16 / 57
敵として戦うのにスケールデカ過ぎない?
しおりを挟む
地に降りる。
酷い熱と臭気。
立ち昇る大気も揺らぐ。
…の、はずなのだが。
大地を自分の足で踏み締めると、ペガ公の背で空を飛んでいた時よりも落ち着いて思えた。
巨赤龍を睨む。
奴は右眼を失った怒りもあるのだろう、低く唸り、肌の色も心なしか先ほどまでより黒ずんでいるように見えた。
体のあちこちから炎が、間欠泉のように細かく噴き出している。
さ…て、どう攻めるか…
足元でも斬りつけてやるしかないか。
青赤の長衣、右手にキングオブソーズ、左手にペイジオブソーズ、足元は謎の黒いブーツ。
万全の武装とは言い難いちぐはぐ感だが、今のわたしには最善の武装でもある。
左右の剣を水平に構え、走る。
巨赤龍は残された左眼を見開き、口をゆっくりと大きく開いた。
赤白色の炎の渦が頭上から降ってくる。
わたしはぐんぐん駆け、巨赤龍へ近付く。火を噴き出す顔の可動範囲の限界より内側へ入り込みさえすれば、炎は気にする必要はない。
燃え盛る地を踏みしめ走っているにも関わらず、不快とまでは感じなかった。
むしろ足元は何故か少し涼しささえ感じる。不思議でさえあった。
いずれにせよ、一息で巨赤龍の足元…二本足で立ち上がるこいつの足元に無傷で到達したわたしは、何も考えずに太い大樹のような脚部を、まずは右側からと狙いを付け、執拗に斬りつけ始めた。
緑龍だ青龍だと、簡単に斬り伏せ得たキングオブソーズが、こいつ相手には斬れ味さえ鈍ったように思えた。
刃こぼれしないのはさすがと思ったが、鱗に覆われた脚部に明確なダメージが通っているような感触は正直感じない。
ペイジオブソーズに至っては力負けしている感さえあり、鱗に弾かれる始末だった。
押し切れるのか…わたしの中に焦りが広がり始める。
その時わたしは思い出した。
斬れ味負けする剣を潔く捨て、もう一枚。ナイトオブワンズを左手に…
ずしりとした重量に、体勢を崩し掛けながらも踏みとどまり、キングオブソーズも一度カードに戻し、ワンズを両手持ちでバットのように構えた。
からの、フルスイング!
両手が痺れる。だが、痛打が通った感覚も感じる。
もう一度フルスイング!
いける!脚部の中に芯のような、骨というか…砕くべきものの存在を感じた。
砕くまで何度でも繰り返してやる。
だが流石に巨躯の龍とはいえそんなものをいつまでも放置してもいられないと考えたか、攻撃し続けた右側…奴の左脚部がわたしを跳ね飛ばそうとずずず、っと不気味に動いて来た。
正確に見えているわけでも無いだろうからなんとか避け得たが、巨大なパーツは急に動き始めるだけで、かなり動揺する。
だが、やはり敵からすれば足を捻りたくなる程度には痛手となり始めている…
巨木か大岩か、というような脚部は多少ジタバタと足元の異物を排除しようと動き回ったが、やや緩慢にさえ見えるその動きを躱し続けると、巨赤龍は少しずつ浮揚し始めた。上から下へ向かい、凄い風圧がかかり始める。
翼を使い、上昇を始めたようだ。
体勢を立て直すのか、それとも逃げるのか。
どちらの可能性もある…だが、このまま奴を上空に上げてしまえば火炎ブレスで狙い撃ちにされる可能性も高い。
どのみち無事で済む可能性が低いなら、わたしは意を決して引きずり加減の左脚部目掛けてジャンプした。
思った以上に高く跳び…足の甲?にあたる部分に着地した。
目の前には先程からの攻撃で砕け始めた鱗の跡。だが、足元も悪い。さっきまでのような野球スイングを加え続ける事は難しそうだ。
その間にもゆっくりとではあるが確実に、巨赤龍は空へと上がり続けている。
体勢も斜めになり始めている。このままではおそらく体の前面は地面を向き、わたしは足にへばり付けずに地に落ちるだろう…
ならば。
巨赤龍の体表は全身を鱗に覆われ、鱗の合間合間から時折火柱があがる。
本来相当な温度に達しており、ペガ公もその翼などに火傷を負っていた。
だが、なぜかわたしは熱に関して無傷だった。ぶっちゃけ既に巨赤龍と接しているのにダメージは無い。
ならば…!
わたしは意を決して、手で鱗を掴んだ。
…熱く…少しは熱いが…行ける!
