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8話 バーの帰り道で告白
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「そういえば部屋には誘わないのね」
二人で彼女の行きつけのバーで飲んだ帰りに、唐突に言われて真顔になった。
「誘っていいんですか」
「どうかしら」
軽く答える彼女に、ため息を吐く。
「誘ってもまだどうせ無理だろうなって思うんで。まずは付き合うのが先だろうなと」
「かもね」
「それにそのうちOKになりそうだから、焦らなくてもいいかなって」
「へえ?」
ひとり楽しそうな彼女にむっとする。確かに口説いているのは俺の方だが、彼女一人が楽しむのはフェアじゃない。だって本当は両想いなんだから。
「俺が諦めたらどうするんですか」
「別に、そこで興味を失うだけよ」
「本当ですかね」
「疑ってるの?」
「はい。カズミさん実はもう俺のこと好きで好きでしょうがないんじゃないのかなって思ってます」
「じゃあ試してみれば?」
「何を?」
「私を諦めるのを」
「そこまでするのはリスクが大きすぎるので」
「リスクがあるの?」
隣を歩く彼女が身体を傾けて、心底愉快そうに顔を覗き込んでくる。
「ありますよ。本当にカズミさんが俺に興味失ってしまう可能性もあるので、そういう駆け引きはしません。ってか出来ないし」
「そうね。そういう直球なところがあなたのいいところだもんね」
「バカにしてます?」
「まさか。褒めてるのよ。あなたはとっても魅力的」
「じゃあもう付き合ってくださいよ。いつまで焦らすつもりですか」
「焦らす?」
「焦らしてるじゃないですか」
「さっきは焦らなくてもいいって言ってなかった?」
「それは部屋に誘うかどうかの話です」
「そうだったかも」
「付き合うのが先なんでしょ、カズミさんは」
「いいえ、デートが先よ。だからデートしてるでしょ」
「そうでした。でももうお互い好きなのは判明してますよね」
「そうね」
どう言われるかと身構えたが、彼女は否定しなかった。やっぱりもう両想いなんじゃないか。
「カズミさん」
「はい?」
「キスしていいですか」
彼女から珍しく笑顔が消えた。いつものように告白されると思ったのだろう。
「酔ってるの?」
「そりゃあさっき飲みましたからね。一緒に飲んだでしょ」
一歩近づいて、距離を詰める。
「最初のキスはするのとされるの、どちらがいいですか」
顔を近づけ、至近距離で彼女を見つめる。動かないのは、このまま唇を奪ってもいいということだろうか。
「この前観覧車に乗ったらキスしちゃうって言ってたでしょ。するのは別にいいんでしょ」
「だいぶ酔ってるわね」
「怒ってるんですよ俺は。カズミさんがあんまり焦らすから。カズミさんだって俺のこと好きなのに」
「そうねえ」
「だったら俺と付き合ってください」
もうホントにキスしてやろうかと思っていたら、彼女はそっと俺の両頬に手を添えた。
「酔っ払いの気持ちには応えられないわ」
そう言って手を離すと、笑って俺から離れていった。
「じゃあね」
去っていく彼女を見送って、俺は暫くその場で立ち尽くしていた。
二人で彼女の行きつけのバーで飲んだ帰りに、唐突に言われて真顔になった。
「誘っていいんですか」
「どうかしら」
軽く答える彼女に、ため息を吐く。
「誘ってもまだどうせ無理だろうなって思うんで。まずは付き合うのが先だろうなと」
「かもね」
「それにそのうちOKになりそうだから、焦らなくてもいいかなって」
「へえ?」
ひとり楽しそうな彼女にむっとする。確かに口説いているのは俺の方だが、彼女一人が楽しむのはフェアじゃない。だって本当は両想いなんだから。
「俺が諦めたらどうするんですか」
「別に、そこで興味を失うだけよ」
「本当ですかね」
「疑ってるの?」
「はい。カズミさん実はもう俺のこと好きで好きでしょうがないんじゃないのかなって思ってます」
「じゃあ試してみれば?」
「何を?」
「私を諦めるのを」
「そこまでするのはリスクが大きすぎるので」
「リスクがあるの?」
隣を歩く彼女が身体を傾けて、心底愉快そうに顔を覗き込んでくる。
「ありますよ。本当にカズミさんが俺に興味失ってしまう可能性もあるので、そういう駆け引きはしません。ってか出来ないし」
「そうね。そういう直球なところがあなたのいいところだもんね」
「バカにしてます?」
「まさか。褒めてるのよ。あなたはとっても魅力的」
「じゃあもう付き合ってくださいよ。いつまで焦らすつもりですか」
「焦らす?」
「焦らしてるじゃないですか」
「さっきは焦らなくてもいいって言ってなかった?」
「それは部屋に誘うかどうかの話です」
「そうだったかも」
「付き合うのが先なんでしょ、カズミさんは」
「いいえ、デートが先よ。だからデートしてるでしょ」
「そうでした。でももうお互い好きなのは判明してますよね」
「そうね」
どう言われるかと身構えたが、彼女は否定しなかった。やっぱりもう両想いなんじゃないか。
「カズミさん」
「はい?」
「キスしていいですか」
彼女から珍しく笑顔が消えた。いつものように告白されると思ったのだろう。
「酔ってるの?」
「そりゃあさっき飲みましたからね。一緒に飲んだでしょ」
一歩近づいて、距離を詰める。
「最初のキスはするのとされるの、どちらがいいですか」
顔を近づけ、至近距離で彼女を見つめる。動かないのは、このまま唇を奪ってもいいということだろうか。
「この前観覧車に乗ったらキスしちゃうって言ってたでしょ。するのは別にいいんでしょ」
「だいぶ酔ってるわね」
「怒ってるんですよ俺は。カズミさんがあんまり焦らすから。カズミさんだって俺のこと好きなのに」
「そうねえ」
「だったら俺と付き合ってください」
もうホントにキスしてやろうかと思っていたら、彼女はそっと俺の両頬に手を添えた。
「酔っ払いの気持ちには応えられないわ」
そう言って手を離すと、笑って俺から離れていった。
「じゃあね」
去っていく彼女を見送って、俺は暫くその場で立ち尽くしていた。
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