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50.魔力暴走-1
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ピシリ、と身体の奥の方でヒビが入ったような心地がして、その次の瞬間にはクラリスの内側から大量の魔力があふれ出していた。
尽きることのない泉のように、あとからあとから魔力が湧き出してくる。
(何……これ……?)
バラバラになりそうだった痛みは驚くように引いていき、身体の隅々まで力が巡り満ちていく。
すべての感覚が研ぎ澄まされて、まるで周りのすべてがゆっくりと動いているようだ。
グラオーザが呪文の描かれた紙をいくつも手に持って、クラリスからあふれ出る魔力を必死にかき集めているのが見えた。
口の動きから「魔力がもったいない」と何度もくり返しているのがわかる。
(グラオーザ……!!)
爪の先、髪の先まで魔力が行き渡るのを感じてクラリスが手足に力を込めると、手足を拘束していた魔法が弾けとんだ。
クラリスはゆっくりと起き上がり、落ちた毛布を拾って身体に巻きつける。
「な……!!」
グラオーザはクラリスが起き上がったことにあわてて、また拘束の魔法をかけてこようとするがクラリスはそれをすぐさま消していく。
クラリスのひとにらみでグラオーザの魔法はパチパチと弾けとんでいた。
(ん……うっとうしいな)
魔法を見ればクラリスは自分がどうすれば良いのかすぐにわかった。
グラオーザが魔法をかけてこようとするたび、クラリスはすぐにはそれを解析してあふれ出る魔力を使って消していく。
「まさか君も『解析』の力を……?」
グラオーザが大きく目を開き驚いた顔でクラリスを見たあと、すぐに何かに気づいたように叫ぶ。
「あーもう、発情魔法はどうしたの!?」
クラリスが目線を下げて自分のお腹を見ると、魔力がお腹の紋様に集まり今にも魔法が発動しようとしていた。
お腹の奥がジンジンと熱を持ちはじめ、このままではクラリスは発情してしまうだろう。
クラリスがら目を凝らすと、お腹の紋様はいくつもの複雑な呪文が嫌らしく絡み合っているのが見えた。
(これを作ったのは相当ひねくれた人だな)
クラリスは不快な感覚を跳ね飛ばすように、お腹に力を入れて紋様に向かって一気に魔力を集めた。
するとピンク色から赤黒い光に変わっていた紋様は、さらにその光を増して輝きだす。
狭い部屋中を照らすほど紋様の光りが強まる。
バン!
まるで爆発するかのように激しい光を放ちながら、お腹の紋様がはじけ飛んだ。
クラリスがするりとお腹を撫でると、そこにはもう紋様の跡形もなかった。
「まさかあれを『解析』した!?」
グラオーザが部屋の隅で悲鳴をあげている。
あふれ出した魔力は今や部屋中を満たし、グラオーザの呪文が描かれた紙の束に反応して至る所でバチバチと光を放っている。
「ははっ、素晴らしい!!」
グラオーザはすぐに気を取り直したようで、ギラギラとあやしい光をたたえた目をぐるりと回し、魔力の渦を越えてクラリスに近づこうとする。
しかしクラリスからあふれ出した魔力は川の水のようにグラオーザを押し返しなかなか近づけない。
ジリジリと近づいてきたグラオーザの髪を束ねていた紐がぷつりと切れた。
無造作に伸ばされた長い鈍色の髪が、魔力の波に煽られてうねりだす。
それはまるで夢の中で見た鈍色の手のように見えた。
「やだ! 来ないで!!」
近づいてくるグラオーザの恐ろしい姿に、先ほどまでの恐怖を思い出したクラリスが全力で拒絶する。
するとグラオーザの身体は魔力の波に流されて勢いよく壁に叩きつけられた。
グラオーザの身体はズズッと床に崩れ落ちて、そのまま動かなくなった。
(グラオーザを、やっつけた?)
クラリスは胸に手を当てながら短く息を吐いてなんとか息を整えようとする。
「あっ、拘束……グラオーザを、拘束しなくちゃ」
グラオーザが動けない今のうちに身柄を拘束しなくては。
部屋の中にロープか何かが無いか見回していると、クラリスの胸がドクンと大きくひとつ高鳴って、身体が揺れた。
「え……?」
クラリスの内から、先ほどまでとは比べ物にならないほどの大量の魔力があふれ出す。
「やだ、何これ」
止めようとしても止まらない。
そのまま魔力の勢いはとどまるところを知らず、嵐のように周りのものを巻き込みながらクラリスを中心としてぐるぐると渦を巻き出した。
部屋の窓のガラスは割れ、壁にかかっていたものは剥がれ宙を舞い壁に叩きつけられる。
周りに置かれていたものも宙に巻き上げられ、壁に叩きつけられ次々と壊れていく。
部屋のドアも鈍い音を立ててひしゃげて飛んでいった。
あふれ出る魔力をどうにか抑えたくても抑えられない。
クラリスはこの状態に心当たりがあった。
「魔力暴走……」
尽きることのない泉のように、あとからあとから魔力が湧き出してくる。
(何……これ……?)
