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8話 白衣の下
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2日目も何事もなく終わった。
マリアは休み時間、いつも通り眠った。
午前中のジョンによる見張り時もそうだったし、午後にジョンの代わりとして一緒に過ごした看護師の前でもいつも通り眠った。
看護師も
「私もお嬢さまのように睡眠ができたなら、人生がもっと良いものになると思いますわ」
そうマリアを褒めた。
「まあ……」マリアは照れた。
マリアは皮肉なことに、こんな状況で自分の特技に初めて気付いたのである――『スゴい睡眠ができる』と言う特技に……
また看護師は言った。
「とても静かにお休みになっておられました」
つまり『夢遊病』的症状が見られた様子はないと言うのである。
マリアはジョンに続き看護師にもそう言われて、ホッともしたが不安にもなった。
(『夢遊病』でないならば。
わたくしはどうして『イジメ』の記憶がないのでしょう……)
それとも自分は学校では眠っていなかったのだろうか?
眠らずに起きたままで、自分でも気付かないうちにイジメをしていたのだろうか……
つまりは『夢遊病』ではなく、例えば『多重人格』など他の可能性を考えなければならないのか……
マリアはやはり、不安で仕方なかった。
※※※
その次の日。
3日目はまたジョンがずっと監視してくれたが、やはり異常はなかった。
そして4日目。
マリアがスッキリした顔で――マリアは朝も目覚めが良い――食事を食べていると、メイドが来て言った。
「お医者さまがいらっしゃいました」
「まあ……」
マリアは時計を見た。
いつもより一時間ほど、来るのが早い。
マリアは食事を切り上げると、ジョンを部屋に迎え入れた。
ジョンは白衣を着ていた。
(診察でしょうか)
ジョンはここ3日毎日マリアの家に来ていたが、そのとき白衣は着ていなかった。
診察はなかったから――一緒に勉強をするのみだったから――かもしれない。
しかし今日は白衣。
「おはようございます」
ジョンは挨拶をすると、
「すみません。
こんな朝早く……」
早い時間の訪問を詫びた。
マリアは全然構わないと首を横に振った後、ジョンをじっと見た。
「今日は何をいたしましょう……」
ジョンの白衣姿に、昨日までとは何か違うのではないか、と予想を付けたのだ。
しかしジョンは首を横に振り、
「マリアさんには昨日までと同じく。
監視のもと、勉強をしてもらいます。
看護師がもう少ししたら来ると思いますので。
彼女の監視のもとで」
「まあ……」
マリアは顔には出さずに、ガッカリした。
(今日は午前中もジョンお兄さまとご一緒することはできませんのね……)
するとジョンはニヤリとした。
「『じゃあ、おまえは今、何しに私の家に来たんだ』と思いましたか?」
マリアは頬を膨らませた。
「そんなこと思っておりませんわ……」
それから首を傾げて、
「確かに……不思議ではありますけど……
こんな、いつもより早い時間ですし」
「やっぱり思っているじゃないですか」
マリアはまた拗ねた顔をした。
「ジョンお兄さまがおっしゃるような『口調』では、わたくし思考いたしておりません」
「ふふふ」ジョンは明るく笑うと、ニヤリとした。
そして白衣を脱いだ。
マリアは突然白衣を脱ぎだしたジョンを訝しげに見つめたが、あることに気付くと目を瞠った。
「お兄さま……ソレ……」
「そうです」先程までニヤニヤしていたジョンだったが、今はちょっと照れた顔をして、
「今日は僕、マリアさんが通っている学校の『制服』を着ています」
そう、ジョンは白衣の下に『学校の制服』を着ていたのだ。
もちろん男子生徒の制服である。
「まあ……」
マリアは呆然とジョンの制服姿を見つめた。
「どうですかね」
ジョンはもう傍目にも分かるほど、あきらかに照れた顔をしている。
「ちゃんと『男子生徒』に見えるでしょうか?」
マリアはジョンを見つめた。
ジョンはマリアより4歳年上である。
だからもう学校の制服を着るにはちょっと『コスプレ感』を拭えない年頃。
しかし……
いつもはきっちり後ろに流して額を出しているのに、今日のジョンは前髪を垂らしている。
髪がいつもよりちょっと無造作なのだ。
『少年』っぽい感じが出ている……
マリアは頷いた。
「見えると思います」
マリアは実のところ、そんなに『男の子の見た目と年齢』の関係がよく分からなかったこともあり、ジョンの『制服姿』に違和感を持たなかった。
「良かった」ジョンは照れた顔で笑った。
(何だか可愛いです)
マリアは初めてジョンを『可愛い』と思ったことに、自分でも驚いた。
ずっと彼はマリアにとって年上の男性――『兄』――だったのだ……
(きっと見た目のせいです)
とマリアは思った。
と言うわけでマリアは確信した――『ジョンは普通に「男子生徒」に見える』と。
『でも何で彼は「制服」を着ているのだろう?』
マリアがそう思った、ちょうどそのとき、ジョンは『その理由』を説明し始めた。
「実は、今日からちょっと、マリアさんの通う学校に『潜入捜査』しようと思っているんです」
マリアはビックリ仰天した。
(潜入捜査……?)
