって交代になったんだ。で、こいつとはついさっき入口で会った」
ミルトを親指で指しながらヴィルヘルムは言った。
選定者や高ランクの冒険者は担当地区の人数が少なく、それでいて広めに設定されるらしい。必要以上にスカルフェイスを間引いて逆に一気に湧いたりしたら困るので、討伐数の目安も決まっているようだ。
「敷地に入ろうとしたらバッタリって感じでさ」
「あの時の続きでもしに来たかと思ったが、お前が来てるって言うんでな」
かつて教会の聖女が連れ去られた事件で、ヴィルヘルムは瘴魔によって一時的に操られてしまい、その時にミルトと戦っている。小柄で可愛らしい容姿に反して、ミルトの戦闘力はモンスター討伐を専門にする冒険者と比較しても圧倒的だ。決着がつかなかったので、再戦するなら次の機会にという話をしていたらしい。
ちなみに、今のミルトはシンと合流する前と同じ『和道闘衣』を身につけている。『流艶華装』はいろいろな意味で目立つので、ミルトに頼まれてシンが新たに作製したのだ。
「考えなかったわけじゃないけど、それは僕個人の楽しみでしかないしね。今はやめておくよ」
「おい、セリフと行動があってないぞ」
ミルトは笑みを浮かべながらシンの腰に抱き着いていた。両腕は子供たちを支えるために使用中なので、とりあえず空いているところにくっついたようだ。子どもたちがいるため、シンもかわすにかわせなかった。
「手が空いている時ならいつでもいいぜ。しかし、お前は少し警戒心が足りねぇな」
「え?」
疑問符を浮かべるシンから視線を外し、ヴィルヘルムは広場を見る。直後、シンの背筋に冷やりとしたものが走った。
「違うぞ。これは警戒する相手じゃないってことを示すためであって、役得とか考えてないからな」
まるで誰かに言い訳するように、シンは即座にミルトから離れようと動く。ミルトも同じものを感じたのか、抵抗なく離れた。
すると、不思議なことに冷やりとした感覚が消える。
じっと見つめてくるヴィルヘルムの視線が「命知らずにもほどがあるだろ」と告げていた。シュニーがどういう反応をするか、彼は予想できていたようだ。
「そ、それよりもだ。現場の状況を聞いても大丈夫か?」
この話題は続けてはいけないという直感のもと、シンはメッセージで聞く予定だったことを尋ねる。
「構わねぇよ。口止めされてるわけじゃねぇからな」
ヴィルヘルムはあくまで自分が知り得たことだけと前置きして、話し始めた。
彼の担当地区は上位個体が他の地区より多い場所らしく、クイーン級やキング級も出現したという。ただ、強さや装備は一般に知られているもので、以前シュニーが戦ったような特殊な武具を装備している個体は発見されていない。
加えて、上位個体でありながら動きは鈍く、戦い方次第では一般人の冒険者でも時間稼ぎくらいはできる強さらしい。
「頑丈さや一発の強さは変わらねぇが、動きはとろい。回避に専念すればそう簡単にやられることはねぇな。他の地区の冒険者や他国から出張ってきた騎士にも大きな被害は出てねぇって話だ。数が少ねぇっつっても普通はもっと被害が出るからな。それが少ないのは悪い話じゃねぇんだが」
「そこが逆に不気味か」
「そういうこった。俺にとっちゃ、案山子と同じだぜ」
耐久値もあるので一般の冒険者では倒しきるのは難しいが、それなりの攻撃力があれば倒せない相手ではない。
攻撃力も速度もはるかに上回るヴィルヘルムにとっては、ただの的と同じようだ。
シンの肩に乗っていた子供や周りで順番待ちをしていた子供たちは、ヴィルヘルムの話を聞いて興奮したり、安心したりしている。
冒険者界隈では恐れられるこの男も、孤児院の子供たちにとってはヒーローなのだ。
「あとは、あれだ。あー……お前らはちょっと向こうで遊んでろ」
