蒼空のイーグレット

黒陽 光

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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて

第八章:This moment, we own it./09

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 戻ってきた翔一たちと宗悟らが再合流した後、四人はそのまま水族館の近場に併設されている、大きなショッピングモールへと入っていった。
 現時刻は、丁度午後一時半ぐらい。予想以上に広かったから、水族館に長居しすぎたかと思っていたのだが、どうやらそうでもなかったらしい。昼飯時の正午はとうに過ぎてしまっているが、却ってこれぐらいの方が腹の空き具合も丁度良いかもしれない。
 とにもかくにも、腹が減っては戦が出来ぬ――――ということで、四人はそのショッピングモールの中で昼食を摂ることにした。というか、此処に来た目的自体が昼食を摂る為だったりする。
 そうして無事に昼食を摂り終えれば、ショッピングモールを後にして。そうして四人が向かった先は――――当然、水族館の裏手にある遊園地だ。
 噂に聞いていた通り、遊園地そのものはあまり大きくない。あくまで水族館のオマケ程度といった感じだ。とはいえ立派な観覧車やある程度のアトラクションもあり、決してチャチな遊園地というワケではない。あくまで敷地が狭いだけという感じだ。
 で、どうやらこの遊園地は入場そのものには特に料金も掛からないらしい。アトラクションごとに料金が発生する仕組み、と言えば分かりやすいか。
 そんな遊園地に入っていった翔一たち四人だったのだが…………彼らの楽しみ具合といったら、こんな感じに騒々しいものだった。


