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ep10『ただいま暴力衝動中』後編
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カーペットに座り、ソファに背を預けてアイスを食べながら、澄香は斜め向かいでアイスを食べる彼に鋭利な視線を投げつける。
結局部屋に上げてしまったことを今更後悔してももう遅い。視線に気づいた彼がまたにっこりと笑いかけてくる。
「これ美味しいね。鬼リピしちゃうかも」
「アンタホント何しに来たの」
「ん? アイスの差し入れだよ」
「じゃあアイス食べたら帰って」
「そんなつれないこと言わないで。せっかく来たんだから」
「勝手に来たんでしょ」
「そう。それで澄香ちゃんが部屋に上げてくれた」
澄香は傍にあった箱ティッシュを投げつける。おっと、と彼は片手でガードした。
へらへらと笑う彼を無視して、澄香もアイスを食べ続けた。甘くて冷たい感触も、一向に気分を落ち着かせてはくれない。
食べ終わると、彼はカーペットの上に寝そべってテレビのチャンネル変えた。
「あ、この映画観たことある。どんなやつだっけ。澄香ちゃん知ってる?」
「さあね」
そっけない返事にも彼は気にしたふうもなく、すっかり寛いでいる様子が気に入らない。
「ねえ」
「うん?」
「捨ててきて」
仏頂面で食べ終わったアイスのカップを突き出すと、彼は、はーいと返事をして受け取った。立ち上がって自分のカップもゴミ箱に捨てに行く。大人しく従う彼に、更に胸中を乱される。
「何か飲み物いる?」
キッチンに向かった彼が冷蔵庫の前に立って聞いてくる。その気が利く行動も腹立たしい。
「いらないわよ」
「じゃあ俺だけもらうね」
そう言って勝手に食器棚からマグカップを取り出して冷蔵庫から冷えたお茶を注いだ。家に来るのも初めてではないし、よくあることだが今は無性に腹が立つ。
彼が部屋に戻ってくると、澄香は彼からマグカップを奪って自分が飲んだ。それを彼は面白そうに見つめてくる。
「俺にもちょうだい」
気分を害した様子もなく、澄香の手からカップを取り戻すと自分も飲んだ。
「まだ飲む?」
「いい」
呑気にテレビを眺める彼の尻を蹴る。相変わらず特に反応しない彼の腕をぱしぱしと叩いた。
「アンタいつ帰るの?」
「どうしよっかなー」
「まさか泊まる気じゃないわよね」
「んー、でも準備はしてきたよ」
「準備?」
彼はポケットから避妊具の小箱を取り出して見せた。澄香は傍にあったクッションを投げつける。
「避妊具は大事でしょ」
「そういうことじゃない」
「着けなくていいの?」
「そんなわけないでしょ」
彼の髪を掴んで引っ張った。
「あたたた、激しいなあ」
「だから帰ってって言ってるの」
「でも一人だと発散できないでしょ。やっぱり相手は必要じゃん」
「一人で激しくダンスでもしてれば落ち着くわよ」
「それ見たい」
頬を引っぱたく。彼は愉快そうに笑っている。
「どうせ激しくダンスするなら気持ちいい方がいいじゃん」
「ダンスは気持ちいいわよ」
「もっと体内からさ」
「ダンスは体内からの発散よ」
「あだだだ」
今度は耳を引っ張った。
「でもほら、いろんな動きした方が」
「ダンスなめんじゃないわよ」
「いやいやダンスはダンスでいいんだけどさ。てかそんなにダンス好きだっけ?」
「うるさい」
「激しいダンスするなら俺としようよ。その方が効率いいじゃん。ベッドでもいいし、ここでもいいし」
「なんの効率よ」
「欲求不満の発散」
「欲求不満じゃないわよ、ただの情緒不安定!」
彼の胸倉を掴んで引きずりながら玄関へ向かう。
「だから俺がサンドバッグになってあげるから、お互いに発散しよ」
「何がお互いよ。ヤリたいだけでしょ」
「それが澄香ちゃんにとっても発散になるじゃん。ヤったあとはいつも落ち着くんでしょ」
「ちょっとだけよ。性処理の道具になんてならないわ」
「そんなこと言ってないじゃん。一緒に運動しようって言ってるだけだよ」
玄関までいくと彼は動かなくなった。引っ張ってもびくともしない。余裕な笑みにムカついていると、彼はひょいと澄香を抱き上げてリビングまで戻ってきた。カーペットの上に下ろされて、彼が上から被さってくる。
「どきなさいよ」
「ベッド行く? それともここでする? 俺はどっちでもいいけど」
腕で彼の顔や肩を叩くが受け流される。それなりに暴れたおかげか、少し身体が疲れてきた。暴れるのを止めると彼が顔を近づけてくる。
「ベッド行く?」
彼の吐息を感じながら、澄香は呼吸を整えた。
「別にいいわよここで」
