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四章 アレクサンドラとディアナ
78.ヤドナの秘術-1
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真子が目を覚ますと目に入ってきたのは見覚えのある天井で、そこは月の宮に用意された真子の部屋だった。
カーテンが閉まっており外はもう暗くなっているようだった。
暗闇から囁くような声が聞こえてきた。
「マーコ?」
「ん、アレク?」
衣ずれの音と誰かの動く気配がして真子が身体を起こして見ようとすると、すぐ横まで来ていたアレクサンドラに肩を押さえて止められた。
「そのまま寝ていて。魔力切れを起こしたのかと思って心配したわ」
真子がポスリと枕に頭を落とすと、アレクサンドラは顔に貼りついた髪をどけるように真子の顔を指でなぞった。
「慣れない事をして疲れが出たんだろうって。ずっとがんばっていたものね。ゆっくり休みなさい」
真子が思っているよりも夜遅いのだろうか。
アレクサンドラは真子の耳元に顔を寄せて、小さな声で囁く。
「それとも起きて何か食べる?」
お腹が空いている気もするが、いまいち食欲がわかなくて真子は小さく首を横に振る。
周りが暗くてよくわからないが、アレクサンドラの顔色はあまり良くないように見えた。
真子は手を伸ばしてアレクサンドラの頬を包み込んだ。
「アレクは?」
「アタシは鍛えているもの。これくらい大丈夫よ」
安心させるようにアレクサンドラが微笑む。
真子が頭を少しだけ上げて足元を見ると、ベッドサイドには椅子が置いてありその背には毛布がかかっていた。
真子が目覚めるまでアレクサンドラはそこで寝ていたのだろうか。
「アレクもいっしょにねる?」
「いいえ。一人でゆっくり寝た方が休めるわ」
「いっしょはだめ?」
真子が布団を少し持ち上げてアレクサンドラを誘うと、アレクサンドラは少し困った顔をしながらもゆっくりと布団の中に入ってきた。
アレクサンドラが真子の隣に横たわり、真子をふんわりと腕の中に収める。
「どこかおかしなところは無い?」
「だいじょうぶ、たぶん」
まだ半分寝ているようなぽやぽやとした頭でゆっくり身体を動かしてみるが、どこも変なところは無さそうだ。
「ねぇ、ディアナは……?」
「明日ちゃんと説明するから、今はもう休みましょう」
「うん……」
アレクサンドラの香りと体温に包まれながら優しく背中を撫でられていると、身体の力がどんどん抜けて再び眠りに誘われる。
「……目が覚めて良かった」
眠りに落ちる寸前、アレクサンドラの震える声が耳を掠めた。
(心配かけてごめんね……)
その言葉を口に出す前に真子は眠りに落ちてしまった。
*****
真子が次に目を覚ますと、部屋は明るく朝になっていた。
ベッドには真子一人でアレクサンドラの姿は見えなかった。
コンコン
控えめなノックの後にドアが開き、入ってきたのは月の宮で働いているお手伝いさんの一人だった。
「あら、お目覚めですね。朝ごはんの用意ができておりますが、お部屋にお持ちしますか?」
「あ、大丈夫です。すぐ行きます」
真子は急いでベッドから降りて、食堂に向かおうと着替え始めた。
すぐにお腹がグーっと大きく鳴って、我ながら元気になっていて笑ってしまった。
食堂に行くとフェリシアとアレクサンドラ、そしてジェーンとマリーベルもいた。
「おはよう、マコちゃん」
ジェーンとマリーベルが真子に向かってひらひらと手を振る。
アレクサンドラはすぐに立ち上がって真子の横に立つと、手を取って腰に手を回し真子の身体を支える。
「寝ていなくて平気?」
「大丈夫。心配かけてごめんね」
アレクサンドラの手を握り返し、笑いながら見上げる。
アレクサンドラはそれでもまだ安心できないようで心配そうな顔をしていた。
「団長がマコの側を離れたがらなくて、私たちもここまで来ているのよ」
ジェーンがケラケラと笑って告げる。
「え! わざわざごめんなさい!!」
「ジェーン! 余計なこと言わないの。私たちもマコちゃんの元気な顔が見られて良かったから良いよ」
真子がアレクサンドラの隣に座ると、フェリシアがジェーンに促した。
「時間がもったいないから、さっさと話せ」
