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第四話
きっかけ
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数日後、新年会が行なわれるという案内がメールで届いた。メールで出席をとるという内容だった。
それを見ると、的部は体調不良で欠席するという内容が記載されていた。
「……体調不良って。大丈夫じゃないだろ」
思わず口に出ていたらしく、隣の同僚の女性社員に声をかけられる。
「的部さん、新年会体調不良で欠席って残念だね~。もしかして、加宮さん的部さんのこと心配してるんですか?」
「いや、まあそれは、誰かが体調不良なら心配するだろ」
「そうですよね、加宮さんに心配されるっていいな~」
「手が止まってるぞ。口を動かす前に手を動かせよ」
「加宮さん、優しいところあるんだって感心してたのに~。仕事します~」
少し話した後、新年会に欠席の連絡を入れて、仕事に取り掛かかることにした。
いつもより早く仕事が終わって、いつも通りスーパーに寄った後、自分の家に帰宅しようとすると、足が止まる。その足は自然と的部の家に向かっていた。
インターホンを押してみても、反応がない。寝ているのだろうか。
普段の俺なら、もう一度インターホンを押さないだろう。でも、どうしても的部のことが気になってもう一度インターホンを押す。
「……はい」
的部の声が、いつもより低く少し枯れたようなザラザラとした声だった。よほど体調が良くないのだろう。
「的部、急に来て悪い。メールで体調不良って見たから……」
「え、なんで加宮さん……。今開けます」
急に俺が来て驚かせただろうか、戸惑った反応がインターホン越しでもわかった。
部屋に向かうと、的部が寝ていたところだったのか、スウェットにマスクで髪も無造作に少し襟足が跳ねている。
「すみません、こんな格好で。散らばってて申し訳ないんですけど、中入ってください」
言われるままに部屋に案内され、部屋の中に入っていく。散らばっているという割に、ほとんど物がないのは、前来た時と変わらなかった。
「的部、何か食べたのか?」
「……あんまり食べれてないです」
「じゃあ、ちょっとキッチン借りてもいいか?」
「はい、大丈夫です」
俺は買ってきた、レトルトのおかゆや惣菜などをリビングのテーブルに並べた。
「神谷さんが来てくれて、助かりました。ありがとうございます」
「ああ、一人で食べられそうか?」
「もしかして、食べさせてくれるんですか?」
「……」
俺が返答に困っていると、静かな空気が流れる。それに耐えかねてか的部が口を開いた。
「いや、調子乗りました。すみません……」
的部が箸を掴もうとすると、俺はスプーンでおかゆをすくい、的部の口元に運んでいく。
的部は、一瞬びっくりしたような顔をした後、俺に促されるままおかゆを口の中に入れた。
「おいしいです……」
心なしか的部の顔が赤い気がする。体調不良なのもあるだろうけど、それだけじゃない気もする。もしかして、照れてる……?
「それは、よかった」
二人で食べ終わった後、片付けをして、口を開いたのは的部だった。
「あの、なんで加宮さん来てくれたんですか。俺、勘違いしてもいいんですか?」
「ああ、的部が体調不良だって知って、心配で仕方がなかった。勘違いされてもいいと思って来た。そうじゃないとここに来てないよ」
「……加宮さんってお人好しなんですか?俺じゃなきゃ襲われてますよ?俺の方が加宮さんのこと心配なんですけど」
「俺は俺の意思でここに来てるし、病人にそんなこと言われたくないな」
「へぇ~、じゃあ何したっていいんですか?俺今体調良くないから理性効かないですよ?」
的部に手を引かれ、ベッドに連れて行かれる。ベッドの上に俺を下ろした後、両手を掴まれ、シャツのボタンを外していき、体中にキスを落とされる。
「俺が史穏さんのこと好きってわかってます?」
その低い声で名前を呼ばれるだけで鼓動が早くなる。
的部の目の奥が獲物を捕らえるように、鋭く光って見えた。
その目に捉えられて、体が動かない。
俺は覚悟を決めて、無意識に体に力が入り目を閉じてしまう。
すると、バタッと倒れる音がして、隣で寝息が聞こえている。
「もしかして、寝てる……?」
俺は、はだけたシャツを着直して、隣を見ると気持ちよさそうに眠っている。いまだに、鼓動が早い。あのままだったら、最後までしてたのか……。そんなことを考えていると、手を引かれ、抱きしめられる。きゅっと胸が締め付けられる。
的部の腕の中が心地よくて、俺はそのまま眠ってしまっていたらしい。
それを見ると、的部は体調不良で欠席するという内容が記載されていた。
「……体調不良って。大丈夫じゃないだろ」
思わず口に出ていたらしく、隣の同僚の女性社員に声をかけられる。
「的部さん、新年会体調不良で欠席って残念だね~。もしかして、加宮さん的部さんのこと心配してるんですか?」
「いや、まあそれは、誰かが体調不良なら心配するだろ」
「そうですよね、加宮さんに心配されるっていいな~」
「手が止まってるぞ。口を動かす前に手を動かせよ」
「加宮さん、優しいところあるんだって感心してたのに~。仕事します~」
少し話した後、新年会に欠席の連絡を入れて、仕事に取り掛かかることにした。
いつもより早く仕事が終わって、いつも通りスーパーに寄った後、自分の家に帰宅しようとすると、足が止まる。その足は自然と的部の家に向かっていた。
インターホンを押してみても、反応がない。寝ているのだろうか。
普段の俺なら、もう一度インターホンを押さないだろう。でも、どうしても的部のことが気になってもう一度インターホンを押す。
「……はい」
的部の声が、いつもより低く少し枯れたようなザラザラとした声だった。よほど体調が良くないのだろう。
「的部、急に来て悪い。メールで体調不良って見たから……」
「え、なんで加宮さん……。今開けます」
急に俺が来て驚かせただろうか、戸惑った反応がインターホン越しでもわかった。
部屋に向かうと、的部が寝ていたところだったのか、スウェットにマスクで髪も無造作に少し襟足が跳ねている。
「すみません、こんな格好で。散らばってて申し訳ないんですけど、中入ってください」
言われるままに部屋に案内され、部屋の中に入っていく。散らばっているという割に、ほとんど物がないのは、前来た時と変わらなかった。
「的部、何か食べたのか?」
「……あんまり食べれてないです」
「じゃあ、ちょっとキッチン借りてもいいか?」
「はい、大丈夫です」
俺は買ってきた、レトルトのおかゆや惣菜などをリビングのテーブルに並べた。
「神谷さんが来てくれて、助かりました。ありがとうございます」
「ああ、一人で食べられそうか?」
「もしかして、食べさせてくれるんですか?」
「……」
俺が返答に困っていると、静かな空気が流れる。それに耐えかねてか的部が口を開いた。
「いや、調子乗りました。すみません……」
的部が箸を掴もうとすると、俺はスプーンでおかゆをすくい、的部の口元に運んでいく。
的部は、一瞬びっくりしたような顔をした後、俺に促されるままおかゆを口の中に入れた。
「おいしいです……」
心なしか的部の顔が赤い気がする。体調不良なのもあるだろうけど、それだけじゃない気もする。もしかして、照れてる……?
「それは、よかった」
二人で食べ終わった後、片付けをして、口を開いたのは的部だった。
「あの、なんで加宮さん来てくれたんですか。俺、勘違いしてもいいんですか?」
「ああ、的部が体調不良だって知って、心配で仕方がなかった。勘違いされてもいいと思って来た。そうじゃないとここに来てないよ」
「……加宮さんってお人好しなんですか?俺じゃなきゃ襲われてますよ?俺の方が加宮さんのこと心配なんですけど」
「俺は俺の意思でここに来てるし、病人にそんなこと言われたくないな」
「へぇ~、じゃあ何したっていいんですか?俺今体調良くないから理性効かないですよ?」
的部に手を引かれ、ベッドに連れて行かれる。ベッドの上に俺を下ろした後、両手を掴まれ、シャツのボタンを外していき、体中にキスを落とされる。
「俺が史穏さんのこと好きってわかってます?」
その低い声で名前を呼ばれるだけで鼓動が早くなる。
的部の目の奥が獲物を捕らえるように、鋭く光って見えた。
その目に捉えられて、体が動かない。
俺は覚悟を決めて、無意識に体に力が入り目を閉じてしまう。
すると、バタッと倒れる音がして、隣で寝息が聞こえている。
「もしかして、寝てる……?」
俺は、はだけたシャツを着直して、隣を見ると気持ちよさそうに眠っている。いまだに、鼓動が早い。あのままだったら、最後までしてたのか……。そんなことを考えていると、手を引かれ、抱きしめられる。きゅっと胸が締め付けられる。
的部の腕の中が心地よくて、俺はそのまま眠ってしまっていたらしい。
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