愛老連環の計

青伽

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誤算(呂布攻めR18)

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夜更け、司徒王允おういんはひとり庭の池を眺めていた。
 張温ちょうおんがやられたとなると、儂も危ういか……。
 今日、宮中で営まれた董卓とうたくの催す酒宴の席にて、大臣の張温が処刑された。董卓の養子である呂布りょふが、酒宴中に張温の裏切りを報告しに来たからだ。王允は以前から董卓の暴挙に耐えきれず、張温とは董卓を倒す同志であった。
 死の覚悟はしていたつもりだ。だが処刑された張温の首が盆の乗せられ、宴の中央に置かれ見世物にされた時、一歩間違えれば自分が盆の上にいたのだと、そう考えると王允は震えが止まらなくなっていた。
 今考えると何故呂布は酒の席まできて、張温の事を報告しに来たのだ? 董卓の性格を知っておるであろうに。
 王允は配慮のない呂布に恨みを抱いた。
 その時、後ろの方で女から声をかけられる。
「お義父様」
 養女の貂蝉ちょうせんだ。心配そうに王允の傍へ寄った。
「お義父様。お風邪を召してしまいます」
 貂蝉は王允へ膝掛けを肩に巻いた。
「すまない貂蝉」
「お悩みなら私を使って下さい」
 驚いた王允は貂蝉から目を背けた。
「何を言っておる……?」
「董卓の事でお悩みでしょう? 董卓を討つには将軍である呂布が邪魔だと」
 全て見透かされている。娘には何も伝えてはいない筈だが。
「そのような事を口にするでない。人に聞かれてはお前もただでは済まぬ」
「お義父様には何か策がおありでしょう。どうかこの貂蝉をお使い下さい。
お義父様は市場で売られていた私を娘同然に育ててくれました。このご恩をお返ししたいのです。どうか……」
「そのようなつもりでお前を育てたのではない!!」
 つい王允は声を荒げたが、貂蝉はその場で泣き崩れてしまった。
「どうか……どうか……っ」
 足元に縋る貂蝉に合わせて王允は膝をつき、泣きじゃくる貂蝉の頬を拭った。
 涙を流そうとも美しい貂蝉はこの国一番の娘だろう。王允には確かに策があった。
 それも貂蝉以上の適人はいない策である。
「ああ貂蝉、顔を上げておくれ」
 そう伝えるが貂蝉は聞き耳持たず袖を濡らしていくので、王允は観念し貂蝉を部屋へ入れると策を話し始めた。
「実はお前に呂布と董卓の仲を裂いてもらいたいのだ」
「私が、ですか? やはり私に出来る策がおありなのですね」
 言いづらいが、話すだけ話してしまおう、と王允は考えた。
「勘のいい子だな……儂の考えた策だが、まず呂布を家へ招き貂蝉、お前を嫁に差し出すのだ、
そして呂布には『吉日を選び腰入れさせる』と、そう伝える」
 貂蝉は相槌をいれながら頷く。
「後日董卓を招き、お前を董卓へ献上する」
 貂蝉は驚きながら聞いた。
「そのような事をすれば、呂布の怒りはお義父様へ向きませんこと?」
「そうだ、その通りだ。そこで呂布にはこう伝えるのだ
『貂蝉の嫁入りを知った董卓が、自分が引き合わせると言って連れ帰った』と。
そうすればきっと呂布は納得するだろう」
 貂蝉は「確かに」と相槌を打つ。
「ところが実際は献上されている訳だ。儂は呂布に『董卓に騙された』といい恨みを抱かせればよい! 
あの二人は世に知られるほどの女好き、飛びきりの美女となればきっとうまくいく! 
