僕の番は規格外の天才で、気づいたら世界を平和にしてしまいました

ニア。

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23 僕の名前と昔話

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 すると、僕の言葉に頷いた校長先生が、ゆっくり話し始めた。

「麦は、古くから神聖な食べ物として、人々に大切に育てられてきました」

 え? なんの話?

「神として祀っている民族もあります。人類を飢えから救い、生命と文明を支えてきた、大切な宝なのです」

 はぁ……。

「今でも世界各地で、神に捧げる儀式に使われています。 つまり――あなたの名前は『人類の宝』という意味なのですよ」

 僕は、びっくりしていた。

 うちの主食はお米だから、小麦文化なんて考えたこともなかった。

 ――なんだ。

 僕の名前、ママンとは違う文化の、素敵な名前だったんだ。

 自分の名前を初めて誇らしく思った瞬間、また涙がぽろぽろこぼれてきた。

 嬉しくて、胸がいっぱいで。 大好きな友達にも、「麦は人類の宝物なんだよ」って教えてあげたくなる。

 そんな不思議な気持ちで満たされていた。

 誤解していたから、ママンにも謝りたいな。

 本当に今日は、感情のコントロールがうまくいかない。

 すると、イガグリ男子が言った。

「体調気にして声かけたのに、こいつ急に泣き出して、俺のこと無視したんだよ」

 ……まぁ、そうなんだけどね。

 くっそー、イガグリめ。

 僕の涙はすぐに引き、イガグリは速やかに授業へ戻された。

「親切の押し売りはいけませんよ。 手助けが必要なときに気にかけてあげましょう。 そっとしておくのも優しさです」

 校長先生がそうアドバイスしていたのが聞こえた。


 ***


 そのあと、なぜか校長室にママンが来て、無言で僕を抱きしめた。

「ごめんね、むーちゃん。 ママン、大事なことをいろいろ誤魔化して育ててしまったから、不安なことが沢山あったのね」

 え?

 いや、そんなことは無いのですが?

 僕はただ『麦茶』と言われて泣いただけなのです。

 ママンは、野趣あふれるデカデカ校長先生とハグをし、そのまま体が触れるくらい近くに座った。

 「はへ???」

 アーサーパパンがいる前でいいの? そんなに近づいたら……。

 ――あれ?

 校長先生の匂い、アーサーパパンと同じだ。

 アーサーパパンは王子様みたいな細マッチョ美青年。

 それに対して校長先生は、ザ・漢って感じ。

 少し濃い色の肌。 筋肉のついた体。 雄々しいフェロモンが、これでもかと溢れている。

 ワイシャツの襟元からは、隠しきれないタトゥーが首や頬に見えている。

 なのに――

 同じ匂いがする。


なんでだろう?

……あれ?

なんで僕、真ん中?

気付いたらママンと校長先生に挟まれて抱きしめられていた。


「むーちゃん、大事な話をしておきたいの」

「麦穂くん。落ち着いて、私たちの話を聞いてください」


 ***


 昔々――

 あっ、そんなに昔じゃないわよ。 少し前ね。少しよ。

 ある島で、美しい研究者のオメガの青年と、代々族長を務める家系の長男である、逞しいアルファの青年が出会いました。

 二人は出会った瞬間、惹かれ合いました。 そして、お互いが運命の番だと分かり――その場で激しく愛し合ってしまったのです。

 しかし。

 アルファ青年の部族の掟では、周辺諸島の民族との「男女の異性結婚」以外は認められていませんでした。

 ましてや、遠い国から来た同性のオメガとは結婚できなかったのです。

 文化の違いを知ったオメガの青年は、この部族の平穏を守るため、何も告げずに祖国へ帰りました。

 ところが帰国後、オメガの青年は気づきます。

 自分のお腹に、新しい命が宿っていることに。

 大好きなアルファ青年との思い出であり、宝物でもある命。

 その子を、一人で育てると決意しました。

 一方、アルファ青年は、姿を消したオメガ青年を探し出します。

 そして告げました。

 族長の座を弟に譲り、番うために来たのだと。

 さらに、お腹に自分たちの子がいると知り――

 オメガ青年の国に残り、青年と生まれてくる赤ちゃんを支える覚悟を決めたのです。

 ――おしまい。

 ***

 ……そんなお話を聞かされた。

 えぇっ!?

 その場で愛し合うって……?

 しかも今、

 《美しい青年》って、自分で言った……よね?

 ねぇ。

 どういうことぉ~?








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