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それから③
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シン君と部屋に二人きりで残されて、恥ずかしくて気まずくてモジモジしてしまう。
「えーと……、とりあえず大学合格おめでとう」
「ありがとうございます。あの、大学受かったの、本当に舞衣歌さんのおかげなんです」
シン君は顔を上げて、舞衣歌をまっすぐに見つめた。
「うち、病院なんですよ。兄は薬剤師になって跡を継がないって言うし、俺はなんとなく医学部を目指してたんですけど、急に何のために勉強してるんだろって思っちゃって。でも医者になれなかったら俺には価値がないんじゃないかって思ったら、変に焦ってどんどん勉強も手につかなくなって」
「シン君……」
「でも舞衣歌さんにありがとうって言ってもらえて、そうじゃないって気づけたんです」
シン君が真剣な顔をしてジッと舞衣歌を見ている。
「それに舞衣歌さんが『患者さまが困っちゃう』って言ってるのを聞いて、俺もちゃんと医者になるってどういうことかを考えるようになって、そして改めて俺は医者になりたいって思えたんです。だから俺が頑張れたのは舞衣歌さんのおかげです。ありがとうございました」
シン君はきちんと正座に座り直して、手をついて舞衣歌に頭を下げた。
「私は何もしてないよ。シン君の実力だよ」
舞衣歌の答えを聞いて、シン君は顔を上げると嬉しそうに目を細めた。
「あと舞衣歌さんにもう一度会うためって思ったら、何でもできました」
シン君は舞衣歌ににじり寄ると、手を握って顔をグッと近づけた。
「舞衣歌さん、キスして良いですか?」
舞衣歌の潤んだ目に拒絶の色が無いのを感じ取って、シン君は舞衣歌の唇にそっとキスをした。
キスが深くなりそうな気配を感じて舞衣歌はあわてて顔を逸らす。
「待って、シンくん、これ以上はダメだよ……」
まだ色々と話さなくてはいけない事があるはずだ。
「俺、この間のコンドームの残り持ってます。もう一回舞衣歌さんとしたくて受験のお守りにしてました」
「なにそれ」
「ポケットに入れて受験会場にも持って行っちゃった」
そう言ってシン君はズボンのポケットからコンドームの袋を取り出した。
「頑張った俺にご褒美くれませんか?」
コンドームの袋を口に当てて小首をかしげて上目遣いに見てくる。
ずいぶんと卑猥な表情の天使だ。
「合格祝い?」
「はい」
「……あとでね」
舞衣歌が小さな声でつぶやくと、シン君は口の端を大きく上げて満足そうに笑った。
「あ、そうだ。忘れてた」
「ん?」
「舞衣歌さん、好きです」
「私も。私もシン君が好き」
二人でギュッと抱きあうと、舞衣歌の口からは、ふふ、と笑い声が漏れてしまった。
「? なんですか?」
「いや、サンタさんが彼氏をプレゼントしてくれたのかな~って」
「ほんと、それ、なんなんですか」
シン君が少し困った顔をしながら笑った。
「俺、舞衣歌さんにありがとうって言われるのが好きなんです。一生ありがとうって言ってもらえるようにがんばりますね」
そう言ってシン君はポフッと頭を舞衣歌の肩に乗せた。
一生かぁ……と考えて、年齢とか状況とか、まぁ多分これから大変なことは色々あるんだろうな、と思いつつ、まぁいいか、と舞衣歌は今の幸せな時を楽しむことにした。
今を楽しんで、そして二人で楽しい日々を続けていった先に、気づいたらずっと一緒にいた……なんて未来があると良いな、と舞衣歌はそんな願いを込めてシン君の柔らかい薄茶色の髪の上にそっとキスを落とした。
「えーと……、とりあえず大学合格おめでとう」
「ありがとうございます。あの、大学受かったの、本当に舞衣歌さんのおかげなんです」
シン君は顔を上げて、舞衣歌をまっすぐに見つめた。
「うち、病院なんですよ。兄は薬剤師になって跡を継がないって言うし、俺はなんとなく医学部を目指してたんですけど、急に何のために勉強してるんだろって思っちゃって。でも医者になれなかったら俺には価値がないんじゃないかって思ったら、変に焦ってどんどん勉強も手につかなくなって」
「シン君……」
「でも舞衣歌さんにありがとうって言ってもらえて、そうじゃないって気づけたんです」
シン君が真剣な顔をしてジッと舞衣歌を見ている。
「それに舞衣歌さんが『患者さまが困っちゃう』って言ってるのを聞いて、俺もちゃんと医者になるってどういうことかを考えるようになって、そして改めて俺は医者になりたいって思えたんです。だから俺が頑張れたのは舞衣歌さんのおかげです。ありがとうございました」
シン君はきちんと正座に座り直して、手をついて舞衣歌に頭を下げた。
「私は何もしてないよ。シン君の実力だよ」
舞衣歌の答えを聞いて、シン君は顔を上げると嬉しそうに目を細めた。
「あと舞衣歌さんにもう一度会うためって思ったら、何でもできました」
シン君は舞衣歌ににじり寄ると、手を握って顔をグッと近づけた。
「舞衣歌さん、キスして良いですか?」
舞衣歌の潤んだ目に拒絶の色が無いのを感じ取って、シン君は舞衣歌の唇にそっとキスをした。
キスが深くなりそうな気配を感じて舞衣歌はあわてて顔を逸らす。
「待って、シンくん、これ以上はダメだよ……」
まだ色々と話さなくてはいけない事があるはずだ。
「俺、この間のコンドームの残り持ってます。もう一回舞衣歌さんとしたくて受験のお守りにしてました」
「なにそれ」
「ポケットに入れて受験会場にも持って行っちゃった」
そう言ってシン君はズボンのポケットからコンドームの袋を取り出した。
「頑張った俺にご褒美くれませんか?」
コンドームの袋を口に当てて小首をかしげて上目遣いに見てくる。
ずいぶんと卑猥な表情の天使だ。
「合格祝い?」
「はい」
「……あとでね」
舞衣歌が小さな声でつぶやくと、シン君は口の端を大きく上げて満足そうに笑った。
「あ、そうだ。忘れてた」
「ん?」
「舞衣歌さん、好きです」
「私も。私もシン君が好き」
二人でギュッと抱きあうと、舞衣歌の口からは、ふふ、と笑い声が漏れてしまった。
「? なんですか?」
「いや、サンタさんが彼氏をプレゼントしてくれたのかな~って」
「ほんと、それ、なんなんですか」
シン君が少し困った顔をしながら笑った。
「俺、舞衣歌さんにありがとうって言われるのが好きなんです。一生ありがとうって言ってもらえるようにがんばりますね」
そう言ってシン君はポフッと頭を舞衣歌の肩に乗せた。
一生かぁ……と考えて、年齢とか状況とか、まぁ多分これから大変なことは色々あるんだろうな、と思いつつ、まぁいいか、と舞衣歌は今の幸せな時を楽しむことにした。
今を楽しんで、そして二人で楽しい日々を続けていった先に、気づいたらずっと一緒にいた……なんて未来があると良いな、と舞衣歌はそんな願いを込めてシン君の柔らかい薄茶色の髪の上にそっとキスを落とした。
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