いつか死ぬのだから

ひゅん

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七月・私の高校時代の恋人みゆきとの再会

韓国料理店にて

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蒲田駅に降り立った時に、気温は三十三℃まで上がっていた。私はスマホを取り出し、iPhoneのマップを開き、駅前の韓国料理店を検索し、そこまでスマホに案内してもらった。
 店の入り口のドアは少しピンクにも見える紅色だった。
  店内に入ると、何とも言えない良い香りがした。店員がちょうど赤いスンドゥブの鍋を持って私の横を通り過ぎた。湯気が立ち上る赤いスープを横目に、お腹がグウと鳴った。
 美由紀は西側の壁側の席に座っていて、私に手を振っていた。そこにいるのが、すぐに彼女だとは分からなかった。美由紀は、ずいぶん大人っぽくになっていた。
 髪型が昔のロングから七三分けのボブになっていた。髪の色も栗色に染めていて、化粧によって高校の時のあどけなく素朴な感じが消失してしまったように思う。高校生だった彼女の顔色はもともと雪のように白く、ちょっとしたことで頬が紅色になった。化粧によってそれが見れなくなったのは残念なことだった。
「おまえ太ったんじゃないか?」と私は椅子に座る時に挨拶がわりに皮肉った。
「わかる、幸せ太りよ」と彼女が笑ったので、私はムッとした。
「まだ弓道、続けてる?」
「弓道? やってるよ。型を忘れると、私生活の姿勢まで悪くなるからね」と美由起は言った。
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