チラ見のぞき見ホッピング

流音あい

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5話 仕事の帰り道で告白

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「お疲れ様です」
「先に帰ったんじゃなかったの?」
「一緒に帰ろうと思って」
 今日は俺の方が早く仕事を終えたので、彼女が終わるのを待っていた。彼女も特に困った顔をしていないので受け入れてくれたと思っていいだろう。歩き出した彼女と並ぶ。
「俺たちの関係って何ですかね」
「同僚じゃない?」
「先輩と後輩じゃないんですか」
「でも入ったの一ヵ月しか違わないし」
「え、そうだったんですか。半年以上は違うと思ってました」
 仕事も早いし、ベテランかどうかまではわからなくとも、慣れていたように思えたから。
「ちなみに平坂くん、私をいくつだと思ってる?」
 言われて気が付いた。そういえば年齢を聞いていない。なんとなく年上と思っていたし、職場の先輩だから敬語も使っていたけれど、実際いくつなんだろう。
「悩んでるわね」
「いえ、年上だろうことはわかりますけど」
「ふぅん。いくつくらいが好み?」
「好みは別に。まあ付き合うなら歳は近い方がいいかなってくらいですね」
「まあ見た目的にもそんなに離れてなさそうだよね、私達」
「カズミさんはいくつくらいの人がいいんですか」
「恋愛対象って意味で?」
「はい」
「私も似たようなもんね。近い方がいいかなって感じで、あとはやっぱり相性よね」
「そうですね。性格とか食べ物とか趣味とか、あとは……」
「声とか匂いとか話の内容とか」
「声? とかもあるんですか」
 匂いや話の内容はわかるけれど、声?
「ない?」
「あんまり考えたことないです」
「私もないかも」
「じゃあなんで言ったんですか」
 笑いながら聞くと彼女も釣られていた。
「好きな声があるからじゃない?」
「どんな声ですか」
「声っていうか、話し方かも。落ち着いた話し方」
「ああ、確かに早口で何言ってるかわからない人とかいますよね」
「そう。ちょっと落ち着いてって言いたくなっちゃう」
「俺の声はどうです。落ち着いた話し方ですか」
「うん。いい感じ。好きな声よ」
 言って彼女はくるりと振り向いた。
「じゃあ私はそこでバスに乗るから」
「そうですか。俺は駅です」
 バス停には誰もいない。
「俺もカズミさんの声好きですよ」
「ありがと」
「カズミさん」
 うん? と俺を見る彼女に、今日も。
「俺と付き合ってください」
「悪いわね」
 まだだめか。大きくため息をついて見せると、くすくすと笑う彼女の声。
「じゃあまた明日」
「ええ、また明日」
 くそう。可愛い笑顔なんて向けやがって。
 電車に乗って三駅を過ぎた頃、年齢を聞くのを忘れたことを思い出した。
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