後は儂が呂布をけしかけ董卓を倒させれば完璧な……美女連環計に……」
 全部話して気まずくなる。貂蝉は不思議そうにしている。
「どうなさったのですか? お義父様」
「いや、お前は何故そう笑顔で聞いておれるのだ。儂がいうのも何だがこれは……お前に負担を強いる策なのだぞ」
 そう王允が問う今も、貂蝉はにこにこと笑顔を絶やさない。
「だってお義父様。お義父様がそんなに生き生きとしたお顔になるのを、私久しぶりに拝見致しましたもの」
 あざけるように貂蝉はクスリと笑った。
「あ……お前は……全く、父をからかうでない」
 王允は顔が熱くなるのを感じたので、咳払いをして誤魔化した。
「これで最後ですもの、許して下さいなお義父様。私お義父様の為なら何度死のうが構いません」
「……聞いてくれるのか? このような願いを」
 ただの空論だったのだ。上手くは行くだろうが、やらせたくはなかった。それに、良い返事がもらえるとも考えていなかった。だが、王允は貂蝉の返事に現実味が増し、心底喜んだ。貂蝉の手を取り、頭を下げた。
「ありがとう貂蝉! ありがとう」
 貂蝉は最後までずっと笑顔だった。

 早速王允は豪華絢爛な冠を作ると、それを呂布へ贈った。呂布から直接挨拶したいと返事が来た為、宴を用意した。いつもと違い上機嫌な呂布が家へ来た。王允は上座を勧める。
 不思議に思った呂布は断った。
「私はただの将です。大臣である貴方様を差し置いて上座など」
 謙遜する呂布へ王允はにこやかに答えた。
「将軍は英雄でございます。私は官位など関係なく、将軍自身を敬っておるのです」
「王允殿が……この私を?」
 呂布はしばらく呆けていたが、理解したのか顔をほころばせる。
「そういうことなら、座らせていただこう」
 上座に座ると呂布は照れたように俯き盃を見つめていた。王允は酒を勧め、呂布の功績を褒め称えた。しかし、あまり酒を飲もうとはしなかった為、更に酔わそうと王允は呂布の元へ寄り、酒を直接注ぎ始めた。
「王允殿に注いで貰えるとは、私は幸せ者だな」
 そろそろと思い、王允は貂蝉を呼んだ。美しく着飾った貂蝉が舞を披露すると呂布は貂蝉に見惚れていた。舞が終わると貂蝉を呼び呂布へ酒を注がせる。
「私の娘、貂蝉です。呂将軍」
「王允殿の娘、か。なんと羨ましい」
 呂布は貂蝉を見つめ、うっとりとしている。
「これ貂蝉、将軍へ酒を注がないか」
「よいのです王允殿。酒は十分に楽しみました」
 そう王允を制すると呂布は貂蝉と話し出す。
「貂蝉というのか。貴方の父はとても素晴らしいお方だ。きっと貂蝉殿も幸せに暮らしてきたのでしょう」
 貂蝉はにこりと笑い返事をした。
「はい。私は父と共にいられて幸せです」
「やはりそうかっ今後とも王允殿に親孝行するのですぞ」
 貂蝉が同意すると、呂布は満足した様子で貂蝉を部屋へ戻るよう伝えた。王允は少々の疑念を抱いたものの、貂蝉を気に入った様子の呂布へ話を進めた。
「そろそろ娘も身を固める年ごろ。そこで将軍がよろしければ貂蝉を呂将軍にと……」
「娘が嫁げば王允殿は独りになるのか」
 普段と印象が違う呂布へ妙に心がざわつく。呂布という男は、残された養父の事まで考える心優しい男だったか? と。
「ご心配には及ばず、貂蝉が嫁ぐ事がこの年寄りの幸せでございます」
 呂布は王允の傍へ寄り、腰に手を掛け引き寄せ自身の肩へもたれさせた。
「それでも、寂しかろう」
 王允は疑問を感じながらも、策に支障はないと判断した。
「……そうですな。確かに今は寂しくなくとも、嫁いだ後はそう感じる事もありましょう。
ですが、貂蝉の幸せを考えるとそれも致し方ありませぬ」
「そうまで想われて娘は幸せ者だな」
 今日はどうした事か。機嫌良く持ち上げたとはいえ、他人に気遣いが出来る男ではないはずだ。
 早めに返事をもらおうと、王允は拍車をかける。
「将軍、もしや貂蝉はお気に召しませぬか」
「そのようなことはない。ただ――」
 言い渋った呂布に、不安がよぎる。
 何か、あるのだ。貂蝉は見た目もさることながら気品もあり、一通りの英才教育をさせてきた。このような策に使うつもりはなかったが、連環計において最適の人材だ。
 その貂蝉との縁談を断るわけでもなく、悩むと言う事は。
「他に好いた女子がおられるのですか」
 呂布の目が少し揺らいだ。王允は連環計の失敗を悟る。
 心に決めた女子がおるのは意外だが、致し方あるまい。
「これは知らぬ事とはいえ、申し訳ありませぬ。先程の話は忘れて下され」
 姿勢を正す為、呂布の身体から離れようとするが呂布はさらに力を込め、王允は抱き寄せられる。
「先程官位など関係なく、私を敬っていると話したのは本心か?」
 返事をしようとするが腕と胸板に強く挟まれ声が出ず、辛うじて「ええ」とだけ答えた。すると呂布は腕の力を緩めたかと思えば、王允へ有無を言わさず接吻した。今まで感じた事のない男の舌に混乱し、王允が暴れると呂布はすぐに王允の身体を解放する。呂布から逃れ這いずり、数歩先で王允は己の失態に気付く。
 待て、儂が……呂布の想い人!?
