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第四話 知れば知るほどに
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あの日、充さんが帰ってきた後も話すことはなかった。あれほど人に対して興味がなかったはずなのに、俺は最近充さんと話したくて、リビングで仕事をするようになった。でも、俺も最近は仕事が立て込んでいたし、充さんも忙しいのか顔を合わせてもすぐに部屋に戻ってしまい、全然話せていない。
やっぱりどことなく避けられている気がする。俺のせいじゃん……。あの時、怒ってないとは言われたけど、流石にやりすぎたと反省している。これまで人に興味がなかった俺が感情任せに行動するなんて。
そんなことを思って、パソコンを開き作業をしているとSNSの通知が入ってきた。
《女装男子"華蜜"引退の危機!?》
「は?なにこれ?」
驚きで声を出さずにはいられなかった。それを聞いてか充さんの部屋の扉が開いた。
「どうした?大きい声出して」
「ごめん。いや、ちょっと……」
(充さんと久しぶりに話した気がする……)
それよりも、充さんの両手には数個のゴミ袋を手に持っていた。目をやると半透明なゴミ袋の中に、何着もの服や衣装が入っていた。
「待って、それ捨てるの……?」
「そうだけど」
「それ大事にしてたんじゃないの?」
「別に。ただのゴミだから」
「ねぇ、充さんって嘘つくの下手だよね。嘘つく時目合わせてくれないし」
「これは叶太くんには関係ないから」
充さんは、俺の顔を見ずにたくさんの衣装が入ったゴミ袋を捨てに行こうとする。それを俺は腕を掴んで引き止める。
「これ、捨てるっていうなら俺のために捨てないでよ」
「え……?」
「このSNSの投稿って充さんのことだよね?」
俺は、さっきSNSで見た"華蜜"引退について書かれた投稿を見せる。
「これは俺じゃない」
「違わないでしょ。だって目の下のほくろも同じだし、他の投稿に前に見かけたスカートも着てる写真あるじゃん」
「……バレてたんだ。でも男がこんな格好気持ち悪いでしょ。だから捨てる」
「そんなことない。SNSを見て、それから充さんが"華蜜"だって知った時、こんなに綺麗な人がいるんだと思った。それから充さんのことが知りたいと思った。こんなこと思うのって充さんが初めてだから」
「本当に言ってる?俺のこと知っても幻滅しない?」
「うん、全部聞かせてほしい」
「わかった」
俺は、充さんが捨てようとしていた服や衣装が入ったゴミ袋を手に取った。
「これ充さんの部屋に戻してもいい?」
「うん、でも……」
充さんが何か言いかけていたけど、その前に俺は充さんの部屋の扉を開けてしまっていた。
白の壁に水色のカーテンやシンプルなインテリアが置かれていた。
「このあたりでいい?」
「ああ、うん。ありがとう」
手に持っていた数点のゴミ袋を壁際に邪魔にならないように置いた。
「叶太くん、でも部屋散らかってるからあんまり見ないで……」
「わかった。……なにこれ?」
ベッドの下に何かが落ちていることに気づいた。おもむろにそれを拾い上げると充さんは珍しく慌てて飛んできた。
「本当に散らかってるし、片付けるからちょっと待ってて……!」
「これって、よく見るとロー……」
「それ以上言うなよっ……」
充さんは俺の口を塞ぐのと同時に、その反動で倒れてしまう。
「悪かった。すぐ退くから」
充さんは俺から離れて落ちていたそれを拾って片付けようとする。その手を俺は掴んだ。
「ねぇ待って。これってどう使うの?」
「どうやってって……知ってるだろ」
「ごめん。いや、だった?」
俺は掴んでいた充さんの腕を下ろした。前に自分勝手に行動したことを思い出したからだ。充さんはそれを片付けて床に座り話し始めた。
「もう知ってると思うけど、"華蜜"を引退しようと思ったのは、認知度が上がればその分アンチも増えるし、変な噂がでるんだよ。たとえば枕営業してるとか。そんなことに耐えられなかった」
「そうだったんだ」
「そもそも、コスプレや女装をして"華蜜"として活動するのは仕事のストレスからの現実逃避だった。そういう理由で始めたことだったけど、褒めてもらうことも増えて、居場所ができたみたいで嬉しかった」
「うん」
「でも、周りからの批判を無視してまで続けるほどではないと思ったから。引退を決めた理由」
「そっか、充さんがそう選んだことなら何も言わないよ。でも辛かったでしょ。話してくれてありがと」
「俺、でもなんでこんなこと言ってんだろ。君に話すつもりなかったのに」
(充さん、俺に少しは心許してくれたってこと?嬉しい……)
「え、なんか嬉しそうな顔してない?」
「そんなことないけど、でも充さんのこと知られて嬉しいかも」
「でも、君が好きなのは俺じゃなくて"華蜜"の方でしょ。それは本当の俺じゃない」
「どっちも充さんでしょ。好きになったきっかけは充さんの一部だったかもしれない。でも、どっちも充さんでしょ。"華蜜"として活動してる充さんも今目の前にいる充さんも好きだよ」
「何を根拠にそんなこと言えるんだよ。そもそも男同士なのわかってる?」
「じゃぁそっち行ってもいい?」
「……っ」
「何も言わないってことはいいんだ?このまま何するかわかってる?」
「何って……」
