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勇者だっつーなら待遇は…分かるね?
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わたしは王城内の一室を割り当てられ、治癒術師に体を診てもらいながら、王の指示の元、わたしへの状況説明のために来た若い文官がテーブルの上に地図を広げている。
「我が国は常に外敵の侵攻に苛まれております。長い戦いの歴史はまあ別の機会に語るとして、今はあの忌々しい龍族どもです。奴らは我が国を囲むように四方から飛来し、徐々にその包囲の輪を縮めつつあります」
地図の中央が、今いるこの城を含む王都。文官はそこにチェスのキングの白い駒を置く。
その後、その四方に黒いポーンを置く。
「四方から赤、青、黒、緑の龍軍が迫って来ています。実のところ、龍どもは体色別で組織から何から異なっている。」
「その四大勢力を統率するのが巨赤龍?」
「御賢察です。そもそも龍自体群を成すような生物ではない。それがまがりなりにも徒党を組んだのは、龍を束ねる存在が現れた為…巨赤龍と我々が呼ぶあの憎き龍です。」
文官は声を震わせる。
「第一次襲撃の際は我が国の騎士団も健在でした…が、あの巨赤龍を撃退するのに半分近い騎士を失いました…」
「この城に、巨赤龍が欲しがるような物でもあるの?」
正直なところ龍の生態やらなんやらは知らないが、それでも明確な目的が無ければわざわざ軍団まで組織して襲い来る事は無いように思える。
「城に、ですか?当然王家の財宝はありますが…龍どもにとって価値があるかどうかまでは」
「そっか…でもその線一応考えてみてもらえる?敵の狙いを明確にしておくのは大事だと思うから。渡す渡さないは勿論別だけどさ」
「分かりました」
文官が頷く横で、治癒術師はわたしの体に特に負傷が無い事を確認するとまたなにかあればいつでもお呼び下さい、と静かに告げて去っていった。
「ね、この緑龍のヒゲは換金できたりするの?」
わたしは右手でヒゲをいじりながら文官に聞いてみた。
あの神様?の話ぶりだと一本で一年暮らせるらしいものが、五本ある。
とはいえ悠然と暮らせる状況でもなさそうではあるが。
「武器の素材に使えましょうから、国が買取をするよう働きかけましょう。ただ…」
「ただ?」
「勇者さまが王城にいらっしゃられる間は当然ながら食事等のご心配は不要ですし、御入用な物も適宜準備致します。基本的に金の類はお持ちになる必要も無いかと」
なるほど…逆に要らないよという展開来ちゃったか…まあそれだけこの国が追い詰められてるって事だよなぁ。
「そういう事ならこっちもこのヒゲの使い途は任せるよ。持ってって」
「宜しいのですか?」
「武装に変えるんなら早い方がいいでしょ。矢じりか剣先か、ってとこだろうしさ。」
こういう展開なら鱗でもガリガリ剥いでりゃ良かったかな。
「ありがたく使わせていただきます。実のところ、戦端はあちこちで開いておりますので、すぐにでも使う機会があるかと」
「大規模攻勢以外にもあちこち攻められてるって感じ?」
「そうなります。ですが我が国にも騎士団以外にもあなた同様に来られた勇者がまだ何名かは健在で各拠点を守られておりますので」
文官は白のナイト二つとビショップ一つを先程置いた黒のポーンの前にそれぞれ並べる。
「白い方足りないじゃん」
黒は四つ、白は三つ。
「青龍の軍団の前に、先日勇者が一人討たれ…今は騎士団だけでなんとか抑えている状況です」
「なるほど。じゃ、白のクイーン貸して」
わたしは文官からクイーンを受け取り、
空いていた黒のポーンの前に進め…
クイーンの駒でポーンを蹴倒した。
「行こうか、とりあえずは戦局を五分くらいには戻そ?」
「勇者どの…!」
「レアリティの話すんのも不毛感あるけど、SSSRだってんならなんとかなるでしょ。ここどのくらい距離あるの?」
「馬で三日ほどかと…しかし勇者どのは今日来られたばかりでは」
「まあ呼ばれた理由もそれなんだし、いいんじゃない。ちなみに巨赤龍の居場所って分かってたりするの?」
「いえ、正直現状は防戦一方で物見を出す余力もなく。ほかの勇者どのが稀に偵察に出られる程度しか情報もないような状況で」
「じゃあやっぱやるしかないね。馬かー。乗った事ないしなー。あ。」
久しぶりに思い出したが、例のカバンには何かまだ入っていたはず。
トランプがあれだけ便利だったんだから、あれほどではないにせよ便利なアイテムが入っていたりするのではという期待はあった。
やはり演出飛ばしただけで、あの時十連出来てたのかな…だとするとあと九個何か役に立つ物があるはず。
「勇者どの、どうかされたので…」
「うん、開始時ガチャの中身そーいや見てなかったなーとか思って」
「ああ、こちらへ来られる際にガチャ神から持たされるという、あの。…他の勇者様がたの話だと「一個二個使えて後はゴミ」とかなんとか」
「どこも変わんねーかー。期待薄かね。」
期待せず、カバンを開ける。
「お」
硬いものの手触りがあった。
「…とりあえず、外出ようかね」