 呂布は明らかな動揺を見せている。何か言おうと口を開いたので王允は遮った。
「申し訳ございませぬ、急でしたもので……どうかご気分を害されぬよう」
 謝罪を受け戸惑う呂布へ、王允はさらに言葉をかける。
「呂将軍が望むのであれば、儂は……満更でも」
 自分で口に出しておきながら、王允は恥じ入り目を伏せた。
「王允殿っ」
 呂布の大きな声で、怒らせてしまったと思い王允は身体をこわばらせる。呂布は近寄り王允を腕の中におさめた。
「先程はとんだ失礼を致しました」
 本気なのか呂将軍? 冗談でもありえぬ事だ!
 そんな本心を、王允は飲み込んだ。呂布は宝物でも手に入れたかのように王允を抱えて離さない。
「初めて王允殿にお触れしたあの日から私は……」
 王允の頬に呂布の大きな手が触れる。また接吻しようとするので王允は咎めた。
「この場では侍女が様子を見に来てしまいます。別室を用意致しますゆえ、今宵はそちらでお泊りになられませ」
 呂布は王允の手を握り了承したので、王允はその手を離し侍女を呼び部屋の用意を命じた。
 待っている間、王允は呂布が言う「初めて触れた日」を懸命にと思い出そうとしたが、叶わず侍女が支度を済ませたと伝えに来た。

 呂布を客室へ案内する。部屋に入るなり呂布は王允を抱きしめる。
「良い匂いがする」
 香料や化粧も無しに、良い香りがするとは王允には思えなかった。だが体格のいい身体で抱きしめられては抵抗も出来ず、王允は諦め身をゆだねることにした。
「……っ!?」
 首元を舐めずられ、それはやがて成す行為を想像させ、悲鳴をあげそうになるのを必死でこらえた。互いの顔が重なり、呂布は舌を侵入させた。答えようと王允も相手の口内へ舌を伸ばした。呂布の事なので荒々しく求められる物と思っていたが、なぞるように王允の舌へ沿わせている。
 舌を交えている間も、王允は現実を直視できないでいる。
「ふっ……」
 苦しくなると接吻から解放された。
 ……息をするのを、忘れていた。
 呂布に帯を解かれ、着物を羽織ごと脱がされ襦袢だけになる。呂布は寝床の近くにある衣桁へ着物を丁寧に掛けている。
 意外だ、とそう王允は思った。獣のように襲われると考えていたからだ。
 将軍ともあろう方が、このようにいつでも逃げられる状況へ置くとは……。
 王允に迷いが生じる。他に方法はないのか、と。先程から必死に抑えているが、身体は小刻みに震え止まる気配がない。
「将軍」
 王允は迷いを振り切り、呂布の胸元へ擦り寄った。呂布の顔が綻ぶ。今まで聞いた事もないような、穏やかな声で呂布は返事をする。
「王允殿」
 王允は目を見開き動揺する。呂布の優しい姿など想像もつかなかったのだ。
 本当に呂将軍なのか、これが?
 王允が呆気に取られていると口付けられ、寝床に押し倒される。
「明かりを……」
「王允殿、私は男相手は初めてなのだ……暗闇では自信がない」
 本気で言っているとも思えなかったが、王允は従った。
 拒否して機嫌を悪くさせる訳にはいかぬ。
 脇腹を撫でられ、複数の虫が身体の上を這っているようなおぞましさに襲われる。跳ね除けたいが、それも叶わないので王允はこれはただの虫だと思う事にした。身体へ落とされる赤い印も、虫に噛まれているのだと耐え忍ぶ。
「ウッ……」
 胸の突起に吸いつかれるが、声を漏らすと離された。代わりに舌でゆっくりと弄っている。
 このくらい、拷問か何かだと思えばいい。
 そう考えていた所為か、手が下半身にいった瞬間、王允は反射的に足を閉じた。
 違う、足を開けなければ……。
 そんな意思に反して、身体は硬直し足が動かない。呂布が太ももに接吻する。反射的に身体がビクリと動く。言い知れぬ恐怖が王允の自由を奪っていく。
 動いてくれ、このように半端では呂布が愛想を尽かすかもしれぬ。
 一向に緊張の解けぬ自分の身体に焦っていると、呂布は王允の身体をゆっくりと動かしうつ伏せにした。腰を持ち上げられ何か熱く湿ったものが穴に当たる。
「……!?」
 嘗められている事に気付き、王允は信じられず振り向こうとするがよく見えなかった。
「呂将軍っそのような所、口にしてはなりませぬ」
「王允殿は初めてか」
 呂布は指を穴の縁へ沿わせながら解していく。
「ッ……な、に?」
 経験者だと勘繰られていた事に、王允はとてつもなく無礼な態度を取られた気持ちになる。
 策でもなければ、儂がこのような痴態を人に晒すものか。
 怒りに耐え、歯を食いしばっていると、解し終えたのか呂布の指が穴の中へ侵入してくる。
「――ッ!?」
 力強く太い指を挿れられ圧迫感に身体が拒絶しようとするが、耐えた。
「痛くはないか?」
 優しげな呂布の問いかけも、王允にとって不快でしかなかった。痛みもない訳ではなかったが、頭や胸の痛みの方が何倍も痛い。
「はい……お気づかいなく」
 呂布は指を挿れたまま穴の縁を再び嘗め湿らせる。身体が勝手に拒絶し、異物を排除しようとしているのがわかる。覚悟はしていたが、予想以上に呂布を受け入れるのは苦労しそうだ。
「ヴ……」
 腸内を指で捏ね回され、気色悪さと痛みと恥と怒りで自分の感情がわからなくなっていく。
「ッ!? ……ッ」
「王允殿、緊張なさるな。力を緩めて」
 緩めるも何も、身体が言う事を聞かない。緩めようとすれば逆に力が入る。使えない身体だ。
 ……腰を振れば、少しはましになるか?