バラバラになりそうだった痛みは驚くように引いていき、身体の隅々まで力が巡り満ちていく。
すべての感覚が研ぎ澄まされて、まるで周りのすべてがゆっくりと動いているようだ。
グラオーザが呪文の描かれた紙をいくつも手に持って、クラリスからあふれ出る魔力を必死にかき集めているのが見えた。
口の動きから「魔力がもったいない」と何度もくり返しているのがわかる。
(グラオーザ……!!)
爪の先、髪の先まで魔力が行き渡るのを感じてクラリスが手足に力を込めると、手足を拘束していた魔法が弾けとんだ。
クラリスはゆっくりと起き上がり、落ちた毛布を拾って身体に巻きつける。
「な……!!」
グラオーザはクラリスが起き上がったことにあわてて、また拘束の魔法をかけてこようとするがクラリスはそれをすぐさま消していく。
クラリスのひとにらみでグラオーザの魔法はパチパチと弾けとんでいた。
(ん……うっとうしいな)
魔法を見ればクラリスは自分がどうすれば良いのかすぐにわかった。
グラオーザが魔法をかけてこようとするたび、クラリスはすぐにはそれを解析してあふれ出る魔力を使って消していく。
「まさか君も『解析』の力を……?」
グラオーザが大きく目を開き驚いた顔でクラリスを見たあと、すぐに何かに気づいたように叫ぶ。
「あーもう、発情魔法はどうしたの!?」
クラリスが目線を下げて自分のお腹を見ると、魔力がお腹の紋様に集まり今にも魔法が発動しようとしていた。
お腹の奥がジンジンと熱を持ちはじめ、このままではクラリスは発情してしまうだろう。
クラリスがら目を凝らすと、お腹の紋様はいくつもの複雑な呪文が嫌らしく絡み合っているのが見えた。
(これを作ったのは相当ひねくれた人だな)
クラリスは不快な感覚を跳ね飛ばすように、お腹に力を入れて紋様に向かって一気に魔力を集めた。
するとピンク色から赤黒い光に変わっていた紋様は、さらにその光を増して輝きだす。
狭い部屋中を照らすほど紋様の光りが強まる。
バン!
まるで爆発するかのように激しい光を放ちながら、お腹の紋様がはじけ飛んだ。
クラリスがするりとお腹を撫でると、そこにはもう紋様の跡形もなかった。
「まさかあれを『解析』した!?」
グラオーザが部屋の隅で悲鳴をあげている。
あふれ出した魔力は今や部屋中を満たし、グラオーザの呪文が描かれた紙の束に反応して至る所でバチバチと光を放っている。
「ははっ、素晴らしい!!」
グラオーザはすぐに気を取り直したようで、ギラギラとあやしい光をたたえた目をぐるりと回し、魔力の渦を越えてクラリスに近づこうとする。
しかしクラリスからあふれ出した魔力は川の水のようにグラオーザを押し返しなかなか近づけない。
ジリジリと近づいてきたグラオーザの髪を束ねていた紐がぷつりと切れた。
無造作に伸ばされた長い鈍色の髪が、魔力の波に煽られてうねりだす。
それはまるで夢の中で見た鈍色の手のように見えた。
「やだ! 来ないで!!」
近づいてくるグラオーザの恐ろしい姿に、先ほどまでの恐怖を思い出したクラリスが全力で拒絶する。
するとグラオーザの身体は魔力の波に流されて勢いよく壁に叩きつけられた。
グラオーザの身体はズズッと床に崩れ落ちて、そのまま動かなくなった。
(グラオーザを、やっつけた?)
クラリスは胸に手を当てながら短く息を吐いてなんとか息を整えようとする。
「あっ、拘束……グラオーザを、拘束しなくちゃ」
グラオーザが動けない今のうちに身柄を拘束しなくては。
部屋の中にロープか何かが無いか見回していると、クラリスの胸がドクンと大きくひとつ高鳴って、身体が揺れた。
「え……?」
クラリスの内から、先ほどまでとは比べ物にならないほどの大量の魔力があふれ出す。
「やだ、何これ」
止めようとしても止まらない。
そのまま魔力の勢いはとどまるところを知らず、嵐のように周りのものを巻き込みながらクラリスを中心としてぐるぐると渦を巻き出した。
部屋の窓のガラスは割れ、壁にかかっていたものは剥がれ宙を舞い壁に叩きつけられる。
周りに置かれていたものも宙に巻き上げられ、壁に叩きつけられ次々と壊れていく。
部屋のドアも鈍い音を立ててひしゃげて飛んでいった。
あふれ出る魔力をどうにか抑えたくても抑えられない。
クラリスはこの状態に心当たりがあった。
「魔力暴走……」
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