僕の番は規格外の天才で、気づいたら世界を平和にしてしまいました

ニア。

文字の大きさ
8 / 31

8. 陽ちゃんからのプレゼント

しおりを挟む

 

 陽一郎視点

 帰宅後すぐ、新規事業に着手した。

 やっと、やりたかった事が見つかった気がする。

 ありがたい事に、これまでの研究が全部役に立つ。

 まず最初に取りかかったのは、
 オメガセット――首輪、リード、鑑札の新製品開発だった。

 服の下に着るシャツ、ワイシャツ。綿100%の素材に、以前開発した植物素材を組み込む。

 宇宙空間でも育つ植物、スペースプランツS-931。

 スペースシップの部品にも使えるほど強靭で軽い素材だ。
 この素材でネックガードを作り、襟部分に内蔵する。

 リードは首から腰に固定。
 細くて軽く、強い伸縮性を持たせる。

 これもワイシャツに内蔵し、腰から保護者、または護衛ロボットに接続できるようにする。

 新学期に間に合うか少し心配だったが……

 試作品完成は翌日。
 販売可能な商品完成まで二日。
 生産体制と販売ルート確保まで一週間。

 ……楽勝だ。

 あのデパートにあるお袋の店と、いくつかの百貨店にも売り込んでおいた。

 ショッピングモール大手にも連絡しておく。販路は多い方がいい。

 次に取りかかったのは、もっと大きな計画だ。

 金星移住計画のために開発した素材、
 World New Carbon material(WNC)。

 以前、水族館で見たことがある。
 小さな地球を再現した循環型水槽。

 あれと同じ原理で――

 むーちゃんのための、小さな地球。

 国際宇宙ステーションで行った、
 空間・質量・重力バランス実験は成功している。

 あとは、

 地中の窒素量。
 リン。
 空気中の二酸化炭素濃度。

 それらを24時間計算するシステムを作るだけだ。

 日光量の計算には、どの装置を使うか。

 ……完成が楽しみで仕方ない。

 アイディアが止まらない。
 試作品はすぐ作れる。

 ……ああ、テスト期間だったな。

 まぁ、仕方ない。

 優先順位はこっちだ。

 全く問題ない。

***

 麦穂視点

 カッコいいお兄さんは、
 陽ちゃんっていう、ちょっと年上のアルファさんだった。

 ジャケット姿が、知的でカッコいい。

 背が高くて、穏やかに話す垂れ目のイケメン。

 しかも――
 僕の運命の番なんだって。

 きゃー。
 照れちゃう。

 オメガとアルファの番は、そもそも数が少ない。
 でもその中でも《運命》の番は、なかなか出会えないんだ。

 もし全員に運命の相手がいるなら、
 アルファとオメガは同じ数生まれないといけないよね。

 でも実際は違う。

 体が丈夫なアルファより、体が弱い事の多いオメガの出生率の方が低い。

 だから、一生会えない人もいる。

 でも第二性は本能が強いから、相性のいい相手とは、出会った瞬間に分かるんだ。

 オメガ性って、生殖能力に比重を置いた性別だからね。

 ヒートが来て、妊娠して、
 生涯一人の番と生きる。

 だからこそ――

 こんなに早く運命の相手に出会えるなんて、
 本当に幸せな事なんだ。

 うふふ。

 陽ちゃんは、出会って一週間後には、僕の住んでいる桜ヒルズマンションに引っ越してきた。

 僕の部屋はセンターレジデンス棟、一階の一番奥、C-1001号室。

 隣は空いていなかったから、一部屋空けたC-1003号室を借りてくれた。

 僕が大学を卒業するまで、両方の親と陽ちゃんと一緒に、この部屋で過ごそうって言ってくれたんだ。

 ちょうど部屋が空いたなんて、
 ラッキーだったね。

 いちごカフェに行った翌日。

 つまり、出会った翌日だね。

 陽ちゃんが、ワイシャツやTシャツを数枚持ってきてくれた。

「むーちゃん、説明するね」

 まだ試作段階だから、これからもっと改良するらしい。

「このワイシャツとTシャツには、ネックガードとリード機能が組み込まれている」

「はい」

 僕は、いつになく真剣に聞く。

 だって、こんな商品を作るには、たくさんの時間と人の手が必要なんだと思ったから。

 ありがとう、陽ちゃん。

(※実際は陽一郎の構想1時間、試作はベテランのパタンナーのお姉さん一人だった。)

「外出前にフェロモン数値を測って、襟の鑑札に情報を入れる。」

「うん」

「それから腰のリードを保護者か護衛ロボットに繋ぐ。そうすれば外に出られるよ」

「すごい。これなら今までとほぼ同じだ」

 軽い。
 邪魔じゃない。
 リードもすごく伸びる。

「でも事故防止のため、ネックガードは別に着けていて欲しい」

「ワイシャツ脱ぐ事あるでしょ?」

 体操服、パジャマ……。

 うん、確かに。

「お家でも?」

「そう。練習だからね」

「毎日?」

「毎日」

「う、うん……分かった」

 陽ちゃんが取り出したのは、黒い新素材のネックガードだった。

 僕の好きなアンティークビーズが付いている。

「わぁ、これすごい。着けてないみたい」

「よかった」

「お風呂以外は、毎日着けてね」

「うん」

 でも――

 あれ?

 陽ちゃんって、すごく頭のいい学校のテスト期間中じゃなかった?

 昨日会ったばかりなのに。

 これ、もう出来たの?

「あの……ありがとう陽ちゃん。すごく嬉しい。でもテスト大丈夫?」

「ああ、全く問題ない」

 言い切った。

 すごい。

 本当は、外に出たくないくらいあの日買ったオメガセットが邪魔だったんだ。

 ビーズは好きだけど……

 重くて、冷たくて。

「本当にありがとう」

「どういたしまして」

 眩しい笑顔で言った陽ちゃんが、僕の頬をつんつんした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

無自覚オメガとオメガ嫌いの上司

蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。 ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、 ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。 そして、なぜか課長にキスされてしまい…?? 無自覚オメガ→小国直樹(24) オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ 第一部・完 お読みいただき、ありがとうございました。 第二部 白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。 プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。 相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。 第三部 入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。 第四部 入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。 直樹が取引先のアルファに目をつけられて…… ※続きもいずれ更新します。お待ちください。 直樹のイラスト、描いてもらいました。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない

子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」 家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。 無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。 しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。 5年後、雪の夜。彼と再会する。 「もう離さない」 再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。 彼は温かい手のひらを持つ人だった。 身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

処理中です...