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一章 できそこないの魔女と俺様令息
2.ソフィアの価値とレオルドの目的-1
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ソフィアはレオルドが苦手だった。
数少ないソフィアのことを忘れにくい人のうちのひとりではあったが、強い意志を感じさせる鋭い赤い目でのぞき込まれると、まるで心の奥底まですべて喰らい尽くされてしまいそうな恐ろしさがあった。
ただでさえ人に見られることに慣れていないのに、この目は強すぎる。
「レオルド様、冗談はおやめください」
「冗談ではないぞ、ソフィア」
さらに身体を寄せられてしまい、少しでもレオルドから離れようと壁にぴったりと背をつける。
そもそもこの輝くような見事な黄金の髪の持ち主であるレオルドは、アロガンシア王国でも名門と名高いエストーク侯爵家の令息だった。
跡継ぎの長子は別におり、彼自身は自らの名前を冠するレオルド商会を経営しながら王宮に騎士として出仕している。
そしてその高貴な家柄と類まれなる能力が認められ、聖女を守る白騎士団の団長も務めていた。
人々の尊敬と憧れを一心に集めるレオルドは、その派手で人目を惹く風貌とあいまって、男女問わずいつも人に囲まれていた。
そんなレオルドが『できそこないの魔女』であるソフィアを欲しいと言うのだ。
しかもこれは今が初めてのことではなく、そこにうっすらと別の意図を感じてしまう。
この熱い眼差しが本当に自分に向けられたものならば、ソフィアだってもう少し喜べたのかもしれない。
しかしその向こうに他の誰かを見ているとなれば、とてもじゃないが喜べなかった。
ソフィアは水色のまつ毛を震わせながら目を伏せた。
「もう、私のことは忘れたのかと思いました」
「俺がソフィアを忘れるわけがないだろう? 聖女の遠征につきあって遠出したり、商会の仕入れに顔を出したりでしばらく王都を留守にしていただけだ。俺に会えなくて寂しかったか?」
「そんなことありえません」
小さく首を振るのに合わせて水色の髪が揺れた。
するとレオルドが水色の髪に触れるように手を伸ばしてきたので、あわてて身をよじって避ける。
聖女も魔女も異性との過度な接触は禁止されている。
そのうえ、聖女や魔女に不用意に近づいた男性は処罰をされるので、先ほどのようにソフィアを抱きしめていた姿を誰かに見られでもしたらレオルドだって罰を受けかねない。
聖女を守る白騎士であるレオルドがそのことを知らないはずがないのに。
「これ以上私に近づくと、レオルド様がお困りになるのではないですか?」
「ふん、罰が怖くてソフィアに近づけるか」
レオルドは伸ばした指の先に水色の髪をからめながら、まるでソフィアを口説くかのようなことを口にした。
数少ないソフィアのことを忘れにくい人のうちのひとりではあったが、強い意志を感じさせる鋭い赤い目でのぞき込まれると、まるで心の奥底まですべて喰らい尽くされてしまいそうな恐ろしさがあった。
ただでさえ人に見られることに慣れていないのに、この目は強すぎる。
「レオルド様、冗談はおやめください」
「冗談ではないぞ、ソフィア」
さらに身体を寄せられてしまい、少しでもレオルドから離れようと壁にぴったりと背をつける。
そもそもこの輝くような見事な黄金の髪の持ち主であるレオルドは、アロガンシア王国でも名門と名高いエストーク侯爵家の令息だった。
跡継ぎの長子は別におり、彼自身は自らの名前を冠するレオルド商会を経営しながら王宮に騎士として出仕している。
そしてその高貴な家柄と類まれなる能力が認められ、聖女を守る白騎士団の団長も務めていた。
人々の尊敬と憧れを一心に集めるレオルドは、その派手で人目を惹く風貌とあいまって、男女問わずいつも人に囲まれていた。
そんなレオルドが『できそこないの魔女』であるソフィアを欲しいと言うのだ。
しかもこれは今が初めてのことではなく、そこにうっすらと別の意図を感じてしまう。
この熱い眼差しが本当に自分に向けられたものならば、ソフィアだってもう少し喜べたのかもしれない。
しかしその向こうに他の誰かを見ているとなれば、とてもじゃないが喜べなかった。
ソフィアは水色のまつ毛を震わせながら目を伏せた。
「もう、私のことは忘れたのかと思いました」
「俺がソフィアを忘れるわけがないだろう? 聖女の遠征につきあって遠出したり、商会の仕入れに顔を出したりでしばらく王都を留守にしていただけだ。俺に会えなくて寂しかったか?」
「そんなことありえません」
小さく首を振るのに合わせて水色の髪が揺れた。
するとレオルドが水色の髪に触れるように手を伸ばしてきたので、あわてて身をよじって避ける。
聖女も魔女も異性との過度な接触は禁止されている。
そのうえ、聖女や魔女に不用意に近づいた男性は処罰をされるので、先ほどのようにソフィアを抱きしめていた姿を誰かに見られでもしたらレオルドだって罰を受けかねない。
聖女を守る白騎士であるレオルドがそのことを知らないはずがないのに。
「これ以上私に近づくと、レオルド様がお困りになるのではないですか?」
「ふん、罰が怖くてソフィアに近づけるか」
レオルドは伸ばした指の先に水色の髪をからめながら、まるでソフィアを口説くかのようなことを口にした。
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