俺は充さんのおでこにキスをして、そっと優しく抱きしめた。充さんは緊張していたのか少し体が冷たかった。でも、抱きしめていると緊張で力が入っていた充さんの腕が力が抜けていくのを感じた。
「こんなこと、好きじゃなかったらしない。わかってくれた?」
「少しは……」
やっぱりどことなく避けられている気がする。俺のせいじゃん……。あの時、怒ってないとは言われたけど、流石にやりすぎたと反省している。これまで人に興味がなかった俺が感情任せに行動するなんて。
そんなことを思って、パソコンを開き作業をしているとSNSの通知が入ってきた。
《女装男子"華蜜"引退の危機!?》
「は?なにこれ?」
驚きで声を出さずにはいられなかった。それを聞いてか充さんの部屋の扉が開いた。
「どうした?大きい声出して」
「ごめん。いや、ちょっと……」
(充さんと久しぶりに話した気がする……)
それよりも、充さんの両手には数個のゴミ袋を手に持っていた。目をやると半透明なゴミ袋の中に、何着もの服や衣装が入っていた。
「待って、それ捨てるの……?」
「そうだけど」
「それ大事にしてたんじゃないの?」
「別に。ただのゴミだから」
「ねぇ、充さんって嘘つくの下手だよね。嘘つく時目合わせてくれないし」
「これは叶太くんには関係ないから」
充さんは、俺の顔を見ずにたくさんの衣装が入ったゴミ袋を捨てに行こうとする。それを俺は腕を掴んで引き止める。
「これ、捨てるっていうなら俺のために捨てないでよ」
「え……?」
「このSNSの投稿って充さんのことだよね?」
俺は、さっきSNSで見た"華蜜"引退について書かれた投稿を見せる。
「これは俺じゃない」
「違わないでしょ。だって目の下のほくろも同じだし、他の投稿に前に見かけたスカートも着てる写真あるじゃん」
「……バレてたんだ。でも男がこんな格好気持ち悪いでしょ。だから捨てる」
「そんなことない。SNSを見て、それから充さんが"華蜜"だって知った時、こんなに綺麗な人がいるんだと思った。それから充さんのことが知りたいと思った。こんなこと思うのって充さんが初めてだから」
「本当に言ってる?俺のこと知っても幻滅しない?」
「うん、全部聞かせてほしい」
「わかった」
俺は、充さんが捨てようとしていた服や衣装が入ったゴミ袋を手に取った。
「これ充さんの部屋に戻してもいい?」
「うん、でも……」
充さんが何か言いかけていたけど、その前に俺は充さんの部屋の扉を開けてしまっていた。
白の壁に水色のカーテンやシンプルなインテリアが置かれていた。
「このあたりでいい?」
「ああ、うん。ありがとう」
手に持っていた数点のゴミ袋を壁際に邪魔にならないように置いた。
「叶太くん、でも部屋散らかってるからあんまり見ないで……」
「わかった。……なにこれ?」
ベッドの下に何かが落ちていることに気づいた。おもむろにそれを拾い上げると充さんは珍しく慌てて飛んできた。
「本当に散らかってるし、片付けるからちょっと待ってて……!」
「これって、よく見るとロー……」
「それ以上言うなよっ……」
充さんは俺の口を塞ぐのと同時に、その反動で倒れてしまう。
「悪かった。すぐ退くから」
充さんは俺から離れて落ちていたそれを拾って片付けようとする。その手を俺は掴んだ。
「ねぇ待って。これってどう使うの?」
「どうやってって……知ってるだろ」
「ごめん。いや、だった?」
俺は掴んでいた充さんの腕を下ろした。前に自分勝手に行動したことを思い出したからだ。充さんはそれを片付けて床に座り話し始めた。
「もう知ってると思うけど、"華蜜"を引退しようと思ったのは、認知度が上がればその分アンチも増えるし、変な噂がでるんだよ。たとえば枕営業してるとか。そんなことに耐えられなかった」
「そうだったんだ」
「そもそも、コスプレや女装をして"華蜜"として活動するのは仕事のストレスからの現実逃避だった。そういう理由で始めたことだったけど、褒めてもらうことも増えて、居場所ができたみたいで嬉しかった」
「うん」
「でも、周りからの批判を無視してまで続けるほどではないと思ったから。引退を決めた理由」
「そっか、充さんがそう選んだことなら何も言わないよ。でも辛かったでしょ。話してくれてありがと」
「俺、でもなんでこんなこと言ってんだろ。君に話すつもりなかったのに」
(充さん、俺に少しは心許してくれたってこと?嬉しい……)
「え、なんか嬉しそうな顔してない?」
「そんなことないけど、でも充さんのこと知られて嬉しいかも」
「でも、君が好きなのは俺じゃなくて"華蜜"の方でしょ。それは本当の俺じゃない」
「どっちも充さんでしょ。好きになったきっかけは充さんの一部だったかもしれない。でも、どっちも充さんでしょ。"華蜜"として活動してる充さんも今目の前にいる充さんも好きだよ」
「何を根拠にそんなこと言えるんだよ。そもそも男同士なのわかってる?」
「じゃぁそっち行ってもいい?」
「……っ」
「何も言わないってことはいいんだ?このまま何するかわかってる?」
「何って……」
俺は充さんのおでこにキスをして、そっと優しく抱きしめた。充さんは緊張していたのか少し体が冷たかった。でも、抱きしめていると緊張で力が入っていた充さんの腕が力が抜けていくのを感じた。
「こんなこと、好きじゃなかったらしない。わかってくれた?」
「少しは……」
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