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第五話
拠り所
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「佐野、起きろよ」
「……無理。まだ、眠い」
隣で寝ている佐野を起こそうとしても、布団に潜り込んでしまう。
「起きろって。今日学校だろ?」
「名前で呼んでくれないと起きられない」
「え~……?」
「今は学校じゃないから先生じゃないでしょ。ねぇ、鏡也さん?」
佐野が布団から顔を出して、俺は抱きしめられる。
「……ほら、伊月にそんなことされると、俺も仕事行けないから、早く起きろって」
「名前で呼んでくれるんだ?それ俺だけにしてね」
伊月は、俺の顔を見上げながら嬉しそうに笑っている。
「俺が他に名前で呼ぶやつなんかいないからな。それとさっき名前で呼んだら起きるって言っただろ?」
「でも、そもそも低血圧だから朝苦手なんだよね。だから学校でも時間差で保健室登校させてもらってるし」
「そういうことだったのか。それは朝きついよな。とりあえずなんか作ってくるから、待ってろ。それまで寝てていいから」
「ありがとう」
佐野の頭をくしゃっと撫でると、抱きしめていた腕が解かれた。
俺はキッチンに向かった。
俺は、家にあった食材で簡単な朝食を2人分作った。
普段朝食は食べないけど、誰かのためになら作れるのはなぜだろう。
2人で向かいの席に座って朝食を食べる。
「誰かとご飯食べるのっていいね」
「そうだな、俺も久しぶりに料理する機会ができてよかったよ。まあ簡単なやつだけど」
「普段料理しないの?」
「ああ、適当に買うか食べないかのどっちかだから」
「誰かと食事したくなったら、俺のこと呼んでよ」
「俺と食事なんかしなくても、お前には俺じゃなくても家族がいるだろ。今も親御さんも少なからず心配してるんじゃないか」
「大丈夫だよ、あんな親。昨日もテストの点数が悪かったから、暴力振るわれたんだよね。だから先生に甘えて昨日みたいなことして、ごめん」
「それは別にいい。ただ、自分の体は大事なしたほうがいい」
「そうだよね、間違ってた。家族に受け入れられないなら、せめて体だけは誰かに求められたかった。それが先生だったらなんか受け止めてもらえるかもって思っちゃったんだよね」
「家に居場所がないなら、俺のことを頼ればいい。できる限りのことはしたい。でも、その期待には応えられない。もう伊月のことを俺は傷つけたくないし、できれば伊月も伊月自身を蔑ろにして傷つけてほしくない」
「うん、わかった。俺、先生のそういうところ好きだな」
俺はその言葉をまっすぐ受け止められない。不安定ではあるけど、素直に言葉にできる伊月が眩しい。目を逸らしてしまう。
「……はいはい、わかったから早く食べろよ」
「冗談だと思ってる?それか、もしかして照れてるとか?」
俺は、伊月よりも朝食を食べ終えて、片付けて、席を立った。
「俺、昼から出勤にしたから、一回部屋戻るけど、伊月はそれ食べ終わったら学校行けよ」
「誤魔化された~。もしかして午後出勤にしてくれたの?俺も先生と一緒に昼から学校行こうかな」
「そんなわけないだろ。それは無理。じゃあやることあるから部屋開けんなよ」
俺は部屋に戻って、作業を始めた。
すぐに数分後、部屋の扉越しに一気から話しかけられる。
「先生、シャワー浴びていい?」
「ああ、いいよ」
「先生、今度勉強教えてくれる?」
「ああ、うん。いいよ」
「先生、じゃあ今度デートしない?」
「いいって言ってるだろ」
「え、デートしてくれるんだ?楽しみにしてるね~」
「はあ?ちょっと待て」
俺は慌てて、部屋の扉を開けると、伊月はシャワーを浴びていたのか、リビングにはいなかった。
あの質問の仕方はずるいだろ、はめられたと思った。俺は頭を抱えて、作業に戻ることにした。あとで会ったら断ろう。俺たちはそういう関係じゃないだろ。付き合ってもないし。
そのあとは、俺は作業に集中している間に伊月は先に学校に向かったらしく、リビングのテーブルの上には、メモが置いてあった。
『先生、泊まらせてくれてありがとう。ご飯もおいしかった 伊月』
綺麗な文字だった。普段はよく話すのにメモの文章はシンプルなんだなと思った。学校に行く前に顔を見たかったけど、仕方ないか。
俺も身支度を済ませて、学校に向かうことにした。
「……無理。まだ、眠い」
隣で寝ている佐野を起こそうとしても、布団に潜り込んでしまう。
「起きろって。今日学校だろ?」
「名前で呼んでくれないと起きられない」
「え~……?」
「今は学校じゃないから先生じゃないでしょ。ねぇ、鏡也さん?」
佐野が布団から顔を出して、俺は抱きしめられる。
「……ほら、伊月にそんなことされると、俺も仕事行けないから、早く起きろって」
「名前で呼んでくれるんだ?それ俺だけにしてね」
伊月は、俺の顔を見上げながら嬉しそうに笑っている。
「俺が他に名前で呼ぶやつなんかいないからな。それとさっき名前で呼んだら起きるって言っただろ?」
「でも、そもそも低血圧だから朝苦手なんだよね。だから学校でも時間差で保健室登校させてもらってるし」
「そういうことだったのか。それは朝きついよな。とりあえずなんか作ってくるから、待ってろ。それまで寝てていいから」
「ありがとう」
佐野の頭をくしゃっと撫でると、抱きしめていた腕が解かれた。
俺はキッチンに向かった。
俺は、家にあった食材で簡単な朝食を2人分作った。
普段朝食は食べないけど、誰かのためになら作れるのはなぜだろう。
2人で向かいの席に座って朝食を食べる。
「誰かとご飯食べるのっていいね」
「そうだな、俺も久しぶりに料理する機会ができてよかったよ。まあ簡単なやつだけど」
「普段料理しないの?」
「ああ、適当に買うか食べないかのどっちかだから」
「誰かと食事したくなったら、俺のこと呼んでよ」
「俺と食事なんかしなくても、お前には俺じゃなくても家族がいるだろ。今も親御さんも少なからず心配してるんじゃないか」
「大丈夫だよ、あんな親。昨日もテストの点数が悪かったから、暴力振るわれたんだよね。だから先生に甘えて昨日みたいなことして、ごめん」
「それは別にいい。ただ、自分の体は大事なしたほうがいい」
「そうだよね、間違ってた。家族に受け入れられないなら、せめて体だけは誰かに求められたかった。それが先生だったらなんか受け止めてもらえるかもって思っちゃったんだよね」
「家に居場所がないなら、俺のことを頼ればいい。できる限りのことはしたい。でも、その期待には応えられない。もう伊月のことを俺は傷つけたくないし、できれば伊月も伊月自身を蔑ろにして傷つけてほしくない」
「うん、わかった。俺、先生のそういうところ好きだな」
俺はその言葉をまっすぐ受け止められない。不安定ではあるけど、素直に言葉にできる伊月が眩しい。目を逸らしてしまう。
「……はいはい、わかったから早く食べろよ」
「冗談だと思ってる?それか、もしかして照れてるとか?」
俺は、伊月よりも朝食を食べ終えて、片付けて、席を立った。
「俺、昼から出勤にしたから、一回部屋戻るけど、伊月はそれ食べ終わったら学校行けよ」
「誤魔化された~。もしかして午後出勤にしてくれたの?俺も先生と一緒に昼から学校行こうかな」
「そんなわけないだろ。それは無理。じゃあやることあるから部屋開けんなよ」
俺は部屋に戻って、作業を始めた。
すぐに数分後、部屋の扉越しに一気から話しかけられる。
「先生、シャワー浴びていい?」
「ああ、いいよ」
「先生、今度勉強教えてくれる?」
「ああ、うん。いいよ」
「先生、じゃあ今度デートしない?」
「いいって言ってるだろ」
「え、デートしてくれるんだ?楽しみにしてるね~」
「はあ?ちょっと待て」
俺は慌てて、部屋の扉を開けると、伊月はシャワーを浴びていたのか、リビングにはいなかった。
あの質問の仕方はずるいだろ、はめられたと思った。俺は頭を抱えて、作業に戻ることにした。あとで会ったら断ろう。俺たちはそういう関係じゃないだろ。付き合ってもないし。
そのあとは、俺は作業に集中している間に伊月は先に学校に向かったらしく、リビングのテーブルの上には、メモが置いてあった。
『先生、泊まらせてくれてありがとう。ご飯もおいしかった 伊月』
綺麗な文字だった。普段はよく話すのにメモの文章はシンプルなんだなと思った。学校に行く前に顔を見たかったけど、仕方ないか。
俺も身支度を済ませて、学校に向かうことにした。
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