俺の前ではかわいい彼氏

雨季

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第二話

揺れる心

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 いつものように、学校が終わった後、千暁の家に来ていた。
 千暁は、服をおもむろに着替え始めた。細い割に、締まった腹筋とたくましい腕に見惚れてしまう。……いや、ただの幼馴染に見惚れるって何だよと一人でツッコミを入れる。

「そんな見んなって」

「……っ見てないから。早く着替えろよ」

「へぇ~、俺の前で嘘つくんだ?」

「嘘じゃないし」

「はいはい、わかったから。見てたってことにするから」

「はあ?だから何でだよ!」

 千暁は、俺の反応を見て笑っている。パーカーに着替えた後、俺の隣に座った。

「てか、そういうところが、彼女ができない原因なんじゃね?」

「別に俺だって作ろうと思ったら作れるし。ただ、作らないだけだし」

「そういう強がるとこがかわいいから、彼女できないんだろ」

 俺の頭をわしゃわしゃと撫でながら、そう言った。

「やめろって。てか、今何て言った?かわいいって言った?視力大丈夫?」

 そんな冗談を言いつつも、千暁の言葉に理解が追いつかない。俺のことがかわいい?何言ってるんだ、こいつ……。

「てか、ゲームしにきたんだろ?」

「ああ、うん」

 絶対今、話逸らしただろ……。ゲームをしながらも、俺はわずかに千暁の方を見たけど、何事もなかったかのように、ゲームに集中しているようだった。

「光樹って、ゲームそんな弱かったっけ?」

「え、やば。油断してた」

 隣で、千暁はいたずらっぽく笑っている。

「今日は俺に勝ち譲ってくれんの?」

「マジ、無理。ゲームだけは千暁に負けたくないんだけど」

「はい、残念。俺の勝ち」

 不意に近くなる距離に、思わずドキッとする。は……?意味わからん。何で、俺が千暁なんかに……。

「光樹、今日なんか変じゃね?」

「変じゃないって」

 不思議そうな顔をしながら、千暁は俺の顔を覗き込む。

「本当に変じゃない?」

「……もう見んなって。千暁がさっき変なこと言うからだろ」

「変なことって?」

「だってかわいいとか、言うから……」

「何?嬉しかったんだ?」

 千暁のいつもより低い声に、俺は身構えてしまう。

「……何?」

「てか、顔赤くない?もしかして俺のこと好きなの?」

「はあ?何言ってんの?そんなわけないだろ……」

「じゃあ、好きな人は?」

「……いや、いないけど」

「そっか。もし仮に俺が光樹のこと好きだとしたら、どうする?」

「千暁って、俺のこと好きなの……?」

 いつもより、真剣な目に俺は目を離せなくなる。徐々に近づいてくる距離に、なぜか逃げることもできず、体が動かない。思わず目を閉じる。……次の瞬間、おでこを指で弾かれた。

「ばか、本気にすんなって」

 千暁はいつも通りからかうように笑っていた。
……でも、どこか少しだけ違う気がした。

「……じゃあ、ゲームの続きやる?」

「あ、ああ」

さっきまで普通だった部屋の空気が、少しだけ変わっている気がした。


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