ヤンキー・モンキー・ベイビー!

卯月うさぎ

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58.ほんに、今日は楽しいのう。

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「酷いのう・・コブができた。儂はMじゃないぞ、どちらかというとSじゃ!」
『お前、反省してへんやろ。もう一個コブ作られたいか?』


私等のやり取りに、ロスは先程から苦笑いだ。

「まっ、冗談はさておき、行くかのう…」


そう言って牢屋から出て行くじじい。突然の真面目な行動に2人が後をついて行く。

『じじい、何処に行くねん?』
「まずは、傀儡の解放なんじゃろ?」
「ルビナス様、傀儡の術を解く手段がやはりあるのですね!」
「ロスとやら、可笑しなことを言いよるな。手段も何も、もう解いてるぞ?」
「えっ?!」

そう言って毛むくじゃらな顔がこっちを見た(多分?)
そして、自分の額を見せる。
ロスも私もそれを見て吃驚する。そこには傀儡の紋様が描かれていたからだ。


「嬢ちゃん、儂の名を口にしたじゃろ。名を縛られ傀儡となった儂が、こうやって素面に戻ったのが証拠じゃ。さっき念のため姫さんには縛りの術、ロスの手に傀儡の術を描いて、姫さんが解けるかどうかやってみた。案の定、姫さんが解いた」

ロスに対しての気色悪い行為は術やったんか…。

「そういう事じゃ。分かったら先を急ぐぞ」

そう言って、老人とも思えんぐらいの走りを見せた。途中兵士に会うも何故か私等、3人が見えてないようで素通りされる。これも魔術やろうなと思った・・・。

そして余裕で、ある部屋に到着する。


「ロス、悪いがそこの椅子をここに持って来てくれんかの?」

そう言われたロスが椅子を部屋の中央に置いた。じじいが椅子の上に立ち天井に向けて魔術をかけた。その途端、天井にぽっかりと穴が開く。

「さて行くかの」

そう言って3人の体が浮遊する。
穴から入った部屋を見て、ロスが絶句していた。そんなロスをほっといて、じじいは好き勝手に部屋を動く。

「何処に隠しとるかのう…。昔と変わった所と言えば、ここかのう…」


そう言って、壁に掛けてあった大きな絵画に術式を言って手をかざす。
ポワっと光ったと思ったら、絵画が金庫のようなものに変わる。

「ビンゴじゃ。ひゃっひゃっひゃ」

笑いながら、簡単に扉を開ける。
そして、中にあった厚みのある本を私に渡した。

「姫さん、悪いがこれに載っている全ての名を声に出して読んでくれるかの」

最初のページと最後のページを見、そして横からその本の分厚さを視認する。
その後、じじいをジト目で見た。

「何じゃ?」
『じじい、簡単に言うけどこれ1週間以上はかかるで。それまでに私等捕まると思うけど…』
「何じゃ、数十分で読めぬのか。難儀な姫さんじゃのう」
『いや、普通数十分って有りえへんやろ。これ、人殴り殺せるぐらいの分厚さはあるで』
「ルビナス様・・私にも姫様には無理かと・・・」


やれやれと言って私の頭を手でかざした。その瞬間、本を開いて名を読み上げる。まるでビデオを早送りするようなスピードだ。数十分後、私の声は老婆のようにしわがれた。
そんな私にロスが水をくれる。それを全部飲み干すと、じじいが逃げるぞと言ってまた浮遊の術で下の階に降ろした。

その瞬間、さっきまでいた部屋にどやどやと兵士が入って来たのが見えた。穴から私等を見て、表に居る兵士に下に行くよう怒鳴る。
じじいがもう遅いわと言ってひゃっひゃっと笑った。

そんなじじいにロスが冷や汗ものですと呟いた。
意味が分からない私がロスに聞くと、あの部屋は、アイザック神官長の執務室だという。じじいが横から、元儂の執務室でもあるがのと声を挟む。しかも、部屋にはアイザックの結界が張ってあるので、やすやすと床に穴を開け侵入した事にも絶句したのだとか。結界が破れ、尚且つ秘密金庫を荒らされればアイザック神官長が、すぐに気づきく。
時間との戦いだったとロスが説明した。そんなことも知らず、私は焦ることなく名を読み続けてたって事か…。それを知ってたら、焦って読むどころじゃなかったかもなと思い、食わせ者のじじいを見る。
その当人は、鼻歌を歌ってた。大変楽しそうであった。


***


「さて、姫さん。お前さんの計画だと次は祖の王の所に行くことになっとるが、選択が今2つある。死に急ぐ若造を取るか、祖の王を取るかどっちにする」

廊下を走りながらじじいが聞いて来た。マジ息もあがらんと元気やなと感心する。

『誰の事言うてんねん?』
「ジルという男の事じゃ。もう分かっとるとは思うが、姫さんの眠り薬の量も、計画的に微量にしとる。ロスと交尾する前に目が覚め、そのせいでロスはお前さんと会話をし今現在に至る。多分ジルと言う男、姫さんの行動力に賭けたんじゃろう。で、そのジルはどう動くかのう?」

『監禁塔の妃様のとこに行く?』
「ぶー!!」
『じゃ、祖の王?』
「ぶー!!」
「まさかっ!アイザック神官長の所ですか?!」
「ピンポン、ピンポン!」
『何でそうなんねん!』
「足止めする為じゃ。城内と監禁塔が騒がしくなれば、アイザックは祖の王の監禁場所"儀式の間"に向かうからの」
「そんな!ジル殿には勝ち目がありません。いくらホルス殿がいても魔術レベルはアイザック神官長の方が断然上…」
「だから、先程も言っておろう。死に急ぐ若造と…。足止めの時間稼ぎに行くんじゃ、勝ちに行くつもりはもっておらんのよ。もう一度聞くぞ、姫さんはどっちに行く?」


ボサボサの毛で顔の表情が見えんけど、試すような目で見てるんやろうなこのじじいは…。

『じじい、分かってて聞いてるやろ。マジ食えんじじいやな!!早よ案内せいや、アイザックのとこ!!』
「ひゃっひゃっひゃ。ほんに、今日は楽しいのう」


ロスに顔を向けると、納得のいった顔をしていた。
祖の王達は命は取られん、だがジル達は傀儡になるか殺されるかのどっちかや。
あいつ等の事や、傀儡になるぐらいやったら、自分等で死を選ぶやろ…。させへんでそんな事!



気が焦る中、向うの方で爆発音が響いた。

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