彼の無邪気な笑みの中に妖艶な色が混じる。
「じゃあ、遠慮なく」
彼と唇が重なると、澄香は身体を回転させて油断した相手と位置を入れ替えた。下敷きになった彼は満足そうにその体勢を受け入れ、服を脱がしにかかる彼女にされるがままになっていた。
結局部屋に上げてしまったことを今更後悔してももう遅い。視線に気づいた彼がまたにっこりと笑いかけてくる。
「これ美味しいね。鬼リピしちゃうかも」
「アンタホント何しに来たの」
「ん? アイスの差し入れだよ」
「じゃあアイス食べたら帰って」
「そんなつれないこと言わないで。せっかく来たんだから」
「勝手に来たんでしょ」
「そう。それで澄香ちゃんが部屋に上げてくれた」
澄香は傍にあった箱ティッシュを投げつける。おっと、と彼は片手でガードした。
へらへらと笑う彼を無視して、澄香もアイスを食べ続けた。甘くて冷たい感触も、一向に気分を落ち着かせてはくれない。
食べ終わると、彼はカーペットの上に寝そべってテレビのチャンネル変えた。
「あ、この映画観たことある。どんなやつだっけ。澄香ちゃん知ってる?」
「さあね」
そっけない返事にも彼は気にしたふうもなく、すっかり寛いでいる様子が気に入らない。
「ねえ」
「うん?」
「捨ててきて」
仏頂面で食べ終わったアイスのカップを突き出すと、彼は、はーいと返事をして受け取った。立ち上がって自分のカップもゴミ箱に捨てに行く。大人しく従う彼に、更に胸中を乱される。
「何か飲み物いる?」
キッチンに向かった彼が冷蔵庫の前に立って聞いてくる。その気が利く行動も腹立たしい。
「いらないわよ」
「じゃあ俺だけもらうね」
そう言って勝手に食器棚からマグカップを取り出して冷蔵庫から冷えたお茶を注いだ。家に来るのも初めてではないし、よくあることだが今は無性に腹が立つ。
彼が部屋に戻ってくると、澄香は彼からマグカップを奪って自分が飲んだ。それを彼は面白そうに見つめてくる。
「俺にもちょうだい」
気分を害した様子もなく、澄香の手からカップを取り戻すと自分も飲んだ。
「まだ飲む?」
「いい」
呑気にテレビを眺める彼の尻を蹴る。相変わらず特に反応しない彼の腕をぱしぱしと叩いた。
「アンタいつ帰るの?」
「どうしよっかなー」
「まさか泊まる気じゃないわよね」
「んー、でも準備はしてきたよ」
「準備?」
彼はポケットから避妊具の小箱を取り出して見せた。澄香は傍にあったクッションを投げつける。
「避妊具は大事でしょ」
「そういうことじゃない」
「着けなくていいの?」
「そんなわけないでしょ」
彼の髪を掴んで引っ張った。
「あたたた、激しいなあ」
「だから帰ってって言ってるの」
「でも一人だと発散できないでしょ。やっぱり相手は必要じゃん」
「一人で激しくダンスでもしてれば落ち着くわよ」
「それ見たい」
頬を引っぱたく。彼は愉快そうに笑っている。
「どうせ激しくダンスするなら気持ちいい方がいいじゃん」
「ダンスは気持ちいいわよ」
「もっと体内からさ」
「ダンスは体内からの発散よ」
「あだだだ」
今度は耳を引っ張った。
「でもほら、いろんな動きした方が」
「ダンスなめんじゃないわよ」
「いやいやダンスはダンスでいいんだけどさ。てかそんなにダンス好きだっけ?」
「うるさい」
「激しいダンスするなら俺としようよ。その方が効率いいじゃん。ベッドでもいいし、ここでもいいし」
「なんの効率よ」
「欲求不満の発散」
「欲求不満じゃないわよ、ただの情緒不安定!」
彼の胸倉を掴んで引きずりながら玄関へ向かう。
「だから俺がサンドバッグになってあげるから、お互いに発散しよ」
「何がお互いよ。ヤリたいだけでしょ」
「それが澄香ちゃんにとっても発散になるじゃん。ヤったあとはいつも落ち着くんでしょ」
「ちょっとだけよ。性処理の道具になんてならないわ」
「そんなこと言ってないじゃん。一緒に運動しようって言ってるだけだよ」
玄関までいくと彼は動かなくなった。引っ張ってもびくともしない。余裕な笑みにムカついていると、彼はひょいと澄香を抱き上げてリビングまで戻ってきた。カーペットの上に下ろされて、彼が上から被さってくる。
「どきなさいよ」
「ベッド行く? それともここでする? 俺はどっちでもいいけど」
腕で彼の顔や肩を叩くが受け流される。それなりに暴れたおかげか、少し身体が疲れてきた。暴れるのを止めると彼が顔を近づけてくる。
「ベッド行く?」
彼の吐息を感じながら、澄香は呼吸を整えた。
「別にいいわよここで」
彼の無邪気な笑みの中に妖艶な色が混じる。
「じゃあ、遠慮なく」
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