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見た目凶悪なのはボス感ある
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巨赤龍は笑う。
普通(と言うべきか、とりあえずここまでに戦ってきた)サイズのドラゴンでも全長は四、五メートルはゆうにある。
しかし巨赤龍は…
後ろ足で二足歩行のように立ち上がる姿はビルの四、五階程の高さ。二十メートルくらいはあろうか。
わたしの大きさなど、こいつからすれば屋台のクレープ程度のサイズ感だろうか。
そして既に奴は、わたしを敵として認識している。赤黒く濁った眼球は、間違いなくわたしの姿を捉えている…
(こりゃあ久々にマジでかからんとヤバイな)
ペガ公の思念にも焦りのようなものを感じる。こいつをして、流石にヤバイという存在感か。
そして、巨赤龍がゆっくりと大きな口を開き…炎が直線状に吹きだされた。
ペガ公が瞬時に上昇し、わたしは丸焼けになるのを避けた。
火線の渦はそのまま大地に叩きつけられ散るが、燃えうるものに火を焚きつけ、火炎地獄が広がり続ける。
見れば、巨赤龍そのものも燐光を放つが如くに揺らめく炎を纏っていた。
一度火を噴き始めれば、己自身をも巻き込み、全てを燃やし尽くすまでは止まらない…そんな不気味な想像がわたしの中に確信に近い形で浮かび上がる。
(攻めあぐねるな…熱くて不快だ)
「確かにね…まさかこんなにデカイとも思ってなかったから、どう戦っていいか分からんというのもあるし」
弱点はあるのか?角?鱗?心臓部?
そもそもキングオブソーズでその弱点に有効打を与える事は可能か?
いっそ体内にでも入ってみるか?
(オススメは出来んな。奴の体表は常に燃え続け、相当な高温だろう。さらに奴の口の中に入るなど、奴が火炎を吹いた瞬間に焼肉待った無しだぜ)
「確かに…しかしどうするかね…」
(まずは観察するしかないだろうな。動作パターン、弱点と思しき部位、生物である以上、必ず何がしかの隙はあるはずだ)
ペガ公はさらに少し巨赤龍との間合いを空ける。
そうする事でわたしの眼前に開けたのは、おそらくモントー山砦であったであろう、巨赤龍の足元に広がる廃墟、そして…
(考えない方が良い)
ペガ公が気を回す。
砦であった以上、騎士も兵もその生活を支える者もそこには存在したであろう。だが、わたしの視界に動くものは憎々しげな巨赤龍と、その辺縁の炎だけだ。
こいつは…
こいつは、許してはいけない。
心底そう思えた。
「ペガサス、どこまで近付ける?」
(正直、剣の間合いまで近付いてしまったら我が翼が燃えてしまうかも知れん)
「…だな、そうなりそうだ。そしてわたしが降りて戦っても結局は同じように熱に負けるだろう」
(ならばどうする?)
「倒せるかどうかは分からんが、このままタダで帰すのも性に合わねぇなって…」
わたしはキングオブソーズ、ペイジオブソーズを右左に構え、体は補助綱に任せた。意思疎通が出来るペガサス相手なら、別段手綱は必要ない。
「お前の仕事は、全速力で奴の頭の左側を掠めて飛ぶだけだ。そしてわたしはその瞬間に全力で薙ぐ。目玉一つくらいは頂くさ…後のことはそれ以降だ」
(その仕掛けがうまくいけば、それを何連発か食らわせてやるか)
「ノリがいいじゃねぇか。結構!行くぜ…」
わたしと、ペガサスの意識が重なる。
目指す先は、巨赤龍右側頭部。
わたしの意志を受け、ペガサスはまっすぐに空を駆けた。巨赤龍は炎を吹いて迎撃しようとしたが、その炎の到達はペガサスのはるか後方の空を焦がすに過ぎない。
そしてわたしは左右のソーズを引き絞るように右肩上へ巻き上げる…叩きつける瞬間を狙い澄まして。
ペガサスは飛ぶ。速度を増し、巨赤龍の顔を目掛けて。
顔の真横を通り過ぎる。
黒く大きな爬虫類の眼が、わたしを見た。
「ぅらぁあぁーッ!!」
その眼を目掛けて、引き絞った二つのソーズを解き放つように回し、振り抜いた。
閃光のように白刃が輝き、その輝きさえ置き去りにするかのような速さでペガサスは彼方の空へ飛んだ。
背後から地響きのような、雷鳴のような長く低く暗い音が追いかけて来る。
痛手になったならなにより。
ある程度飛び去り、ペガサスは宙を返って巨赤龍を見下ろす。
その顔の右側には、眼を穿ち、深い線が二本刻まれていた。
「ざまぁみろ!…ペガサス、どうだ、まだやれるか?」
(あと一撃は…なんとかな)
若干焦げ臭い。ペガサスの翼の端の方は茶や黒に染まっている。
巨赤龍はわたしたちの方へ片目を失った怒りのままに咆哮と共に火炎を幾筋も吹いた。ペガサスは躱しきるが、上下動がぎこちなくなり始めていた。
やはり翼へのダメージが残るか…
「無理すんな…一旦距離を離せ。後は降りてなんとかする」
(なんとかなる相手か、あれが?)