『えー!!』
子供には聞かせないほうがいい話題なのだろう。そう察したシンは、不満の声を上げる子供たちを下ろし、またあとでやるからと約束してミルトを指さした。
「ほら、話が終わるまでこっちのお姉さんが遊んでくれるぞ」
「え?」
突然話を振られて、ミルトが驚く。
「うーん。なら、追いかけっこでもしようか。僕を捕まえられたら、ご褒美にお菓子をあげよう」
そう言ってミルトがゆっくり走りだすと、子供たちは一斉に追いかけ始めた。
ミルトは小柄で威圧感もなく、シンとも知り合いで、おまけにお菓子をくれる。ここまでそろえば、子供たちのためらいを取り払うには十分だったようだ。
「任せた」と音声チャット――【心話】とも呼ばれる――で送り、シンはヴィルヘルムとともに広場の隅に移動した。
「で、何かやばい話でもあるのか?」
「隠さなきゃならねぇ話ってわけでもないが、一応な。前にお前が倒したっつう、ロード級だったか。ああいうのを見た奴はいないみたいだってのを伝えとこうと思ってよ。あんなもんがまた出たらシャレにならねぇからな。あとはそうだな……今んとこ、この状況を説明できそうなものも、解決できそうなものもないってことくらいか」
キング級やクイーン級の話を聞かせたのは、子供たちを安心させるためだったようだ。冒険者稼業は一歩間違えば命を失う。ヴィルヘルムを心配している子もいるのだろう。
追加情報のロード級は、シンもまだ一度しか見たことはない。あの時に回収したアイテムは、まだアイテムボックスの中だ。
「中心部には行ってないんだよな?」
「俺ならある程度は進んで帰ってこられるが、不用意に刺激すんなってお達しだからな。まあ、どうせお前が行くんだろうし、なんとかなんだろ」
ヴィルヘルムの口ぶりは、もう事態が解決したような軽さだ。
「俺たちの調べていることが関係しているとは限らないだろうに」
「もしそうでも、わざわざ教会のごたごたに首突っ込むようなお人よしが、この状況を放っておくとは思えねぇな」
短い付き合いだが、性格は把握しているようだ。冥王の件がなくとも、この状況を知れば解決に協力しただろうことは、シン自身否定できない。
「降参だ。俺たちは亡霊平原にあるダンジョンに用があるんだ。ヴィルヘルムは何か知ってるか?」
「ダンジョンか。それが存在するってのは聞いたことがあるが、言われてみれば潜ったって話は聞かねぇな」
未知のダンジョンでは、今まで見つかったことがないようなアイテムや武具が手に入る場合もあるため、そうしたものを専門に探す者もいる。
ただ、亡霊平原は中心部に入るだけでも制限があり、さらにその中に入り口があるという保証はない。ギルドでも資料がほとんどないのだ。
バルクスも言っていたが、そこに入れるだけの資格を持つ冒険者が、高レベルモンスターを倒しながらあるかもわからないダンジョンの入り口を探して回るというのは現実的ではない。よほどの報酬を積まれなければ受けないだろう。
亡霊平原は、中心部以外はさほど危険ではないので、ギルドも国もより緊急性の高いほうへ冒険者や兵士を回したいだろう。
「あの状況から考えりゃ、ダンジョンの中はアンデッドだらけだろ。その手のダンジョンは素材にしろアイテムにしろ、旨味が少ねぇからな。未発見のダンジョンで稼いでる連中も、わざわざ手を出そうとは思わねぇんだろ。見つけたところで探索できる奴なんてほとんどいねぇし、報奨金も出ねぇんじゃねぇのか?」
亡霊平原のダンジョンが軽視されていた最後にして最大の理由。それは、実入りが少ないということだった。
アンデッドモンスターの素材は使い道が限られるので、需要が少ないのだ。
ゲームでもアンデッド系モンスターの出るダンジョンはアイテムがしょぼいというパターンが多かったのだが、それは今も変わらないらしい。
