【R18/完結】猫は魚を食べちゃいたい(※性的な意味で)〜愛され巫女の運命の番は美形で意地悪な吟遊詩人〜

河津ミネ

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四章 アミル失踪

59.九の月の連絡船-2

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 滅多にアイラナから国外に出ないアリイに会いたがる人は多い。
 アリイは滞在中にウトビアの高官や商人たちとの会合が目一杯入っていて、その間ルルティアとヌイはフルフィウス周辺の薬草園を見学して回った。
 そこでシャウキ栽培のアドバイスをもらったり、薬草の効果的な使用方法などを教えてもらったりした。
 薬草園の人から街中の大きな図書館を紹介してもらい、ルルティアはそこでシャウキ栽培について調べ、ヌイはウトビアの最新の医療について学んだ。

 フルフィウスの中央広場の近くにある大きな川べりをルルティアとヌイはよく二人で並んで歩いた。
 ここは泊まっている宿からも近い大きな川で海の気配が感じられた。

「アミルが近くにいる気がするんだよね」

「すごいな。そんなこともわかるのか。愛し子どうしだから?」

「そうなのかな?」

 アミル以外の精霊の愛し子に会ったことが無いのでわからないけれど、それでもやっぱりアミルだから特別にわかるような気がした。
 フルフィウスは雨や霧の多い街だからか水に触れることが多く、ルルティアは普段よりも感覚が研ぎ澄まされているのを感じた。
 もしくはこの国のどこか緊張した空気にあてられて、アクアさまが警戒しているのかもしれない。
 ルルティアは広場沿いに流れる川の一角の少しだけ窪んだ場所に座ると、チャプと裸足の足を浸けた。
 川の水を通して街中の様子が頭の中に伝わってくる。

(アミル、アミルどこ?)

 意識を広げてアミルを探すと、意識の端をチリとバズの気配がかすめる。

(アミル、アミル)

 ルルティアはアミルに届くように何度も呼びかけた。
 厚い雲に覆われてわかりづらいけれど、フルフィウスの街に夜がやってくる。

「ルル、そろそろ戻ろうか」

「うん……」

「また明日探そう」

 ヌイの合図でルルティアは川から足を上げると、とぼとぼと宿に戻った。

 フルフィウスでそんな風に数日を過ごしたある日、いつものように川縁に座って足を浸けているとフードの裾からはみ出した手にスリと柔らかいものが触れた。
 見ると黒い猫がルルティアの手に擦り寄っていた。

「バズ!」

『静かに、魚の愛し子』

 ニャ、とバズが鳴いてルルティアを黙らせる。
 ルルティアはバズに向かってこくこくとうなずいてから、隣に座るヌイにそっと耳打ちした。

「アミルの精霊がいる」

 ヌイはルルティアの方に身体を寄せて、ルルティアがバズと話していてもおかしく見えないようにルルティアの姿を隠した。

「バズ! アミルは? アミルは無事なの!?」

 ルルティアが小声でバズに尋ねると、バズはニャアと答えながらルルティアの手の上にトンと足先を乗せた。

『夜にもう一度ここで』

 それだけ言うとバズはくるりと向きを変えてあっという間に去っていた。

「待って! あ……」

「ルル?」

「夜にまたここで、だって」

 ルルティアとヌイは目を合わせてうなずき、日が落ちてから再びここに来ることを決めた。
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