「なんとかするから勇者なんだよ。お前は一旦離れな」
わたしはペガサスの頬を撫で、降りるように指示した。
普通(と言うべきか、とりあえずここまでに戦ってきた)サイズのドラゴンでも全長は四、五メートルはゆうにある。
しかし巨赤龍は…
後ろ足で二足歩行のように立ち上がる姿はビルの四、五階程の高さ。二十メートルくらいはあろうか。
わたしの大きさなど、こいつからすれば屋台のクレープ程度のサイズ感だろうか。
そして既に奴は、わたしを敵として認識している。赤黒く濁った眼球は、間違いなくわたしの姿を捉えている…
(こりゃあ久々にマジでかからんとヤバイな)
ペガ公の思念にも焦りのようなものを感じる。こいつをして、流石にヤバイという存在感か。
そして、巨赤龍がゆっくりと大きな口を開き…炎が直線状に吹きだされた。
ペガ公が瞬時に上昇し、わたしは丸焼けになるのを避けた。
火線の渦はそのまま大地に叩きつけられ散るが、燃えうるものに火を焚きつけ、火炎地獄が広がり続ける。
見れば、巨赤龍そのものも燐光を放つが如くに揺らめく炎を纏っていた。
一度火を噴き始めれば、己自身をも巻き込み、全てを燃やし尽くすまでは止まらない…そんな不気味な想像がわたしの中に確信に近い形で浮かび上がる。
(攻めあぐねるな…熱くて不快だ)
「確かにね…まさかこんなにデカイとも思ってなかったから、どう戦っていいか分からんというのもあるし」
弱点はあるのか?角?鱗?心臓部?
そもそもキングオブソーズでその弱点に有効打を与える事は可能か?
いっそ体内にでも入ってみるか?
(オススメは出来んな。奴の体表は常に燃え続け、相当な高温だろう。さらに奴の口の中に入るなど、奴が火炎を吹いた瞬間に焼肉待った無しだぜ)
「確かに…しかしどうするかね…」
(まずは観察するしかないだろうな。動作パターン、弱点と思しき部位、生物である以上、必ず何がしかの隙はあるはずだ)
ペガ公はさらに少し巨赤龍との間合いを空ける。
そうする事でわたしの眼前に開けたのは、おそらくモントー山砦であったであろう、巨赤龍の足元に広がる廃墟、そして…
(考えない方が良い)
ペガ公が気を回す。
砦であった以上、騎士も兵もその生活を支える者もそこには存在したであろう。だが、わたしの視界に動くものは憎々しげな巨赤龍と、その辺縁の炎だけだ。
こいつは…
こいつは、許してはいけない。
心底そう思えた。
「ペガサス、どこまで近付ける?」
(正直、剣の間合いまで近付いてしまったら我が翼が燃えてしまうかも知れん)
「…だな、そうなりそうだ。そしてわたしが降りて戦っても結局は同じように熱に負けるだろう」
(ならばどうする?)
「倒せるかどうかは分からんが、このままタダで帰すのも性に合わねぇなって…」
わたしはキングオブソーズ、ペイジオブソーズを右左に構え、体は補助綱に任せた。意思疎通が出来るペガサス相手なら、別段手綱は必要ない。
「お前の仕事は、全速力で奴の頭の左側を掠めて飛ぶだけだ。そしてわたしはその瞬間に全力で薙ぐ。目玉一つくらいは頂くさ…後のことはそれ以降だ」
(その仕掛けがうまくいけば、それを何連発か食らわせてやるか)
「ノリがいいじゃねぇか。結構!行くぜ…」
わたしと、ペガサスの意識が重なる。
目指す先は、巨赤龍右側頭部。
わたしの意志を受け、ペガサスはまっすぐに空を駆けた。巨赤龍は炎を吹いて迎撃しようとしたが、その炎の到達はペガサスのはるか後方の空を焦がすに過ぎない。
そしてわたしは左右のソーズを引き絞るように右肩上へ巻き上げる…叩きつける瞬間を狙い澄まして。
ペガサスは飛ぶ。速度を増し、巨赤龍の顔を目掛けて。
顔の真横を通り過ぎる。
黒く大きな爬虫類の眼が、わたしを見た。
「ぅらぁあぁーッ!!」
その眼を目掛けて、引き絞った二つのソーズを解き放つように回し、振り抜いた。
閃光のように白刃が輝き、その輝きさえ置き去りにするかのような速さでペガサスは彼方の空へ飛んだ。
背後から地響きのような、雷鳴のような長く低く暗い音が追いかけて来る。
痛手になったならなにより。
ある程度飛び去り、ペガサスは宙を返って巨赤龍を見下ろす。
その顔の右側には、眼を穿ち、深い線が二本刻まれていた。
「ざまぁみろ!…ペガサス、どうだ、まだやれるか?」
(あと一撃は…なんとかな)
若干焦げ臭い。ペガサスの翼の端の方は茶や黒に染まっている。
巨赤龍はわたしたちの方へ片目を失った怒りのままに咆哮と共に火炎を幾筋も吹いた。ペガサスは躱しきるが、上下動がぎこちなくなり始めていた。
やはり翼へのダメージが残るか…
「無理すんな…一旦距離を離せ。後は降りてなんとかする」
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わたしはペガサスの頬を撫で、降りるように指示した。
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