君を知るまでは

雨季

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第三話

すれ違い

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 気がつくと、やっぱり的部の部屋のベッドにいた。俺は何度同じ過ちを繰り返すんだ、自分が嫌になる……。

「起きました?加宮さん、もう俺と以外飲まないでくださいね、心配なんで」

「……迷惑かけて悪かった」

「俺にだけだったらいいです。迷惑じゃないんで。あと言っておきますけど、何もしてませんから。ちなみにこの前も最後までしてませんよ。あの画像も消しました」

 的部は少し呆れた顔で、近くのテーブルに置いてあった、水の入ったペットボトルを一口飲んだ。

「そうなのか……」

 俺は、安心したようななぜか複雑な気持ちになった。これでもう的部と付き合う理由もなくなったのに。

「やっぱりそうですよね。嫌でしたよね。無理に付き合わせてすみませんでした。もうただの上司と後輩なんで、安心してください」

「……ああ、そうだな」

「最後一つだけお願い聞いてくれませんか?」

「何だよ……」

「俺にキスしてくれませんか?」

 そう言った、的部の目の奥がかすかに揺れているような気がして、その目が俺を捉えて離さない。

「……わかった」

 俺は少しずつ近づいて膝をついて、的部の肩に手を置いた。
 唇の表面が触れるだけのキスをした。なんで俺はこんなことをしてるんだろう……。やっぱり的部には抗えない。

 唇が離れると、名残惜しそうに俺を見つめる的部の目に吸い込まれそうだった。
 これ以上ここにいたら、俺は引き戻せなくなる。そんな気すら起こさせた。

 両頬に手を添えて、再度唇が塞がれる。唇の隙間をこじ開けるように舌が入り込んでくる。俺は、流されるまま熱を帯びた舌を迎え入れてしまう。
 俺は、息の仕方がわからなくなりそうだった。
 それに気づいたのかお互いの唇が離れて、少し心配そうな的部の声がした。

「すみません、止まらなくて。大丈夫ですか?」

「……何やってんだよ」

「最後に、俺の加宮さんへの気持ち忘れてほしくなくて……」

 寂しそうに俺を見つめる的部に、俺はかける言葉が思いつかなかった。

「じゃあ、行くから」

 俺は、的部の方を振り向かず、着替えて荷物を持って部屋を出た。

 それ以降、的部から連絡が来ることもなく、顔を合わせることも少なくなった。



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