311 / 430
第五章『ブルー・オン・ブルー/若き戦士たちの挽歌』
Int.83:ブルー・オン・ブルー/氷鉄の蒼と純白の騎士、燃え滾るは烈火の憤怒
しおりを挟む
「うおおぉぉぉ――――っ!!」
爆発した≪叢雲≫の上半身から湧き上がる火柱を背に、一真は、そして純白の≪閃電≫・タイプFは湧き上がる猛烈な怒りに身を任せながら、飛び回り逃げ回る蒼い≪飛焔≫へと肉薄を図っていた。
「やりやがった……! やりやがったな、テメェェッ!!」
鬼の形相で、爆炎燃ゆる闇夜の中に真っ赤な双眸を唸らせながら、≪閃電≫が≪飛焔≫の対艦刀と斬り結ぶ。"ヴァリアブル・ブラスト"を使って急接近した≪閃電≫の双眸が残した赤い光跡は、まるで血の涙のようにいつまでも夜闇の中に残っていた。
『これは戦い、生命と生命のやり取りですからね……!!』
マスター・エイジもそれに応じ、離れてはまた斬り結び、斬り結んではまた離れ。何撃も何撃も≪閃電≫と互いの刃を交錯させ合い、そして鍔迫り合いにまで持ち込んでくる。
『その最中で、私は一人を仕留めた! 貴方たちは一人を喪った! たかが、それだけのことでしょうに!』
「たかが、だと……!? ふざけたこと、これ以上俺の前で抜かしやがるなァァァァッ!!!」
ほくそ笑むマスター・エイジの叫び声に触発され、一真は次々と湧き上がる怒りの烈火に身を任せ。その身を相棒の≪閃電≫・タイプFと共にそんな怒りの烈火に預けたまま、暴風の如き斬撃の応酬を≪飛焔≫と繰り返す。
袈裟掛け、逆袈裟、横一文字、縦一文字に刺突。それを互いに防ぎつつ、肘鉄に掌底、膝打ちに足払いといった小技のやり取りも繰り返す。
一真と≪閃電≫・タイプF、そしてマスター・エイジと≪飛焔≫。互いに一歩も引かぬ勢いで繰り広げられるその応酬は、最早他者の介入を一切許さぬほどの勢いで。故に霧香もステラも、≪飛焔≫の傍で手をこまねき、ただそれを見ていることしか出来なかった。
「――――ステラ! お前は白井の所に行けッ!」
そんな応酬の最中、対艦刀を振るいながらで一真が叫ぶ。
『でも、アンタだけじゃあ……!』
「霧香だって居る! ……それより、白井をこれ以上放っておくんじゃねェッ!! 今の野郎は、本気で何をしでかすか分かったもんじゃねえ!」
渋るステラに、剣戟の最中故の凄まじい剣幕で一真がそうやって捲し立てれば。するとステラも納得したらしく『……分かったわ』と頷くと、FSA-15Eのスラスタを吹かしその場を離脱していく。
『…………カズマ!』
「なんだ!?」
『必ず、ソイツの首を持って帰ってきなさい!』
去り際にそんなことを言われてしまえば、一真も必死の形相ながら、その中でもニッと不敵な笑みを形作るしかなく。
「……あたぼうよ!」
そう、自信ありげに頷いてみせた。
『ヒトの心配をしている余裕が、あるとでもお思いか!?』
「ああ、あるね! テメェ程度の三下なんざ、俺の相手にもならねえっ!!」
『ふっ、ふふふっ……』
一真が言った言葉の、何がおかしかったのか。マスター・エイジは唐突に一真機から一歩下がって間合いを取ると、至極おかしそうに笑い始めてしまう。
『三下……。この私を、三下呼ばわりですか……。くくくっ……』
「ああそうだ、テメェは三下だよ。テメェはこの俺が――――弥勒寺一真が、確実に引導を渡してやらァ」
『カズマ……?』
すると、マスター・エイジは一真の名の何処が引っ掛かったのか、一瞬だけ不思議そうな声を上げていた。
『カズマ、カズマ……。ああ、納得しました。そうですか、貴方が少佐の……』
ともすれば、マスター・エイジは勝手に理解し、独りでうんうんと頷きながら独り言を呟き始める。
「あァ!? 俺が何だってんだよ、ハッキリ言いやがれこの野郎ッ!」
