SIX RULES

黒陽 光

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第四条:深追いはしない。

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「っ!?」
 ウォードッグの両手の中、トーラス・レイジングブルから吹き出す強烈な火花――というより、火柱。それとともに両手から二発同時に撃ち放たれた.44マグナム弾は、片方は適当なベンチを思い切り砕き、そしてもう片方がハリーの隠れる柱を思い切り抉り飛ばした。
 至近に命中した着弾音にハリーが驚き、降り注ぐ破片が頬を掠める。久々に直で目の当たりにした.44マグナム弾の強烈な威力に触発され、ハリーはベレッタの銃把を強く握り締める。
 動き回るしかない。でなければ、一方的にやられるだけだ――――!
 意を決し、ハリーはその柱の陰から飛び出した。
「うおおぉぉっ!!」
 両手のベレッタをブッ放しながら、大きく円を描くようにしてウォードッグとの距離を詰めていく。
「ヒャハッ」
 すると、ウォードッグも後ろへ走りながら何発もレイジングブルをブッ放す。ハリーの近くでまたベンチが砕け、床材が抉れ飛ぶ。しかしハリーはそれに構わずしてベレッタを撃ちまくりながら走り込み、そしてスライディングをカマすようにして適当なベンチの陰に飛び込もうとする。
 床の上を背中と尻で滑りながら、ハリーが尚も両手のベレッタを撃ちまくった。滅茶苦茶な射撃だったが、しかし撃ち放った何発もの9mmパラベラム弾の内一発が、幸運にもウォードッグが左手で握る方のレイジングブル、その側面を捉えた。
「ッ!」
 側面から9mmパラベラム弾に食い込まれたレイジングブルは運良く暴発こそしなかったものの、しかしトリガー・メカニズムの一部を破壊されてしまい動かなくなる。
「へヘッ、やっぱすげェよ、アンタ」
 即座に使いものにならないと判断したウォードッグは左手のレイジングブルを投げ捨て、残った右手側の一本だけで戦闘を続行する。
「そりゃあどうも、恐悦至極ってな……!」
 と、その頃になればハリーもベンチの陰に辿り着いていて。スライドを後退させ切ったままホールド・オープンし弾切れを告げる二挺のベレッタを投げ捨てれば、背中に背負っていたベネリM4自動ショットガンを満を持して引っ張り出す。
 装填状況を確認し、伸縮式の銃床をガッと伸ばす。ハリーがインプレッサに積んでいたベネリM4は軍用規格で七発装填のチューブ式弾倉で、薬室内にも一発装填済み。そしてボルトの下、本来なら弾倉から送り出された次弾をボルト前へと押し上げる為のシェルラッチ部分にも予めショットシェルを装填しておく"ゴースト・ロード"と呼ばれる裏技的なテクニックも使っているから、実質的にこのベネリM4には九発が収まっていることになる。
 そんなベネリM4を肩付けで構えながらハリーは隠れていたベンチの陰から身を乗り出し、ウォードッグの巨体を一目見るなり奴に向けて12ゲージ散弾をブッ放した。
「うおッ」
 そうすれば、流石にウォードッグもショットガン相手ではヤバいと察し、咄嗟に身を引く。何発も連続して撃ち放たれた散弾の豪雨が降り注ぐものの、優れた判断ですぐさま投げ出すように身を伏せたウォードッグに当たることは無い。
「チッ……!」
 その後も何度かチャンスを狙っては散弾で屠らんとハリーは撃ちまくるが、しかし遂に九発のショットシェルが尽きてしまう。
 舌打ちをしながら隠れつつ、左手でロングコートのポケットからショットシェルを取り出し装填作業を開始。一発は開いた排莢口からスラッグ(一粒)弾を放り込んで薬室を閉鎖し、残りはベネリM4の下側からラッチを押し上げつつチューブ弾倉に差し込んでいく。
 シャコン、シャコンと妙に気味の良い音を立てるショットシェルをハリーが手早く装填している間、ウォードッグもまた同じようにレイジングブルへ新しい.44マグナム弾を六発、再装填していた。
「ウォードッグ!」
「ヒャアッ!!」
 そして、互いにほぼ同じタイミングで再装填を終えれば、全く同じタイミングで互いに飛び出す。ハリーとウォードッグ、叫びながら睨み合いながら、二人はそれぞれの標的へ向け互いの銃の引鉄を引き絞った――――。
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