ゲーム時は呪われた装備や使用用途の限られたアイテムなどが多くドロップしていた。ただ、確率は低いが1級回復薬や1級魔術薬、さらに極まれに万能回復薬が手に入ることがあった。なので、まったく人気がなかったわけではない。
それに、初期のうちは作るのが大変な蘇生薬が手に入ることもあったので、シンも何度かそれ目当てに潜ったことがあった。
その辺りの事情を加味すれば、多少は潜る者がいてもおかしくないのだが。
ゲーム時のことを思い出して、シンがなんとなく疑問を口にする。
「なあ、ヴィルヘルム。今は、蘇生薬を作れる奴はいないのか?」
「……ああ?」
その質問に、特別な意図があったわけではなかった。
しかし、それを聞いたヴィルヘルムは雰囲気を一変させ、まるで戦闘時のような重圧をシンに向けた。
「……気に障ったなら謝る。本当に、ちょっと気になっただけなんだ」
「気になっただぁ? ……あー、いや、そうか。そういえば、お前はあの種族だったな」
シンの態度とセリフに一人納得して、ヴィルヘルムは物々しい雰囲気を霧散させる。
「シュニーさんから聞いてないのか?」
「シュニー、さん?」
ヴィルヘルムがさん付けしていることに違和感を覚え、シンが眉をひそめる。
「あん? 呼び方に文句でもあんのか?」
「いや、冒険者だと呼び捨ても多いし、ライザーくらいの呼び方なのかと思ってた」
サポートキャラの名の後ろ側――ライザーやトルメイア、エトラックといった部分は、この世界では家名に相当する。
一般人は名前しかないことも珍しくないこの世界では、貴族でもなければ基本は名前呼びだ。ただ、シュニーのような有名人は、家名があればそれで呼ばれることが多い。
前回行動を共にした時は名前を呼ぶ機会がなかったのでわからなかったが、シンはてっきり呼び捨てだと思っていた。
「名前の呼び捨てはお前か他のさぽーときゃら? とかいうのにしか許してないって話だからな。多少縁のある冒険者は、大抵さん付けだ。他はまあ、人によるってとこか。それでも呼び捨てにする奴はそうはいねぇな。ライザーのほうでもだ」
ヴィルヘルムによると、たまに調子に乗った冒険者が馴れ馴れしくして叩き潰されることがあるらしい。冒険者はどうしても強い=偉いという考えが根強く、選定者の中にはそれが理由で先達の指示やアドバイスを聞かない者もいるという。
「つうか、そんな話はどうでもいいんだよ。それよりさっきの話だ。ブツの名前は出すなよ」
「そんなにやばいのか?」
ゲームならある意味あって当たり前ともいえるアイテムの一つ。もちろん、実在すれば大変なことになるのは間違いない。ただ、この世界はゲームである【THE
NEW GATE】の影響を丸々受けていると言っても過言ではない。ならば、存在してもおかしくないはずだった。
「精神に作用する魔術以上にな。持っているのがわかれば、命を狙われてもおかしくは……いや、確実に狙われるな」
どうやらこの世界にも蘇生薬は存在するらしい。
ゲームから転生したと思われるプレイヤーならば、持っていて当たり前ともいえるアイテム。効果が本物ならば、さぞすさまじい値で取引されているのだろうとシンは思ったものの、ヴィルヘルムの口ぶりでは、そんな生易しいものではないようだ。
「ダンジョンで手に入ることもあるって話だが、少しでも情報が漏れれば、持ち主は次の日には死体になってる――なんて話もあるくらいだ。お前は持ってるどころか作れそうだからな。俺たちにとっちゃおとぎ話みたいなもんだが、お前はそうじゃない。ったく、何でこの話をしてねぇんだよ」
「そうだな。信じられないかもしれないけど、昔のプレイヤーは不死だったんだよ。蘇生薬も体力切れで戦えない状態から復活させる薬って位置づけだった。だから、だと思う」