『いえいえ、敢えて私が申し上げることでもありませんから』
マスター・エイジの語気が癪に障った一真が荒い口調で脅すように言うが、しかしマスター・エイジは以前のような飄々とした口調に戻り。そうすればまたもう一歩を後ろに下がり、≪飛焔≫に対艦刀を構え直させた。
『では、改めて参りましょうか。カズマ、弥勒寺一真よ。改めて名乗らせて頂きますと、私の名はマスター・エイジ。本名ではありませんが、以後お見知り置きを』
「本名じゃない? 結構結構、墓石に刻むにゃその程度で十分だ。テメェの墓に刻むにゃ、偽名ぐらいが丁度良い」
そうすると、一真もまた≪閃電≫・タイプFに対艦刀を構え直させ。右肩に担ぐ格好をしてみせれば、伸ばした左腕のマニピュレータ、掌を上に向けたその指先をちょいちょいと動かし、手招きするような仕草を取ってやる。まるで、"掛かってこい"と言わんばかりに。
『……一真、気を付けて。相手、かなりの手練れだから…………』
ともすれば、そんな純白の≪閃電≫の背後に移動し、まるで従者のように寄り添う≪新月≫から、そんな霧香の小声が飛んでくる。それに一真は「分かってるよ」と答えると、
「相手に取るなら、手練れぐらいが丁度良いさね……!」
そう言いながら、瞳の中で更なる闘志の炎を燃やしていた。
爆発した≪叢雲≫の上半身から湧き上がる火柱を背に、一真は、そして純白の≪閃電≫・タイプFは湧き上がる猛烈な怒りに身を任せながら、飛び回り逃げ回る蒼い≪飛焔≫へと肉薄を図っていた。
「やりやがった……! やりやがったな、テメェェッ!!」
鬼の形相で、爆炎燃ゆる闇夜の中に真っ赤な双眸を唸らせながら、≪閃電≫が≪飛焔≫の対艦刀と斬り結ぶ。"ヴァリアブル・ブラスト"を使って急接近した≪閃電≫の双眸が残した赤い光跡は、まるで血の涙のようにいつまでも夜闇の中に残っていた。
『これは戦い、生命と生命のやり取りですからね……!!』
マスター・エイジもそれに応じ、離れてはまた斬り結び、斬り結んではまた離れ。何撃も何撃も≪閃電≫と互いの刃を交錯させ合い、そして鍔迫り合いにまで持ち込んでくる。
『その最中で、私は一人を仕留めた! 貴方たちは一人を喪った! たかが、それだけのことでしょうに!』
「たかが、だと……!? ふざけたこと、これ以上俺の前で抜かしやがるなァァァァッ!!!」
ほくそ笑むマスター・エイジの叫び声に触発され、一真は次々と湧き上がる怒りの烈火に身を任せ。その身を相棒の≪閃電≫・タイプFと共にそんな怒りの烈火に預けたまま、暴風の如き斬撃の応酬を≪飛焔≫と繰り返す。
袈裟掛け、逆袈裟、横一文字、縦一文字に刺突。それを互いに防ぎつつ、肘鉄に掌底、膝打ちに足払いといった小技のやり取りも繰り返す。
一真と≪閃電≫・タイプF、そしてマスター・エイジと≪飛焔≫。互いに一歩も引かぬ勢いで繰り広げられるその応酬は、最早他者の介入を一切許さぬほどの勢いで。故に霧香もステラも、≪飛焔≫の傍で手をこまねき、ただそれを見ていることしか出来なかった。
「――――ステラ! お前は白井の所に行けッ!」
そんな応酬の最中、対艦刀を振るいながらで一真が叫ぶ。
『でも、アンタだけじゃあ……!』
「霧香だって居る! ……それより、白井をこれ以上放っておくんじゃねェッ!! 今の野郎は、本気で何をしでかすか分かったもんじゃねえ!」
渋るステラに、剣戟の最中故の凄まじい剣幕で一真がそうやって捲し立てれば。するとステラも納得したらしく『……分かったわ』と頷くと、FSA-15Eのスラスタを吹かしその場を離脱していく。
『…………カズマ!』
「なんだ!?」
『必ず、ソイツの首を持って帰ってきなさい!』
