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四章 アレクサンドラとディアナ
69.アレクサンドラとディアナ-2
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「フェリシア様に常闇が壊滅に追いやられた日、本当はディーンと一緒に逃げ出すはずだったの。常闇が商隊を襲う計画を立てていたから、その襲撃中に抜け出そうって。ディーンが王都の魔術士学校に行けばなんとかなるかもって教えてくれてね」
思い出すと辛いのか、アレクサンドラが少し苦しそうな顔をする。
「アタシは魔術士学校なんてものがあることも知らなかったから」
ディーンはとても賢い子だったのよ、とアレクサンドラがつぶやく。
「それまで常闇が相手にしていたのは私設の用心棒やせいぜい地方所属の警備隊だったから、王宮所属の魔術士団を相手にできるレベルなんかじゃなかったのよ」
常闇の連中はフェリシア率いる魔術士団にまたたく間にやられてしまったのだと、アレクサンドラは言った。
「魔術を使えるのはアタシだけだったから、一人で魔術士団を相手させられて、こっそり逃げ出すなんて出来なくてね」
「……囮にされたって聞いた」
「えぇ、勝手に逃げださないようにちょっと足を折られて」
「ヒドイ」
真子がアレクサンドラに抱きついて、胸に顔を埋めた。
「まぁすぐにフェリシア様に捕まっちゃって、足の怪我も治してもらったのよ?」
だから大丈夫だったわよ、と真子をなだめるようにアレクサンドラの大きな手が真子の背中を優しく撫でる。
「ディーンと逃げだすために約束していた場所にも行けず、後でフェリシア様に事情を話して探しに行ったんだけど結局見つからなくてね」
「うん」
「ディーンにそれから何があったのかはわからないけれど、アタシがフェリシア様の弟子を卒業して魔術士団に入った頃、常闇を名乗る犯罪集団がいると聞いて駆けつけたらそこにディーンがいたの。ディーンはディアナと名乗って、どこで身につけたのかはわからないけれど魔術を使えるようになっていた。そして深い青い目に憎しみを込めて言うのよ『お前を決して許さない』と。『自分だけ光の当たる所で幸せになるなんて』って」
「そんなの逆恨みじゃない!」
「そうね。アタシが悪かったとは思わない。……でも、恨まれても仕方がないと思っているわ」
アレクサンドラが真子を見つめてなだめるように指の背で頬を撫でた。
「フェリシア様がアタシを拾ってくれたおかげで今のアタシがあるから、アタシも道で拾ったマーコを放っておけなかったのよね」
アレクサンドラが真子の頬にキスを落とした。
「さ、もう寝ましょう」
アレクサンドラが今度は真子のまぶたにキスを落として、布団をかけ直してポンと叩いた。
布団の中で真子はたくさん傷ついたであろう幼いアレクサンドラのことを思う。
これ以上もう傷つかないで欲しいと願いを込めて、真子はアレクサンドラをギュッと抱きしめた。
思い出すと辛いのか、アレクサンドラが少し苦しそうな顔をする。
「アタシは魔術士学校なんてものがあることも知らなかったから」
ディーンはとても賢い子だったのよ、とアレクサンドラがつぶやく。
「それまで常闇が相手にしていたのは私設の用心棒やせいぜい地方所属の警備隊だったから、王宮所属の魔術士団を相手にできるレベルなんかじゃなかったのよ」
常闇の連中はフェリシア率いる魔術士団にまたたく間にやられてしまったのだと、アレクサンドラは言った。
「魔術を使えるのはアタシだけだったから、一人で魔術士団を相手させられて、こっそり逃げ出すなんて出来なくてね」
「……囮にされたって聞いた」
「えぇ、勝手に逃げださないようにちょっと足を折られて」
「ヒドイ」
真子がアレクサンドラに抱きついて、胸に顔を埋めた。
「まぁすぐにフェリシア様に捕まっちゃって、足の怪我も治してもらったのよ?」
だから大丈夫だったわよ、と真子をなだめるようにアレクサンドラの大きな手が真子の背中を優しく撫でる。
「ディーンと逃げだすために約束していた場所にも行けず、後でフェリシア様に事情を話して探しに行ったんだけど結局見つからなくてね」
「うん」
「ディーンにそれから何があったのかはわからないけれど、アタシがフェリシア様の弟子を卒業して魔術士団に入った頃、常闇を名乗る犯罪集団がいると聞いて駆けつけたらそこにディーンがいたの。ディーンはディアナと名乗って、どこで身につけたのかはわからないけれど魔術を使えるようになっていた。そして深い青い目に憎しみを込めて言うのよ『お前を決して許さない』と。『自分だけ光の当たる所で幸せになるなんて』って」
「そんなの逆恨みじゃない!」
「そうね。アタシが悪かったとは思わない。……でも、恨まれても仕方がないと思っているわ」
アレクサンドラが真子を見つめてなだめるように指の背で頬を撫でた。
「フェリシア様がアタシを拾ってくれたおかげで今のアタシがあるから、アタシも道で拾ったマーコを放っておけなかったのよね」
アレクサンドラが真子の頬にキスを落とした。
「さ、もう寝ましょう」
アレクサンドラが今度は真子のまぶたにキスを落として、布団をかけ直してポンと叩いた。
布団の中で真子はたくさん傷ついたであろう幼いアレクサンドラのことを思う。
これ以上もう傷つかないで欲しいと願いを込めて、真子はアレクサンドラをギュッと抱きしめた。
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