ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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21.求愛行動と嫉妬

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「やっぱ、お前惚れてるよな?」
「・・・・」
「さっきのあれって、ちょっとした求愛行動だよな」
「・・・・」

鼻血まみれの服を着替えて、ゲル様の執務室前にベルナールと2人立つ。
警護人のモンキー娘は今この中で授業中だ。

今だ俺の言葉に対して返事をしない横の男。

求愛行動に発展しそうな勢いだったこいつらに、思わず喉がゴクリと大きく鳴った。俺のその音で正気を戻したベルナール。

その後、3人ギクシャクしてしまったが・・・。


「なぁ、何でモンキー娘なんだ?お前ならもっとこう…お淑やかで、清純で、守ってやりたくなるような女だろう。あいつ全て真逆だぞ?!惚れる要素見当たらねぇんだけど……」


「・・・・自分でも分からぬ」


俺よりも一番解せなさそうな顔をして、大きな溜息をついたベルナール。

迷い人の場合、好印象の刷り込みは政治的にはラッキー。
恋愛はアンラッキーとこいつに言った。
深入りするなって言いたいが、自分でも分からない所の本能で求めてるなら、時すでに遅し・・・。
まじ厄介な女に惚れやがって・・・。俺も同じく大きな溜息をついた。


****


勉強が終って、執務室から出て来たモンキー娘が街に出たいと言ってきた。王宮図書はどうすんだって聞いたら、ゲル様から借りた本を読んでからにすると言う。

街か…別にこいつの行動は制限されていないし、まぁいいかと言うことで案内する事になった。ついでに、食事も外でしようということで、この街で評判の店にした。席について3人分のランチコースを注文。


「で、授業はどうだった」
『番ってやっかいやな』
「「!」」

俺等2人の顔が引きつったのは言うまでもない。
俺達の話しにもそれが出て頭痛めてんだよ!って言いたい所をぐっと堪えた。
何故ならあの独身のゲル様が、番に関して話せるような感情を持ち合わせていたという事の方が驚いたからだ。

「え・・えっと・・お前、番に関しての授業受けてたのか?」
『世界の混沌は、番のせいやって事が私の中で結論図けられた授業やった』
「・・・祖の王の件か?・・・」

ベルナールがそう言うと、モンキー娘が大きく頷いた。

『私の世界では、結婚してから愛を育むっていう結婚もある。結婚は一生ものと言って、石橋叩いたような結婚やったら、せえへんほうがましや。私は基本、本能でイケイケどんどんやし!』

拳を握って力説するモンキー娘を視界に入れながら、その元凶にこれから振り回されるだろう男に振ってみた。

「・・って言ってるぞ、お前イケイケどんどんできそうか?」

眉間に皺を寄せて真剣に考えるベルナール。
そこは本能でやるって言えよ!じゃないと猪突猛進タイプのこいつについて行けねぇぞ?

ランチが来て、美味い!美味い!と言って淑女の嗜みも忘れてがっつく女。
そんな時、食堂に空気の違う人間が入って来た。ベルナールも気づく。
席についてランチを注文した4人組。席についてからあちらさんもこちらに気づいた。

多分ザルビアの人間だ。皇太子が来る前に偵察か・・・。
渦中の迷い人が飯食ってる最中だが、ここは一先ず出るしかねぇか。今こいつを会わす訳にはいかねぇし。


「トーカ殿・・・、申し訳ないが席を立つ。後で王宮にて再度食事をされよ」

ベルナールがトーカに耳打ちするが、分かってねぇこいつが駄々をこねた。

『食事中に席立つのは淑女のマナー違反や!断固拒否るで』

お前は…さっき迄その淑女のマナーもなしにがっついてたのはどこの誰だ?!
向うもモンキー娘に気づいてこっちに来る。やべぇな・・・。

「マルクス!」
「分かってるよ!」

今だ肉に食らいついてるバカ女をひょいっと担いで、店の外に連れ出す。

『何さらすねん!まだ食うとるやろ。しかも腹が圧迫されて食べたもん出るやないか!!』

ジタバタ暴れるバカにニンジンをやる。

「腹八分目にしとけ。デザート食べ放題の店に連れてってやるから」
『マジか?!』

ニンジンに飛びついたバカ。そのまま店の外に連れ出す。ベルナールが威嚇を込めて鞘に手をやる。
ベルナールと一緒だった為、こいつが迷い人って分かっちまったか・・・。
3人王宮に向かって走る。
しっかり、あちらさんも後をついて来た。しかも二手に別れて・・・。

