始める気もなかったゲームのガチャの引きが良すぎた

らふれられ

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新たなる世界

新たなる旅立ち

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方天画戟が軽々と、目を見張る速度で幾度も繰り出され続ける。裂帛の気合いと幾筋もの突風。
鎖鎌の刃先でがりがりと受け流し続けられていたのはこのマジックアイテムの効果なのだろうが、擦り傷でももらおうものならそこから全身をバラバラにされかねない勢いだ。
「なかなかにやる」
呂布は笑う。
「この画戟もこの世界に合わせ、魔術加護を幾重にも重ねている。それをこうも捌く。」
イカサマは両方だったか。
或いは…どっちのイカサマの格が上か、か。
「これならどうだ。」
不気味なほどに冷静に、呂布は戟を繰り続ける。
その呂布が…目の前で二つに分かれる?
左右から呂布が戟を放つ。
幻術の類か、或いは…
黄金籠手の右手にキングオブソーズ、左手に鎖鎌。黄金籠手の抜剣速度で辛うじて呂布の突きにギリギリ間に合う程度。
画戟はふたつとも本物だ。鎖鎌側は威力を相殺しきれたものの、右のキングオブソーズは防ぎ切れない!
だが、わたしの足元はびくともしない黒靴の守護があった。留まろうという意志が足元からまるで根でも生えたようにわたしを固定する。
小柄な少女の体を吹き飛ばすつもりでかかって来た呂布に、誤算が生じた。
まるで大地そのものをでも叩きつけたかのような、倒しえぬものへの打撃を放った、放ってしまった感。
その瞬間的な虚無へ、黒靴は滑るように進み、キングオブソーズはその切先を捻じ込ませた。
呂布の首を撥ね飛ばし、わたしはもう一人の呂布へと向き直った。
「やれやれ。一人倒せば良いかと思ったら急に増えやがった。まだ増えるのか?」
「さて…手の内は明さんさ。次はこういうのはどうだ」
呂布の腕が増えた。左右一対増えて、増えた腕は計四本。それぞれの手に方天画戟を握る。
「雑に増やすなぁ!」
思わず笑ってしまったが事態は笑い事では済まされない。滑らかに蠢く呂布の隆々たる腕は、四つの画戟の先端全てをわたしの心臓を穿つ為にコースを見定め動いているのだ。
「終わりにするか」
四つの画戟が迸る!
「耐えきりゃ…勝ちだろッ!」
わたしはそれに呼応するように、吼えた。
同時にわたしの身体を覆う赤い霧。
巨赤龍の加護。浮かび上がるように湧き上がった巨赤龍の鱗の防御力を備えた加護の赤霧は、四つの画戟全てをその厚い防鱗で押さえ込み、それ以上の侵攻を押し留めた。
そしてわたしの手元から、黄金の分銅が稲妻の如くに呂布の眉間へと飛んだ。
「…許褚はさ、小細工なしだったんだ。だから単純な力比べでわたしは簡単に負けた」
「…この俺が曹操の親衛隊長如きに劣ると言うか、小娘ッ…」
「まさか」
わたしは口の端を上げ、笑い、
「色々取り入れて戦おうとした【人中の虎】はすげーよ。すげーけど、応用力勝負ならわたしのほうがもっと凄い、ってゆーか…」
応用力、というか…一撃一撃の重みでは許褚も呂布も当たり前だが良い勝負だった。
だが単純に二分身だの腕四本だのにして戦闘力が倍々になぞなるはずはないのだ。
どうせなら人型を辞めてれば単純四倍も狙えたかも知れないが、所詮は「かたち」が違うのだ。腕四本それぞれが「突き」を放ったところで、それが呂布渾身の一撃「掛ける四」、にはなり得るはずもなかった。
…いやまあなってたら赤龍の防御加護くらいのふわっとしたやつは多分文字通り霧散し、わたしはBBQの串ものみたいにされてただろうが。
だが結果として、わたしの分銅に額を割られた呂布はその場に崩れ落ちる。
「…呂将軍がやられた!」
兵士の一人が恐怖に慄き、堪らず叫ぶ。
「そうだ!このわたしが倒した…このちょうかわいいわたしがな!分かったらさっさと帰れ!」
わたしが声を張り上げると、徐々に包囲は後退し、道が出来る。
引き潮が如くに下がる兵の波の中にぽつんと華雄が残されていた。
わたしは華雄の拘束を鎌で切り裂き、
「さ、マイナとの約束果たしてもらおか」
「…追われる身になるやも知れんぞ」
「そん時ゃそん時さ」
華雄に肩を貸し、わたしはゆっくりと歩き出す。
波が引き、上野駅までの道が出来た。
遠く、駅舎前にWマイナがいるのがぼんやりと見えた。
「流石に、あなたが外に出てくる理由にしただけはあるわね」
上野マイナがマイナに小声で囁く。
「でしょ?これであなた的にも試練クリアって事でいいでしょ?」
「気が早い。…まあ、とりあえずのとりあえず、くらいかな」
「素直じゃないの。気に入ったくせに」
「まあ、この一連の流れの戦いくらいは認めてあげるわ」
「…なに話してんだよ、助けにも来ないで」
わたしと華雄はWマイナの前まで歩いて来ていた。結局、残存戦力はわたしの圧倒的な可愛さ…に恐れをなし、手出しができなかったようだった。
「ごめんなさい、この人が助けるなって」
マイナが上野マイナに視線を投げる。
「なんじゃそりゃ」
「フ…ここで呂布を一人で倒せない程度だったらパーティ追放してたところだったわ」
「マジかよ…ていうかあなたとパーティ組んだ覚え無いんですけど?」
わたしの問いに上野マイナは露骨に目を背けた。なあおい、そういうのはパーティの(無能な)リーダーが優秀な主人公の資質に気付けずにやっちゃって「あーあ、韓信も陳平も亜父もぜーんぶ離脱しました。お前のせいです」ってなるとこやろが!
そういえばここへ来るまでに誰かを追放したような…そうでもないような?
まあいい。
華雄の傷はマイナが癒し、わたしたちは久々に改札を潜りホームへ出る。
…ホームへ出るのに大分下までエスカレーターを降りたような…
朧げな記憶の中、この先に何があるのかを思い出せそうな…
「山手線と京浜東北線はまた何がしか襲撃されてもイヤなんで、一駅だけですけど、一旦東京まで行きましょう!」
晴れやかなマイナの笑顔。
行き着いた先は東北新幹線のホームだった。
この鉄道の距離感覚的に、上野→東京だと一体、具体的にどんな世界に連れていかれるのだろうか…
「…まあいいか」
まあ、敵は全て斬り伏せるしいいだろう。上野マイナが敵か味方か未知数ではあるが、元々のマイナが協力さえ惜しまなければ大概の事は切り抜けられるはず。
わたしは気楽に、他の三人に倣って車両に乗り込む。
乗り込んだ瞬間、何か嫌なものを感じた。ような気がした。
わたしたちはわちゃわちゃと自由席のシートに座る。その間にも新幹線は上野駅を発車していた。
「…次は、大宮、大宮…」
他愛無い雑談の中、重要な車内アナウンスはさらりと流された。
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