幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光

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第五章『ブルー・オン・ブルー/若き戦士たちの挽歌』

Int.83:ブルー・オン・ブルー/氷鉄の蒼と純白の騎士、燃え滾るは烈火の憤怒

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「うおおぉぉぉ――――っ!!」
 爆発した≪叢雲≫の上半身から湧き上がる火柱を背に、一真は、そして純白の≪閃電≫・タイプFは湧き上がる猛烈な怒りに身を任せながら、飛び回り逃げ回る蒼い≪飛焔≫へと肉薄を図っていた。
「やりやがった……! やりやがったな、テメェェッ!!」
 鬼の形相で、爆炎燃ゆる闇夜の中に真っ赤な双眸を唸らせながら、≪閃電≫が≪飛焔≫の対艦刀と斬り結ぶ。"ヴァリアブル・ブラスト"を使って急接近した≪閃電≫の双眸が残した赤い光跡は、まるで血の涙のようにいつまでも夜闇の中に残っていた。
『これは戦い、生命いのち生命いのちのやり取りですからね……!!』
 マスター・エイジもそれに応じ、離れてはまた斬り結び、斬り結んではまた離れ。何撃も何撃も≪閃電≫と互いの刃を交錯させ合い、そして鍔迫り合いにまで持ち込んでくる。
『その最中さなかで、私は一人を仕留めた! 貴方たちは一人を喪った! たかが、それだけのことでしょうに!』
「たかが、だと……!? ふざけたこと、これ以上俺の前で抜かしやがるなァァァァッ!!!」
 ほくそ笑むマスター・エイジの叫び声に触発され、一真は次々と湧き上がる怒りの烈火に身を任せ。その身を相棒の≪閃電≫・タイプFと共にそんな怒りの烈火に預けたまま、暴風の如き斬撃の応酬を≪飛焔≫と繰り返す。
 袈裟掛け、逆袈裟、横一文字、縦一文字に刺突。それを互いに防ぎつつ、肘鉄に掌底、膝打ちに足払いといった小技のやり取りも繰り返す。
 一真と≪閃電≫・タイプF、そしてマスター・エイジと≪飛焔≫。互いに一歩も引かぬ勢いで繰り広げられるその応酬は、最早他者の介入を一切許さぬほどの勢いで。故に霧香もステラも、≪飛焔≫の傍で手をこまねき、ただそれを見ていることしか出来なかった。
「――――ステラ! お前は白井の所に行けッ!」
 そんな応酬の最中、対艦刀を振るいながらで一真が叫ぶ。
『でも、アンタだけじゃあ……!』
「霧香だって居る! ……それより、白井をこれ以上放っておくんじゃねェッ!! 今の野郎は、本気で何をしでかすか分かったもんじゃねえ!」
 渋るステラに、剣戟の最中故の凄まじい剣幕で一真がそうやって捲し立てれば。するとステラも納得したらしく『……分かったわ』と頷くと、FSA-15Eストライク・ヴァンガードのスラスタを吹かしその場を離脱していく。
『…………カズマ!』
「なんだ!?」
『必ず、ソイツの首を持って帰ってきなさい!』
 去り際にそんなことを言われてしまえば、一真も必死の形相ながら、その中でもニッと不敵な笑みを形作るしかなく。
「……あたぼうよ!」
 そう、自信ありげに頷いてみせた。
『ヒトの心配をしている余裕が、あるとでもお思いか!?』
「ああ、あるね! テメェ程度の三下なんざ、俺の相手にもならねえっ!!」
『ふっ、ふふふっ……』
 一真が言った言葉の、何がおかしかったのか。マスター・エイジは唐突に一真機から一歩下がって間合いを取ると、至極おかしそうに笑い始めてしまう。
『三下……。この私を、三下呼ばわりですか……。くくくっ……』
「ああそうだ、テメェは三下だよ。テメェはこの俺が――――弥勒寺一真が、確実に引導を渡してやらァ」
『カズマ……?』
 すると、マスター・エイジは一真の名の何処が引っ掛かったのか、一瞬だけ不思議そうな声を上げていた。
『カズマ、カズマ……。ああ、納得しました。そうですか、貴方が少佐の……』
 ともすれば、マスター・エイジは勝手に理解し、独りでうんうんと頷きながら独り言を呟き始める。
「あァ!? 俺が何だってんだよ、ハッキリ言いやがれこの野郎ッ!」
『いえいえ、敢えて私が申し上げることでもありませんから』
 マスター・エイジの語気が癪に障った一真が荒い口調で脅すように言うが、しかしマスター・エイジは以前のような飄々とした口調に戻り。そうすればまたもう一歩を後ろに下がり、≪飛焔≫に対艦刀を構え直させた。
『では、改めて参りましょうか。カズマ、弥勒寺一真よ。改めて名乗らせて頂きますと、私の名はマスター・エイジ。本名ではありませんが、以後お見知り置きを』
「本名じゃない? 結構結構、墓石に刻むにゃその程度で十分だ。テメェの墓に刻むにゃ、偽名ぐらいが丁度良い」
 そうすると、一真もまた≪閃電≫・タイプFに対艦刀を構え直させ。右肩に担ぐ格好をしてみせれば、伸ばした左腕のマニピュレータ、掌を上に向けたその指先をちょいちょいと動かし、手招きするような仕草を取ってやる。まるで、"掛かってこい"と言わんばかりに。
『……一真、気を付けて。相手、かなりの手練れだから…………』
 ともすれば、そんな純白の≪閃電≫の背後に移動し、まるで従者のように寄り添う≪新月≫から、そんな霧香の小声が飛んでくる。それに一真は「分かってるよ」と答えると、
「相手に取るなら、手練れぐらいが丁度良いさね……!」
 そう言いながら、瞳の中で更なる闘志の炎を燃やしていた。
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