ジェーンとマリーベルはすでに食事を終えてきているようで、真子とアレクサンドラ、フェリシアの三人が朝食を食べる横でジェーンとマリーベルがわかった事の報告を始めた。
カーテンが閉まっており外はもう暗くなっているようだった。
暗闇から囁くような声が聞こえてきた。
「マーコ?」
「ん、アレク?」
衣ずれの音と誰かの動く気配がして真子が身体を起こして見ようとすると、すぐ横まで来ていたアレクサンドラに肩を押さえて止められた。
「そのまま寝ていて。魔力切れを起こしたのかと思って心配したわ」
真子がポスリと枕に頭を落とすと、アレクサンドラは顔に貼りついた髪をどけるように真子の顔を指でなぞった。
「慣れない事をして疲れが出たんだろうって。ずっとがんばっていたものね。ゆっくり休みなさい」
真子が思っているよりも夜遅いのだろうか。
アレクサンドラは真子の耳元に顔を寄せて、小さな声で囁く。
「それとも起きて何か食べる?」
お腹が空いている気もするが、いまいち食欲がわかなくて真子は小さく首を横に振る。
周りが暗くてよくわからないが、アレクサンドラの顔色はあまり良くないように見えた。
真子は手を伸ばしてアレクサンドラの頬を包み込んだ。
「アレクは?」
「アタシは鍛えているもの。これくらい大丈夫よ」
安心させるようにアレクサンドラが微笑む。
真子が頭を少しだけ上げて足元を見ると、ベッドサイドには椅子が置いてありその背には毛布がかかっていた。
真子が目覚めるまでアレクサンドラはそこで寝ていたのだろうか。
「アレクもいっしょにねる?」
「いいえ。一人でゆっくり寝た方が休めるわ」
「いっしょはだめ?」
真子が布団を少し持ち上げてアレクサンドラを誘うと、アレクサンドラは少し困った顔をしながらもゆっくりと布団の中に入ってきた。
アレクサンドラが真子の隣に横たわり、真子をふんわりと腕の中に収める。
「どこかおかしなところは無い?」
「だいじょうぶ、たぶん」
まだ半分寝ているようなぽやぽやとした頭でゆっくり身体を動かしてみるが、どこも変なところは無さそうだ。
「ねぇ、ディアナは……?」
「明日ちゃんと説明するから、今はもう休みましょう」
「うん……」
アレクサンドラの香りと体温に包まれながら優しく背中を撫でられていると、身体の力がどんどん抜けて再び眠りに誘われる。
「……目が覚めて良かった」
眠りに落ちる寸前、アレクサンドラの震える声が耳を掠めた。
(心配かけてごめんね……)
その言葉を口に出す前に真子は眠りに落ちてしまった。
*****
真子が次に目を覚ますと、部屋は明るく朝になっていた。
ベッドには真子一人でアレクサンドラの姿は見えなかった。
コンコン
控えめなノックの後にドアが開き、入ってきたのは月の宮で働いているお手伝いさんの一人だった。
「あら、お目覚めですね。朝ごはんの用意ができておりますが、お部屋にお持ちしますか?」
「あ、大丈夫です。すぐ行きます」
真子は急いでベッドから降りて、食堂に向かおうと着替え始めた。
すぐにお腹がグーっと大きく鳴って、我ながら元気になっていて笑ってしまった。
食堂に行くとフェリシアとアレクサンドラ、そしてジェーンとマリーベルもいた。
「おはよう、マコちゃん」
ジェーンとマリーベルが真子に向かってひらひらと手を振る。
アレクサンドラはすぐに立ち上がって真子の横に立つと、手を取って腰に手を回し真子の身体を支える。
「寝ていなくて平気?」
「大丈夫。心配かけてごめんね」
アレクサンドラの手を握り返し、笑いながら見上げる。
アレクサンドラはそれでもまだ安心できないようで心配そうな顔をしていた。
「団長がマコの側を離れたがらなくて、私たちもここまで来ているのよ」
ジェーンがケラケラと笑って告げる。
「え! わざわざごめんなさい!!」
「ジェーン! 余計なこと言わないの。私たちもマコちゃんの元気な顔が見られて良かったから良いよ」
真子がアレクサンドラの隣に座ると、フェリシアがジェーンに促した。
「時間がもったいないから、さっさと話せ」
ジェーンとマリーベルはすでに食事を終えてきているようで、真子とアレクサンドラ、フェリシアの三人が朝食を食べる横でジェーンとマリーベルがわかった事の報告を始めた。
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