「先に行け!」
「おう!」
『ちょっ・・説明せえや!!』

離れないようにモンキー娘と手を繋いだ。
街の警備兵の詰め所に行けば何とかなる。走って15分ってとこか・・・。

『マルクス!ベルナールは?!置いて行くんか!』

当りめぇだ。あいつ等どう見たってただ者じゃねぇよ!お前に気づいた途端、威圧感が半端ねぇんだよ。
ベルナールが2人足止めしても、後2人はこっちに来る。俺は剣は持っててもベルナール程強くねぇ。逃げるが勝ちと思って走り出そうとしたら、ピンと俺の腕が張った。びくとも動かないバカ女。

「バカ野郎!動け!」
『仲間残して行けるか!』
「この・・っつ!」

先回りした2人が俺の前に立つ。
ベルナールが慌てて俺等の方に駆け寄ってくる。自然と4人に囲まれ人気のない路地に追い込めれる状態になった。

『お前等何や!』
「貴殿を迷い人とお見受けした。悪いが我々と一緒に来ていただきたい」
『理由を言え』
「相手にすんな!お前は後ろに下がってろ」
「お二方、邪魔だてされるな!」

そう言ってお互いが鞘に手を掛けた。

『はいはーい、落ち着け!落ち着け!どうどう・・』

渦中のバカが俺等の中に割って入った。
そんでもって、俺等は馬か!そこにいた全員が顔をしかめる。
そして4人の中から1人男が出てきた。
こいつ・・・皇太子付きの騎士ギルスじゃねぇかよ!
ということは、後の奴等も同じか。そうなると精鋭部隊で偵察ってわけねぇな。
ラムス邸に侵入してこいつを拉致る計画だったか・・・。


「迷い人よ…貴殿がここにおられればザルビアの不利益になります。悪いようには致しませぬ。我らと同行をお願いしたい」
『嫌や。ほんでもって、何で私がいたら不利益になんねん。あんた等の停戦に私は関係ないやろ』

ふっとバカにしたように笑った男。

「そこのお二人にお伺いしたい。この停戦に迷い人の存在が関係ないとお思いか?」

停戦になるように吹っかけたのは、ゲル様の指示とはいえ諜報部。ここは、その諜報部の立場とベルナールより弁の立つ俺が話す方がいいな、そう思ってモンキー娘の横に行く。

「貴殿の言う意味が何を意味してるか知らないが、迷い人は保護が義務。ここターベルに連れて来た以上それが当たり前かと。まして、停戦協定は貴殿等からの申し…」
「わざと迷い人の情報をこちらに流して言う言葉じゃないと思うが?諜報部のマルクス殿よ……」

ベルナールだけじゃなく、俺の事もばれてた!
ギルスは皇太子付騎士といっても頭が半端なく良い。その為、皇太子の右腕とまで言われてる男・・・。

「迷い人よ…、ターベルは迷い人を助けた善き国。ローレリア国からもそのように見られよう。そしてザルビアはこのまま争っていけば、善き国ターベルを襲う悪しき国という図が成り立ってしまう。そうならない為にも、停戦と言う申し出をした…。ターベルはそなたと言う存在を利用して自国のいいように停戦条件をいうつもり。クロード皇太子の交渉の為にも、こちらはその不利を同等にしたいだけだ。元々クロード皇太子はこの停戦には賛成なのだ・・・・」

そう言って私の顔を見た。嘘を言ってる目じゃないな。
少し考えて目の前の男に自分の考えを返す。

『ほんじゃ、同等の立場で停戦したいならその立ち合い私がする。私の知らん所で"迷い人"っていうのを利用されるんは、はっきり言うて胸糞悪いしな』
「なっ、何言ってんだこのバカ!!勝手に決めるな。普通、交渉事は利益を重視してするもんだ。お前、今日一日でこの世界の何が分かったって言うんだ?!この世界の事分かってないくせに口出すな。3年だぞ!3年も争って同等の交渉って…」

『マルクス、はっきり言うとく。私はあんた等の争いに入って行ってターベル国に手を貸した。けどそれは、ザルビアの大将のやり方が気に食わんかっただけのことや。私は決してターベルに肩入れしたわけではないで。そこんとこ勘違いせんといてくれるか』
「なっ!・・」