 不器用に震えながら、左右に腰を振る。呂布の指が奥へと侵入してきたので判断が正しかったという安堵と未知の恐怖が入り混じる。
 突如腸内がビクビクと伸縮運動し始めた。
「ヴぁ……ッ!?」
 異物を排除しようとしていると王允は一瞬思ったが、呂布に指の数を増やされる。
「そう、良い感じだ王允殿」
 優しげに囁かれるが、挿れられる指に躊躇がない。胸元が熱く痛み、若い頃を思い出す。
 そして自分は女と同じ反応をしている、と気づいた。
 これでいい。将軍を喜ばせなければ。
「アッあ……っ」
 王允は休んでいた腰を再び動かし、意識的に指を中へ挿れるように上下にも動かした。
 呂布は二本の指で穴を広げ、舌を挿れる。
「う、ぁ……?!」
 力を意地でも入らぬよう気をつけた。呂布は舌を好きなだけ嘗め回し穴の縁を湿らせると、熱い肉棒をあてがった。様子を見ているのか、挿れようとはしてこない。
 儂が、男娼のようになるのか? この儂が?
 本来なら貂蝉がする予定であったのに。
「王允殿、こちらへ座って」
 呂布に身体をやすやすと起こされ、後ろ向きのまま座る体勢で肉棒の上へ連れて来られる。
 挿れたらよいのか……? 挿れたくない、挿れなければならぬ。
 身体が緊張して強張り動かない。王允が戸惑っていると呂布に引き寄せられ、肉棒を挿れられる。
「あっ、う」
 熱い肉塊が老体の中にねじ込まれる。焼けるような感覚に何かが、自分の中で確かに割れていった。ただ痛みの中に生まれる、ほんの少しの安堵感。
 ちょう、せん……。
「あ、がっ……うっ」
 おまえじゃ、なくて、よかった。
「……苦しくはないか?」
 いつの間にか頬を伝っていた水滴を呂布が指でぬぐった。王允は顔を見上げ、精いっぱい考え返事をした。
「アッうれしい、のです。将軍と、繋がれて」
 答えに満足したのか呂布は腕に軽く力を込め、突き上げた。
「アッぐ――」
 こんな目に遭うのは儂だけで十分だ。
「はあ、ヴッあああ――」
 壊れてゆく。心が、身体がバラバラに砕けてゆく。
 貂蝉、貂蝉、貂蝉。
 儂はお前を守れたか?
「アッああ……」
 痛い、痛い……貂蝉、見ないでおくれ。
 身体は正常な状態へ戻ろうと何度も警告を出すが、王允は逆をゆく。
「あっぐぅ……アッ」
 腰を、振らなければ……女子のように悦ばなければ。
「ッ王允殿」
 感じているような呂布に、王允は安堵する。
「イッ……あっあっ」
 腰を動かす度に痛みは増すが、恥を感じずに済む。
「は、あっあっぐッ」
 呂布が身体の奥まで侵略してくる。
 痛い、痛い、怖い。
「あッりょしょう、ぐ……!」
 ただ時間が過ぎてくれるのを願った。その願いが通じたのか、呂布は限界のようだ。
「王允殿……ッ中に」
「――ッ!?」
 熱が腹の中に放出され、王允は砕けた心の破片が泥のようにべた付いてゆくのを、ただ漠然と認めることしかできなかった。
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