ごつごつした鱗は岩肌にも似て、足場がある急斜面のように思えたのだ。
手で鱗を掴みながら、脚部周囲をぐるりと回り、斜面を見据え、巨赤龍が飛行体勢に変化しつつあるのを見計らい…
わたしは巨赤龍の体をボルダリングするように這って、体の上部へと上がり始めた。
巨赤龍は徐々に高度を上げ始めており、わたしはその間にも徐々にその脚を、腹を、背を渡り。奴の頭部目指して進んでいた。
サイズ感があまりにも違いすぎるが故に、巨赤龍はわたし相手に無防備が過ぎた。
既に後頭部は目の前、巨赤龍はわたしの前に完全に無防備だった。
酷い熱と臭気。
立ち昇る大気も揺らぐ。
…の、はずなのだが。
大地を自分の足で踏み締めると、ペガ公の背で空を飛んでいた時よりも落ち着いて思えた。
巨赤龍を睨む。
奴は右眼を失った怒りもあるのだろう、低く唸り、肌の色も心なしか先ほどまでより黒ずんでいるように見えた。
体のあちこちから炎が、間欠泉のように細かく噴き出している。
さ…て、どう攻めるか…
足元でも斬りつけてやるしかないか。
青赤の長衣、右手にキングオブソーズ、左手にペイジオブソーズ、足元は謎の黒いブーツ。
万全の武装とは言い難いちぐはぐ感だが、今のわたしには最善の武装でもある。
左右の剣を水平に構え、走る。
巨赤龍は残された左眼を見開き、口をゆっくりと大きく開いた。
赤白色の炎の渦が頭上から降ってくる。
わたしはぐんぐん駆け、巨赤龍へ近付く。火を噴き出す顔の可動範囲の限界より内側へ入り込みさえすれば、炎は気にする必要はない。
燃え盛る地を踏みしめ走っているにも関わらず、不快とまでは感じなかった。
むしろ足元は何故か少し涼しささえ感じる。不思議でさえあった。
いずれにせよ、一息で巨赤龍の足元…二本足で立ち上がるこいつの足元に無傷で到達したわたしは、何も考えずに太い大樹のような脚部を、まずは右側からと狙いを付け、執拗に斬りつけ始めた。
緑龍だ青龍だと、簡単に斬り伏せ得たキングオブソーズが、こいつ相手には斬れ味さえ鈍ったように思えた。
刃こぼれしないのはさすがと思ったが、鱗に覆われた脚部に明確なダメージが通っているような感触は正直感じない。
ペイジオブソーズに至っては力負けしている感さえあり、鱗に弾かれる始末だった。
押し切れるのか…わたしの中に焦りが広がり始める。
その時わたしは思い出した。
斬れ味負けする剣を潔く捨て、もう一枚。ナイトオブワンズを左手に…
ずしりとした重量に、体勢を崩し掛けながらも踏みとどまり、キングオブソーズも一度カードに戻し、ワンズを両手持ちでバットのように構えた。
からの、フルスイング!
両手が痺れる。だが、痛打が通った感覚も感じる。
もう一度フルスイング!
いける!脚部の中に芯のような、骨というか…砕くべきものの存在を感じた。
砕くまで何度でも繰り返してやる。
だが流石に巨躯の龍とはいえそんなものをいつまでも放置してもいられないと考えたか、攻撃し続けた右側…奴の左脚部がわたしを跳ね飛ばそうとずずず、っと不気味に動いて来た。
正確に見えているわけでも無いだろうからなんとか避け得たが、巨大なパーツは急に動き始めるだけで、かなり動揺する。
だが、やはり敵からすれば足を捻りたくなる程度には痛手となり始めている…
巨木か大岩か、というような脚部は多少ジタバタと足元の異物を排除しようと動き回ったが、やや緩慢にさえ見えるその動きを躱し続けると、巨赤龍は少しずつ浮揚し始めた。上から下へ向かい、凄い風圧がかかり始める。
翼を使い、上昇を始めたようだ。
体勢を立て直すのか、それとも逃げるのか。
どちらの可能性もある…だが、このまま奴を上空に上げてしまえば火炎ブレスで狙い撃ちにされる可能性も高い。
どのみち無事で済む可能性が低いなら、わたしは意を決して引きずり加減の左脚部目掛けてジャンプした。
思った以上に高く跳び…足の甲?にあたる部分に着地した。
目の前には先程からの攻撃で砕け始めた鱗の跡。だが、足元も悪い。さっきまでのような野球スイングを加え続ける事は難しそうだ。
その間にもゆっくりとではあるが確実に、巨赤龍は空へと上がり続けている。
体勢も斜めになり始めている。このままではおそらく体の前面は地面を向き、わたしは足にへばり付けずに地に落ちるだろう…
ならば。
巨赤龍の体表は全身を鱗に覆われ、鱗の合間合間から時折火柱があがる。
本来相当な温度に達しており、ペガ公もその翼などに火傷を負っていた。
だが、なぜかわたしは熱に関して無傷だった。ぶっちゃけ既に巨赤龍と接しているのにダメージは無い。
ならば…!
わたしは意を決して、手で鱗を掴んだ。
…熱く…少しは熱いが…行ける!
ごつごつした鱗は岩肌にも似て、足場がある急斜面のように思えたのだ。
手で鱗を掴みながら、脚部周囲をぐるりと回り、斜面を見据え、巨赤龍が飛行体勢に変化しつつあるのを見計らい…
わたしは巨赤龍の体をボルダリングするように這って、体の上部へと上がり始めた。
巨赤龍は徐々に高度を上げ始めており、わたしはその間にも徐々にその脚を、腹を、背を渡り。奴の頭部目指して進んでいた。
サイズ感があまりにも違いすぎるが故に、巨赤龍はわたし相手に無防備が過ぎた。
既に後頭部は目の前、巨赤龍はわたしの前に完全に無防備だった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる