君を知るまでは

雨季

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第一話

運命にはほど遠い

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「は?何この状況……」

 目が覚めると、見慣れない部屋にいて、俺の部屋ではないことは理解できた。
 俺ははだけたシャツに、下着一枚でベッドに横たわっている。
 しかも、隣には男が気持ちよさそうに眠っている。顔は見覚えはある気がするけど、名前は覚えていない。誰だよ、こいつ……。
 
「まさか俺、こいつとやってないよな……?」

 たしか、昨日は会社の忘年会で、色んな部署の人が来ていて、二次会に行ったことまでは覚えているけど、そのあとは記憶がない。飲みすぎたせいか頭も痛い。
 俺は、気づかれないようにベッドから出ようとすると、手を引かれ引き戻される。

「……?」

「加宮さん、どこ行くんですか?」

「なんで名前……」

「知ってますよ。加宮さんのこと、うちの部署内でも有名ですから。仕事ができて優秀だって」

「俺は、お前のこと知らないんだけど」

「販促部の的部詞(まとべつかさ)です。昨日ここまで連れてくるの大変だったんですから」

「……それは悪かった」

「もしかして昨日、俺達があんなに愛し合ったこと、覚えてないんですか?」

「は……?冗談でも笑えないから」

 俺はベッドの下に落ちていた服を、乱雑に掴んで着替えた。

「これが証拠です。バラされたくなかったら俺と付き合ってくれません?」

 そう言ってスマホを見せてきたのは、2人でベッドで寝ている写真だった。
 それは、いかにも事後だと勘違いされてもおかしくないような写真だった。

「……っ」

「いいんですか?職場で男と寝たってバレても」

「いや、それは……」

 俺は今やっと安定して仕事ができている。これまで、辛い中でも耐えて数えきれない努力をした。それをこんなことで蔑ろにしたくない。
 だから俺は、彼に従うしかなかった。




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