幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光

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第一章『戦う少年少女たちの儚き青春』

Int.40:譲れぬ男の一線、相対するは紅蓮の乙女②

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「代表、決定戦……?」
 困惑した顔で一真が反芻すれば、西條は口から離した煙草片手に「ああ」と不敵な笑みを浮かべながら頷いた。
「文字通り、A組の代表争いってとこだ。来週の土曜、私が上手い具合に嵐山演習場の使用許可を確保しといてやる。ここでギャーギャー騒ぐよりか、実際に一発タイマン勝負やって白黒付けてしまった方が早い。だろ?」
「……確かに、教官の仰ることも一理あるわね」
 その頃になるとあれだけ熱っぽかったステラも平静さを取り戻していて、顎に手を当て悩むようにしながら、しかし西條と同じように不敵な笑みを浮かべながら頷いている。
 ――――言って聞かぬなら、実力で叩き潰してしまえばいい。
 西條もステラも、思うことは同じようだった。百の言葉より一の剣戟。武士もののふたる者同士の間に言葉などという無粋なものは必要無く、ただ己が剣に魂を乗せぶつけ合うことこそ、最も互いを理解し合える方法だと、不敵な顔を浮かべる西條の双眸が暗黙の内に物語っている。
 ――――ガタガタ抜かす暇があったら、一丁やってみせろ。
 無言の内に西條にそう言われているような、一真はそんな気がした。だからか、自然と一真も笑みを零してしまう。
 ――――やってやろうじゃねえか。
 相手が元アグレッサー部隊のエリートだろうが、トップ・ガンも夢じゃないと目される腕利きだろうが、関係ない。そんなことは・・・・・・知ったことか・・・・・・
「で? カズマ、やるの? それとも大人しく、私に詫びでも入れてくれるのかしら?」
 ふふん、なんて笑いながらステラにそんなことを言われてしまえば、一真とて引き下がれなくなる。
(ここで引き下がるなんざ、男じゃねえ)
 不利だろうがなんだろうが、構いやしない。向こうが喧嘩を吹っ掛けてくるなら、それを買い叩いてやるだけだ――――!!
「当然。やってやろうじゃあないの」
「……フッ、決まりだな」
 まるで分かっていたように小さく笑うと、西條はニヤニヤとした顔を浮かべながら頷く。
「愚かね、実に愚かだわ。そうね……アタシが勝ったら、キッチリ詫びでも入れて貰おうかしら。教官、ジャパンには確か、セップクっていう風習があるんでしたっけ?」
 さもそれが当然のように問うステラだったが、西條は呆れたようにはぁ、と溜息をつくと、
「……ステラ、いつの時代の話だ?」
 と、少し遠回しに彼女のそれを否定した。
「あら、アタシの勘違い? ――――まあいいわ。とにかく! キッチリと詫び入れて貰うから、精々首でも洗ってなさい。その上でカズマ、アンタをアタシの小間使いにでもしてやるんだから」
 それに一真は「ふっ」と小さく笑ってみせれば、「じゃあ」とステラの方を見返し、
「俺が勝ったら、なんでも言うことを聞かせてやる」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、一真はステラに向けてそう言い放った。
 殆ど脅しのつもりだった。これで萎縮して退いてくれれば別にそれはそれでいいと。面倒が減って助かると。
 しかしステラは「ふふん」とやはり鼻を鳴らすと、
「いいわ、その条件呑んであげる。私がアンタ程度に負けるだなんて、万に一つもあり得ないもの」
 意外なほどあっさりと、一秒たりとも逡巡せずに即答してしまった。
 これもステラの溢れる自信故のことだろうか。高圧的な顔でこちらをじっと見下すような視線を向けてくるステラの双眸に、確かに不安やそういった色は何処にも見えない。ただあるのは、圧倒的にして絶対的な己への自信の色のみだ。
「相談は終わりか?」
 何処からか取り出した自前の携帯灰皿に短くなったマールボロ・ライトの吸い殻を放り込みながら、西條が言う。一真とステラ、二人がほぼ同時に頷くのを見ると西條はニヤッとし、
「なら、話はこれで終わりだ。場所の方は私がなんとか都合を付けさせてやる。それまでこの勝負、お預けだ」
 と言って話を締め括れば、丁度良い具合にHRホームルームの終了を告げるチャイムの音が校舎に鳴り響いた。
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