去り際にそんなことを言われてしまえば、一真も必死の形相ながら、その中でもニッと不敵な笑みを形作るしかなく。
「……あたぼうよ!」
そう、自信ありげに頷いてみせた。
『ヒトの心配をしている余裕が、あるとでもお思いか!?』
「ああ、あるね! テメェ程度の三下なんざ、俺の相手にもならねえっ!!」
『ふっ、ふふふっ……』
一真が言った言葉の、何がおかしかったのか。マスター・エイジは唐突に一真機から一歩下がって間合いを取ると、至極おかしそうに笑い始めてしまう。
『三下……。この私を、三下呼ばわりですか……。くくくっ……』
「ああそうだ、テメェは三下だよ。テメェはこの俺が――――弥勒寺一真が、確実に引導を渡してやらァ」
『カズマ……?』
すると、マスター・エイジは一真の名の何処が引っ掛かったのか、一瞬だけ不思議そうな声を上げていた。
『カズマ、カズマ……。ああ、納得しました。そうですか、貴方が少佐の……』
ともすれば、マスター・エイジは勝手に理解し、独りでうんうんと頷きながら独り言を呟き始める。
「あァ!? 俺が何だってんだよ、ハッキリ言いやがれこの野郎ッ!」
『いえいえ、敢えて私が申し上げることでもありませんから』
マスター・エイジの語気が癪に障った一真が荒い口調で脅すように言うが、しかしマスター・エイジは以前のような飄々とした口調に戻り。そうすればまたもう一歩を後ろに下がり、≪飛焔≫に対艦刀を構え直させた。
『では、改めて参りましょうか。カズマ、弥勒寺一真よ。改めて名乗らせて頂きますと、私の名はマスター・エイジ。本名ではありませんが、以後お見知り置きを』
「本名じゃない? 結構結構、墓石に刻むにゃその程度で十分だ。テメェの墓に刻むにゃ、偽名ぐらいが丁度良い」
そうすると、一真もまた≪閃電≫・タイプFに対艦刀を構え直させ。右肩に担ぐ格好をしてみせれば、伸ばした左腕のマニピュレータ、掌を上に向けたその指先をちょいちょいと動かし、手招きするような仕草を取ってやる。まるで、"掛かってこい"と言わんばかりに。
『……一真、気を付けて。相手、かなりの手練れだから…………』
ともすれば、そんな純白の≪閃電≫の背後に移動し、まるで従者のように寄り添う≪新月≫から、そんな霧香の小声が飛んでくる。それに一真は「分かってるよ」と答えると、
「相手に取るなら、手練れぐらいが丁度良いさね……!」
そう言いながら、瞳の中で更なる闘志の炎を燃やしていた。
0
あなたにおすすめの小説
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
世にも奇妙な世界 弥勒の世
蔵屋
キャラ文芸
私は、日本神道の家に生まれ、長年、神さまの教えに触れ、神さまとともに生きてきました。するとどうでしょう。神さまのことがよくわかるようになりました。また、私の家は、真言密教を信仰する家でもありました。しかし、私は日月神示の教えに出会い、私の日本神道と仏教についての考え方は一変しました。何故なら、日月神示の教えこそが、私達人類が暮らしている大宇宙の真理であると隠ししたからです。そして、出口なおという人物の『お筆先』、出口王仁三郎の『霊界物語』、岡田茂吉の『御神書(六冊)』、『旧約聖書』、『新訳聖書』、『イエス・キリストの福音書(四冊)』、『法華経』などを学問として、研究し早いもので、もう26年になります。だからこそ、この『奇妙な世界 弥勒の世』という小説を執筆中することが出来るのです。
私が執筆した小説は、思想と言論の自由に基づいています。また、特定の人物、団体、機関を否定し、批判し、攻撃するものではありません。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる