透明な檻の中で

雨季

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第一話

始まりの日

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これは、俺が高校3年の卒業式の日のことだった。
 卒業式が終わり、誰もいなくなった教室に友人と2人で話した時のことだった。
 彼に対して、俺は友達以上の特別な感情を抱いていた。

「今日で卒業か…」

「そうだな」

「お互い別の大学で、遠くなるしもう会えなくなるのかな」

「会おうと思えば会えるだろ」

「うん…。あと、お前に言いたいことがあって」

「え、何?」

「俺、ずっとお前のこと好きだったんだ」

「そっか……。でもお前の気持ちには応えられない。俺も"友達"としてお前のことは好きだよ。大学は離れるけど、卒業してもまた連絡するから」

 その瞬間、もう春だというのに窓の隙間から吹き込んだ冷たい風が、頬を掠めたのを覚えている。
 これで良かったんだ、俺達は。
 最初で最後の初恋だった。
 それから俺は、人を本気で好きになったことがない______

 
 今更、なんでこんなこと思い出したんだろう。過去に晴らせなかった気持ちを清算するために、教師になったわけじゃないのに。

 俺は現在、通っていた母校で教師として働いている。寂れた日々に光を灯してくれたのは、ある一人の生徒だった。



あれから10年______

 俺は、新上鏡也(にいがみきょうや)。
 大学を卒業してから、母校の高校教師になって6年目。28歳。
 この春から新しいクラスを受け持つことになった。

「俺は、このクラスの担任になった新上鏡也だ。体育担当だからよろしく」

「新上先生って何歳なの~?」

 早速、クラスメイトの女子生徒からの質問が飛び交う。

「28歳だけど」

「じゃぁ、彼女っているの~?」

「なんか言った?」

「だから彼女いるのって聞いてるんだけど~笑」

「聞こえないので、はいHR始めます」

「誤魔化された笑」

 俺は、出席簿を確認して、一つだけ席が空いているのが気になった。

「佐野は今日休みか」

 俺がそう言うとクラスの女子生徒が答えた。

「私、佐野と一年から同じクラスだけど、一年の途中ぐらいからほとんど欠席してると思うよ」

 この佐野という生徒は、佐野伊月(さのいつき)のことだ。彼は窓際の一番後ろの席で一つだけ席が空いている。

「そうか」 

 その時、深くは聞かなかった。
 後で、他の先生に事情を聞くことにした。
 俺は、連絡事項を伝えてHRを終えた後、俺は教室を出て、職員室に向かった。


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