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三章 街角の襲撃

41.大怪我-1

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 真子は赤い馬に乗って駆けつけてきたアレクサンドラに向かって泣き叫んだ。

「アレクサンドラさん!! マリーベルちゃんが!!」

「ジェーン!! マリーベルに回復を!!」

 アレクサンドラはマリーベルの怪我を一目見るなりジェーンを呼び寄せた。
 ジェーンが急いで馬から下り、マリーベルの横に屈むと金色に光る魔力玉をいくつも出し薄い膜のように広げてマリーベルの身体を包んだ。
 マリーベルの身体を金色の膜が二重三重になって包んでいく。
 アレクサンドラが真子の肩を抱き、マリーベルから遠ざける。

「ジェーンに任せなさい。マーコに怪我はない?」

「わ、私はどこも……」

 真子の手にも服にもべっとりとマリーベルの流した血がこびりついている。
 真子は涙をぼたぼたとこぼした。

(私にも、何かできること……あ、さっきの白い光……)

 真子は瞑想をしていた時にわずかに感じた魔力の流れと、先ほどマリーベルに魔力を流された時の感覚を必死に思い出した。
 すると真子の身体がぼんやりと白く光出した。

「マーコ……!?」

「あ、これ! ねぇ、ジェーンさん! 私の力を使って良いからマリーベルちゃんを助けて!」

 真子が白い光を強めながら、魔力付与をしようとジェーンの隣にしゃがみこんだ。
 アレクサンドラがジェーンから引きはがすように真子の腕を強く引いた。

「マーコ。あなた、何回マリーベルに魔力付与をした!?」

「え、一回? 二回?   あれ? わかんない……」

「今すぐそれをやめなさい!!」

「なんでそんな酷いこと言うの! マリーベルちゃんが死んじゃう!!」

 真子が白い光を強めながらアレクサンドラの腕を振り払ってジェーンの隣に行こうとするのを、アレクサンドラが再び腕を掴んで無理矢理止める。

「マーコ、やめろっ!!」

「ヤダ、やめない!! 離してっ!!」

 二人が激しく揉み合っていると、突如凛とした声が谷底に響き渡った。

「アレクサンドラ!!」

 声の主はシルヴィオだった。
 静かだが圧倒的な威厳を感じさせる声に、真子とアレクササンドラが動きを止める。

「落ち着きなさい」

 シルヴィオが真子の腕を取り、アレクサンドラの掴んでいる手を外した。

「ジェーンはそのまま回復を続けていてください。マコさんは一度その光を止めなさい」

「でも……!」

「悪いようにはしないので、あなたも落ち着きなさい」

 ぼろぼろと涙をこぼす真子の背中を、シルヴィオがゆっくりと撫でさする。

「カイラ。ここから王宮まで何回の魔力付与が有れば行けますか?」

「二……いえ、一回で行けるわ」

「マコさん、闇雲に魔力付与をするのはやめなさい。魔力付与はあと二回。一回はジェーン、もう一回はカイラに」

 シルヴィオはアレクサンドラの顔を真っ直ぐに見て言った。

「ギリギリまでジェーンに回復をしてもらって、カイラの転移で王宮の医務室に飛びます。あそこなら回復魔術の使い手が何人もいます。それで良いですか?」

 アレクサンドラは苦しそうに顔を歪めながらも、ちらりとマリーベルの様子に目をやってからゆっくりとうなずいた。

「王宮には伝令を飛ばします」

 シルヴィオが銀色の魔力玉を出して翼を生やして鳥の形にすると、すぐに空に放った。
 シルヴィオはアレクサンドラの顔を見て僅かに眉をひそめた。

「アレクサンドラ、しっかりしてください。あなたは団長ですよ」

 シルヴィオの咎めるような声に、アレクサンドラは眉間に皺を寄せてため息をついた。
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