短い付き合いなりに、シンもヴィルヘルムという男の性格はわかっているつもりだ。だからこそ、推測も含めて話をした。
意図的なキャラクターのデリートや運営によるアカウント削除といった特殊なものを除けば、プレイヤーは――正確にはアバターは、死なない。システム上は死亡として表記されるが、戦闘不能状態というだけであり、こちらの世界で言うところの死とは別物だ。
シンはゲーム開始初期では基本的に倒せるモンスターしか相手にしていなかったし、半ばを過ぎると圧倒的ステータスによって死ぬことはなくなった。まったく死ななかったというわけではないが、シンは慎重に戦うほうだったので、シュニーたちを連れていくような状況では死んだことはないはずだ。
そして、ゲーム時代のプレイヤーは本当の意味で死ぬことはなく、モンスターに倒されても復活する存在。シュニーにとって、シンがいなくなるというのは文字通りこの世界から転移、もしくはそれに準ずる方法で消えてしまうことであって、死亡するとは思っていないのだろう。
シンだって、できればパーティの誰も蘇生が必要になるようなことをさせたくはない。
「不死、だと……? それはつまり、お前も?」
説明を聞いたヴィルヘルムは、「冗談だろ?」と言いたげな表情で聞いてくる。しかし、シンは真剣な表情を崩さない。
この世界の人間からすれば荒唐無稽にもほどがある話だが、ヴィルヘルムはシンがハイヒューマンだと知っている。
かつての時代を生きた存在が真面目に言っているのだ。それを頭ごなしに否定するほど、彼は頭の固い人間ではなかった。
「いや、多分もう違う。『栄華の落日』ってあっただろ、あれで俺たちの不死性ってやつもなくなったんだと思う」
実際にこの世界で死んだことがあるわけではないが、直感的な何かが、死に戻りはできないとシンに確信させる。
「でも、言われてみればおかしな話なんだよ。シュニーが話さなかったのは、それっぽい理由を考えられなくもない。でも、俺まで少しも考えなかったのは、ちょっと変だ」
使うような事態になっていないというのはある。
しかし、どういう扱いなのか、効果があるのか試しておかねばならないアイテムなのも間違いない。
他の誰かに聞くことだってできたはずだ。
死者の蘇生、それは現実世界でも考えられ、そして不可能と結論付けられたもの。それができるのは、空想の中だけ。だが、この世界なら、それは実現可能な技術なのかもしれないのだ。
「……旧世代の枷ってやつかもな」
しばし黙っていたヴィルヘルムが、ぽつりと言った。言葉の響きがどうにもマイナスイメージを掻き立てる。
「それはなんなんだ?」
「今の奴なら疑問に思うことも、昔から生きてる奴は考えもしない。そんな感じの意味だったはずだ。これはやっとくべきだろ、これは確かめとくべきだろ。そういうのをしない、考えない。今回のお前みたいにな」
物理的なものではなく、新世代と旧世代の思考の違い程度の扱いだ、とヴィルヘルムは続けた。
「全員がそうってわけでもないって話だが、さぽーときゃらって言われてる奴らは、その傾向が強いらしい。あとは、げえむ時代ってのを知ってる奴ほどそうだとか、俺にこれを教えた奴は言ってたな」
シンたちの中で新世代はティエラだけだ。おそらく、ティエラは蘇生薬や蘇生魔術が実在するとは考えていないか、その言葉そのものを知らないのだろう。存在すると考えていないがゆえに、シンたちに聞くことはない。
そして、シンたちは旧世代の枷のせいで現物も手段もあるのに考えもしない。だから、誰も気づかずここまで来た。そういうことなのだろうとヴィルヘルムは言う。
「ヴィルヘルムは実在するって知ってたのか?」
