始める気もなかったゲームのガチャの引きが良すぎた

らふれられ

文字の大きさ
17 / 57

称号を得た!きっとなにかの実績も解放された…はず

しおりを挟む
巨赤龍の後頭部を、首の上に乗って見据える。
流石にこのポジションまで来たら、後はやる事一つ感しかない。
キングオブソーズを出現させ、構える。
長い首筋の峰を走り抜ける。途中最後の関門のように鱗の合間から烈しい火柱が上がるが、全て間一髪避け切り、頭部まで接近した。
何かを察したか、巨赤龍が呻くように吼えた。
だがもう遅い。
わたしは両手でキングオブソーズの柄を逆に持ち、下方…巨赤龍の後頭部へ向けて剣を深々と差し込んだ。
一際高く、巨赤龍がいなないたと思った、その瞬間。
足元が。
視界が。
白く弾け飛んだ。

(まさか本当に人間に滅ぼされるとは)
呻くような声…思念による言葉はペガ公のような軽さのない、重々しさがあった。
(油断があったのは否めまいな)
そして自嘲気味に笑う。
(黒帝の甲冑…あしもとだけとは言え、まだそんなものがあったとはな。かつて七界の超龍すべてを滅ぼし、七龍すべての魔力を束ね編み、七龍すべての爪や鱗を溶かし造り込んだ、世界を統べるもののみが身に付けるとさえ言われたその力、伊達ではなかったか)
合点がいった。
当たりは、「こっち」だったか。
そうとなれば思い当たる節は無数にある。
(なればこそ。我が力もついでに持って行くがいい)
ついで?え?何が…
わたしも何か喋ろうかと考える間も無く、視界が再び反転し、弾けた。

わたしは。
先ほどまで巨赤龍と戦っていた、山砦跡に再び立っていた。
気温が下がり、空が青さを取り戻しつつあるようだった。
(やったな…流石我アンド我の鞍上)
ペガ公も近づいて来ていた。
流石に今だけは蹴り入れたりするのもやめておいてやるか。
「お、そうだな」
その羽先や肌は黒くまだらになっている。わたしがこうならなかったのはこの「URくつ」の付随効果のひとつだったようだし。
捨てたペイジオブソーズを拾い直してカードに戻しながら、砦跡を見て回る。
生存者は、やはり見当たらないようだ…
(そうでもないぞ。確かに砦を守ろうとした者はまあ…だろうが、他に後退していた連中はいたようだ)
ペガ公がそう言って振り返ると、確かに視界の彼方に騎馬の一団が近づいてくるのが見えた。
少しだけだが安心して、わたしはその一団に向かって手を振った。

モントー山砦は完膚なきまでに破壊され尽くしたが、巨赤龍の奇襲をうまく逃れ得た者もそれなりの数に上っていた。
…ここにいたはずのガチャ勇者はダメだったようだ。
さらに言えばそいつが抵抗した様子を見た者はいなかったらしい。巨赤龍の初撃で御陀仏だった可能性が高いようだ。
騎士達は一旦もう少し王城の方へ近付く、西側の都市まで戻って駐屯し、巨赤龍亡き後も龍どもが攻めて来るかどうかを見定めるとの事だった。
…王命だった巨赤龍の討伐は確かに果たしたが、本当に龍どもの統制が取れなくなるかどうかまでは分からないのが本当のところではある。
現地の生き残りが確認出来た事は良かった。わたしは彼らに王城へこの状況を伝え、取り急ぎ救援を送るよう伝えてからペガ公を駆り、王城への帰路に就く。

なんとなく、ペイルガンの微笑が脳裏をよぎった。
預言的な事も含め、現状はあいつの考え通りに全てが進んでいる。
ああいうタイプが王国内で国王に等しい権力、しかも宗教的な権力を持っているというのはタチが悪い。
忘れかけていたが、猿太郎によれば龍側にもわたしよろしくガチャ勇者がいたとか言ってたような気もした。
しかも絵札がどうとか。
(大アルカナのカードか。お前のキングオブソーズのような明確な戦闘特化の方が、かえってキチ○イに刃物fuu!)
空を翔けるペガ公の横腹をキック。
(いやまあともかく、どうだろうな。一概に有利不利とも言えないだろう。お前はむしろ靴が本体ha!ha!fooo!)
「君のように正直すぎると長生きできないよ?」
(もう少し優しく…てかお前も落ちる危険があるだろうに…ま、それはともかく)
王城が視界の彼方に見えた。
(まずは恩賞に預かり褒美と美食といい牡馬をいただくとしようじゃないか)
「…あんた…メスだったん…?」
(レディーに失礼ね!)
いやめっちゃイケメンボイスですよね?
馬業界の事は分からん…

そこから先はおおよそペガ公の予想通りであった。
先行きが完全に明るいわけでも無かったが、まずは巨赤龍という強大すぎる危機が去った事は間違いない訳であった。
各方面の最前線から、狼煙の色による報告で「龍の軍団の急な後退」があった事や、ペイルガンが例の神託について証言をした事、そして…
わたしのキングオブソーズの絵柄がいつのまにか変わっていたという事実。
剣持つ王者の絵柄は、いつのまにかその足元にドラゴンの顔を踏み締めたものに変わっていたのだ。
そして王や居並ぶ文官、魔術師たちはそれこそがなによりの証拠だと言っていた。
実績解放みたいなモノだったのだろうか。
[龍殺し]の称号を獲得しました!…みたいな。
いずれにせよ、とりあえずこの日はそのまま祝いの宴へと突入した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...