 ――――まず最初に入ったのは、お化け屋敷だった。
 遊園地に入って一発目がお化け屋敷というのも色んな意味でどうかと思うが、その辺りは宗悟が主犯というか言い出しっぺだ。彼の独特な勢いのある口車にまんまと乗せられてしまう形で……アリサ・翔一組を先頭に、宗悟・ミレーヌ組が後に続くといった形で、四人はお化け屋敷の暗闇へと踏み出していったのだが――――。
「うわあ、思ったより真っ暗ね……翔一、大丈夫?」
「…………だっ、だだだだ、大丈夫……じゃない」
「なんでアンタが怖がってんのよ……こういう時、普通逆でしょうに」
「ここここ、怖いものは仕方ないだろ……!? へ、変に作り物の方が怖いんだよ、こういうのって……!!」
「はいはい……。何でも良いから、怖いならアタシの方寄りなさいな」
「ぜ、全力でお言葉に甘えさせて貰う……!」
「ぴゃっ!? ちょっ、いきなり抱きつかないでよ!? ったく……アンタって頼りになるんだか、子供なんだか…………」
 先を行く翔一とアリサといえば、こんな感じだ。
 完全に翔一が怖がりまくっている。彼がここまで怖がっている理由は……まあ、今まさに彼自身が説明した通りなのだが。何も起きない段階からあんまりにも翔一が怖がっているものだから、流石にアリサも見かねたようで。プルプルと子犬のように震える隣の彼を手招きして、自分の方に引き寄せてやったりなんかしていた。
 とすれば翔一は彼女に近づくどころか、完全に抱きつくような形でアリサに縋り付く。それにアリサは最初こそ驚き、顔を赤くして面食らいつつも……しかし、抱きついてきた翔一の様子があんまりにも子供っぽくて。完全に怯えきった赤子のような調子の彼を見れば、アリサはやれやれと大きく肩を竦めるしかなくなる。
 そんな風に、アリサの反応は表面上こそ呆れた調子だったが――――しかし内心は満更でもないというか、寧ろ翔一に抱きつかれた彼女の方が落ち着いているぐらいだった。
 普段からそうなのだが、こうして彼と触れ合っていると……奇妙なまでの安心感を感じてしまう。まして今は抱きついてくる彼の様子が完全に子供みたいなものだから、尚更のことだ。加えて――――今の翔一を見ていると、特に庇護欲のようなものを掻き立てられてしまう。
 普通にありがちな展開を考えてみれば、今の二人は完全に立場が男女逆だ。とはいえ……これはこれで悪くないと、少なくともアリサの側はそう思っていた。
 ――――まあ、そう思う余裕があったのもそこまでなのだが。
「うらめしや……裏の飯屋…………」
「ん? あ――――ひぎゃああああああっ!?」
 ちょっと奥に進んだところで、彼女は背中から突然幽霊みたいな……まあ当然作り物なのだが。とにかく仕掛けに驚かされてしまって。とすればアリサはびっくりしすぎたせいか、傍らに翔一を抱えたままバッとその場から大きく飛び退き……叫びながら、殆ど条件反射的な動きで右手をジャケットの懐に突っ込む。
 黒いジャケットの下に吊っていたのは、いつもの革製ショルダーホルスター。とすれば、そこから出てくるのは当然――――あの大口径の大型リヴォルヴァー拳銃、コルト・アナコンダだ。
「わっ! わっ! ほあああああっ!!」
「まままま、待てアリサ! 待って、待って! 流石に! 流石に撃つのはマズい!」
「ぴゃあああああああ!!」
「アリサ! ああああアリサ! 僕を! 僕を置いていくのは勘弁してくれっ!!」
 バッと抜いたリヴォルヴァー拳銃、コルト・アナコンダ。ギラリとステンレスが銀色に鈍く光る、長大な六インチの銃身を振り回し……殆ど反射的な動きで撃鉄を起こしたアリサが、驚かしていた幽霊のような仕掛けに強力な四四マグナム弾をブチ込もうとするのを、全力で怖がりながらもどうにか翔一が止める。
 そうして、どうにかこうにか銃を収めたアリサはそのまま早足で、逃げるように奥に行ってしまうから……プルプルと震えながら、翔一が彼女の背中を追って駆け出していく。
 結局、二人ともこんな風に全力でビビっている有様だ。アリサがギリギリのところで理性を働かせ、銃を収めてくれたのは本当に良かった。この閉所で超強力な四四マグナムをブッ放すのは……実害的な部分を抜きに考えても、色々な意味でヤバい。
 とまあ、アリサたちはこんな感じで……ある意味このお化け屋敷を真っ当に、全力で楽しんでいたのだが。対照的に宗悟・ミレーヌ組といえば…………。
「おおう、スゲえなこれ。どんな仕組みなんだろ。なあミレーヌ?」
「人感センサーみたいなモノじゃあないかな。それより見てよ宗悟、あの血だらけになった板はなんだい?」
「ん? ……ああ、アレは障子っつってな。横開きの……まあ、昔ながらな日本式のドアって言うのが一番ミレーヌには分かりやすいか」
「へえ、初めて見たよ」
「アレさ、格子になってる部分……あの血だらけになってる真っ白いトコ、和紙っつー日本の薄っぺらい紙なんだけどよ。アレをパーンと指で突き破るのが楽しいんだわこれが。昔さ、夏休みにばあちゃん家に行った時なんか、よく障子パンパン突きまくる悪戯こいて、こっぴどく怒られたっけなあ」
「ふふっ、宗悟の楽しい思い出って奴だね」
 …………こんな感じに、物凄く平気そうな顔で斜め上な感想と会話を交わし合っている始末だ。
 どうやら二人とも、こういうお化け屋敷の類には滅法強いらしい。ミレーヌはまあ、普段の様子から何となく分かる気もするが。しかし宗悟まで耐性があるのは意外だ。まあ……耐性がなければ、自分からお化け屋敷に入ろうなんてハナから言い出したりはしないのだろうが。
 まあとにかく、宗悟たちに関してはこんな具合だ。早足で先に行ってしまったせいで、完全に姿が見えなくなったアリサたちとは対照的も良いところ。ミレーヌたちはこんな風に、ある意味でとてつもなく冒涜的な楽しみ方でゆっくりお化け屋敷を巡った後…………物凄くげっそりした顔のアリサと翔一に出口で出くわすことになるのだが、それはまた別のお話だ。
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