何か言いかけたマルクスにかぶせるように威圧を込めて言う。

『それに私に今日一日で分かった気になるなって言うなら、そんな人間を利用すんなや!』
「っつ!」

苦虫を噛み潰したような顔をしたマルクス。
シーンとする空気に突然笑い声が響く。

「あっはははは・・・。気に入った。父上に迷い人を落とせと言われたが、俺の方が持っていかれそうだ」

男が1人、4人の後ろから出て来た。

「クロード様・・・」

さっき言うてた皇太子さんか?
ごっつい男前や。どっちが男前やろうかと、ベルナールと比較する。
それが分かったんか、ベルナールの眉間に皺が寄った。思わずベルナールの勝者!って感じで腕をとって上に挙げた。
眉間に皺を寄せたマルクスがアホかと呟いた。


「俺はザルビア国第二皇太子クロード・ミル・カールトン。宜しくな」
『私は、トーカ。こっちこそ宜しくや』

そう言って握手しようとしたら、ベルナールが私の手をとってそれを阻止した。
向うの皇太子の差し出した手が空気を掴む。

「・・・。」
「・・・。」

美形同士が無言で見つめ合う図は、思わず鼻血がでそうやった。

「・・・・・・トーカ殿は、銀魔の番か?」
「・・・・・」

今だ無言のベルナールの代わりに私が答える。

『逆に質問で返すわ。この握手を阻止したことで、何で番に話が行くんかが知りたいわ!』
「今のは完璧な番に対しての嫉・・・」

皇太子の言葉にかぶせるようにマルクスが大きな声をあげた。

「わぁー!!ク…ク、クロード皇太子、そんなことよりこの場はどうされるつもりですか?!引いて頂けるのですか?」
「先程のトーカ殿の立ち合いが現実になるのであれば、引くつもりだ」
「それは、無理なお話。トーカにはそんな権限もない。決めるのは王もしくは王に進言できる側近者・・」
「ならば、その側近者のご子息であるベルナール殿からお父上に進言を」
「・・・・・・」

黙って今だ私の手首を持つベルナール。
持たれた手首から伝わる熱を感じながら、ベルナールに話しかける。

『なぁベルナール、あの戦いでターベルに手を貸したんは、たまたまや。正確に言うと、ベルナールに手を貸したって言うた方がいい。正々堂々としたあんたに目を奪われたからや。交渉事は確かにマルクスが言うように利益重視で進める。それは間違ってへん。両国の争いが3年続いたって言うてたけど、ほんまにこの争いを治めたいねんやったら、私を使わずに真っ向勝負で話しあわなあかん。私をダシにするような、片方にだけ利益がある不公平な交渉は、またすぐに破綻するで?私をダシに使うんじゃなく、両国をくっ付ける接着剤にはできんか?』

私の手首を持つ手がギュッと力を込める。銀の目が私をじっと見て、声を出した。


「私の名に懸けて、そしてトーカ殿への気持ちに懸けて承知した」

それを聞いて、向うはあっさりと引いて行った。
マルクスが慌ててベルナールに大受け合いして大丈夫かって聞いたので、横の私も提案を出した以上、ゲルのおっさんや宰相に進言するつもりでいると、マルクスに言うと俺は知らねぇからなと言ってムスッとしていた。


****


あの時の全員の顔は、目から鱗が落ちたという表現が一番あう顔だったなと思いだす。
皆が、迷い人を自国の有利な交渉ごとの駒に使うと考えた。
だが、当事者は発想が違った。面白い女だと思った。銀魔もそうだろう・・・。

笑いが出そうななったのを押しとどめる。横にいた俺の一番の友であり家臣のギルスがそれを気づいて言葉をかけて来た。


「クロード様、思い出し笑いですか」
「あぁ、お前も本当は声を出して笑っている所ではないか?」
「面白い女子でありました。あれが男であればよい騎士に、そして国に尽くす男になりましょう」
「・・・・」
「どうかされましたか?」
「・・・いや・・一瞬、男では俺が困ると思っただけだ。それに・・・」
「それに?」
「予定通り、拉致したかったと思う気持ちになった。そうすれば今この腕に抱いていたかもしれぬと思うと残念で仕方が無い」
「それは・・・番と言う意味の気持ちですか?」


「もしこれがそうだというのなら、銀魔に譲る気はない!俺だけの女、俺だけの番だ!!」


そう言って皇太子はザルビアに向けて馬のスピードを上げた。

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