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7. みんなでいちごカフェへ
しおりを挟む俺と親父は、チラッとアイコンタクトをする。
分かるよ、親父。未婚のオメガと子供とロボットの2.5人暮らしなんて、心配なんだよな。任せとけ、親父。
共同親権に持ち込んで見せよう。
「はじめまして、畑中麦穂です。12歳です。桜町中学に来月入学します。」
その場の大人全員が、ほわぁぁんと表情筋を崩し、頷いた。
うん、可愛い。黒いツヤツヤ髪、大きな瞳、ぷるぷるのピンクの唇。
うん。かわいい。
「いやぁ、めでたいですなぁ。ハハハッ。オメガと、アルファだと遺伝子レベルで引き合うと、言いますしね。」
いちごをシンプルにそのまま食べている親父が言うと、むーちゃんの母親がいちご飴を頬張りながら、言った。
「そうですね。一瞬で、共鳴し合いますね。」
と言う事は、むーちゃんのお母さんは過去に、共鳴し合ったって、事だよな?
なのに何故、、、。
「まぁ、今日、オメガと診断が出たばかりなんですか?」
「はい。2、30分前まで病院にいました。」
「ーーーえ?ほんの30分前?ーーーまぁ。陽一郎も、たまたま、この階に来たの?なんて、運命的なんでしょう。出会うべくして出会ったのね。」
お袋の言葉に5人(プラス1ロボット)が、改めて奇跡的な出会いを思い、この幸運な出会いに笑顔になる。
「2人とも若く、未熟ですので、婚約を前提とした、お付き合い、と言う形でも取りましょうか?」
お義母さんは、婚約を渋る。
「ーそうですか?アルファとオメガの番は、出会った瞬間に運命の相手が分かるらしいですよね。
いずれ、間違いなく、結婚するのでしょうから、もう、婚約でも、良いのでは無いですかね?」
親父頑張れ!
「ーそうですね。でも、、、2人とも、まだまだ、若いから、、、。」
お義母さんは、煮え切らない態度だが、離す気は、サラサラない。
俺達は、運命の番に、オメガ診断が下った30分後には、出会い、50分後には婚約(前提?)をする事が出来た。
「すぐに、二人で一緒に住む家を用意します。」
良かった、胸騒ぎを信じて、今日オフィスに来て、正解だった。
グッジョブ 俺!
俺の運命の番である、むーちゃんは、存在全てがかわいい、少々、かわいいが過ぎるが、かわいいからこそ、言わなければならない事がある。
「むーちゃんはオメガ保護法は知ってるよね?オメガ性の人を助ける法律だよ。学校や病院でも習ったかなぁ?」
「うん」と頷きながらも、一生懸命にクレープを作っている。
首を傾げながらも試行錯誤している。
話聞いてるのかなぁ?心配だが、、、。
ーあぁ、生地の真ん中に、いちごとアイスを載せたら、春巻きみたいに、四角にしか巻けないよ。
「公共の場でリード外したりするのは危ないし、心配だなぁ。」
俺は、クレープ生地の6分の1くらいに刻んだ白いちごと、酸味と食感の良かったいちごを交互に置き、バナナ、カスタードクリームとチョコスプレーをかけ、おそらく、むーちゃんの作りたかった、円錐型のクレープを仕上げる。
「ほぉわぁ。」
目をキラキラ輝かせたむーちゃんは、俺の作ったクレープを見つめる。
うん。純粋でかわいい。そっと、むーちゃんの、お皿に円錐クレープを乗せると、
「ありがとうございます。」
とすぐに手を伸ばした。
結構食べるんだね、むーちゃん。話、聞いてたかなぁ。
いちごは、15分食べると、どの品種も、全ていちご味なんだって、思えるんだよ。
まだ、お皿に山の様に、摘み取って来たいちごが有る。
もう、俺は今日、一生分のいちごを食べた気がするのだが、みんな、まだ食べていた。
「まあ まぁ まあ、陽一郎さんたら、さっき診断結果が出たばかりですし。まだ、慣れないわよね。むーちゃん。」
「そうですが、とても大事な事ですし、慣れて貰わないと、危険ですし、、、。」
お袋の顔は、さっきから子猫や子犬を覗き込む、他人には見せられないニヤけた笑顔をしている。
止めろ。むーちゃんを見るな。
むーちゃんが汚れる。
そっとアーサー卿に肩を抱かれた。
ーーーは?何機能が作動してんだよ?落ち着けか?
さっきはリードを離してごめんか?
それとも、課金のし過ぎで、本物の父親の気分にでも、なったのか?
息子を宜しくって意味なのか?
「先週、僕はポーリー諸島へ、行ってました。」
ほっぺがハムスターみたいな、かわいい むーちゃんが話し出した。
何だ、このほっぺ。触りたいな。
ツンツン、あっ、しまった。触ってしまった。
まさか、このほっぺには愛と夢と希望が詰まっているのか?
「ーうん???南の島は楽しかった?」
何の話だろうか?コクンと頷いて、むーちゃんが続ける。
「リードも、首輪もしてませんでした。」
あぁー、なるほど。診断前の旅行は、身軽に動けたって、事か。
「今朝、病院に行くまではリードも、首輪も要りませんでした。」
そこまで言ったむーちゃんの目には、涙が今にも溢れそうに溜まっていた。
困った大人たちが、オロオロする。
むーちゃんは自身の両手をギュッと握り、膝の上に置いている。
そこで、言葉を切った。
むーちゃんの母は、いちごのショートケーキを食べる手を止めないで話を聞いていた。
どんだけ食べんよ。この親子。
「リードと首輪は嫌なんだね。」
むーちゃんの、手を握りしめ、ゆっくり、穏やかに聞こえる様に聞く。
「ーーーはい。」
オメガを守る法だとばかり思っていた。安心と安全を与える法だとばかり思っていたが、そうか、嫌なんだ。
ならば、よし、
「分かったよ。俺が君に、リードの要らない、自由で安全な世界をプレゼントするよ。」
一生この愛しい存在を守り抜いてやる。そう、心に誓っていた。
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