わたしは一旦手を戻し、文官くんにそう言った。
「どうなさったのです?」
「デカそうだわ中身。どうやって入ってんのか分からんけど」
わたしは苦笑した。
まープレボの中に何がどう詰まってるかなぞ、確かに我々の知り得る部分では無いなと思った。
「我が国は常に外敵の侵攻に苛まれております。長い戦いの歴史はまあ別の機会に語るとして、今はあの忌々しい龍族どもです。奴らは我が国を囲むように四方から飛来し、徐々にその包囲の輪を縮めつつあります」
地図の中央が、今いるこの城を含む王都。文官はそこにチェスのキングの白い駒を置く。
その後、その四方に黒いポーンを置く。
「四方から赤、青、黒、緑の龍軍が迫って来ています。実のところ、龍どもは体色別で組織から何から異なっている。」
「その四大勢力を統率するのが巨赤龍?」
「御賢察です。そもそも龍自体群を成すような生物ではない。それがまがりなりにも徒党を組んだのは、龍を束ねる存在が現れた為…巨赤龍と我々が呼ぶあの憎き龍です。」
文官は声を震わせる。
「第一次襲撃の際は我が国の騎士団も健在でした…が、あの巨赤龍を撃退するのに半分近い騎士を失いました…」
「この城に、巨赤龍が欲しがるような物でもあるの?」
正直なところ龍の生態やらなんやらは知らないが、それでも明確な目的が無ければわざわざ軍団まで組織して襲い来る事は無いように思える。
「城に、ですか?当然王家の財宝はありますが…龍どもにとって価値があるかどうかまでは」
「そっか…でもその線一応考えてみてもらえる?敵の狙いを明確にしておくのは大事だと思うから。渡す渡さないは勿論別だけどさ」
「分かりました」
文官が頷く横で、治癒術師はわたしの体に特に負傷が無い事を確認するとまたなにかあればいつでもお呼び下さい、と静かに告げて去っていった。
「ね、この緑龍のヒゲは換金できたりするの?」
わたしは右手でヒゲをいじりながら文官に聞いてみた。
あの神様?の話ぶりだと一本で一年暮らせるらしいものが、五本ある。
とはいえ悠然と暮らせる状況でもなさそうではあるが。
「武器の素材に使えましょうから、国が買取をするよう働きかけましょう。ただ…」
「ただ?」
「勇者さまが王城にいらっしゃられる間は当然ながら食事等のご心配は不要ですし、御入用な物も適宜準備致します。基本的に金の類はお持ちになる必要も無いかと」
なるほど…逆に要らないよという展開来ちゃったか…まあそれだけこの国が追い詰められてるって事だよなぁ。
「そういう事ならこっちもこのヒゲの使い途は任せるよ。持ってって」
「宜しいのですか?」
「武装に変えるんなら早い方がいいでしょ。矢じりか剣先か、ってとこだろうしさ。」
こういう展開なら鱗でもガリガリ剥いでりゃ良かったかな。
「ありがたく使わせていただきます。実のところ、戦端はあちこちで開いておりますので、すぐにでも使う機会があるかと」
「大規模攻勢以外にもあちこち攻められてるって感じ?」
「そうなります。ですが我が国にも騎士団以外にもあなた同様に来られた勇者がまだ何名かは健在で各拠点を守られておりますので」
文官は白のナイト二つとビショップ一つを先程置いた黒のポーンの前にそれぞれ並べる。
「白い方足りないじゃん」
黒は四つ、白は三つ。
「青龍の軍団の前に、先日勇者が一人討たれ…今は騎士団だけでなんとか抑えている状況です」
「なるほど。じゃ、白のクイーン貸して」
わたしは文官からクイーンを受け取り、
空いていた黒のポーンの前に進め…
クイーンの駒でポーンを蹴倒した。
「行こうか、とりあえずは戦局を五分くらいには戻そ?」
「勇者どの…!」
「レアリティの話すんのも不毛感あるけど、SSSRだってんならなんとかなるでしょ。ここどのくらい距離あるの?」
「馬で三日ほどかと…しかし勇者どのは今日来られたばかりでは」
「まあ呼ばれた理由もそれなんだし、いいんじゃない。ちなみに巨赤龍の居場所って分かってたりするの?」
「いえ、正直現状は防戦一方で物見を出す余力もなく。ほかの勇者どのが稀に偵察に出られる程度しか情報もないような状況で」
「じゃあやっぱやるしかないね。馬かー。乗った事ないしなー。あ。」
久しぶりに思い出したが、例のカバンには何かまだ入っていたはず。
トランプがあれだけ便利だったんだから、あれほどではないにせよ便利なアイテムが入っていたりするのではという期待はあった。
やはり演出飛ばしただけで、あの時十連出来てたのかな…だとするとあと九個何か役に立つ物があるはず。
「勇者どの、どうかされたので…」
「うん、開始時ガチャの中身そーいや見てなかったなーとか思って」
「ああ、こちらへ来られる際にガチャ神から持たされるという、あの。…他の勇者様がたの話だと「一個二個使えて後はゴミ」とかなんとか」
「どこも変わんねーかー。期待薄かね。」
期待せず、カバンを開ける。
「お」
硬いものの手触りがあった。
「…とりあえず、外出ようかね」
わたしは一旦手を戻し、文官くんにそう言った。
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