「昔、それ関係でいろいろあってな。ま、知ってるだけで、それ以上の知識なんてほとんどねぇよ。それに、知ってたからどうってわけでもねぇ。死者の蘇生は大なり小なり考えたことのある奴はいるだろ。俺だってそうだ。冒険者は、死が身近にあるからな」
死んだ者を蘇らせたい。病で、事故で、襲撃で、大切な人を失った人ほど頭をよぎる。
恋人を、家族を、友人を、なくした誰かを取り戻したい。もう一度会いたい、話をしたい。
時に精神を病むほどに、近しい人の死は辛く、苦しい。
ゆえに、夢物語だとしても考えてしまう。死人を蘇らせる方法はないのかと。
「効果があってほしいような、ほしくないような」
現状ではあるほうが問題だが、本当に効果があるのなら万が一の保険になる。
シンはアイテムボックスからカード化した状態で蘇生薬を取り出した。
HPや状態異常を回復する万能回復薬は金色。それに対し、命を蘇らせる蘇生薬は銀色だ。本体は液体で、それ自体がわずかに発光している。
飲むかかけるかすると、効果を発揮して、プレイヤーをHP1割の状態で復活させる効果があった。
「おいそれまさか」
「カード状態ならわからないだろ?」
「それでもしまえ!」
どこから情報が漏れるかわからないと言うヴィルヘルムに、シンは素直に従った。確かに軽率だったなと反省する。
「やっぱりお前、旧世代だわ。ヒヤッとするどころじゃねぇ」
「すまん……」
ゲームの知識はこれまでシンを助けてくれた。しかし、それをしっかり扱えるかは自分次第だ。
「ところで、それで本当に復活した奴はいるのか? 『栄華の落日』前から生きている長命種なら、それなりに持っていそうだけど」
「さてな。効果があったって話も聞いたことはあるが、物も現場も見たわけじゃねぇしな」
間違いなく死んでいた奴に再会したなんてこともないようだ。
プレイヤーなら持っていてもおかしくない。
シンはヴィルヘルムと話す傍ら、ひびねこたち元プレイヤーの知り合いやベレットたちサポートキャラにメッセージを送った。
ミルトとはチャットを繋いで会話する。
『蘇生薬かー。そういえば、使ったことないなぁ』
こちらに来てから死にそうな人を助けるような場面に出くわしていていないらしく、効果は知らないと返事が来る。
ミルトは基本単独行動なので、仲間に使う機会はない。人相手でも本気の殺し合いの後に蘇生させようなどとは考えない。ゆえに、効果も知らない。
『蘇生薬がどうかしたの?』
『こっちじゃ持っているだけで命を狙われるレベルの代物らしくてな。不用意に名前も言うなって注意された』
『生産職の元プレイヤーなら、作れそうなものじゃない?』
『持っているだけで命を狙われるんだぞ? できても言えないだろ』
もしくは、できるがそのことを考えていないか。
『詳しいことはまたあとで話す』
『はーい』
ミルトとのチャットを切り、ヴィルヘルムとの話に戻る。
「アイテムがだめなら、魔術はどうだ? 神術の中には同じ効果を持ったものがあるぞ」
「そっちは完全に失われていて、もう使い手はいないって話だ。ま、貴重なスキルはたいていそうだ。隠してる奴もいるだろうな」
お前らは間違いなく知ってるだろうがな。ヴィルヘルムはそう続けた。
神術系スキル【リヴァイヴ】――蘇生系の魔術やアイテムの名称はゲームによって様々だが、【THE NEW GATE】ではこの名で呼ばれていた。詠唱時間がある分アイテムより効果が高く、最大でHPが2割回復した状態で復活する。
シンはスキルを発動しないように注意しながら、発動前の状態に持っていこうとした。無詠唱を習得しているので、そこまでは一瞬だ。
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