マリアは休み時間、いつも通り眠った。
午前中のジョンによる見張り時もそうだったし、午後にジョンの代わりとして一緒に過ごした看護師の前でもいつも通り眠った。
看護師も
「私もお嬢さまのように睡眠ができたなら、人生がもっと良いものになると思いますわ」
そうマリアを褒めた。
「まあ……」マリアは照れた。
マリアは皮肉なことに、こんな状況で自分の特技に初めて気付いたのである――『スゴい睡眠ができる』と言う特技に……
また看護師は言った。
「とても静かにお休みになっておられました」
つまり『夢遊病』的症状が見られた様子はないと言うのである。
マリアはジョンに続き看護師にもそう言われて、ホッともしたが不安にもなった。
(『夢遊病』でないならば。
わたくしはどうして『イジメ』の記憶がないのでしょう……)
それとも自分は学校では眠っていなかったのだろうか?
眠らずに起きたままで、自分でも気付かないうちにイジメをしていたのだろうか……
つまりは『夢遊病』ではなく、例えば『多重人格』など他の可能性を考えなければならないのか……
マリアはやはり、不安で仕方なかった。
※※※
その次の日。
3日目はまたジョンがずっと監視してくれたが、やはり異常はなかった。
そして4日目。
マリアがスッキリした顔で――マリアは朝も目覚めが良い――食事を食べていると、メイドが来て言った。
「お医者さまがいらっしゃいました」
「まあ……」
マリアは時計を見た。
いつもより一時間ほど、来るのが早い。
マリアは食事を切り上げると、ジョンを部屋に迎え入れた。
ジョンは白衣を着ていた。
(診察でしょうか)
ジョンはここ3日毎日マリアの家に来ていたが、そのとき白衣は着ていなかった。
診察はなかったから――一緒に勉強をするのみだったから――かもしれない。
しかし今日は白衣。
「おはようございます」
ジョンは挨拶をすると、
「すみません。
こんな朝早く……」
早い時間の訪問を詫びた。
マリアは全然構わないと首を横に振った後、ジョンをじっと見た。
「今日は何をいたしましょう……」
ジョンの白衣姿に、昨日までとは何か違うのではないか、と予想を付けたのだ。
しかしジョンは首を横に振り、
「マリアさんには昨日までと同じく。
監視のもと、勉強をしてもらいます。
看護師がもう少ししたら来ると思いますので。
彼女の監視のもとで」
「まあ……」
マリアは顔には出さずに、ガッカリした。
(今日は午前中もジョンお兄さまとご一緒することはできませんのね……)
するとジョンはニヤリとした。
「『じゃあ、おまえは今、何しに私の家に来たんだ』と思いましたか?」
マリアは頬を膨らませた。
「そんなこと思っておりませんわ……」
それから首を傾げて、
「確かに……不思議ではありますけど……
こんな、いつもより早い時間ですし」
「やっぱり思っているじゃないですか」
マリアはまた拗ねた顔をした。
「ジョンお兄さまがおっしゃるような『口調』では、わたくし思考いたしておりません」
「ふふふ」ジョンは明るく笑うと、ニヤリとした。
そして白衣を脱いだ。
マリアは突然白衣を脱ぎだしたジョンを訝しげに見つめたが、あることに気付くと目を瞠った。
「お兄さま……ソレ……」
「そうです」先程までニヤニヤしていたジョンだったが、今はちょっと照れた顔をして、
「今日は僕、マリアさんが通っている学校の『制服』を着ています」
そう、ジョンは白衣の下に『学校の制服』を着ていたのだ。
もちろん男子生徒の制服である。
「まあ……」
マリアは呆然とジョンの制服姿を見つめた。
「どうですかね」
ジョンはもう傍目にも分かるほど、あきらかに照れた顔をしている。
「ちゃんと『男子生徒』に見えるでしょうか?」
マリアはジョンを見つめた。
ジョンはマリアより4歳年上である。
だからもう学校の制服を着るにはちょっと『コスプレ感』を拭えない年頃。
しかし……
いつもはきっちり後ろに流して額を出しているのに、今日のジョンは前髪を垂らしている。
髪がいつもよりちょっと無造作なのだ。
『少年』っぽい感じが出ている……
マリアは頷いた。
「見えると思います」
マリアは実のところ、そんなに『男の子の見た目と年齢』の関係がよく分からなかったこともあり、ジョンの『制服姿』に違和感を持たなかった。
「良かった」ジョンは照れた顔で笑った。
(何だか可愛いです)
マリアは初めてジョンを『可愛い』と思ったことに、自分でも驚いた。
ずっと彼はマリアにとって年上の男性――『兄』――だったのだ……
(きっと見た目のせいです)
とマリアは思った。
と言うわけでマリアは確信した――『ジョンは普通に「男子生徒」に見える』と。
『でも何で彼は「制服」を着ているのだろう?』
マリアがそう思った、ちょうどそのとき、ジョンは『その理由』を説明し始めた。
「実は、今日からちょっと、マリアさんの通う学校に『潜入捜査』しようと思っているんです」
マリアはビックリ仰天した。
(潜入捜査……?)
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